naive(ナイーブ)の日本語の意味
naive(ナイーブ)という言葉を耳にして、あなたはどんなイメージを持ちますか?ポジティブな響きのある言葉でしょうか?日々の生活の中で私たちはこの言葉を耳にし、また自分でも使っています。naive (ナイーブ)は日本語では感受性に充ちたという良い意味合いで使われている場合が多いです。
歌のタイトルに「ナイーブ〜傷つきやすい午後」があり、naive (ナイーブ)は、傷つきやすいイメージで使われています。またnaive(ナイーブ)というネーミングのボディソープもあり、この場合は植物性でナチュラルなので肌に優しい特徴からつけられています。
もともとnaive(ナイーブ)の語源はフランス語です。「naïf (ナイーフ)」の女性名詞 naïve (ナイーブ)で「生まれたままの」意味。そこから「素直な」「無邪気な」「素朴な」というポジティブな意味と「世間知らず」「鈍感」というネガティブな意味の両面を表すようになりました。
美術の世界に「naïve art(ナイーブアート)」というジャンルがあり日本語で「素朴派」と訳されています。ダブル・ワークとも言える、職業を持ちながら独学で、退職後また高齢になってから絵筆を持つなどユニークな経歴と作風のアマチュア絵画(プロフエッショッナル絵画の対語)です。
フランスのルソーやボンボワ、アメリカのグランマモーゼスなどの画家たちです。naive (ナイーブ)には「self-taught(独学の)」「primitive(原始的な、素朴な)」の意味もあり、naïve art(ナイーブアート)はそこからきています。
日本語で使われている「naive (ナイーブ)」は、語源のフランス語「naïve (ナイーブ)」のポジティブな意味合いが濃いです。英語での「naive ( ナイーブ)」は、語源のネガティブな意味合いが濃い。ここでは、この言葉について日本語・英語での意味やその使い方まで含めて紹介します。
意味①傷つきやすい
日本語のnaive(ナイーブ)の意味のひとつのグループは、「傷つきやすい(さま)」「繊細な(さま)」「素朴な(さま)」「純真な(さま)」です。naive(ナイーブ)は、日本語で使われる場合、このグループの意味でポジティブで前向きな意味合いがあります。
日本語のnaive(ナイーブ)は和製英語で、英語のnaive(ナイーブ)とは違った意味で使われています。日本語のナイーブの反対語は「不純」「大胆」「鈍感」「がさつ」ですが、英語のnaive の反対語は「習熟」「経験済み」を意味する「experienced(イクスペリエンスト)」です。
意味②冗談が通じない
日本語のnaive(ナイーブ)のもう一つのグループの意味は、「冗談が通じない」「ばか正直」といったどちらかというと融通がきかないネガテイブな意味合いで使われます。ただ日本ではnaive (ナイーブ)は、「傷つきやすい」「繊細」のポジティブなイメージで使われています。
「冗談が通じない」は、英語で「have no sense of humor」です。つまりユーモアのセンスがないことで、日本で使われているnaive(ナイーブ)はこの感受性としての「センス」があるかないかがポイントになっています。
naive(ナイーブ)の英語の意味
naive (ナイーブ)の英語の意味は、「not experienced (経験していない)」です。日本語でのnaive(ナイーブ)の言葉でイメージされる「傷つきやすい」は、英語で言うと「delicate(デリケート)」の使い方に近い意味の言葉です。
英語での意味を見てみると次のような説明になります。naive(ナイーブ)とは「(of a person or action)showing a lack of experience, wisdom, or judgement.(人または行動の)経験、知恵、または判断力のなさを示す」
または「(of a person)natural and unaffected ; innocent.(人の)自然で影響を受けない ; 無実、無垢」など、となっています。
そのため英語圏でのnaive(ナイーブ)の言葉の使い方には、とりわけ注意が必要です。オンライン英語講師のArthur Zetesさんに聞いたところ、自分に対しては、naive (ナイーブ)という言葉は、使われたくない言葉だそうです。
つまりnaive (ナイーブ)と言われるとイコール見下している意味になり上下関係の表現になるし、子どもや女性に対しても使わない方がよいネガティブなイメージの言葉だと言うことです。
日本語でなにげにポジティブな意味合いで使われているnaive (ナイーブ)は、英語のnaive (ナイーブ)では「取り扱い注意」のラベルが貼られているようです。
またBerlitz(ベルリッツ)英会話講師のKeith Jacksonさんによると、naive(ナイーブ)はほぼ80〜90パーセント、ネガティヴな言葉ということで、もちろん男性・女性・子どもに対しても使わない方がよい言葉だということです。
その理由として英語のnaive(ナイーブ)は、イコール「immature(イマチュアー): 未熟な」で、それは「young(ヤング): 幼い 」であり「ignorant(イグノーラント): 無知」を意味し、相手を見くだす意味になるからです。
