「順不同」の意味
学校や式典などの多くの人が参加するオフィシャルなイベントやビジネスシーン、またテストや試験の問題文などで使われることが多いのが「順不同」という言葉です。
この「順不同」という言葉は、「順不同・敬称略」などのように人を紹介したり名簿に名前を列挙するときに目にすることが多い一方で、実際のところ「順不同」がどのような意味を持っているのか、その正しい意味や使い方がよくわからない人も少なくないようです。
「順不同」の由来
「順不同」という言葉の意味を解説する前にまずは、「順不同」の言葉の由来を見ていきましょう。「順不同」という言葉はそもそも「順序不同」に由来しており、その略語となっています。
そのため「順不同」は「順序不同」と同じ意味を持ちます。そして「順不同」の漢字それぞれに意味があります。「順不同」の「順」は「順序」を、「不同」は「揃っていないこと」をそれぞれ意味します。
「順不同」は明治時代から存在している
「順不同」の語源である「順序不同」は、明治時代に生まれた言葉だと言われています。昭和時代になると一般的にも使われるようになったようです。「不同」が「揃っていない」と言う現代ではイメージしにくい意味で使われていることからも、「順不同」は古くから使われている言葉だと言えるでしょう。
規則的な順番になっていないこと
つまりこれら「順不同」の由来をまとめると、「順不同」の意味は「物事や人に関して、順序が揃ってないこと」になります。
ここで注意したいのが、「あいうえお順」や「番号順」は「順不同」とは同じ意味ではないと言うことです。これは「順不同」における「順序」とは「物事や人についての貴賎・優劣による順序が揃っていないこと」を指しているためです。
このような意味を持つため、「順不同」は多くの人が出席するような公式な式典やイベント、また多くの人が目を通す会議の議事録などで使われることが多いようです。
「順不同」の例文
このように「順不同」は、人や物事の貴賎・優劣による規則性なく列挙するときに使われるため、人の名前などを一覧にしたり、紹介したりする際によく使われます。
具体的な表現では「順不同で紹介する」「順不同で列挙する」「順不同で一覧する」のように使われます。こうすることで、様々な規則性に関係なく並べていると言う意志を示すことができます。
「順不同」について正しく知って正しく使おう
このように「物事・人に関する貴賎・優劣の順序がない」という意味を持つ「順不同」について、具体的な使い方や類義語・対義語、英語での表現方法を、例文をまじえながら解説していきます。
様々な例文を使って解説していきますので、「順不同」の意味や使い方がよくわからない人はもちろん、「順不同」の正しい使い方を知りたい人はぜひ最後までご覧ください。
「順不同」の類義語
まずはじめに「順不同」と同じような意味を持つ類義語を解説していきます。そもそも「順不同」とは、人や物事に関して、その優劣や貴賎の順序が揃っていないことを意味する言葉でした。
このような意味をもつ「順不同」ですが、これと同じような意味をもつ類義語には「無作為」「適当」「不規則」が挙げられます。それぞれ例文と共に解説していきます。
無作為
「順不同」の類義語の一つ目は「無作為」です。「無作為」とは「作為がないこと」を意味します。
「作為」というのは「人が自分の意志で作り出すこと」を意味するため、「無作為」をよりわかりやすく言えば、「偶然に任せること」「ランダムであること」になります。
「順不同」は「貴賎や優劣による順序がない」ことを意味しているため、「意志による順序がない」ことを意味する「無作為」は、「順不同」の類義語であると言うことができます。
「無作為」の例文
「無作為」の例文として挙げられるのが「当選者を無作為に選ぶ」です。「無作為」以外にも先ほど紹介した「ランダム」と言い換えて「当選者をランダムに選ぶ」と言っても問題ないでしょう。
もちろん「無作為」を「順不同」と入れ替えて「当選者を順不同に選ぶ」と言っても差し支えがないことから、やはり「順不同」の類義語の一つは「無作為」であると言えるでしょう。
適当
「順不同」の類義語の二つ目は「適当」です。「適当」には様々な意味がありますが、「順不同」の類義語としての意味は「その場を何とかつくろう程度であること」が当てはまるでしょう。
なお「適当」のもう一つの意味は「ある状態・目的などにぴったりと合っていること」になります。テストや試験の問題文で「答えとして適当なものを選びなさい」などで使われるのは、こちらの意味の「適当」だと言えます。この意味の「適当」は「適切」と言い換えることができます。
