「お願いしたく存じます」の意味
日本語の敬語は尊敬語、謙譲語、丁寧語と3種類あり、使い方が難しい場合が多々あります。これからご説明していく「お願いしたく存じます」という依頼の表現も、使い方や意味をきちんと理解していきましょう。
同僚や先輩などの関係で物事をお願いする場合は「お願い致します」の一言で済む場合もありますが、ビジネス上で目上の相手や大事なクライアントに使う言葉としては相応しくありません。
この記事では「お願いしたく存じます」の意味や言い換えをわかりやすく解説し、実際にビジネス上で自然に使える具体的な例文を挙げていきますので、ぜひ参考になさってください。
願望と謙譲語が混じっている
「お願いしたく存じます」という表現のうち「存じます」は、「思います」という意味の謙譲語です。
「したい」という「願望の動詞」と組み合わせることで「私はあなたに○○をお願いしたいと思います」という意味となります。
謙譲語となりますので、自分をへりくだり相手を敬う使い方であり目上の相手へ使える丁寧な表現です。そのため、自分のお願いによって相手の負担になることへの気遣いを伝えることができます。
「お願いしたく存じます」の使い方
改めて「お願いしたく存じます」は、一体どういった場合で使用することが適切な言葉なのでしょうか?日常生活で使用するには堅苦しく聞こえ、口に出す機会は少ないと思います。
しかし、ビジネスの場では「お願いいたします」と同様に目上の相手へ頻繁に使うことができる表現です。
「お願いしたく存じます」を使いこなせれば仕事にも良い影響がでやすくなりますので、積極的に使うようにしましょう。
上司や目上の相手に使用
繰り返しになりますが「お願いしたく存じます」は、上司を始めビジネス上のクライアント、お客様など目上の相手に使う敬語の表現です。
目上の相手に何かを依頼する際に「お願いしたく存じます」と自分をへりくだり表現することで、一方的にならず控えめな印象になります。
また、「お願いいたします」を使用するよりも相手の意思を尊重している意味が伝わりますので、目上の相手に使うのに相応しい大変丁寧な表現でしょう。
お願いしたく存じますは敬語として正しい
「お願いしたく存じます」は、「お」=「謙譲語」、「願い」=「相手に希望を伝える動詞」、「したく」=「願望を現す助動詞」、「存じ」=「思う、考えるの謙譲語」、「ます」=「丁寧語」と分解できます。
「お願いしたいと思います」を謙譲語にした表現なので、失礼のない正しい敬語です。また「お願いしたく存じます」は丁寧なだけではなく、相手を気遣う意味もあるので目上の方に使用して問題ありません。
「お願いしたく存じます」の例文
では、具体的な場面での「お願いしたく存じます」の使い方を、ビジネス上のシーン上でよく使う例文でご紹介いたします。
基本を身に着ければ応用できるようになりますので、どういった状況で使用すれば良いのかを例文を通して学んでいきましょう。
「お願いしたく存じます」をスムーズに使えるようになると、ビジネスマンとしての自信と意識が高まります。例文は今すぐ使えるものですので、是非マスターしてください。
急かした印象を与えないための例文
「お願いしたく存じます」は主に口頭よりビジネスメールにおいて使いやすい言葉です。そのため、「せかしている印象」を除外するには「お願いしたく存じます」の前に、相手への都合に対する気遣いの言葉をいれると良いでしょう。
ビジネスメールで使える例文としては「ご都合の良い折にご返信をお願いしたく存じます」「お手すきの際にご確認をお願いしたく存じます」「お時間がございましたらご連絡をお願いしたく存じます」と言った使い方です。
相手の都合を気遣った上で返信を依頼することにも成功しています。「ご都合の良い折に」「お手すきの際に」「お時間がございましたら」は他の場面でも応用が聞くクッション言葉です。気遣いの言葉のバリエーションも一緒に増やすことが大事です。
多忙な相手を気遣うための例文
多忙な相手への気遣いを意味する言葉に、ちょうど良いフレーズがあります。「お忙しいところ恐縮ではございますが」というフレーズで、相手を気遣いつつも逆にこちらのお願いの度合いが高いことを匂わすことができます。
ビジネスメールで使える例文としては「お忙しいところ恐縮ではございますが、ご対応のほどお願いしたく存じます」と言った形が自然でしょう。
より改まった印象を出したい場合は「ご多忙のところ恐れ入りますが」と言い換えても良いでしょう。こちらの熱意が伝わる表現なので、少々強めの依頼の時にも使えます。
理解を求めるための例文
