メトロポリタンの意味とは?
「メトロポリタン」という意味をご存知でしょうか?ホテルの屋号だったり美術館の名前だったり、ビルの名前だったりと良く耳にする言葉ですが、意味をあまり深く考えず馴染んでいる言葉の一つです。
理由は、日本で「メトロポリタン」という言葉を使う場合は大抵、固有名詞または固有名詞の一部として受け止めらており、本来の意味を考える余地があまり無いためです。今回は「メトロポリタン」の本来の意味からご紹介いたします。
「メトロポリタン」とは「大都市の」「大都市を構成する」「本国の」「(キリスト教)首都教区の」という意味の形容詞として英語圏で使われています。
書き方「metropolitan」となり、本来英語として使われる場合、形容詞として使われる場合はmetropolitanの後に名詞が置かれ、metropolitanが名詞を修飾する役目として使われます。
メトロポリタン (metropolitan)を名詞として使用する場合は「大都会(首都)の住民、都会人」という意味の名詞になり、また、キリスト教では宗派別に「(ローマカトリック)首都大司教」「(ギリシャ正教)府主教」「(英国国教会)大主教」という意味になります。
日本では固有名詞の一部として使われる事がほとんどなこの「メトロポリタン」。この言葉にはどんなルーツが存在しているのか?以下からその語源に迫っていきます。
メトロポリタンの語源
本来は大都市圏で使われることの多い言葉「メトロポリタン」。「メトロポリタン」はどのルーツを辿って、現在の意味を成す言葉になったのでしょうか?「メトロポリタン」の語源は遥か昔、古代ギリシアまで遡ります。
古代ギリシアでは外敵から逃れるため、本来の居住地から離れ、新たな都市を建設する事がありました。これを植民都市といいます。またこの植民都市は人工密度との兼ね合いから未然に内乱を防ぐために建設されることもありました。
しかし、本来の目的は母都市の繁栄に寄与することでした。この母都市こそが「メトロポリタン」の語源、原型である「メトロポリス」になります。
この語源「メトロポリス」は上記で説明した植民都市の中でも、最初に入植した都市で、他の植民都市の起源となる存在でした。語源「メトロポリス」は「metropolis」と書く事ができ、ギリシア語でmeter(母)とpolis(都市)をつなげたmetropolis(母都市)とその言葉を分解することができます。
現存する「メトロポリス」はアレクサンドリアやマケドニアなどの古代都市が有名です。アレクサンドリアが建設されたのは紀元前332年に建設され、今から2300年以上前に存在していた事実が判明しています。
現在でも「メトロポリス」という言葉は、国や地方の経済、文化の中心としての意味かつ、各都市を結ぶ「ハブ」としての機能を持つ都市として使われており、日本では先述した「メトロポリタン」の名詞形である「大都市」として使われています。
メトロポリタンの特徴
「メトロポリタン」が「メトロポリス」の形容詞として派生された語句で、その語源は紀元前まで遡ることは把握できました。では現在は「メトロポリタン」はどのような使われ方をしているのでしょうか?
