ドナドナの意味とは?
「ドナドナ」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。多くの方は、小学生の頃に歌った童謡のことを思い浮かべるのではないでしょうか。皆さんが思い浮かべたであろう「ドナドナ」は、日本を含む世界各国で歌われているインディッシュ民謡の1つです。
そんな有名な童謡である「ドナドナ」ですが、この童謡の歌詞が派生した「ドナドナ」という言葉が日常生活にも使われるようになったのはご存知でしょうか。
歌詞に出てくる仔牛のことを想像し、悲しい意味で使われていると想像する方が多いかもしれませんが、実は「ドナドナ」という言葉は、携帯電話や車、ライブなどの様々な場面で、いくつかの意味で使われている言葉なのです。
今回は、日常生活で使われる「ドナドナ」という言葉の意味や使い方、そもそも童謡「ドナドナ」の由来などについて紹介します。
ドナドナの由来
日常生活でも使われるようになった「ドナドナ」という言葉ですが、もちろんその由来は童謡の「ドナドナ」から来ています。では、言葉の由来となっている童謡「ドナドナ」とはどのような歌なのでしょうか。まずはそこから確認しましょう。
この童謡は中東欧ユダヤ文化の歌で、ユダヤ系アメリカ人ショロム・セクンダが作曲、ユダヤ系アメリカ人アーロン・ゼイトリンが作詞を手がけました。
童謡の歌詞の中でも有名な冒頭部分「ある晴れた昼下がり、市場に続く道。荷馬車がゴトゴト仔牛を乗せてゆく」と、仔牛が売られるために運ばれていく情景が歌われています。この後に続く「ドナドナ」という言葉は、仔牛を追うときの掛け声だと言われています。
ドナドナの特徴
「ドナドナ」という言葉の由来となった、童謡「ドナドナ」について簡単に紹介しました。ユダヤ文化の歌で、作詞・作曲共にユダヤ系アメリカ人の手による歌であるということで、歌詞の中に隠された意味に興味が湧いてきませんか。
その部分の詳しい解説は後ほど紹介するとして、ここではまず「ドナドナ」を言葉として使う際の意味や特徴について簡単に紹介しておきましょう。
ドナドナするの意味
「ドナドナする」には、「手放すことになって悲しい」という意味があります。例えば「愛用していたパソコンをドナドナすることになって悲しい」という様な使い方です。仔牛が売られていくときの悲しそうな瞳と「手放すことになって悲しい」という心情から来ています。
ドナドナされたの意味
「ドナドナされた」という使い方をしたときには「会場から追い出される、連れ出される」という意味での使い方をされています。例えば「隣の席の人で騒いでいた人がドナドナされていった」という様な使い方で、強制的に連れ出される様が、強制的に売られていく仔牛とリンクしています。
NG事例
「ドナドナ」を日常会話で使う際、使いどころによっては失礼になってしまうので注意しましょう。では、どの様なときに失礼な意味になってしまうのでしょうか。「ドナドナ」という言葉のNG事例を紹介します。
「〇〇支店からドナドナされてきました。よろしくお願いします。」会社の挨拶などでこの様な言い方をする方はいないでしょうが、例えばこの例文の様に左遷されたことを「ドナドナされる」と使うこともありますが、公の場で堂々と言うのはやめましょう。
日本版「ドナドナ」歌詞の意味
「ドナドナする」などの語源ともなっている日本語版「ドナドナ」について、少し詳しく紹介しておきましょう。日常会話に登場するほどメジャーな言葉の語源となるほどの歌は、どのようにして世間に広まっていったのでしょうか。
ドナドナの歌詞は「安井かずみさん」の翻訳で有名です。歌詞の意味は「市場に仔牛が売られていく様子」であり、1966年にHNK「みんなのうた」で「岸洋子さん」が歌ったことで音楽の教科書に掲載され、広く認知されるようになりました。
悲しそうな仔牛が目に浮かぶようであり、風やツバメが飛び交ったりと、全体的に悲しい雰囲気も感じられる中で、風景の爽やかや自然を感じとれるような歌詞に翻訳されています。
