「奥ゆかしい」の意味
昔はかなり良く使われていたのに、昨今ではあまり使われなくなった美しい日本語の中に「奥ゆかしい」という言葉があります。「あの人は奥ゆかしい」などといった使い方がされる「奥ゆかしい」という言葉ですが、その意味をちゃんと理解しているという人は意外に少ないです。
「奥ゆかしい」と言われると何となく意味はわかるような気がしても、きちんと説明することは難しい「奥ゆかしい」という言葉の意味からご紹介しましょう。
意味①慎み深く上品で心ひかれる
「奥ゆかしい」の意味の一つ目は、慎み深く上品で心ひかれるという意味です。「奥ゆかしい」という表現は、でしゃばりでずうずうしい人に対して使われることはありません。「奥ゆかしい」は他の人々より一歩下がっているけれど、品があるため心ひかれる魅力があるということです。
「奥ゆかしい」というと「おとなしい人」を想像しがちですが、「奥ゆかしい」と「おとなしい」とは少し違います。「おとなしい人」は目立たず落ち着いた人ですが、「奥ゆかしい」人は人より一歩下がっていても目立たない訳ではありません。
「奥ゆかしい」人は「心ひかれる」人なので、「おとなしい人」と違って人目を引く人であると言えます。
意味②こまやかな心配りが見えて慕わしい
「奥ゆかしい」の意味の二つ目は、こまやかな心配りが見えて慕わしいという意味です。他の人々から一歩下がっているけれど、さり気なく他人に対してこまやかな心配りができる人は人から慕われます。「奥ゆかしい」人は、そういったこまやかな心配りができて人から慕われるような人であると言えます。
「奥ゆかしい」人は人目に立たない所でさり気なくこまやかな気配りをしますが、その謙虚さゆえに好かれ、賞賛されます。このように「こまやかな気配りが見えて慕わしい」という言葉が当てはまる人を「奥ゆかしい」人と言います。
「奥ゆかしい」の由来
「奥ゆかしい」の意味をご紹介しましたが、「奥ゆかしい」という言い回しは現代の日本語にはない言い回しなので、その由来も気になるという人もいるでしょう。特に「ゆかしい」という表現は古語的で、普段の生活では使われない言葉です。「奥ゆかしい」の由来についてもご紹介しましょう。
「ゆかしい」は行きたい
「奥ゆかしい」の「ゆかしい」というのは、平安時代などに使われていた古語から来ています。「ゆかしい」は漢字にすると「行(ゆ)かしい」になります。つまり「ゆかしい」は「行く」という意味から来る言葉だということです。「行く(ゆく)」が「行(ゆ)かしい」になると「行きたい」という意味になります。
奥まで見に行きたい感情
「行きたい」という意味の「ゆかしい」に「奥」がつくと、「奥に行きたい」という意味になります。「奥ゆかしい」と評される人は、他の人達より一歩下がっているため、「その人の奥まで見に行きたい」といった感情を表す意味になります。そういった意味から「心ひかれる」や「慕わしい」が「奥ゆかしい」の意味の中に入るようになりました。
「奥ゆかしい」の類義語
次に「奥ゆかしい」の類義語をご紹介していきます。「奥ゆかしい」には「慎み深く上品で心ひかれる」という意味と「こまやかな心配りが見えて慕わしい」という意味がありますが、それらは外見的なものと性格的なものの両方を意味します。派手な美人などではなくても、慎み深く上品な人は「奥ゆかしい」と言われます。
所作が美しい人や心がけが美しい人など、「奥ゆかしい」と言われるには様々な条件があります。そのため類義語も意外にたくさんあてはまります。そんな「奥ゆかしい」の類義語を、意味別にご紹介しましょう。
動き・スタイル・姿が美しい意味
「奥ゆかしい」の意味、「慎み深く上品で心ひかれる」の中の「慎み深く上品」という部分は、動きやスタイルなどに品があることも示しています。姿勢が良く立ち姿が美しい人も、育ちの良さや上品さが感じられるため「奥ゆかしい」と言われます。まずは動きやスタイルや姿が美しいという意味での「奥ゆかしい」の類義語をご紹介します。
淑やか
動きやスタイルや姿が美しいという意味での「奥ゆかしい」の類義語の一つ目は、「淑やか」です。「淑やか」という言葉を見ても読み方がわからないという人もいるでしょう。「淑やか」は「しとやか」と読みます。これに「お」をつければ「おしとやか」という、良く知られる言葉になります。
「おしとやか」というのは、話し方や態度などが控えめで上品であるという意味なので、「奥ゆかしい」の類義語であると言うことができます。