日本においては「メトロポリタン」は外来語です。英語圏と日本語圏では「メトロポリタン」に対する言葉の受け止め方が違ってきます。冒頭でも述べたように日本では固有名詞または固有名詞の一部として受け止めているケースが多いのも事実です。
「メトロポリタン」という言葉の使われ方に国内外での違いがあるのか?今回は日本と海外での「メトロポリタン」の捉え方の違いに着目しながら、その特徴に触れていきます。
中心都市の形容詞の意味で使われている
「メトロポリタン」という言葉の1つの特徴としては、「中心都市の形容詞の意味で使われている」というところがポイントです。「メトロポリタン」は先述した「メトロポリス」の形容詞としての役割があります。
世界を見渡すと「メトロポリス」と見做されている代表的な国や地方の経済、文化の中心で各都市のハブとなる都市は、「ニューヨーク」「パリ」「ロンドン」などが挙げられます。「ニューヨーク」以外の「パリ」「ロンドン」はフランス、イギリスの首都機能も有しています。
日本においても、「東京」が「メトロポリス」としての位置付けとして世界では見做されています。もっとも先述したように日本では先述したように国・地方の経済、文化かつ地方都市のハブとなるニュアンスまでは意味せず、単に「大都市」という意味で捉えられている場合が多いです。
つまり「メトロポリタン」という言葉の受け止め方は、欧米では「国・地方の経済、文化かつ地方都市のハブとなる都市である」のに対し、日本では、「大都市の」であり、意味のニュアンスの違いが生じています。
しかし国内外を問わず、「メトロポリタン」は主に形容詞として機能しています。国境を越えて「地域」「農業」「行政」「銀行」「バス」「規模」など上記都市を含むさまざまな事柄を修飾する言葉の役割を担っています。
本来の意味ではなく固有名詞の一部として使われている
「メトロポリタン」の言葉のもう1つの特徴としては、「固有名詞、またはその一部として使われている」という事です。「メトロポリタン」の固有名詞の一部としての使われ方は、日本だけではなく、欧米でも散見される特徴です。
早速どんな固有名詞の一部として使われていたかをご紹介していきます。まずは「メトロポリタンホテルズ」から。「メトロポリタンホテルズ」は東日本旅客鉄道が運営しているシティホテルで、「ホテルメトロポリタン」として東京地区以外にも日本各地で点在しております。
続いては、メトロポリタン鉄道。イギリスのロンドンで1863年から1933年まで運行されていた貨物鉄道です。世界最初の地下鉄としても有名です。
続いてはメトロポリタン美術館。アメリカ合衆国のニューヨーク市マンハッタンにある世界最大級の美術館です。セントラル・パークの東端に位置しており1870年に開館されました。
同じくアメリカ合衆国のニューヨーク市マンハッタン区にあるのはメトロポリタン歌劇場。リンカーン・センター内にある世界最大級のオペラ・ハウスです。メトロポリタン歌劇場は1883年に建てられました。
こうして海外の「メトロポリタン」を冠した固有名詞の一部をみていくと、19世紀の建造物に多くみられます。単なる偶然なのかどうかは定かではありませんが、今から100年以上も昔から固有名詞の一部として使われており、「メトロポリス」に位置付けられている都市で使われています。
メトロポリタンとコスモポリタンとの違い
次に似た言葉の違いに言及していきます。「メトロポリタン」に似た言葉に「コスモポリタン」という言葉があります。この「コスモポリタン」は「メトロポリタン」とどんな違いがあるのでしょうか?
「コスモポリタン」と「メトロポリタン」の違いを明確にする前に、まずは「コスモポリタン」の語源「コスモポリス」の意味から掘り下げていき、最終的に「メトロポリタン」と「コスモポリタン」の違いをご紹介していきます。
コスモポリスがコスモポリタンの語源
「コスモポリタン」この語源がどこから始まったものなのかは今から古代ギリシアまで遡ります。古代ギリシアは紀元前だけでも旧石器時代(紀元前30~40万年前)からヘレニズム時代(紀元前350年〜紀元前30年)に至るまで、8時代にも分かれており、その歴史の奥深さが垣間見れます。
その中でもヘレニズム時代に「コスモポリス」という言葉が使われていることが確認されています。この「コスモポリス」が「コスモポリタン」の名詞形になります。
当時ギリシアは「ポリス」という都市国家が形成されていましたが、ペロポネソス戦争によってポリスの抗争が起こり、マケドニアという他国によってポリスで敷かれていた「民主政」が衰え、アレクサンドロス大帝国建設によって、コスモポリス(世界国家)が形成させていきます。
それまでのギリシアではポリスに属する人間を価値判断の基準としてきましたが、ポリスの衰退によってポリスの枠を超えた普遍的思想が新しい価値基準として台頭することになりました。このポリスの枠組みから飛び出した普遍的で新しい生き方を考える風潮を「コスモポリタニズム」と言います。