相手に理解を求めたい場合の使い方として、2種類のケースを例文で紹介いたします。まず1つ目は、相手の質問に対して自社のルールでは対応出来ないことを伝える際の使い方です。
この場合の例文としては、相手から「メールで対応してほしい」と言われた時の受け答えを想定しています。「弊社では、メールではなく電話でのお問い合わせをお願いしたく存じます」と言った形です。
2つ目は、イレギュラーな事情を伝える必要がある際の使い方です。何か起きた時に原因や現状などを伝え、最後に「ご理解賜りますよう、お願いしたく存じます」と付け加える形で使用します。
「大変ご不便をお掛け致しますが、どうかご理解いただきたく存じます」などとクッション言葉の「どうか」をいれてみると謝罪の意味も込められます。このフレーズをメールの最後に加えることによって、文章が引き締まります。
「お願いしたく存じます」の言い換え表現
「お願いしたく存じます」を自然に使えるようになったら、もう一歩踏み込んで他の表現への言い換えにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。時と場合によってより相応しい敬語を使いこなせると社会人として深みが出ます。
それでは、同じ内容を依頼する時に「お願いしたく存じます」の言い換えとしてどんな表現があるのでしょうか。それぞれの表現のニュアンスの違いを学び、これからのビジネスシーンに活かしていきましょう。
言い換え①お願い申し上げます
「お願い申し上げます」は、口頭ではなくビジネス上のメールで使いやすい表現です。敬語としては、接頭語の「お」と「言う」の謙譲語「申す」と、2つ謙譲語が入っており「二重敬語」です。
しかし、一般的にな広く使われているため敬語として使用しても自然であり、問題ありません。寧ろよりフォーマルな印象が与えられて積極的に使うことができます。
例文としては「何卒ご愛護のほど宜しくお願い申し上げます」といった、強い願いを意味する「何卒」とセットで使うことも多い表現です。
「いただきますようお願い申し上げます」という表現もよく使われています。例文としては「先日お送り致いたしました説明書をご一読いただきますようお願い申し上げます。」といった形です。
さらに、「宜しく」とセットにした場合は、年賀状などで「本年もよろしくお願い申し上げます」といった挨拶の意味でも使えます。
口頭でも「今後とも宜しくお願い申し上げます」といったようにどちらかというと気軽に使える表現です。
言い換え②いただければ幸いです
「いただければ幸いです」という言い換えは、「もらう」の謙譲語である「いただく」を使用するとともに、「幸いです」という相手への感謝の気持ちが入っており、より丁寧で好感度が高い表現です。
口語でしたら「してくれると嬉しいです」となり、「お願いしたく存じます」より柔らかく丁寧な印象の言い換えで、相手の承諾を得やすい表現とも言えます。
ただし、同じ内容を伝えるとしても「連絡をお願いしたく存じます」を言い換えて「連絡していただければ幸いです」とした場合、言い方がソフトなだけに「連絡してもしなくても良い」と言った意味に伝わりかねません。
そのため、必ずしてほしい依頼の場合は「お願いしたく存じます」の方が適切です。また、どうしても「していただければ幸いです」を使用したい場合は、「○月○日までに」といった期限をしっかり明記するといいでしょう。
言い換え③お願いしたいのですがいかがでしょうか
「お願いしたいのですが、いかがでしょうか?」という言い換えは、ビジネスメールだけではなく口頭でも自然な表現です。疑問形ですので、相手の意思を尊重し、決定権を相手に委ねています。
また、疑問形は相手の都合を気遣いつつも、返答が必要な時に相応しい使い方でもあります。ただし、メールですと少々長く感じますので、使用するならば1回でビシッと決める方がよいでしょう。
この「いかがでしょうか?」の部分も言い換えて「宜しいでしょうか?」を使用する場合もあります。ただし「宜しいでしょうか?」の場合は「いいですか?」の謙譲語です。
そのため「承認」を求める意味合いが強くなりますの、相手の意見を訪ねているのでしたらやはり「いかがでしょうか?」の方が適切です。
例文としては「○月○日までにお返事をお願いしたいのですがいかがでしょうか?」といった使い方です。ただし、相手がyes/noで答えられる内容は「宜しいでしょうか?」の方がすっきりします。
「部長にはお客様案内係をお願いしたいのですが宜しいでしょうか?」といった使い方です。こういった場合に部長の回答はyes/noに絞られてスムーズに進みます。
