じゃがいもの芽かきをする理由
茹でたり炒めたり、いろいろな料理に使えて便利なじゃがいも。じゃがいもは初心者にも比較的育てやすい野菜ですが、じゃがいもを育てるときにはいくつかのポイントを抑えておく必要があります。その1つが、芽が出たら芽かきをするということです。
では、なぜじゃがいもを育てるときには芽かきをする必要があるのでしょうか。また、じゃがいもの芽かきは、どんなやり方でどんな時期・タイミングで行えばよいのでしょうか。じゃがいも栽培初心者の方の中には、じゃがいもの芽かきをする理由ややり方についてよく知らないという方も多いはずです。
もし、じゃがいもの芽かきを失敗してしまうとじゃがいもが上手く育たないこともありますので、じゃがいもの栽培を始める前に芽かきをする理由ややり方、やる時期・タイミングなどをしっかりと覚えておくことが必要になります。
この記事では、じゃがいもの芽かきをする理由や芽かきのやり方、芽かきをする時期・タイミングなど、じゃがいもの栽培過程の中でも大切なポイントとなる芽かきに焦点を当てて解説していきます。じゃがいもを育ててみようと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
芽かきをすればストロンが減る
まず最初にご紹介するのは、じゃがいもの芽かきをする理由についてです。芽かきとは不必要な脇芽を取り除く作業のことですが、なぜじゃがいもの芽かきをする必要があるのか、じゃがいもの芽かきをする前に芽かきをする理由を確認しておきましょう。
じゃがいもの芽かきをする理由は、「ストロンの数を減らすため」です。じゃがいもは、土に埋まっている茎からストロン(匍匐枝)が伸び、その先端が肥大して実ができます。
つまり、ストロンの数が増えるほどじゃがいもの数も増えるというわけです。それならば、芽かきをせずにストロンの数を増やした方がいいように思えますが、それは違います。
じゃがいもの数が増えてしまうと、その分たくさんのじゃがいもを生長させる必要が出て、生長に必要な栄養分が分散してしまいます。そのため、じゃがいもの数は増えても、1つ1つのじゃがいものサイズは小さくなってしまいます。
このような理由があり、1つ1つのじゃがいもをしっかりと大きく育てるためには、芽かきをしてストロンの数を減らす必要があるのです。
じゃがいもの芽は、多いときには10本近く出ることもあります。せっかく出芽した芽を取り除いてしまうのはもったいない気がしますが、種いもから複数の芽が出たら芽かきをして芽の数を減らしましょう。
小さなじゃがいもが必要なら芽かきは不要
とはいえ、じゃがいもの芽かきは必ずする必要があるわけではありません。じゃがいもの芽かきをするのはじゃがいもを大きく育てるためという理由がありますが、1つ1つのじゃがいものサイズは小さくなってもいいからたくさんの数のじゃがいもを収穫したいという場合には、芽かきは不要になります。
芽かきをしないと大小様々なサイズのじゃがいもができますが、自宅で食べるためのもので販売する予定がないのであればサイズがバラバラでも問題はないでしょう。フライにしたり、1個まるごと肉じゃがにしたり、小さなじゃがいももいろいろな使い方ができます。
ただし、小さなじゃがいもを料理に使うときに注意したいのが、小さなじゃがいもにはソラニンやチャコニンが多く含まれている場合もあるということです。
ソラニンやチャコニンは天然毒素の一種で、ソラニンやチャコニンが多く含まれたじゃがいもを食べると食中毒を起こすこともあります。
じゃがいもの芽に毒性があるのは常識ですが、小さなじゃがいもを食べるときにも十分注意してください。もし食べても大丈夫なのか判断できない場合には、食べるのはやめておくようにしましょう。
じゃがいもの芽かきをする時期は2回
じゃがいもの芽かきをする理由を理解したところで、続いてはじゃがいもの芽かきをする時期・タイミングについてご紹介しましょう。じゃがいもの植え付け時期は春が基本です。じゃがいもは暑さを苦手としますので、2月下旬~4月上旬くらいの時期までに植え付けましょう。
温暖な地域の場合には、秋の時期(8月下旬~9月中旬)の植え付けもできます。ただし、暑さで種いもが腐ってしまったり、寒くなる時期が早まって実が大きく育たなかったりすることもありますので、初心者には春の植え付けの方がおすすめです。
