失業保険受給中・アルバイトは可能?
雇用保険は、政府が管掌する強制保険制度です。雇用保険の被保険者は、離職して失業した場合に、失業中の生活を心配することなく、新しい仕事を見つけて1日も早く再就職するために、基本手当を受給することができます。
雇用保険の基本手当を受給することは、「失業保険の受給」あるいは「失業保険の手当の受給」等といわれることがあります。「雇用保険」の前身は、失業手当の給付に重点を置いていた「失業保険」であったため、現在でもそのように呼ばれていると考えられます。
それでは、失業保険を受給しようとしている受給希望者(雇用保険の被保険者)は、離職直後から失業保険受給中に至るまでの期間に、アルバイトを行うことは可能なのでしょうか。失業保険の受給希望者は、失業しているからこそ失業保険を受給することができるわけであり、アルバイトが可能かどうかは気になるところです。
求職申込前は可能
失業保険を受給するためには、離職後、まず最初に、住所地を管轄するハローワークで「求職申込み」をしたのち、「離職票」を提出します。このハローワークでの求職申込みの前であれば、アルバイトを自由に行うことができます。
但し、雇用保険の基本手当を受けられる期間(期限)は、原則として離職の翌日から1年までです。したがって、長期間のアルバイトをしてしまって、基本手当を受けられる期間(期限)を過ぎると、雇用保険の基本手当を受けられる給付日数の範囲内であっても基本手当が受けられなくなりますので、充分に注意する必要があります。
特に、正当な理由なく自己都合により退職した場合等は、基本手当の給付が行われない3か月間の給付制限期間がありますので、充分に注意しましょう。
待機期間中はアルバイトはできない
ハローワークにおいて離職票の提出と求職の申込みを行った日(受給資格決定日)から失業の状態にあった日が通算して7日間経過するまでの期間を待期期間といいます。雇用保険法でいう「就職」には、いわゆる正社員だけではなく、アルバイトやパート等も含まれます。失業保険を受給するためには、この待期期間中において、アルバイトはできません。
制限期間中は日数・期間に条件
正当な理由なく自己都合により退職した場合等は、待期期間が経過した翌日から、「基本手当の給付が行われない更に3か月間の給付制限期間」があります。この給付制限期間が経過した後に、引き続き失業の状態にある場合に、基本手当の支給が始まります。
したがって、この給付制限期間において可能なアルバイトは、ハローワークにおいて失業の状態にあると認定される範囲内のアルバイトであり、日数・期間等に条件があります。
失業保険受給中は申告によって可能
失業保険の基本手当を受給することができるのは、給付制限期間が経過した後の最初の失業の認定日に失業の認定を受けた後になります。給付制限期間が経過した後に、引き続き失業の状態にある場合に、基本手当が支給され、失業保険受給中となります。
失業保険の基本手当を受給するための条件として、原則として4週間(28日)に1回の指定された日(失業の認定日)に、ハローワークに出頭して、失業の状態であることを失業認定申告書で申告するという手続きが必要になります。失業保険受給中にアルバイトを行った場合は、この失業認定申告書に記載して申告するという手続きが必要になります。
失業保険受給中・アルバイト条件
以上のように、失業保険受給中においてもアルバイトをすることができます。但し、行ったアルバイトについて失業認定申告書で申告するという手続きが必要になります。
そして、失業保険の基本手当を受給するためには、失業認定申告書で失業の状態にあるか否かを、ハローワークの担当者によって判断されます。その際、行ったアルバイトについても判断されます。
一口にアルバイトといっても、アルバイトの条件は様々です。失業保険受給中の受給者が「アルバイト」の認識で行っている場合でも、アルバイトの条件によってはハローワークの担当者も同様に判断するとは限りません。したがって、失業保険受給中にアルバイトを行う場合には、行うアルバイトの条件に注意する必要があります。
アルバイトの仕方で減額対象
アルバイトの仕方にもいろいろな仕方があります。1日のアルバイトの時間やアルバイトの期間等のアルバイトの仕方によっては、失業保険の基本手当を受給することができなくなる場合や、減額される場合や、給付が先送りされる場合があります。これらの場合に分かれるアルバイト条件とは、どのような条件なのでしょうか。
