「お聞かせください」は正しい敬語?
「お聞かせください」という言葉について、ビジネスシーンなどで相手の意見を聞きたい時に便利な言葉ですが、実は目上の人に使ってしまうと失礼に当たる言葉だと知っていますか。
お聞かせください、と敬語のつもりで使った言葉によって、相手の機嫌を損ねてしまったり、自分の評価が下がってしまったりすることは出来るだけ避けたいところです。
少しの言い回しの違いで、失礼にならないように意見を聞くことが出来ます。お聞かせくださいのどこが敬語的ではない表現なのか、お聞かせくださいの意味や正しい敬語表現について解説します。
「お聞かせください」は命令口調
お聞かせくださいと聞くと、自然な敬語のようにも感じますが、実はこの使い方では敬語とは言えないのです。それどころか、このままでは命令の意味を含む言葉になってしまい、知らずに目上の方にお聞かせくださいと使用してしまうと失礼な意味合いで受け取られてしまいかねません。
では、いったい何故お聞かせくださいでは命令口調になってしまうのでしょうか。どこにその原因があるのか、どうしたら命令口調にならずに相手の意見を求めることが出来るのか、お聞かせくださいの具体的な意味を解説します。
「ください」が命令の意味を持つ
お聞かせくださいとは、「聞く」の一見丁寧な表現にも見えますが、実は語尾につく「ください」と言う言葉の使い方が命令の意味を含んでしまっているのです。
くださいとは「くれ」の尊敬語にあたり、尊敬語と言うのは目上の人の行動を高めるための表現になります。しかし、くださいという言葉には要求や命令をするという意味合いが強く含まれてしまっているため、目上の方に使うには不適切な表現となってしまいます。
意見や考えを尋ねるときに、命令の意味が含まれてしまうと聞かれた相手には不快な印象を与えてしまう可能性が高くなりますので、相手によってはこのお聞かせくださいの「ください」の部分を適切な表現に変えてから使用する必要があります。
目上の人に使うべきではない言葉
前述のとおり、お聞かせくださいには命令の意味が含まれてしまいます。このため、目上の方に使用するにはふさわしくない表現であることが分かります。
もし、ビジネスシーンなどで目上の方に意見や感想をうかがいたい時には、この「ください」と言う命令口調になってしまう言葉の使い方を、適切な敬語表現に直す必要があります。
日本語のニュアンスはささいな言い回しでも大きく変わってしまうため、目上の方に使用するときには特に注意してお聞かせくださいなどの言葉の使い方を意識する必要があります。
ビジネスシーンでは使用する場合もある
お聞かせくださいという言葉が敬語表現ではないことをお伝えしましたが、間違った言葉というわけでもありません。実際に目上の方以外の、同僚や後輩に対して使う際には、お聞かせくださいという言い方でも差し支えありません。
親しい間柄ではあるものの、ビジネス上の場面であればお聞かせくださいという表現を使用しても不自然にはなりません。相手との関係性や立場を考えたうえで、お聞かせくださいの表現の使い分けが出来るように意識しましょう。
「お聞かせください」の正しい使い方と例文
ここまで、お聞かせくださいという言葉の意味やその表現の問題点についてなどをご紹介してきました。
それでは、他者から意見や感想などを聞くときに便利なこのお聞かせくださいという言葉を、実際に目上の方に使うときにはどのように変えたらいいのでしょうか。お聞かせくださいの失礼に当たらない言い回しを、具体的な例文と一緒にご紹介します。
お聞かせいただけませんか
いただく、は謙譲語の一つになります。謙譲語はへりくだった言い方で相手への敬意を表現する敬語にあたります。そのため、お聞かせくださいではなく、お聞かせいただけませんかという言い回しであれば、対象の相手を敬った表現となります。
お聞かせいただけませんか、であれば目上の方にでも使用できる言葉ということになります。例文「是非ご感想をお聞かせいただけませんか。」など。
お聞かせくださいませんか
お聞かせくださいませんか、という使い方であれば、目上の方に使用することが出来る言葉になります。ここでも「ください」という言葉が含まれているように見えますが、「くださいませんか」と言う言い回しにすることで意味が変化してきます。
くださいは命令に当たりますが、くださるなら尊敬語になります。お聞かせくださいではなく、お聞かせくださいませんかと言う使い方であれば相手を敬った言い回しとなります。
このため、目上の方にも使用できる表現となります。例文「今後の参考に致しますので、ご意見をお聞かせくださいませんか」など。