楚々たる
動きやスタイルや姿が美しいという意味での「奥ゆかしい」の類義語の二つ目は、「楚々たる」です。「楚々たる」という言葉は使わなくても「楚々とした美人」と言えば、聞いたことがあるという人が多いでしょう。「楚々たる」の意味は、「清らかで美しいさま」「可憐で美しいさま」といった意味になります。
「清らか」も「可憐」も控えめな美しさを表しますので、「楚々たる」は「奥ゆかしい」の類義語であると言えます。
品行・外見は性的慣行が不快でない意味
「奥ゆかしい」の類義語には、動きやスタイルや姿が美しいという意味での「奥ゆかしい」の類義語以外にもまだ他の意味の類義語があります。それは「品行や外見は性的慣行が不快ではない」といった意味です。何やら小難しい表現ですが、要は「行いに品があり性格的に日々行っていることが不快ではない」という意味です。
これでもまだ小難しい表現ですが、さらに簡単に言うと「品があって良い感じ」という意味になります。それでは、「品行や外見は性的慣行が不快ではない」といった意味での「奥ゆかしい」の類義語をご紹介します。
慎ましやか
品行や外見は性的慣行が不快ではないという意味での「奥ゆかしい」の類義語の一つ目は、「慎ましやか」です。「慎ましやか」の意味は「遠慮深くおしとやかなさま」「いかにも慎ましい様子」といった意味ですので、「奥ゆかしい」の「慎み深い」の意味に当てはまり、「奥ゆかしい」の類義語であると言うことができます。
慎み深い
品行や外見は性的慣行が不快ではないという意味での「奥ゆかしい」の類義語の二つ目は、「慎み深い」です。「奥ゆかしい」の意味の中に「慎み深く上品で心ひかれる」というものがありますので、「慎み深い」は「奥ゆかしい」の意味に重なります。なので「慎み深い」は「奥ゆかしい」の類義語であると言えます。
感覚を活気づけ知的情緒的称賛を喚起する意味
「奥ゆかしい」の類義語はまだ他にもあります。「感覚を活気づけ知的情緒的称賛を喚起する」という意味での「奥ゆかしい」の類義語です。「感覚を活気づけ知的情緒的称賛を喚起する」というとまた小難しい表現ですが、簡単に言うと「見て楽しめて気分が良くなれる」というような意味です。
それでは、「感覚を活気づけ知的情緒的称賛を喚起する」という意味での「奥ゆかしい」の類義語をいくつかご紹介します。
見目麗しい
「感覚を活気づけ知的情緒的称賛を喚起する」という意味での「奥ゆかしい」の類義語の一つ目は、「見目麗しい」です。「見目麗しい(みめうるわしい)」という言葉は昨今ではあまり使われませんが、「見た目が美しい」「容貌が麗しい」といった意味の言葉で、主に女性を褒める時に使われます。
「見目麗しい」と言われる人は単に顔の造作が美しいだけでなく、品のある人です。顔の造作が美しいだけで品のない人に対しては「見目麗しい」という言葉は使いません。そのため「見目麗しい」は「奥ゆかしい」の類義語であると言えます。
美々しい
「感覚を活気づけ知的情緒的称賛を喚起する」という意味での「奥ゆかしい」の類義語の二つ目は、「美々しい」です。「美々しい」の意味は「華やかで美しい」「目も眩むほど美しい」などで、途轍もなく美しいさまを表します。ですが、顔立ちが美しいというだけでは「美々しい」とは言われません。
「美々しい」と言われる人にはある種の品格も備わっています。そのため「美々しい」は「奥ゆかしい」の類義語であると言えます。
「奥ゆかしい」の対義語
それでは次は、「奥ゆかしい」の対義語をご紹介していきます。「奥ゆかしい」には「慎み深く上品で心ひかれる」という意味と「こまやかな心配りが見えて慕わしい」という意味がありますので、「奥ゆかしい」の対義語は、これらの意味とは反対の意味を持つ言葉になります。
ですが「奥ゆかしい」には「慎み深く上品で心ひかれる」「こまやかな心配りが見えて慕わしい」という、少々複雑な意味がありますので、対義語に当たる言葉は少ないです。
「慎み深く上品で心ひかれる」「こまやかな心配りが見えて慕わしい」の正反対の意味を持つ対義語というのを探すのは難しいですが、ほぼ反対の意味を持つと言える対義語をいくつかご紹介しましょう。
でしゃばり
「奥ゆかしい」の対義語の一つ目は、「でしゃばり」です。「奥ゆかしい」と言われる人は他人より一歩下がっているイメージであるのに対して、「でしゃばり」と言われる人は他人の二歩も三歩も前に出るというイメージがあります。しかも自分の勝手な考えで余計なことをしたり言ったりするため、人から嫌われこそすれ、慕われたりはしません。