「適当」の例文
「適当」の例文として挙げられるのが「アンケート用紙を適当に配る」です。「順不同」と入れ替えて「アンケート用紙を順不同に配る」とも言えることから、「適当」も「順不同」の類義語の一つであると言えるでしょう。
このように「適当」は「順不同」の類義語ではありますが、「適当」は「いい加減な」というややネガティブな意味をイメージさせる言葉でもあるので、「順不同」の言い換え表現として使われることはあまり多くないかもしれません。
不規則
「順不同」の類義語の三つ目は「不規則」です。不規則というと「不規則な生活リズムで体調を崩す」「不規則な食生活は身体の健康のために避けるべきである」などとして使われることも多いので、あまり良いイメージを持たない人も多いでしょう。
しかし実際のところ「不規則」の意味は「規則正しくないこと」であり、この「規則」は「順序」とも言い換えることができるので、「不規則」は「順不同」と非常に近い意味を持っていることがわかります。
「不規則」の例文
「不規則」の例文として挙げられるのが「数字を不規則に並べる」です。「順不同」と入れ替えて「数字を順不同に並べる」と言うことができます。このことからも「不規則」が「順不同」の類義語の一つであることがわかります。
このように「順不同」の類義語には「無作為」「適当」「不規則」など、「順序がないこと」を意味する言葉が挙げられることがわかります。
「無作為」「適当」「不規則」以外の類義語
ただし「無作為」「適当」「不規則」がそれぞれ持つイメージは「順不同」と異なるため、安易に「順不同」と言い換えて使うことは避けたほうが良いと言えるでしょう。
またこの三つの類義語「無作為」「適当」「不規則」以外にも「バラバラ」や「任意」なども「順不同」の類義語です。
「順不同」の対義語
「順不同」の類義語として、「順序がない」を意味する「無作為」「適当」「不規則」などが挙げられました。つまり言い換えれば、「順不同」の対義語は「順序のある」を意味する言葉になります。
そこでここでは、「順不同」の対義語である「順序立てる」「優先順位」「五十音順」を、例文と共に解説していきます。
順序立てる
「順不同」の対義語の一つ目は「順序立てる」です。これは読んで字のごとく「理解や整理がしやすいように、一定の順序に筋道を立てること」と意味します。
「順不同」が「順序がないこと」を意味するので、「順序を立てる」は正反対の意味を持つ「順不同」の対義語であると言えます。
「順序立てる」の例文
「順序立てる」は様々な場面で使われる言葉です。その例文の一つとして「順序立てて説明する」が挙げられます。「順序立てて説明する」と言う場合には、聞き手が理解できるような筋道を立てて、その筋道の順序に沿って説明します。
これを「順不同」に説明してしまうと、相手が理解しやすい話の筋道の順番をがあべこべにして説明することになります。このような説明は、聞き手にとっては非常にわかりにくい説明であると言えるでしょう。
優先順位
「順不同」の対義語の二つ目は「優先順位」です。「優先順位」はビジネスシーンや勉強するときなど、日常会話でも耳にしやすい言葉です。
「優先順位」は「複数の物事について取り組む順番をつけること」を意味します。ビジネスなどの場面では、緊急性や重要性を判断基準として取り組む順序をつけていきます。
「優先順位」の例文
「優先順位」の例文には「仕事の優先順位を決める」や「優先順位をつける」などが挙げられます。
物事について取り組む順番を決める際に使われるのが「優先順位」なので、「優先順位」は「順序のない」を意味する「順不同」の対義語であると言えます。
五十音順
「順不同」の対義語の三つ目は「五十音順」です。「五十音順」はすでに紹介した「あいうえお順」と同じ意味を持つ言葉です。
「日本語の五十音を順番通りに並べること」を意味するのが「五十音順」です。「あ」から「を」までの順番に並べる時に使うため、「順序のない」を意味する「順不同」の対義語であるとわかります。
「五十音順」の例文
「五十音順」の例文を解説していきます。「五十音順」は例えば、「五十音順に並べる」や人を紹介するときに「敬称略・五十音順」のように表記したりして使われます。この場合、「あいうえお順」の順番通りに並べることになります。そのため、「順番のない」を意味する「順不同」とは反対の意味を持つ対義語であることがわかります。