原曲「ドナドナ」の歌詞との違い
実は日本語訳の「ドナドナ」は原曲の歌詞と少し異なります。イディッシュ語由来の歌詞をそのまま日本語に訳すと「馬車の上に仔牛が一頭、縄につながれ横たわる」という様な意味になります。自由のない仔牛の哀れな様と自由なツバメの対比が強く描写されているのです。
ユダヤ系アメリカ人である作詞者アーロン・ツァイトリンの人生観やメッセージがより強う感じられるような歌詞になっています。
更に追い討ちをかけるように、農夫が仔牛に「なぜ鳥にならず牛に生まれたのか」と問いかける歌詞が続いているのです。この直訳が日本で広まったとすると、「ドナドナ」という言葉の語源になっていたのでしょうか。歌詞の意味は諸説ありますが、どのように感じるでしょうか。
ドナドナの使い方
ここまで「ドナドナ」という言葉の語源や意味、簡単な使い方の紹介をしてきました。先ほども少し紹介しましたが、「ドナドナ」を日常使いする際は「ドナドナされる」や「ドナドナする」といった使い方をします。
童謡「ドナドナ」を語源とする言葉なので、歌詞に由来した「連れて行かれて悲しい気持ちになる」ような、歌詞のシチュエーションとあった場面で使うのが適しています。
では、具体的にどの様な状況、どの様な意味で使われているのでしょうか。いくつかの状況での使い方を例文とともに紹介します。誤った使い方をしないよう、いずれも歌詞の言葉やイメージが語源となることに注意しながら、どの様に使うのかを考えながら確認してください。
まず「ドナドナ」という言葉は、さまざまな業界で、さまざまな意味で使われています。最も有名でわかりやすい「ドナドナ」の意味として、日本語訳での歌詞を語源とした「売られていく」という意味で使われています。
この使い方の例として携帯電話業界での使い方を紹介します。携帯電話業界では「携帯電話を売却する」という意味で使っています。買取業者やシステムの「買取情報」のことを「ドナドナ情報」と呼んだりして使っているようです。
では、携帯電話業界以外の場面で、「ドナドナ」がどのように使われているのかを紹介しましょう。語源によるイメージを膨らませながら確認してください。
例文①(車や電車での使い方)
では最初の例文です。車に関連して「ドナドナ」を使うケースです。例えば駐車違反や事故、売却や下取りに出すなどで、愛車が他の車に乗せられて運ばれていく様子を指して使うことがあります。
語源は勿論、童謡「ドナドナ」で「仔牛が荷馬車で連れられていく」ことです。「ドナられる」という使われ方もするようです。車が自力でなく他の手段で運ばれていくという意味をもっています。
なお、車だけでなく電車においても同じ意味で「ドナドナ」が使われます。廃車輛を解体する際に送るという意味です。同じく電車では、乗り過ごして意図しない遠くの駅まで行ってしまうという意味でも「ドナドナ」が使われることがあります。
例文②(IT業界)
「ドナドナ」はIT業界でも「ITドナドナ」という言葉で使われています。意味は「クライアントに常駐して働くこと」です。IT業界では、自社で作業を行うよりもクライアントに留まり、クライアント環境下で仕事をすることで効率化が図れると考えられ、常駐が広がっています。
「ITドナドナ」された社員は、クライアントのオフィスでクライアント共に働いているため、自社では正社員なのに、クライアントでは派遣社員のように周囲に気を使わなければならず精神的な負担が発生します。
自分の意志とは関係なしに、クライアントに「連れていかれる」という意味から「ITドナドナ」という言葉ができました。こちらも歌詞を由来とした意味として使われています。
例文③(ライブ)
続いてはライブやコンサートで「ドナドナ」を使う例文です。ライブ会場やコンサート会場などで、何らかのことを原因に「その会場から連行される」という意味で使われています。