①定職に就いたと判断されるケース
失業保険受給中の受給者が「アルバイト」の認識で行っている場合でも、定職に就いたと判断されるケースがあります。ハローワークの担当者の判断にもよりますが、よくありがちなケースとしては、雇用保険の被保険者となる場合です。一週間の所定労働時間が20時間以上であり、31日以上の雇用見込みがある場合には、雇用保険の被保険者となります。
失業保険受給中の受給者が正社員の仕事を希望するような場合には、雇用保険の被保険者となるようなアルバイトを、避けなければならないでしょう。そもそも「アルバイト」の認識で一時的に行っている仕事を、定職に就いたと判断されては不本意でしょう。
②減額対象となるケース
失業保険受給中の受給資格者が、失業の認定に係る期間中に自己の労働(原則として1日の労働時間が4時間未満)によつて収入を得た場合には、その収入の基礎となつた基礎日数分の基本手当の支給について、減額対象となるケースがあります。詳細には、次のとおりです。
「その収入の一日分に相当する額(収入の総額を基礎日数で除して得た額)から控除額(1282円かその前後ですが、変更される場合があります)を控除した額と基本手当の日額との合計額」が「賃金日額の80%に相当する額」を超過するときは、「その超過する額を基本手当の日額から差し引いた残りの額」に基礎日数を乗じて得た額に減額されて支給されます。
なお、「賃金日額」とは、離職される直前の6か月間に支払われた賃金の合計金額を、180で割った金額です。
③給付が先送りとなるケース
事業主に雇用され、1日の労働時間が4時間以上のアルバイトを行った場合は、就労したことになります。このようなアルバイトを行った日は、失業保険の基本手当の給付を受けられません。
したがって、失業保険の基本手当の給付を受けられる日数は減らずに、基本手当の給付が先送りになります。失業保険受給中の受給者が行うアルバイトとしては、基本手当が減額されるアルバイトよりも、給付が先送りとなるアルバイトの方が、より有利であるようです。但し、定職に就いたと判断されないように短期間のアルバイトにとどめましょう。
基本手当が減額されるアルバイトを行うよりも、そのアルバイトを行う時間を求職活動に使うことのほうが有意義ではないでしょうか。
失業保険・アルバイト申告手続きの方法
失業保険の基本手当は、失業の状態にあるからこそ受給可能な手当です。これに対して、アルバイトは、一定の収入を得るために行うものです。したがって、一見すると、失業保険の基本手当の受給と、アルバイトにより収入を得ることとは、相反する行為にも見えます。
したがって、失業保険の基本手当を受給する際の手続きにおいて、アルバイトの申告手続きをどのような方法で行うかが気になります。
申告認定日に書類申告
失業保険の基本手当を受給するためには、原則として4週間(28日)に1回の指定された日(失業の認定日)に、ハローワークに出頭して、失業の状態であることを失業認定申告書で申告する手続きが必要になります。失業保険受給中にアルバイトを行った場合は、失業認定申告書の中の所定の記載箇所に記載して申告する手続きを行います。
失業認定申告書には、2か月分のカレンダーが記載されていますので、事業主に雇用され1日の労働時間が4時間以上のアルバイトを行った日に〇印を記入します。また、原則として1日の労働時間が4時間未満のアルバイトを行った日に×印を記入します。
さらに、1日の労働時間が4時間未満のアルバイトにより収入を得た場合、収入のあった日とその額と、その収入が何日分のものであるかを記入します。
必ず偽りなく書く事
失業認定申告書には、1日の労働時間が4時間以上のアルバイトを行った日、1日の労働時間が4時間未満のアルバイトを行った日、1日の労働時間が4時間未満のアルバイトにより収入を得た場合には、収入のあった日とその額と、その収入が何日分のものであるかについて、それらの全てを、必ず偽りなく書くことが必要です。
また、失業認定申告書には、失業の認定を受けようとする期間中の求職活動についても必ず偽りなく書くことが必要です。具体的には、求職活動の方法や、利用した機関の名称、求職活動の内容等も記載します。
なお、アルバイトをやり過ぎて求職活動を忘れてしまわないようにしましょう。特に、求職活動の実績がないにもかかわらず、求職活動の実績について失業認定申告書に虚偽の申告をするようなことがないようにしましょう。