「順序立てる」「優先順位」「五十音順」以外の対義語
ここまで紹介してきた「順不同」の三つの対義語「順序立てる」「優先順位」「五十音順」からわかるように、「順番を明確にすること ・順番通りにすること」が「順不同」の対義語であると言えます。
これら以外にも、「先着順」や「年齢順」など、順番を明確にしたり、順番通りにならべたりするときに使う言葉も「順不同」の対義語になります。
「順不同」の敬称略の使い方
ここまで「順不同」の意味やその類義語・対義語とその例文について解説してきました。「順不同」は「物事や人について貴賎や優劣に順番のないこと」を表す言葉でした。
実は「順不同」は、使い方によっては相手に対するマナー違反を避けることができます。それが、「順不同・敬称略」と表記する場合です。特に役職や身分に差がある社会人にとっては知っておくべき知識であると言えます。
そこでここでは「順不同」の使い方について、社会人であれば特に知っておきたい「順不同・敬称略」の使い方を詳しく解説していきます。
敬称と敬称略とは
そもそも敬称とは、自分以外の人を読んだりする際につける「さん」や「様」などの言葉です。また役職名などもそれに当たるでしょう。
一般的には、相手の名前を発したり記載したりする際には敬称をつけることがマナーであると言えますが、多くの人を紹介したり、会議の議事録など多くの人の名前を列挙したりする際には、敬称をつけると手間がかかります。また、ビジネスシーンでは役職などの敬称がわからないことも少なくありません。
そこで「順不同・敬称略」における「敬称略」とは、こういった敬称をつけずに相手の名前を読んだり記載したりすることを意味します。
会社名を記載する際に使用
敬称と敬称略について理解したところで、「順不同・敬称略」について具体的なシーンでの使い方を説明していきます。
「順不同・敬称略」は、主にビジネスシーンや公式な式典・会合などで使われます。また人の名前以外にも、会社名を記載する際にも使われることがあります。具体的な使い方としては、会議の議事録や冠婚葬祭などに参加する際に名前を列挙する前後どちらかに「順不同・敬称略」と記載します。
「順不同・敬称略」でマナー違反を避ける
一般的なマナーとして、人の名前や会社名を列挙する場合は、役職や身分の高い順に列挙することが好まれます。
しかし「順不同・敬称略」と記載しておくことで、「このリストは役職や身分に関係なく列挙しています」と言う意志を明示することができます。そのため役職等が高い人を名簿・リストの末尾に記載してしまっていても、マナー上、相手に対して失礼に当たることはありません。
「順不同」でもマナー違反になることがある
このように、「順不同・敬称略」と明示することでマナー違反を避けることができますが、「順不同」と記載してもマナー違反になってしまうことがあります。それはビジネスシーンにおいて、社内の人と社外の人について同時に名前を記載する場合です。
一般的に、社内の人と社外の人では、社外の人を優先することがマナーになります。そのため「順不同」と記載しても、社外の人から名前を記載するようにしましょう。
また、社内の人だけの場合にも注意が必要です。なぜなら社内の場合は、役職が明らかになっていることがほとんどだからです。このように、優先すべき役職や身分がわかっている場合には「順不同」と記載してもあくまでその順位通りに記載する方が良いでしょう。
「順不同」の例文
順序を表さない「順不同」は、「順不同・敬称略」と使うことで、オフィシャルなシーンでも相手に不快な思いをさせることなく名前を列挙することができました。
ここでは、「順不同・敬称略」以外の「順不同」の使い方をご紹介します。今回は、来賓紹介における「順不同」の例文と、テストにおける「順不同」の例文を取り上げます。
来賓紹介での例文
主に学校や公式な式典・会合では、主催者から招待された人を紹介することがあります。これが来賓紹介です。このような来賓紹介では「順不同」が使われることが多いようです。
一般的に、人間は紹介された順番に役職や身分が高いと認識する傾向があります。しかし、来賓紹介ではそのような役職や身分の順番に紹介できないこともあります。特に、来賓紹介がなされるようなイベントでは来賓者も多いのですが、このような場で来賓を紹介をする際に適切な順序を間違ってしまっては来賓者に対するマナー違反となります。
そのため、紹介する際にあらかじめ「順不同」であることを明示しておくことで、来賓者に対するマナー違反を避けることができます。