不正入手したチケットでの入場、動画撮影・録音など、ルールを破った人が係員に連れ出されることを意味しています。同じ意味、使い方で「ドナられる」という言い方もします。
最近では個人オークションが身近になったことから、ライブチケットの高額転売が多発しており、ライブ会場の近くで転売を求めてファンが殺到したりすることが大きな問題になっています。
その為、転売対策が厳しくなってきており、チケットに氏名、個別の識別記号が印字されるなどで個人情報の特定が可能になるなどの対策が取られています。一部のライブでは「顔認証」も行われており、スタッフの目視など、より厳重な管理がなされるようになっています。
例文④(泣く泣く手放す)
次の例文は、業界関係なく「手放したくないものを泣く泣く手放す」という意味での「ドナドナ」です。「捨てる」という意味よりも「誰かに売る」「誰かに譲る」という意味で使われています。自分のものではなくなるという意味で、手放すときに「ドナドナ」を使います。
例文⑤(望まない場所に連れていかれる)
続いての例文では、「望まない場所に連れて行かれる」という意味で使われている「ドナドナ」を紹介します。この場合の「ドナドナ」の意味は、自らを童謡の歌詞に出てくる仔牛に例えています。童謡「ドナドナ」由来のイメージと最も近い意味で使われています。
この「望まない場所」とは、例えば「警察に連行された」「行きたくない飲み会に無理やり連れていかれた」「仕事における望まない左遷」などのシチュエーションを指しています。
例文⑥(スポーツ選手)
やや特殊な例文かもしれませんが、「スポーツでの移籍・2軍落ち」という意味で「ドナドナ」を使うことがあります。
例えばスポーツ選手が、実力の問題やチームの財政状況などの理由で、泣く泣く移籍せざるを得ないということを意味して「ドナドナ」が使われます。
移籍が伴わない場合でも、例えば1軍から2軍落ちする際にも「ドナドナ」が使われることがあります。望まない売却をされる仔牛が由来です。
ドナドナの注意点
童謡の「ドナドナ」では、市場へ売られていく可哀そうな仔牛のことを歌っています。ここで思い出していただきたいのが、この歌の作曲・作詞がともにユダヤ系アメリカ人であることです。
この歌詞は、ユダヤ人がナチスに強制収容されるときの様子を歌詞にしたのではないかという説があります。仔牛を自分たちユダヤ人に見立てた「反戦歌」の意味があるのではないかという説です。
背景には、ユダヤ教で神を表す「ヘブライ語アドナイ」「イディッシュ語ドナイ」に含まれる「ドナ」をとって「ドナドナ」という言葉を作ったのではなないかと考えられたからです。
そして、仔牛に見立てられたユダヤ人は当時、列車で連行されて大量虐殺されました。その様子を歌詞で意味したという説があるのです。作詞アーロン・ツァイトリンの家族は絶滅収容所へと送られ、亡くなっています。そしてアーロン自身も収容所で悲惨な死を遂げたのです。
東欧のキリスト教社会の中で、ユダヤ人は日常的に迫害を受けていました。この歌詞が意味する真実が何であれ、迫害と差別を受け続けたユダヤ人の絶望や、人間としての尊厳に対する強いメッセージ、そして真実を多様な方法で残そうとする意味が込められているのではないでしょうか。
ドナドナは連れていかれるという意味
「ドナドナ」の意味や使い方を紹介しました。「ドナドナ」は様々な意味で使われていますが、童謡「ドナドナ」の知名度や歌詞の認知度、意味の理解度が高いと推察されるため、急に使ったとしても意味としては伝わる場合が多いのではないでしょうか。
今回初めて「ドナドナ」という言葉の使い方や意味を知った方も、聞いただけである程度の想像はできたのではないでしょうか。本来は、意図しない場所に連れていかれて悲しい気分なのに「ドナドナされた」というと悲しい気分も和らぎます。
携帯電話や車など、生き物以外の多様なものが連れて行かれてしまう場合にもよく使われていますので、タイミングをみつけたときは是非、「ドナドナされちゃった」「ドナられた」などと使ってみてはいかがでしょうか。