失業保険・アルバイト申告の必要性
失業保険受給中において行ったアルバイトは、失業認定申告書で申告する手続きが必要になります。しかし、失業保険受給中の受給者が申告しなければ、ハローワークの担当者は、アルバイトを行った事実を知ることはできないはずです。それでは、アルバイトを行ったにもかかわらず、申告しなかった場合は、どのようになるのでしょうか。
申告しない場合罰則を受ける
アルバイトを行ったにもかかわらず、失業認定申告書において申告する手続きをしなかった場合は、不正受給となり、罰則を受けることになります。不正受給とは、失業給付の支給を受けることができないにもかかわらず、偽りまたは不正な手段により失業給付の支給を受け、または受けようとすることをいいます。
失業給付の支給を「受けようとすること」もいいますので、現実に支給を受けたか否かを問いません。したがって、現実に失業給付の支給を受けていない場合でも「不正受給」に該当することに注意しましょう。
次に記載の罰則を受けますので、失業認定申告書での申告手続きの前に、アルバイトを行った日付、時間、アルバイトの条件等を正確に確認することが必要です。そして、失業認定申告書での申告手続きの際には、失業認定申告書への記載内容には充分に注意しましょう。
①支給停止
もし「不正受給」に該当する行為を行った場合、「支給停止」になります。「支給停止」になると、その日以後の失業給付の支給を受ける権利がなくなります。したがって、失業給付の支給時期の初期であればあるほど、本来受けることのできた失業給付が受けられなくなり、「支給停止」になった場合の損失はより大きなものとなります。
例えば、減額対象となるアルバイトを行った場合に、その減額対象となるアルバイトを申告しなかったり、収入の額を低く偽って減額対象とならないようなアルバイトとして申告すると、「不正受給」に該当し「支給停止」になると考えられます。
②返還命令
また、支給停止の他に、「返還命令」受けます。「返還命令」受けると、不正に受給した金額は、全額を返還しなければなりません。
例えば、1日の労働時間が4時間以上のアルバイトを3日間行って、失業認定申告書においてそのように申告する手続きをした場合は、1日の労働時間が4時間以上のアルバイトを行った3日分の金額(基本手当日額)が減額されて失業給付の支給を受けることになります。
これに対して、失業認定申告書において本来申告するべき手続きをしなかった場合、1日の労働時間が4時間以上のアルバイトを行った3日分の金額は減額されずに不正に失業給付の支給を受けることになります。この時の減額されなかった3日分の差額が、不正に受給した金額になります。減額されずに不正に受給した金額は、全額を返還しなければなりません。
③納付命令
さらに、返還命令の他に、「納付命令」受けることがあります。「納付命令」を受けると、不正に受給した金額を全額返還するだけではなく、不正に受給した金額の2倍以下(最大2倍)に相当する金額をさらに納付しなければなりません。
例えば、1日の労働時間が4時間以上のアルバイトを3日間行ったにもかかわらず、失業認定申告書において本来申告するべき手続きをせずに、3日分の金額(基本手当日額)を減額されずに不正に受給した場合、不正に受給した3日分の金額の返還に加えて、さらに6日分以下(最大6日分)の金額を納付しなければなりません。
失業保険・支給停止の実例
失業保険の基本手当を受給するためには、原則として4週間(28日)に1回の指定された日(失業の認定日)に、ハローワークに出頭して、失業の状態であることを失業認定申告書で申告する手続きが必要になります。しかし、失業認定申告書において正しく申告する手続きをしなかった場合は、不正受給となり支給停止になります。支給停止の実例は次のとおりです。
ハローワークに申告忘れ
最もありがちなことは、アルバイト等を行ったにもかかわらず、そのことをハローワークに申告することを忘れてしまう場合です。失業保険受給中にアルバイトを行った場合は、失業認定申告書の中の所定の記載箇所に記載して申告する手続きが必要です。
例えば、就職や就労(アルバイト、パートタイマー、派遣就業、試用期間、研修期間、日雇等を含む。) したにもかかわらず、失業認定申告書にその事実を記載せずに、偽りの申告を行った場合を挙げることができます。
