諸行無常の意味とは?
日本には古くから使われている難しい言葉が沢山ありますが、「諸行無常」という言葉もその中の一つです。中学や高校の古文の授業の中で「諸行無常」という言葉を知ったという人は多いでしょう。
ですが昔ちょっと勉強しただけなので、「諸行無常」の意味など忘れてしまったという人も少なくないはずです。それほどに「諸行無常」という言葉は一般的な日常生活の中では使われない言葉だからです。
「諸行無常」という言葉の意味とはいったいどういう意味なのか、まずは「諸行無常」の意味についてご紹介しましょう。
全ては移り変わるという意味
「諸行無常」の意味の一つ目は、「全ては移り変わる」という意味です。「諸行無常」の「諸行」は「万物」という意味で「全ての物」を表し、「無常」の意味は「常ということはない」という意味になります。
「全ての物」を意味する「諸行」と「常ということはない」という意味の「無常」が合わさることで、「諸行無常」は「全ては移り変わる」という意味になります。
人間関係などの小さなものから宇宙のビッグバンなどの大きなものまで、全ての物事は日々移り変わっていくということを表しているのが「諸行無常」です。
変わらないものはないという意味
「諸行無常」の意味の二つ目は、「変わらないものはない」という意味です。「諸行無常」の一つ目の意味としてご紹介した「全ては移り変わる」という意味よりむしろ、こちらの意味の方が覚えやすいでしょう。
人間は生まれてくるときは赤ちゃんですが、少しずつ成長して大人になり、大人になったら今度は老いていきます。このように一人の人間にすら「諸行無常」という言葉は当てはまります。
また、人の気持ちというのも状況や環境などによって変わっていくことがあります。肉体だけでなく精神においても「諸行無常」という言葉を当てはめることができるということです。
諸行無常の読み方
「諸行無常」の意味についてご紹介しましたので、次は「諸行無常」の読み方についてご紹介します。日本語には読み方が難しい言葉が沢山ありますが、「諸行無常」の読み方はその中ではまだ易しい方でしょう。
日本語には普段使わないような漢字を使った言葉もたくさんありますが、「諸行無常」は普段良く使う漢字で構成されていますので、読み方も簡単です。それでは「諸行無常」の読み方についてご紹介しましょう。
諸行無常の読み方は「しょぎょうむじょう」
「諸行無常」の読み方は「しょぎょうむじょう」です。漢字の読み方には音読みと訓読みという読み方がありますが、「諸行無常」の読み方は全ての漢字を音読みする読み方になっています。
「諸行無常」の読み方がわかれば「そういえば中学の古文で聞いたような」と思い当たる人も多いでしょう。「諸行無常」の読み方は「しょぎょうむじょう」ですので覚えておきましょう。
諸行無常の由来
「諸行無常」の読み方についてご紹介しましたので、次は「諸行無常」の由来についてご紹介します。「諸行無常」という言葉は平家物語などの古文の中で使われているため、そちらが由来だと思われがちですが実は違います。
確かに学校で習う平家物語などの古文で「諸行無常」という言葉に触れる人は多いですが、平家物語などの古文の中で使われている「諸行無常」は物語の中で作られた造語ではありません。
「諸行無常」という言葉の由来とはいったいどういうものなのか、「諸行無常」の由来についてもご紹介しましょう。
物事は全て変わり続けるという意味の仏教用語が由来
「諸行無常」の由来は、「物事は全て変わり続ける」という意味の仏教用語です。仏教での「諸行無常」の「諸行」は「この世の中にあるすべての物事」は「因縁(いんねん)」によって結ばれているという意味になります。
そして「因縁」によって結ばれているこの世のすべての物事は、絶えず移り変わるというのが仏教的な考え方で、「諸行無常」はそういったことを意味する仏教用語です。
仏教では「全ての結果に原因がある」という考え方がされますが、それこそが「因縁」です。その「因縁」のために全ての物事が変わり続けることを表しているのが「諸行無常」という言葉です。
諸行無常の類語
「諸行無常」の由来についてご紹介しましたので、次は「諸行無常」の類語についてご紹介します。「諸行無常」の意味は「全ては移り変わる」という意味ですので、これに近い意味を持つ言葉が「諸行無常」の類語になります。