「奥ゆかしい」は「慎み深く上品で心ひかれる」「こまやかな心配りが見えて慕わしい」という意味なので、人より前に出たがって人のことを考えず勝手なことをする「でしゃばり」は、人より一歩下がって慎ましい「奥ゆかしい」の対義語であると言えます。
無関心
「奥ゆかしい」の対義語の二つ目は、「無関心」です。これは「奥ゆかしい」の意味の「心ひかれる」の部分の対義語であると言えます。「無関心」は人などに対して関心を持たないという意味なので、「心ひかれる」の対義語、つまり「奥ゆかしい」の対義語であるとも言えます。
ただ、「無関心」の対義語には「奥ゆかしい」という言葉は挙げられません。「無関心」の対義語は「興味」「好き」「愛」「思いやり」「嫉妬」などの言葉で、「奥ゆかしい」という言葉は入っていません。
なので、「無関心」は「奥ゆかしい」の意味の一部、「心ひかれる」の対義語になり、完全な対義語ではありませんのでその点は注意してください。
「奥ゆかしい」の使い方と例文
ここまで「奥ゆかしい」の意味や類義語、対義語などをご紹介してきましたが、次は「奥ゆかしい」の使い方と例文をご紹介します。昨今の日本では「奥ゆかしい」という言葉はほとんど使われていません。そのため、どのような使い方をすれば良いのか迷ってしまう人もいるでしょう。
「奥ゆかしい」はどのような相手に使えば良いのか、どういった場面で使えば良いのかなど「奥ゆかしい」の使い方を、例文を使ってご紹介しましょう。
あの方は奥ゆかしい人ですね
「奥ゆかしい」の使い方の例文一つ目は、「あの方は奥ゆかしい人ですね」です。慎み深く上品で、何となく心ひかれるような人がいたら「あの方は奥ゆかしい人ですね」といった「奥ゆかしい」の使い方をすることができます。また、こまやかな心配りができて思わず慕いたくなるような人に対しても、同じ「奥ゆかしい」の使い方ができます。
奥ゆかしい女性のマナーを見習う
「奥ゆかしい」の使い方の例文二つ目は、「奥ゆかしい女性のマナーを見習う」です。慎み深く上品で、こまやかな心配りができる女性が周囲にいたら、是非見習いたいものです。そういった場合に「奥ゆかしい女性のマナーを見習う」というような「奥ゆかしい」の使い方ができます。
奥ゆかしい雰囲気を醸し出している
「奥ゆかしい」の使い方の例文三つ目は、「奥ゆかしい雰囲気を醸し出している」です。品があって慎み深く、こまやかな心配りができる人は「奥ゆかしい雰囲気を醸し出している」と言うことができます。先にご紹介した使い方では、「奥ゆかしい」は「人」「女性」という、人間を指す言葉に使っていますが、人間だけに使うわけではありません。
「奥ゆかしい」は人間につける使い方だけではなく「雰囲気」という言葉につける使い方もできるということを覚えておきましょう。
「奥ゆかしい」人の特徴
次に「奥ゆかしい」と言われる人とはどのような人なのか、その特徴についてもご紹介します。「奥ゆかしい」という言葉は昨今ではあまり使われなくなりましたが、それでも時折使われることがあります。それは「奥ゆかしい」という表現がふさわしい人が、今でも確かに存在しているからです。
他人から「奥ゆかしい人」だと言われる人にはどのような特徴があるのか、「奥ゆかしい人」の特徴をご紹介していきます。
身なりが上品
「奥ゆかしい」人の特徴の一つ目は、身なりが上品であるということです。現代の日本では本当にたくさんの種類の衣服がありますが、和服であれ洋服であれ「あの人は上品そうだ」と人から言われる服装もあります。華美に着飾っていないのに、落ち着いた色味やデザインの服を着ていると「身なりが上品だ」などと言われる人もいます。
人から「身なりが上品」と言われる人は「奥ゆかしい」と言われることもあるので、「奥ゆかしい」人の特徴としてまず「身なりが上品」であるということが挙げられます。
相手をたてる
「奥ゆかしい」人の特徴の二つ目は、相手をたてる人であるということです。「奥ゆかしい」の意味は「慎み深く上品で心ひかれる」「こまやかな心配りが見えて慕わしい」ですが、相手をたてる人というのは「こまやかな心配りができる人」です。なので「奥ゆかしい」人の特徴は、相手をたてる人だと言うことができます。
雰囲気・話し方が落ち着いている