また、自営や請負により事業を始めているにもかかわらず、失業認定申告書にその事実を記載せずに、 偽りの申告を行った場合を挙げることができます。また、内職や手伝いをした事実及びその収入を失業認定申告書に記載せずに、 偽りの申告を行った場合を挙げることができます。
失業保険・おすすめのアルバイト方法
失業保険受給中は、求職活動に専念して、1日も早く希望の再就職先を見つけることが第一です。しかし、アルバイトの条件によっては、アルバイトをすることを考慮してもよい場合も考えられます。そのようなのアルバイトの方法があるとすれば、どのような方法や条件のアルバイトなのでしょうか。おすすめのアルバイト方法について紹介します。
①週20時間未満の高時給アルバイト
一週間の所定労働時間が20時間以上であり、31日以上の雇用見込みがある場合には、雇用保険の被保険者となります。その結果、ハローワークの担当者にもよりますが、定職に就いたと判断される場合があります。したがって、一週間の所定労働時間が20時間未満のアルバイト、特に高時給アルバイトがおすすめです。
②短期アルバイトを複数する
一週間の所定労働時間が20時間以上であっても、31日以上の雇用見込みがない場合には、雇用保険の被保険者となりません。その結果、定職に就いたと判断されにくいです。したがって、雇用される事業主を変えて31日未満の(例えば、3日間で終了する)短期のアルバイトを複数するというアルバイト方法がおすすめです。
③1日4時間以上のアルバイト
事業主に雇用され、1日の労働時間が4時間以上のアルバイトを行った日は、基本手当の給付を受けられません。その結果、基本手当の給付を受けられる日数を減らすことなく、基本手当の給付を先送りにすることができる、という利点があります。したがって、この点において、1日の労働時間が4時間以上のアルバイトはおすすめです。
失業保険受給中の求職活動
そもそも、失業保険の基本手当を受給するためには、失業の認定日にハローワークに出頭して、失業の状態であることを失業認定申告書で申告する手続きが必要になります。そして、失業保険の基本手当を受給しながらアルバイトを行う際には、アルバイトの申告だけでなく、求職活動を行う必要があるということに注意しましょう。
アルバイトに熱心になり過ぎて、求職活動をつい忘れてしまい、失業の状態であることを認定されずに失業保険を受給できなかった、ということにならないように注意しましょう。
特に、求職活動の実績がないにもかかわらず、失業認定申告書に求職活動の実績について虚偽の申告をすることは厳禁です。
求職活動実績とは
「失業の状態」であると認定されるための条件の一つとして、積極的に求職活動を行っている状態にあることという条件があります。失業保険を受給するためには、客観的に確認することができる仕事探しの実績が必要であり、このことを「求職活動実績」といいます。失業認定申告書には、原則として最低2回以上の「求職活動実績」を記載する必要があります。
また、自己都合等で退職した場合、待期期間満了後3か月間の給付制限期間は基本手当が支給されませんが、給付制限期間とその直後の認定対象期間をあわせた期間については、原則として最低3回以上の求職活動実績が必要となります。
求職活動実績の具体例
求職活動実績の具体例としては、「求人への応募」、「ハローワーク等の職業相談、職業紹介等」、「ハローワーク等の各種講習、セミナーの受講」、「許可や届け出のある民間機関(民間職業紹介事業所、労働者派遣事務所)が行う職業相談、職業紹介等」、「許可や届け出のある民間機関が行う求職活動方法等を指導するセミナー等の受講」等があります。
なお、求職活動実績に該当するかどうかはっきりしない場合は、失業認定日よりも前に、予めハローワークで確認しておくことがおすすめです。
新聞の求人欄の閲覧、求人情報誌の閲覧、インターネットの求人情報の閲覧、知人への紹介依頼等は、求職活動実績には該当しませんので、注意しましょう。
失業保険受給中のアルバイトは必ず担当員に確認しよう
失業保険受給中にアルバイトを行う場合は、不正受給にならないようにアルバイトをする前に、アルバイトの時間等のアルバイト条件をハローワークの担当員に予め確認した上で、有利な条件のアルバイトをしましょう。有利な条件のアルバイトもしながら求職活動をして、自分に合った素敵な再就職先を見つけましょう。