中には、じゃがいもは畑がないと育てられないと考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、実はじゃがいもはプランターでの栽培も可能です。深さが30cm以上ある深型プランターと野菜用培養土を使いましょう。プランターがない場合には、麻袋などの袋でも代用可能です。
では、じゃがいもの芽が出たら、芽かきはどの時期・タイミングで行えばよいのでしょうか。じゃがいもの芽かきをする時期・タイミングは、1度目は芽が地上に出た時期・タイミング、2度目は草丈が15~20㎝の時期・タイミングです。
1度目は芽が地上に出たタイミング
じゃがいもの1度目の芽かきは、「芽が地上に出た時期・タイミング」で行います。じゃがいもの種いもを植えると、3~4週間後には発芽します。通常であれば5~6本、多ければ10本近くの芽が出てきますので、5~10cm程度に伸びたところで1回目の芽かきをしましょう。
せっかく出てきた芽を抜くのはかわいそうに思えるかもしれませんが、芽かきをしないとじゃがいもの生長を妨げる理由になります。芽かきをする理由をしっかりと理解しておき、もったいながらずに1~2本ほど残して育ちの悪い芽を抜きましょう。
畑の広さに余裕があって株間が十分にとれる場合は芽かきを必ずする必要はないですが、プランターのように狭いスペースでじゃがいもを育てる場合には特に芽かきが欠かせません。
2度目は草丈が15~20㎝のタイミング
じゃがいもの2度目の芽かきは、「草丈が15~20㎝の時期・タイミング」で行います。1度やったのだからもういいのでは?という気もしますが、1度目の芽かきで1~2本ほどに減らしたつもりでも、生長が遅くて1度目の芽かきの後に出てくる芽もあります。
また、1度目の芽かきで失敗して、途中で切れてしまった芽がまた伸びている場合もあるかもしれません。そういった理由で、2度目の芽かきも行った方が確実なのです。草丈が15~20㎝程度まで育った時期・タイミングで、忘れずに2度目の芽かきを行いましょう。
芽かきをする芽の選び方
続いては、じゃがいもの芽かきをする芽の選び方についてご紹介しましょう。じゃがいもを栽培するときには芽が地上に出たタイミングで1度目の芽かき、草丈が15~20㎝程度まで育ったタイミングで2度目の芽かきを行いますが、どうやって残す芽を選べばよいのでしょうか。
じゃがいもの芽かきをするときには、どれでもいいから適当に芽を抜けばよいというものではありません。じゃがいもをしっかりと太らせて、品質の良いじゃがいもを収穫するためには、芽かきをする芽の選び方も大切になります。
太くて元気のある芽を選ぶ
じゃがいもの芽かきをする芽の選び方として重要なのが、「太くて元気のある芽を選ぶ」ということです。太くて元気のある芽を選んだ方が、その後の生育にも期待できるからです。じゃがいもの芽かきをするときには、茎が太くて色が濃く、丈夫なものを残して、それ以外の芽を抜き取りましょう。
逆に細くて弱弱しい芽を選んでしまうと、その後も上手く育たない場合があります。もし草丈が一番高く生長していたとしても、太さや元気がなくて、ひょろりと細いものは選ばない方がよいでしょう。
また、病害虫がいないか確認することも忘れてはいけません。芽が病害虫に侵されると、生育に悪影響を及ぼす可能性があります。ぱっと見で丈夫そうでも、病害虫がいないかきちんと確認してから、健康なものを残しましょう。
残す芽は1~2本
じゃがいもの芽かきをするときには、太くて元気のある芽を全部で何本残せばよいのでしょうか。芽かきをするときに残す芽の数は、じゃがいもをどのくらいの大きさまで育てたいかによりますが、「1~2本」程度残せば大丈夫です。
残す芽の数が少ないほど1つのじゃがいもにいく栄養分が多くなり、芽の数が多くなると栄養分が少なくなります。大きなじゃがいもを収穫したい場合には芽を1本、1つ1つのじゃがいものサイズが小さくなってもいいから数を増やしたい場合には芽を2本残しましょう。
株間の広さなど他の条件にもよりますが、残す芽が1本なら12~15cm程度、2本なら7~9cm程度のじゃがいもが収穫できると考えておくとよいです。
もっと小さなじゃがいもを収穫したい場合には、残す芽の数を3~4本に増やしたり、芽かきをしないで育てたりしても構いません。株ごとに残す芽の数を変えて、収穫にどの程度の差が出るのか実験してみるのもおもしろいかもしれません。