「コスモポリタニズム」は「世界市民主義」という世界観として紀元後の世界に深い影響を与えました。その構成要素たる「コスモポリス(世界都市)」が「コスモポリタン」の語源となります。
コスモポリスとメトロポリスは意味が違う
「コスモポリス」が「世界国家」という意味として、世界市民主義である「コスモポリタニズム」の構成要素であり、その語尾変化が「コスモポリタン」という言葉になることは理解できました。
そして「コスモポリタン」は「コスモポリス」から派生した名詞形で、「国籍、民族を超えて世界的視野で行動する人」を意味します。
一方、「メトロポリタン」の語源「メトロポリス」は先述したように初めて入植した「母都市」という意味で、「メトロポリタン」はその「メトロポリス」の形容詞として派生した言葉です。
このように「メトロポリタン」「コスモポリタン」は両者とも同じく古代ギリシアがその語源の発祥地域ですが、意味に明確な違いがあることがわかります。
メトロポリタンの使い方
次は実際に「メトロポリタン」をどのように使用していくかをご紹介していきます。日本では、固有名詞の一部として使われていることは先述いたしました。
「メトロポリタン」は外来語であるので固有名詞またはその一部としての使い方ではなく、本来の意味として使うことを主眼として、英文法上可能な表現も踏まえて4つに分けて例文を上げさせていただきます。今後「メトロポリタン」のという言葉をより身近に活用する上で、ご参照いただければ幸いです。
例文①
1つ目の例文は「政治や行政」をメトロポリタンを用いた使い方があります。まずは日本でも東京が当てはまる「都議会」を「metropalitan assenbly」とその使い方が表現できます。また、「都政」を「metropolitan government」とその使い方が表現できます。
例文②
2つ目の例文はインフラを表す際に「メトロポリタン」の言葉を含む使い方になります。「metropolitan school」はそれぞれ大都市の学校という意味、「metropilitan sewer」は都市下水「metropilitan agriculture」は大都市農業という意味でそれぞれの使い方が表現できます。
例文③
3つめの例文は「メトロポリタン」が固有名詞の一部として使われていないが特定の地域や地域限定の人を指す使い方です。
まずは、「metorpolitan district」という語句があります。大都市地域という意味ですが、「metropolitan district」と頭にOsakaを加えると近畿圏という使い方になります。
また、mertopolitanをFranceに修飾させて「metropolitan France」にすると、「フランス・メトロポリテーヌ」というヨーロッパにあるフランス領土という意味になります。
例文④
4つめの例文は日本の現在から将来にわたる社会問題を「メトロポリタン」を使って表現しました。まずは、今後発生することが懸念されている「首都圏直下型地震」は「earthquakes occuring directly beneath the Tokyo Metropolitan Area」とその使い方を表現することができます。
現在地方都市の過疎化が問題となっている「東京一極集中」は「excess concentration of population and indutry in the Tokyo Metropolitan Area」とその使い方を表現することができます。
メトロポリタンの言葉を使う際の注意点
これまで、「メトロポリタン」の意味、語源、使い方、例文を中心にご紹介してきましたが、「メトロポリタン」を使うにあたって注意点をまとめておきます。今後英文などで「メトロポリタン」を見かけた際や使用する際はご留意いただければ幸いです。
メトロポリタンは意味は複数ある
「メトロポリタン」の本来の意味は、冒頭にもご紹介した通り、日本では「大都市の」という形容詞としての使い方が多いです。
ただ名詞としての機能もあり、「大都会(首都)の住民、都会人」という意味やキリスト教では宗派別に「(ローマカトリック)首都大司教」「(ギリシャ正教)府主教」「(英国国教会)大主教」という意味もあります。宗教的な意味で用いることは限定的ではありますが、使用の際はご注意ください。
メトロポリタンは「大都市の」という意味
「メトロポリタン」は日本ではその言葉の響きから、あまり意味を考えず、きらびやかなニュアンスで捉えられている節がありますが、実は由緒正しいルーツを持った言葉です。
「メトロポリタン」は似た響きを持つ「コスモポリタン」とも語源の発祥地は同じでも意味は違いますので、今回の記事を機にご留意いただければ幸いです。