言い換え④お願いいたします
「お願いいたします」という表現は、一般的に口語でもビジネスメールでもよく使われる表現です。敬語としては「お」と「いたす」が謙譲語ですので、二重敬語となりますが一般的に広く使われているので使用して問題はありません。
例文としては「何卒宜しくお願いいたします」「引き続きご指導のほど宜しくお願いいたします」や「お手数をおかけしますが、どうぞお願いいたします」です。
「お願いいたします」単体で使うのではなく「宜しく」や「どうぞ」などという丁寧な言葉とセットでの使い方が一般的です。また、目上の相手だけではなく、広く同僚など対等な相手に使っても自然です。
「◯◯したく存じます」を使った言い換え表現
既にご説明いたしましたが、「○○したく存じます」は「したいと思う」という意味の謙譲語です。「お願い」がつくと依頼の表現になりますが、自分の考えや伝えたい言葉を表現したい時に「存じます」が使えると便利です。
「存じます」の適切な使い方を理解し、例文により具体的にどういった場合に使えば良いのか学習していきましょう。
頂戴したく存じます
ビジネスメールで「お時間を頂戴したく存じます」と言った表現を目にしたことはないでしょうか。「頂戴したく存じます」の「頂戴」は「もらう」の謙譲語です。
通常は上司や目上の相手から何かを物品をもらった際に「有り難く頂戴いたします」と言った使い方をします。
しかし、「頂戴したく存じます」は「もらいたいと思う」となりますので、具体的な物品を要求する際には失礼にあたりますのでまず使われることはありません。
そのため「お時間を頂戴したく存じます」といった主に「時間」に使われます。つまり「あなたの時間をもらいたい」という依頼の表現です。よくある間違いですが「名前を頂戴」することはできません。
例文としては「ご相談したいことがあるので、お時間を頂戴したく存じます」「10分ほどお時間を頂戴したく存じます」と言った形になります。「いかがでしょうか?」と組み合わせるとより丁寧な依頼になります。
いただきたく存じます
「頂戴したく存じます」に似ていますが、「いただきたく存じます」は、相手に「してほしい」という意味です。
どちらかというと相手に「してください」という依頼を丁寧に言う表現になります。ビジネスのシーンでとても使いやすい言葉です。
例文としてメール文章に「ご一報いただきたく存じます」という表現使用したり、目上の人から説明してもらう際に「ご教示いただきたく存じます」と言った形で使います。
「いただきたく存じます」は、使う側の積極性が感じられる表現ですので、熱意を伝えたい際に使用するといいでしょう。
「お願いしたく存じます」へのクッション言葉
ここまで「お願いしたく存じます」を始め、様々な依頼の表現を具体的な例文で学んできました。その際に、依頼の際は「クッション言葉」が重要なことに気づかれたかと思います。
伝えにくい内容を依頼する際や、謝罪の必要がある際のお願いはもちろん、通常の依頼でも相手に負担をかける以上は失礼のないよう丁寧に伝える必要があります。
クッション言葉は依頼の表現に使用すると、丁寧で相手に承諾を得やすいメリットがあります。また、ビジネスでよく使われるフレーズとしてもより適切に感じるでしょう。この機会にバリエーションを増やしておきましょう。
クッション言葉の例文
この記事内でもでたクッション言葉を列挙していきます。相手の都合を気遣うものとして「ご都合の良い折りに」「お手すきの際に」「お時間がございましたら」があります。
多忙の相手を気遣うものとして「お忙しいところ恐縮ではございますが」「ご多忙のところ恐れ入りますが」があります。
その外にも「お手数をおかけしますが」「もしよろしければ」「ご面倒でなければ」「差し支えなければ」なども一緒に覚えておきましょう。
相手が承諾しにくいことへ理解を求める場合は「申し訳ございませんが」「勝手ではございますが」「大変心苦しいのですが」といった謝罪の意味のクッション言葉があるといいでしょう。
また、心からお願いしたい依頼の際には「何卒」「どうぞ」「どうか」をつけた上で「よろしく」と続けると依頼内容に切実さが増し、相手にも伝わります。
「お願いしたく存じます」を意味する英語
それでは英語で「お願いしたく存じます」はどういった表現になるでしょうか。英語は日本語と異なり敬語自体はありませんので、英語のビジネス文章で使用するフレーズとして覚えておくと便利です。