ただし、前述しましたように、小さなじゃがいもには天然毒素のソラニンやチャコニンが多く含まれている可能性もあります。小さなじゃがいもを食べる際には食中毒に注意して、食べてもよいのか判断できないものは食べないようにしましょう。
手で行うじゃがいもの芽かきのやり方と注意点
ここからは、じゃがいもの芽かきのやり方と注意点についてご紹介していきましょう。まずは、手で行う場合のじゃがいもの芽かきのやり方と注意点からです。
芽かきをするときにはハサミを使うやり方の方がやりやすそうに思えますが、ハサミを使わずに手で芽かきを行うやり方の方が一般的です。ハサミを使ってもよいのですが、ハサミを使うやり方だと地中に芽が残ってしまいます。
そのため、せっかく芽かきを行っても、しばらくしたら残った芽がまた伸びて出てきてしまうかもしれないのです。ですから、ハサミを使うよりも手で行うやり方の方がおすすめです。
それでは、手で行うじゃがいもの芽かきのやり方をご紹介します。手で行うじゃがいもの芽かきのやり方は、まず最初に「芽を手でひっぱる」、次に「種いもから芽が外れたら引き抜く」、最後に「後処理をする」という順序です。
芽を手でひっぱる
手で芽かきを行うときには、まずは残したい芽を選んで、取り除く芽を手で引っ張ります。太くて丈夫な芽を1~2本残して、細い芽や混み合っているところの芽を取り除きましょう。
地上では複数の茎に見えていても、地中で1本の芽から分かれて伸びた茎である場合もあります。そのため、確認せずに引き抜くと、芽が全部なくなってしまうこともあります。
土の中に指を入れてみるか、少し土をよけてから茎を揺らしてみるなどして、芽かきを行う前に芽の数をきちんと確認してから引き抜きましょう。
芽を引っ張るときには、種いもが一緒に抜けてしまわないように、残す芽の根元をしっかりと押さえながら引き抜くことがポイントです。種いもが地上には出て来なくても、種いもが埋まっている場所から浮いてしまい、根が傷ついてしまうこともあるため注意が必要です。
また、強く引っ張ったり先端の方を持って引き抜こうとしたりすると、茎の途中で切れてしまうこともありますので、なるべく茎の下の方を持ってゆっくりと引き抜きましょう。茎の途中で切れてしまった場合には、残った茎をつまんで抜き直すようにします。
タネイモから茎から外れたら引き抜く
手で引っ張ってもなかなか抜けないこともありますが、そんなときにも強く引っ張ったりせずに、軽くねじったり前後に揺らしたりしてみるとよいです。
ゆっくりとねじりながら芽を引いていくと、種いもから芽がブツッと外れる感覚がします。種いもから芽が外れたら、土の中から芽を引き抜きましょう。
タネイモごと抜けた場合の対処法
では、じゃがいもの芽かきを手で行うときに、もし種いもごと抜けてしまった場合にはどうしたらよいのでしょうか。慣れないうちは失敗することもあり、慎重にゆっくりと芽を引き抜いたにもかかわらず、種いもごと抜けてしまうこともあるかもしれません。
もし種いもごと抜けてしまった場合には、慌てずに対処しましょう。種いもが少し浮いたくらいであればまったく問題ありませんし、種いもが完全に地上に出てしまったとしても諦める必要はありません。
まずは芽かきを済ましてしまい、芽かきが終わったら丁寧に埋め戻してあげましょう。根が空気に触れている時間が長くなると、根が傷んだり病気に感染したりする可能性が高くなりますので、手早く作業を終わらせることが肝心です。
後処理をする
残したい芽だけを残して不必要な芽を取り除くことができたら、最後に追肥と土寄せを行いましょう。じゃがいもの周囲に肥料を撒き、肥料を混ぜ込むように茎に土を被せます。
その際に、肥料と種いもが直接触れ合うことがないように注意しましょう。肥料と種いもが直接触れ合ってしまうと、生育阻害が起こることがあります。
また、土寄せが不十分の場合にはじゃがいもがむき出しになってしまい、太陽の光でじゃがいもが緑色に変色してしまいます。
芽と同じく、緑色に変色したじゃがいもの皮にはソラニンやチャコニンが多く含まれていて、食中毒の原因になることもあります。
じゃがいもが緑色に変色しても表面だけが変色しているのであれば皮を取り除けば食べられますが、中心まで変色しているのであれば食べるのはやめておきましょう。
ハサミで行うじゃがいもの芽かきのやり方と注意点