「奥ゆかしい」人の特徴の三つ目は、雰囲気や話し方が落ち着いているということです。これは「奥ゆかしい」の意味の中の「慎み深く上品で心ひかれる」に当たります。慎み深い人は雰囲気や話し方が落ち着いていますので、雰囲気や話し方が落ち着いているのは「奥ゆかしい」人の特徴であると言えます。
気配りができる
「奥ゆかしい」人の特徴の四つ目は、気配りができるということです。「奥ゆかしい」の意味「こまやかな心配りが見えて慕わしい」が、気配りができるということに当たります。そのため、気配りができるというのは「奥ゆかしい」と人から言われる人の特徴であると言うことができます。
聞き上手
「奥ゆかしい」人の特徴の五つ目は、聞き上手であるということです。聞き上手であるというのは、慎み深いためこまやかな心配りができるということです。「奥ゆかしい」の意味「慎み深く」「こまやかな心配り」の両方に当てはまるため、聞き上手であるというのは「奥ゆかしい」人の特徴であると言えます。
「奥ゆかしい」の英語表現
それでは次に「奥ゆかしい」の英語表現についてご紹介します。「奥ゆかしい」というのはとても古い日本語で、さまざまな意味合いを持った言葉です。そのため、英語に訳するのは難しいと言えます。「奥ゆかしい」に完全に対応する英語はなく、それに近い意味を持つ英語を意訳することで「奥ゆかしい」と表現します。
直訳では少し違う意味になりますが、意訳すれば「奥ゆかしい」と言い換えることができる英語をいくつかご紹介しましょう。
①a refined character
「奥ゆかしい」の英語表現の一つ目は、「a refined character」です。「a refined character」という英語の中の「a refined」は「上品な」といった意味で、「character」は「性質」や「性格」を意味します。なので「a refined character」は「奥ゆかしい性質」「奥ゆかしい性格」といった意味になります。
②of a condition calm and graceful
「奥ゆかしい」の英語表現の二つ目は、「of a condition calm and graceful」です。この英語は「挙動が物静かで奥ゆかしい」といった意味になります。「calm」は「穏やかな」「静かな」といった意味を持つ英語で、「graceful」は「上品な」といった意味を持つ英語です。
先にご紹介した「a refined」も「graceful」も「上品な」という意味を持つ英語ですので、「奥ゆかしい」の英語表現には「上品な」といった意味を持つ英語が使われると言えます。
奥ゆかしい人はモテるか
「奥ゆかしい」の意味や「奥ゆかしい」と言われる人の特徴などをご紹介してきましたが、その意味も特徴もとても良い表現ばかりなので、現実に人から「奥ゆかしい」などと言われる人はどんなに素晴らしい人なのか、想像に難くないでしょう。ですが実際に「奥ゆかしい」と言われる人がいたとして、その人はモテるのか疑問を持つ人もいるでしょう。
「奥ゆかしい」と言われるような人は古風なイメージが強いため、現代の日本ではモテないのではないかという印象もあります。「奥ゆかしい」と言われる人はモテるのかどうかについてもご紹介しましょう。
奥ゆかしい人は人から好かれることが多い
「奥ゆかしい」と人から言われる人は、「奥ゆかしい」の意味通りの「慎み深く上品」「こまやかな心配りが見える」人ですので、騒々しくてでしゃばりな人達の中では目立ちません。ですが、「奥ゆかしい」人はさり気なく気を遣うことができますので、そういった「陰での気遣い」に気づく人から好かれます。
「奥ゆかしい」人の気遣いは何気なくてさり気ないため、正反対の無神経な人などには気付かれることはありません。「奥ゆかしい」人と同じように、他人の細かいところに気が付くタイプの人に気付かれて好かれますので、良い人に好かれることが多くなります。
そのため「奥ゆかしい」人は単にモテるのではなく、自分と同じように良い人や素晴らしい人からモテると言うことができます。
「奥ゆかしい」は慎み深く上品で心が引かれることを意味する
「奥ゆかしい」の意味や由来や使い方、「奥ゆかしい」人の特徴などをご紹介してきましたが如何だったでしょうか?「奥ゆかしい」は「慎み深く上品で心が引かれること」を意味するのだということをしっかりと覚えておいて、「奥ゆかしい」に当てはまる人を見たら、是非一度は「奥ゆかしい」という言葉を使ってみましょう。