実際の使い方
来賓紹介での順不同の使い方は、「ここで本日ご臨席いただいておりますご来賓の皆様をご紹介申し上げます。なお、紹介順は順不同でございますので、ご了承願います。」のようになります。
公式なイベント等での来賓紹介では、来賓者を紹介する前に紹介が順不同であることを述べることが多いようです。
こうすることで、「紹介する順番は意図があるわけではなく、役職や身分に関係なく列挙している」ことを相手に伝えることができ、不要な誤解を避けることが可能になります。
テストでの例文
学生であれば「順不同」という言葉をテスト・試験の問題文で目にすることが多いでしょう。そこでここでは、テストや試験の際に「順不同」が使われる具体例を解説していきます。
まず前提条件として、テスト・試験の問題文で「順不同」が使われるのは、一つの問題に対して解答が二つ以上存在している場合です。
実際の使い方
テストや試験で「順不同」が使われる例文は、「本文の内容と一致するものとして最も適するものを、ア〜オから2つ選びなさい。(順不同)」といった文章になります。
このように、主に問題文に「順不同」と記載されています。また文章中に記載されるだけではなく、上記の例文のように括弧書きの中に注釈として記載されていることも少なくありません。
上記の例文で言えば、解答が「ウ・オ」だった場合、「ウ・オ」と解答しても「オ・ウ」と解答しても正答になります。このように、「順不同」という但し書きがあれば、解答の順番があいうえお順や番号順でなくても正解になります。
「順不同」の英語表現
ここまで「順不同」の意味、類義語・対義語と共にその例文や、「順不同」の具体的な使い方について解説してきました。
ここからは、「順不同」の英語表現について解説します。英語での例文も紹介しますので、日本語だけではなく英語でも「順不同」の使い方をマスターしましょう。
特別な順序ではないことを意味する
すでに見てきたように、「順不同」は「特別な順序ではない・順序がないこと」を意味しました。これを英語で表すと、"in no particular order"と表現することができます。
"particular"は英語で「特別の」を、"order"は英語で「順序」をそれぞれ意味します。"order"は"in order"と使うことで「順序通りに」と言う意味になります。
つまり、"in order"に"no"と"particular"をつけることで、「否定」と「特別の」と言う意味を付加することができ、"in no particular order"という英語で「特別の順序がない」という意味になります。
「順不同」の英語表現の使い方
「順不同」の英語表現である"in no particular order"の使い方として、以下のような英語の例文が挙げられます。
"Please list all the reasons of your decision in no particular order."この英語を日本語訳すると、「あなたの決定の全ての理由を順不同でリストアップしてください。」となります。
"in no particular order"は主に文末に記載されます。英語では、主語・動詞から書き、追加情報を文末に書くという、日本語の語順とは異なるルールがあります。
「順不同」は規則的な順番になっていないこと
今回は、様々なシーンで目にしたり耳にしたりすることの多い「順不同」という言葉について、その意味や具体的な使い方、類義語と対義語、またその英語表現を、様々な例文を通して解説してきました。
「順不同」は「物事や人について、貴賎や優劣の順序がない」ことを意味しました。主に、「順不同・敬称略」のようにビジネスシーンや公式な式典等で役職・身分に関係なく名前を列挙する場合や、テストや試験の解答する順番を指定する場合に使われました。
このように、「順不同」が使われる具体的なシーンを通して解説することで、正しい理解を深めることが可能になります。
「順不同」で相手への失礼を避けることができる
ここまで解説してきたように「順不同」とは「順番が揃っていないこと、規則的な順番になっていないこと」を意味するため、「順不同・敬称略」や来賓紹介における「順不同」の使い方は、参加者や来賓者などに対して失礼にならないためのマナーでもありました。
正しい「順不同」の意味を知って、知らずのうちに相手の気分を害したり、テストで損をしたりしないようにしましょう。