続いては、ハサミで行うじゃがいもの芽かきのやり方と注意点についてご紹介しましょう。じゃがいもの芽かきをハサミで行うと地中に芽が残ってしまい、後からまた芽が出てきてしまうことがありますので、じゃがいもの芽かきはハサミではなく手で行うのが一般的です。
けれども、浅植えの場合には、芽を引き抜こうとすると根元を手で押さえておいても一緒に種いもごと抜けてしまいます。そのため、手ではなくハサミを使って芽かきを行う方が作業しやすいです。
それでは、ハサミで行うじゃがいもの芽かきのやり方をご紹介します。ハサミで行うじゃがいもの芽かきのやり方は、まず最初に「消毒したハサミを土の中に入れる」、次に「タネイモの際で芽を切る」という順序になります。
消毒したハサミを土の中に入れる
ハサミで芽かきを行うときにも、まずは土の中に指を入れてみて、芽の本数を確認します。正しい芽の本数を確認したら、太くて丈夫な芽を選び、茎が細いものや生長が遅いものを芽かきしましょう。
ハサミを使う場合には、ハサミを洗浄した後に消毒するか火で軽くあぶってから使います。清潔でないハサミを使うと、切り口から病原菌が侵入してしまうことがあるからです。消毒したハサミを使えば、病気の害を最小限に抑えられますので、消毒したハサミを土の中に入れましょう。
タネイモの際で芽を切る
消毒したハサミを土の中に入れたら種いもの際で芽を切ります。手で引き抜くときと違い、種いものすれすれのところで芽を切っても、まだ芽は残ってしまいます。ハサミで芽を切った後にもし再び芽が出てきてしまった場合には、再度芽かきを行いましょう。
しっかりと土寄せをしておけば再び地上に芽が出てくるのを防ぐことはできますが、根が残っていると小さなじゃがいもが増えてしまい、収穫量が減ってしまうこともあります。じゃがいもの芽かきをハサミで行う場合には、そのことも頭に入れておきましょう。
畑のスペースに余裕があるのであれば、手で芽かきを行った場合とハサミで芽かきを行った場合に収穫量にどんな違いが出るのかという実験もしてみるとよいかもしれません。
芽かきを忘れた場合の対処法
最後に、じゃがいもの芽かきを忘れた場合の対処法についてご紹介しておきましょう。じゃがいもの芽かきを行うのはストロンの数を減らすためで、1つ1つのじゃがいもを大きく育てられるという点が大きなメリットです。
また、太くて丈夫な芽だけを残すことになりますので、生育が安定して、収穫するじゃがいものサイズがバラバラになりにくいというメリットもあります。
収穫したじゃがいもを自宅で食べる分にはサイズがバラバラでも問題ありませんので、必ず芽かきを行う必要はありません。株間のスペースが十分とれていれば、もし芽かきを忘れてもそれなりに育つでしょう。
茎の長さを確認する
適期に芽かきをするのを忘れてしまったけれど、できれば芽かきをしておきたいという場合には、まずは「茎の長さを確認」してみましょう。
じゃがいもの芽かきは、植え付けてから4週間後、茎の長さが20cm頃までにする必要があります。茎の長さが30cm以上になると、ストロンの先端にすでに小さなじゃがいもができ始めている可能性があるからです。
じゃがいもができてから芽かきを行うと、土の中に未熟なじゃがいもが残ってしまい、収穫の際に正常に発育したじゃがいもと区別がつかなくなる可能性があります。
未熟なじゃがいもには天然毒素のソラニンやチャコニンが多く含まれていて、食べると食中毒を起こす危険性がありますので、芽かきをせずに諦めてそのまま育てた方がよいでしょう。
芽かき以外の方法でじゃがいもを大きく育てる
じゃがいもの芽かきを忘れてしまい、茎の長さが30cm以上になってしまった場合には、芽かき以外の方法でじゃがいもを大きく育てましょう。追肥と土寄せを忘れずに行うことも、じゃがいもの生育にとって重要なポイントの1つになります。
栽培期間中に2回以上は土寄せを行い、肥料も切らさないようにしましょう。ただし多肥過ぎると、病害虫が発生しやすくなったり、味が悪くなったりしますので要注意です。
正しい芽かきでじゃがいもを大きく育てよう!
じゃがいもの芽かきをする理由や芽かきのやり方、芽かきをする時期・タイミングなどをご紹介しました。じゃがいもを栽培するときには、芽かきを行って、不必要な芽を取り除いてあげる必要があります。
慣れないうちには失敗してしまうこともあるかもしれませんが、芽かきを行うことで、大きなじゃがいもを収穫することができます。正しいやり方で芽かきを行って、じゃがいもを大きく育てましょう。