もしポジティブな意味での使い方があるなら非常に親しい間柄、自分の兄弟の子ども(6才くらいの甥か姪)に対して「You are naive.(おまえはかわいいなあ)」と自分自身の6才の時に重ねて使えると。
この場合の英語のnaive (ナイーブ)は「nostalgic(ノスタルジック: 懐かしい)」「cute」「pure」「young」の意味合いが含まれていて、例外的にポジティブな意味合いがこめられています。
またnaive (ナイーブ)の英語での反対語には、「sophisticated(洗練された)」「disingenuous(不誠実)」「experienced(経験者)」「worldly(世俗的な)」があげられます。
英語のnaive (ナイーブ)の使い方と日本語で言うnaive (ナイーブ)の使い方とは、まったく違った意味合いがあります。
医学用語で使われている「treatment-naive(治療未経験の患者)」や「drug-naive(薬剤未投与の : 薬剤耐性のない)」を見ると英語でのnaive (ナイーブ)の使い方が日本語のnaive (ナイーブ)「傷つきやすい」とは違っていることがわかります
意味①だまされやすい
英語のnaive(ナイーブ)の意味の①は「だまされやすい」です。日本で言うnaive (ナイーブ)「傷つきやすい」と違い、英語でのnaive (ナイーブ)は「ものごとを知らない」「経験値をもたない」ために判断できない結果「だまされやすい」という意味を持ちます。
「だまされやすい」の英語の表現には、ほかに「gullible(ガラブル)」があります。「(他人の言うことをすぐに信じて)だまされやすい」という意味です。例文にnaive and easily deceived or tricked.(うぶで簡単にだまされたり、ごまかされたりする。)などがあげられるでしょう。
「gullible(ガラブル)」の語源は「gull(羽毛の生えそろっていない、まだ飛べない鳥)+-I ble(able)です。また「だまされやすい」には「simple(シンプル)」「credulous(クレドウラス)」の英語の言葉もあります。
また英語のnaive (ナイーブ)と同じ意味のイデオムに「wet behind the ears(耳の後ろが濡れている)」があります。これは生まれたばかりの子牛や子馬の体で、いつまでも濡れていて乾かないのが耳の裏であることから来ています。意味は「未熟な、青二才の」です。
「wet-behind-the-ears kid」と言えば、「世間知らずの未熟な子ども(新人)」のことですし、「wet-behind-the-ears lawyer」なら「世間知らずの未熟な弁護士」を表します。
意味②単純な
英語naive (ナイーブ)の意味②は「単純な」です。語源のフランス語「naïve (ナイーブ)」の「世間知らずの」「だまされやすい」からきています。例文に「It's naive of you [You are naive] to believe that.(そんなことを信じるなんて君は単純だね)」
naive(ナイーブ)の類語
次に英語のnaive (ナイーブ)の類語(synonym : シノニム)を紹介します。英語のnaive (ナイーブ)が「取り扱い注意」の言葉でしたから、この言葉の類語もそれなりに注意を払った方が良いのか、見てみましょう。
センシティブ
naive (ナイーブ)の類語に「センシテイブ(sensitive)」があります。sensitive (センシテイブ)の意味は敏感で感動しやすく(涙もろい)、周囲への気づかいもしてあげられる感性を持つです。知的・美的感受性が鋭い意味での使い方もあり、アーテイストには必要な感性と言えそうです。
また(話題・問題・品目など)について、人以外についても微妙な、問題の、要注意のなどでの意味の使い方もあります。
ところがnaive (ナイーブ)同様、類語「sensitive(センシテイブ)」は英語講師のArthurさんやKeithさんは自分に対して使われたくない言葉だと言っています。weak(弱い)という意味が含まれているからです。ちなみに「sensitive (センシテイブ)」の反対語は「tough(タフ: 強じんな)」です。
デリケート
naive (ナイーブ)の類語「デリケート(delicate)」の意味は、「繊細な」「(人・物の作りが)優美な」「(人が)(感覚)の鋭敏な」と「(人が)きゃしゃな」「かよわい、虚弱な」があります。例文に「be in delicate health(病弱である)」などがあげられます。
英語講師Arthurさんによると、日本語のnaive(ナイーブ)はこの類語のdelicate (デリケート)の意味に近いのではないかと言っています。反対語は、「indelicate(態度・言葉が雑な)」や「rough (粗い)」があげられます。
英語講師Keithさんによると、delicate (デリケート)には、「beautiful(きれいな)」イコール植物をイメージさせるような意味合いと「weak(弱さ)」の両面があり、自分に対してはnaive (ナイーブ)の言葉同様使われたくないそうです。