「全ては移り変わる」というと少し複雑な意味ですが、実はこの意味に近い意味を持つ言葉は日本語の中に結構あります。
「諸行無常」という言葉の類語にはいったいどういう言葉があるのか、「諸行無常」の類語についてご紹介しましょう。
盛者必衰
「諸行無常」の類語の一つ目は、「盛者必衰(じょうしゃひっすい)」です。「盛者必衰」の意味は「この世は無常なので、栄えている者も必ず滅びる」という意味で、「諸行無常」と共に古文の中で使われることが多い言葉です。
「盛者」の意味は「栄華を極め栄える者」という意味で、「必衰」の意味は「必ず衰える」という意味で、合わせて「栄える者も必ず衰える」という意味になります。
この二つの言葉の二つの意味に加えて「この世は無常なので」という表現が加わっていることから、「盛者必衰」は「諸行無常」の類語と言えます。
生者必滅
「諸行無常」の類語の二つ目は、「生者必滅(しょうじゃひつめつ)」です。「生者必滅」の意味は「命ある者は必ず滅びる」という意味で、変わらないものはないというニュアンスを含む言葉です。
「諸行無常」には「全ては移り変わる」という意味の他に「変わらないものはない」という意味もありますので、「生者必滅」も「諸行無常」の類語だと言えます。
ですが「生者必滅」は「命ある者」というように生き物に限定されますので、「生者必滅」を「諸行無常」の言い換えに使うことはできません。
生々流転
「諸行無常」の類語の三つ目は、「生々流転(せいせいるてん)」です。「生々流転」の意味は「全ての物は生まれては変化し、移り変わっていく」という意味です。
「生々」の意味は「次から次へと生まれてくる」という意味で「流転」は「絶えず変化し続ける」という意味で、「生々流転」はこの二つが合わさって「次から次へと生まれては変化し続ける」という意味になります。
「生々流転」も「生者必滅」に似ていますが、「生々流転」は生き物だけに限定されないため、「生者必滅」より「諸行無常」に近い意味を持つ類語だと言えます。
会者定離
「諸行無常」の類語の四つ目は、「会者定離(えしゃじょうり)」です。「会者定離」の意味は「会う者は必ず離れる」「この世で出会った者は必ず別れる運命にある」という意味です。
人間は生まれてから死ぬまでに色々な人と出会いますが、いつかは必ず別れる日が来ます。おしどり夫婦と呼ばれるほど仲の良い夫婦であっても、年を取ってどちらかが亡くなってしまえば別れることになります。
「会者定離」も「諸行無常」の類語の一つとして数えられますが、「会者定離」は主に人間関係を意味しますので、その点では「諸行無常」とは少し違うと言えます。
驕れる者久しからず
「諸行無常」の類語の五つ目は、「驕れる者久しからず(おごれるものひさしからず)」です。「驕れる者久しからず」の意味は「地位や名声や富を傘に着て偉そうにしている人は遠からず没落する」という意味です。
人間の中には地位や名声や富を持ち、それを傘に着て偉そうにしている人もいますが、そういう人は人への思いやりなどもないため、危なくなっても助けてくれる人もなく、いずれは没落してしまうということを表しています。
「驕れる者久しからず」はそういった行いの悪い人を限定にしているため「諸行無常」とは少し意味的に違いますが、「驕れる者久しからず」も「諸行無常」の類語として数えられます。
兵どもが夢の跡
「諸行無常」の類語の六つ目は、「兵どもが夢の跡(つわものどもがゆめのあと)」です。「兵どもが夢の跡」の意味は「昔武士などが栄華を競って争った場所も今は雑草が生い茂っている」という意味です。
芭蕉の俳句「夏草や兵どもが夢の跡」という俳句で有名な「兵どもが夢の跡」は「驕れる者久しからず」に近い意味を持っていますが、それよりもややもの悲しいようなニュアンスがあります。
戦国時代の合戦の跡に生い茂った雑草を見て、戦国時代の憐れさを感じた芭蕉のこの俳句には「諸行無常」の意味が含まれているため、「兵どもが夢の跡」も「諸行無常」の類語になります。
一炊の夢
「諸行無常」の類語の七つ目は、「一炊の夢(いっすいのゆめ)」です。「一炊の夢」の意味は「人の世界での繁栄は儚い」という意味で、昔の中国の逸話から来ていて、「一炊」は粟のおかゆさえ炊けないような短い間という意味です。
出世を夢見て旅立った青年が旅の宿で借りた「出世する枕」というのを頭に敷いて寝た所、自分が出世する夢を見ました。ですが目覚めてみると宿の主人が粟のおかゆを炊き上げる前で、短い間の夢の話だったということです。