お聞かせ願えませんか
お聞かせ願えませんか、という言葉であれば見たとおりのお願いする意味合いになります。お聞かせくださいという命令の意味になってしまう言い回しと比べて、かなりやわらかく相手に依頼する言い回しとなっています。
お聞かせくださいと言うよりも、お聞かせ願えませんかというお願いする立場での言い回しであれば、聞かれた側にも不快な感情は与えにくいです。そのため、目上の方に対しても使いやすい表現になります。例文「ご感想などがあれば是非お聞かせ願えませんか」など。
ご意見を頂きたく存じます
お聞かせください、という言葉を「ご意見を頂きたく存じます」と言い換えることも出来ます。ご意見を頂きたく存じますという言葉は、お聞かせくださいと言う意見を乞う意味から派生した類義語です。
やや改まった印象の言葉になりますので、ビジネスシーンでの目上の方にも使いやすい表現になります。また、へりくだった表現で相手を敬う言い回しとなるため使用しやすいです。例文「配布した資料に関して、ご意見を頂きたく存じます」など。
ご教示くださいませ
「教示」とは、教えることや伝達することという意味があります。お聞かせくださいをご教示くださいませと言い換えることで、教えて欲しいというお願いの意味合いに変化させることが出来ます。
また、「ご教示願います」という形にすることでお聞かせくださいやご教示くださいませよりも、よりやわらかい響きで相手にお願いする印象にすることも出来ます。
「ください」に「ませ」を付けることで強い命令口調から響きを和らげることが出来るため、目上の方に使うときにもご教示くださいませと言う言い回しは使用することが出来ます。例文「ご多忙のところ恐縮ですが、ご教示くださいませ」など。
「お聞かせください」の英語表現と例文
最近では、英語でやり取りをする機会が増えています。お聞かせくださいは英語だとどのような表現になるのでしょうか。
ビジネスシーンでも、友人との会話でも、お聞かせくださいの英語表現を知っておくことで相手の意見や考えを聞くことが出来ます。英語でのお聞かせくださいの表現と例文を解説します。
ビジネスシーンでの英語表現
「Please let us know what you think.」これはご意見をお聞かせくださいや、感想を聞かせてください、という意味のやや丁寧な英語表現になります。Pleaseがつくことによって、日本語同様お願いするニュアンスが含まれるようになりますのでビジネス上でも使用できる表現となります。
「We would like to get your feedback.」これは、意見をお聞かせくださいという意味でも、企業として顧客側に意見を求めているときなどにメールやホームページ上でよく見る表現の仕方です。ビジネス上で使える丁寧な表現になります。
「I'd like to get your thoughts on it.」これも意見をお聞かせくださいの英語表現です。比較的かしこまった表現になるため、相手の立場に関係なく、ビジネスシーンでも使用することが出来る言い回しになります。
カジュアルな場での英語表現
「Can I get your opinion?」あなたの意見を聞かせて、意見を聞いてもいい?といったニュアンスの表現になります。
比較的フランクな軽い表現になりますので、親しい間柄などで違和感なく使用できる表現です。逆を言うと目上の方に使用してしまうと失礼な印象を与えてしまうため気を付けましょう。
「I want to know what you think.」意見をお聞かせください、の個人的に意見を尋ねる場合に使うカジュアルな表現です。あなたの意見を知りたいです、という意味合いになります。これも親しい間柄の人に対して使用することが出来ます。
「お聞かせください」の使い方に注意しよう!
「お聞かせください」という言葉の意味や使い方についてご紹介しました。お聞かせくださいは敬語だと思って使っていたら、実は失礼な印象を与えてしまっていた、ということにならないように、是非正しい意味と使い方を覚えて場面に応じた言葉遣いをしてください。
ビジネスシーンなどでは特に、目上の方からは日ごろの言葉遣いを知らぬ間にチェックされていることがあると思います。お聞かせくださいという言葉ひとつでも、その場や相手に応じた言葉が選択できると、周囲に与える印象が良くなりますし、仕事上での評価にもかかわってくると思います。
お聞かせくださいという言葉に関して、今後は是非その場に相応しい表現を意識して実際に使用してみて下さい。