また、口頭で相手に英語で依頼する際は、言葉のみならずボディランゲージも駆使すると伝わりやすくなります。英語での敬語にあたいする丁寧なフレーズと、日本人の感覚とのずれがないかを確認しましょう。
英語での使い方・例文
「お願いしたく存じます」をそのまま英語で表現すると「I would like to ask you」になります。英語の「would like to」が「したいと思っている」という意味で、つまり「したく存じます」の部分です。
英語の「ask you」が「お願いしたい」と相手に依頼する部分です。しかし、この英語表現をそのままビジネスメールで使用してしまうと、相手に失礼な印象を与える場合があります。
では、より丁寧にビジネスでも使える英語表現はどういうものがあるのでしょうか?「お願いしたく存じます」の本来の意味である「丁寧な依頼」ということを念頭においてください。
疑問形や気遣いの言葉を入れると丁寧な印象を与えるのは英語の表現でも同じです。例文としては日本語で「返信をお願いしたく存じます」という依頼を考えてみましょう。
英語の例文として「Would you please send me a reply」と、依頼を表す「please」と「疑問形」にすることで、日本語と同様英語でも相手に決定権を委ね相手を気遣う丁寧な表現となります。
また、日本語として「お願いしたく存じます」より丁寧な表現の「していただけますと幸いです」という表現を英語の例文で考えてみましょう。
「していただけますと幸いです」にあたる英語の表現として「I would appreciate it if you could」というフレーズがあります。
具体的には、英語の「appreciate it」の部分が「幸いです」という部分にあたり、「if you could」の部分が「して頂けると」にあたります。
英語の例文としては「この件に関してご検討頂ければ幸いです」にあたる「I would appreciate it if you could investigate with this matter.」という形で使用します。
「お願いしたく存じます」が使えない場面
「お願いしたく存じます」はビジネスの依頼表現として相応しい言葉ですが、どんな場合でも万能に使えるわけではなく使えないケースもあります。
最後に、「お願いしたく存じます」が使えないケースも抑えておくことで、より適切に使う足がかりにしていきましょう。
相手が同僚や後輩の場合
「お願いしたく存じます」はあくまで目上の人に使用する言葉で、ビジネスメールであっても同僚や後輩相手には使用しません。
敬語は適切に使用しないと堅苦しい印象を与え、関係性にも影響を与えます。「お願いします」あるいは「お願いいたします」ぐらいが適切でしょう。敬語はTPOが大事です。
謝罪の場合
ビジネスメールで謝罪の文章を作成する必要がある場面では、謝罪した上で今後の関係が続けてもらえるよう依頼する必要があります。
そういった場合に「したく存じます」の意味する「自分がしたいと思う」という表現は相応しくありません。
謝罪を受け入れて、今後の関係を続けるかどうかは相手の考え次第です。そういった場面では「存じます」という部分をとって「お願い致します」と簡潔伝えましょう。
例文としては「何卒ご容赦賜りますようお願い致します」と言った形が相応しいでしょう。より丁寧にするなら「お願い申し上げます」と、是非とも聞き入れてほしいという意図が込められますのでおすすめです。
強い依頼の場合
「お願いしたく存じます」は、強い依頼には適切ではありません。どうしてもその人ではないと困る場合や、なんとしてもこの日までに連絡がほしい場合ですと、上手く伝わらない場合があります。
「お願いしたく存じます」の言い換えである「お願い致します」「お願い申し上げます」を使って率直に伝える方が良いでしょう。
「お願いしたく存じます」は丁寧な頼み事に使える!
ビジネスシーンで何かを相手に依頼する際は、自分と相手との立場やお願いする内容に則した表現を心がける必要があります。
今回ご紹介した「お願いしたく存じます」は目上の方やビジネス上の取引先などに丁寧に依頼するための表現です。
依頼するにあたって自分をへりくだることで相手に敬意を払う謙譲表現により、相手も依頼を快く引き受けやすくなります。
逆に良かれと思って使っていても相応しくないケースもあるため、依頼表現の言い換えの引き出しを増やすことも大事です。この記事を最後まで読んだあなたは「お願いしたく存じます」が身についているはずです。
この調子で他の敬語やビジネス上使える表現やフレーズを覚え、ボキャブラリーを増やすことで仕事に役立てていきましょう!