この逸話では実際には夢を見ただけですが、人生は過ぎてみれば一瞬の夢のようなもので、どんどんと移り変わっていくというニュアンスがあるところから、「一炊の夢」も「諸行無常」の類語だと言えます。
諸行無常の英語表現
「諸行無常」の類語についてご紹介しましたので、次は「諸行無常」の英語表現についてご紹介します。日本語には英語に訳するのが難しい難解な言葉がたくさんあり、「諸行無常」も英語訳が難しい言葉です。
ですが意外なことに「諸行無常」に近い英語は存在していて、「諸行無常」を英語に翻訳する時に使われる英語がちゃんとあります。
「諸行無常」の英語表現にはいったいどのような英語が使われるのか、「諸行無常」の英語表現についてもご紹介しましょう。
永久ではないという意味を表すimpermanence
「諸行無常」の英語表現として「impermanence」という英語が挙げられます。「impermanence」には「永久ではない」という意味がありますので、「諸行無常」の二つ目の意味「変わらないものはない」という意味に非常に近いです。
「諸行無常」の英語表現には他にも「nothing is permanent」という英語があります。「nothing is permanent」の意味は直訳すると「永遠のものは何もない」という意味になり、「諸行無常」に極めて近い意味になります。
「諸行無常」という言葉は英語に翻訳するのは難しいですが、このような英語表現を使って「諸行無常」を英語に訳することができるということです。
諸行無常の使い方
「諸行無常」の英語表現についてご紹介しましたので、次は「諸行無常」の使い方についてご紹介します。「諸行無常」は日本の古い言葉なので現代では使うのが難しそうですが、実はそうでもありません。
「諸行無常」の意味は「全ては移り変わる」「変わらないものはない」という意味ですので、それらが当てはまる場合に「諸行無常」を使うことができます。
「諸行無常」という言葉の使い方とはいったいどういう使い方なのか、「諸行無常」の使い方の例文についてご紹介しましょう。
例文①
「諸行無常」の使い方の例文の一つ目は、「遠距離恋愛の彼女に振られ、諸行無常だと感じた」という例文です。「諸行無常」は古い日本の言葉ではありますが、実はこのような現代的な文章でも使えます。
「諸行無常」の意味は「全ては移り変わる」という意味と「変わらないものはない」という意味ですので、この例文のように「ずっと付き合い続けられると思っていた彼女に振られた」といったケースでも使うことができます。
例文②
「諸行無常」の使い方の例文の二つ目は、「子供のころからずっと書いてきた日記を読み返すと、諸行無常だなとつくづく思えた」という例文です。この例文もとても現代的ですが、こういった文章にも「諸行無常」は使えます。
子供のころから続けてきた日記を大人になって読み返すと、色々な事があったということがわかりますが、こういった場合にも「諸行無常」という言葉を使って「変わらないものはない」という心情を表すことができます。
例文③
「諸行無常」の使い方の例文の三つ目は、「会社からいきなりリストラだと言われ、諸行無常だと虚しくなった」という例文です。これもまたとても現代的な文章ですが、こういった場合にも「諸行無常」は使えます。
昨今正社員のリストラと非正規社員の増加が問題になっていますが、リストラの憂き目に遭う人は少なくありません。そういう時にも「変わらないものはない」という意味で「諸行無常」を使うことができます。
例文④
「諸行無常」の使い方の例文の四つ目は、「久しぶりに会った友達がすっかり変わっていて、諸行無常だなと思った」という例文です。この例文でも「変わらないものはない」という意味で「諸行無常」が使われています。
「諸行無常」という言葉は確かに古い言葉ではありますが、意味さえ通じれば現代的な文章にもちゃんと使えますので、「諸行無常」の使い方はそう難しくないでしょう。
諸行無常は全ては移り変わるという意味
「諸行無常」の意味や由来や類語、「諸行無常」の使い方など色々とご紹介してきましたが如何だったでしょうか。「諸行無常」は「全ては移り変わる」という意味ですので、「諸行無常」の正しい意味を理解して正しく使いましょう。