イノセント
naive (ナイーブ)の類語には「innocent (イノセント)」があります。innocent(イノセント)の意味は、「無実」「あどけない」「うぶ」などです。英語の説明は「free from guilt or sin(罪や嘘から自由)」など。英語講師Arthurさんは「人の置かれている状況」についての言葉ではとのことです。
naive (ナイーブ)の類語「innocent(イノセント)」の反対語には「blameworthy(とがむべき)」や「shifty(ごまかしのうまい、不正直な)」があげられます。
ピュア
naive (ナイーブ)の類語には「ピュア(pure)」もあります。「pure(ピュア)」の英語での説明では、「unmixed with any other matter(ほかの事項と混ざっていない)」や「free from dust, dirt, or taint(ホコリ、汚れ、または汚染がない)」です。
つまり「きれいな」「純粋な」「混じりけのない」という意味です。英語講師Arthurさんによると、この言葉は「状態」について言われる言葉で、悪いことが影響すれば変わる要素を持っているとのことです。この類語の反対語は「mixed(混ざった)」です。
naive(ナイーブ)の使い方と例文
naive (ナイーブ)の使い方については、日本語でのnaive (ナイーブ)は「傷つきやすい」のポジティブな意味で英語の「delicate(デリケート)」や「sensitive(センシテイブ)」に近く使えます。
けれど英語の「naive(ナイーブ)」は、「経験値がない、無知」のネガティブな意味合いになりますので、人に対して使うと見下した表現とみなされます。ビジネス・シーンなどでは、禁句と言っても良いでしょう。
naive (ナイーブ)を使った例文では、日本語のnaive (ナイーブ)では「傷つきやすい」のポジティブな意味で「彼女はナイーブな人です」と言うことができます。その女の人に「繊細な」「思いやりのある」優しい性格をイメージできるからです。
けれど英語のnaive (ナイーブ)をそのまま当てはめ「She is naive.」と言ってしまうと、全く異なったネガティブなメッセージを伝えてしまうことになります。その意味は「彼女はだまされやすく、無知です」。自分に言われたくないし、人に使いたい言葉ではありません。
「That lawyer is naive about law.(あの弁護士は法律音痴だ)」のようにもnaive (ナイーブ)は使われています。
人の性格に対して使われる
日本語での「naive (ナイーブ)」は人の性格や扱い方に対して使われます。naive(ナイーブ)に続く言葉には、ナイーブな問題、ナイーブな気持ち、ナイーブな考えは捨てろ、ナイーブな時期、ナイーブな人々、ナイーブな男性、ナイーブな性格などが続きます。
英語で使われる「naive (ナイーブ)」は人の性格以上の個人としての確立に対して使われているとも言えます。「だまされやすい人」「無知な人」という意味でなら、誰しも自分に対し言われたくありません。
naive(ナイーブ)の誤用に注意
日本語のnaive (ナイーブ)のイメージ「傷つきやすい」の意味で、naive (ナイーブ)という言葉の間違った使い方をしていませんか? 自分では「繊細な」「キメの細かい思いやり」がある人のつもりで、相手をほめるつもりで言っているのに、相手が馬鹿にされたように受けとっていたら?
英語でのnaive (ナイーブ)は特に気をつけたい言葉だと見てきましたが、日本語のnaive (ナイーブ)の感覚で使ってしまいそうな特に間違えやすい使い方について紹介します。
「ナイーブになる」の表現は間違い
「naive (ナイーブ)になる」の表現は間違いです。この場合イメージされているのは「緊張している」または「敏感になっている」状態です。
ですから「nervous(ナーバス: 神経質な、不安な)」の言葉と間違えています。「nervous(ナーバス)になる」が正しい使い方です。
nervous (ナーバス)の例文に「as nervous as a cat(そわそわして、びくびくして)」や「become nervous (神経質になる)」などがあげられます。ちなみに「nervous(ナーバス)」の反対語は「relaxed(ゆるんだ、くつろいだ)」です。
naive(ナイーブ)は傷つきやすいこと
日本語のnaive(ナイーブ)が「傷つきやすい」という「weakness (弱さ)」も含めポジティブな意味合いでの使い方がされるのは、日本の文化の独自性にあります。日本では高校生が「自分は大人だと思わない」パーセンテージが高く、「経験値がない」ことは許容もされています。
それ対して、英語圏でnaive(ナイーブ)は「経験値を持たない」意味での使い方がされていて、経験がないということは、英語圏では個人として未熟であるためネガテイブな響きを持ってしまうのです。英語圏の高校生は「自分は大人だと思う」パーセンテージが高い文化だとも言えます。