「参照」の意味とは?
ビジネスシーンでよく使う「ご参照ください」のフレーズ。意味を正しく理解していますか?「参照」とは、「照らし合わせて参考にする」という意味です。他の資料を見る、読むなどして知識を深めることを指しています。
例えばプレゼンの際などに、口頭で説明を行いながら「手元の資料をご参照ください」と、準備しておいた資料の確認を促すケースなどが分かりやすい例。
このとき重要なのが、照らし合わせる対象は「目視できるもの」であることです。例えば「父の考えを参照しました」というのは、参照の対象である「父の考え」が目に見えない・形の無いものになるのでこれは誤用となります。
何かを行いながら並行して、紙の資料やウェブページなどの目に見えるものを合わせて見てもらうことを「参照」と表現できるということです。
「参照」の由来
ここで「参照」という言葉の由来について考えてみましょう。「参照」は、「参」と「照」の二つの漢字が組み合わさってできた言葉です。
漢字の意味から読むと、「参」は「くらべあわせる」「まじわり、かかわりあう」「加わる」といった意味を持っています。
一方「照」は、「(太陽や炎が)燃えて明らかになる」「光をあてる」「てらしあわす」という意味を持ちます。
この二つを組み合わせ、「光を当て、比べ合わせることで物事を明らかにする」という意味の「参照」という言葉ができたのでしょう。
「参照」の特徴
「参照」という言葉は、ビジネスシーンで非常によく使われることが特徴です。「参照」は、それ自体特に目上の方に対して使う言葉です。この言葉を使う際はほとんど敬語で話すシーンであるということが言えるでしょう。
反対に、家族や友人と過ごす際に使う事がかなり少ないことも特徴。「ちょっと参照してみるよ」という使い方をする人はあまりいません。
また、同じビジネスシーンであっても、部下に対して「それを参照して」という使いかたをすることも少ないでしょう。「それを見ておいて」「そちらを見てください」といった、口語や丁寧語で話す場面では使わない単語であると言えます。
「参照」の類語
「参照」は、よく似た意味の言葉、類語が多いことも特徴です。「参考」「引用」「確認」等、「参照」には間違えて使いそうな類語が様々あります。
「ご参照ください」なのか、「ご参考ください」なのか、とっさの判断に困った経験はありませんか?この場合ならどちらでも、意図は相手に伝わりますが、やはり微妙に意味の違う言葉。それぞれ明確に意味を理解しておきたいところです。「参照」の類語と違いについて見ていきましょう。
類語①「参考」の意味
「参照」と非常によく似た意味で、間違えやすい類語として「参考」があります。「参考」の意味は、「何かしようとする際に資料や事例、他者の考えなどを、意思決定の手掛かりや助けにすること」。
照らし合わせる対象が「参照」より幅広く、形の無いものを引き合わせる状況に対しても使うことができます。前述の「父の考えを」という例で使う単語として、正しい言葉はこの「参考」でした。
また、場合にもよりますが「参照」よりも強制力が少ない点も特徴です。「ご参考ください」「ご参考までに」「参考にします」という言葉は、「必要があれば見ておいて(見ておく)」程度の意味合いで使用されるケースもあることにご注意ください。
類語②「引用」の意味
「参照」によく似た類語として、「引用」という言葉もあります。意味は「自分の論の説明や証明のために他者の文章や事例を引くこと」。
「参照」との違いは、「参照」が「見比べること」であるのに対し、「引用」は「引いてくること、また引いてきた文章そのもの」を指している点です。
「引用」を行う際には、著作権の侵害にならないよう、自分の文章と他者の文章の境界を区別することが大切。書籍やウェブページでも、他人の文章を借りて説明を行う場合、""で囲んだり、引用元を分かりやすく掲載してあります。何かを引用する際はマナーを守って行いましょう。
類語③「確認」の意味
「参照」の類語として、「確認」という言葉の例もあります。「確認」は、「はっきり確かめること」「そうであると認めること」という意味の単語です。
「参照」が「何かしながら比べ合わせる」という意味を持つのに対し、「確認」は「対象の(ひとつの)の事例に対してよく確かめる」という意味合いになります。
敬語での使い分けの例としては、「資料をご参照ください」では、話を聞きながら資料を見てください、という場合。「資料をご確認ください」では、資料をしっかりとよく確かめてください、という場合に使うと良いでしょう。
ビジネスシーンなど敬語を使う会話では、「ご参照ください」以上に「ご確認ください」はよく使います。「よく見ておいてください」というと少々不作法なイメージ。「確認ください」と表現することで、きちんとした言葉に聞こえます。
「ご確認ください」を敬語でより丁寧に伝える例文には、「お確かめ下さい」「ご確認のほどよろしくお願いします」「ご確認いただけますと幸いです」などの言い回しがあります。
さらに丁重な言い方になると「ご確認賜れましたら幸甚に存じます」という敬語になります。「賜る」は公式文書などでよく使用される表現です。「目上の人からいただく、もらう」という意味があります。「幸甚」は「これ以上ない幸せ」という意味。
電話や口頭での言い方は、ここまで大げさにせず「ご確認いただけますでしょうか?」「ご確認いただけますか?」のような疑問形で、さらりと言いつつ相手を気遣う敬語にすると良いでしょう。
類語④「比較」の意味
「参照」の類語の例として、「比較」という単語もあります。「比較」とは、シンプルに「くらべること」という意味。二つ以上の事柄をくらべて違いを見つける、という意味合いの言葉です。使い方の例としては、「出来の良い兄と比較される」「A社とB社の業績を比較する」などがあります。
「参照」との違いは、「何かを行いつつ見て参考にする」ことに限らず、ひろい意味で「くらべる」という意味であること。前述の例を「A社とB社の業績を参照する」と変更するなら、「その二社の業績を見ながら何かを考えたり行う」という意味になります。
類語⑤「閲覧」の意味
「参照」に意味の近い類語として、「閲覧」という言葉もあります。意味は「書物・新聞などを調べながら読む」こと。書類やウェブページなどもこの対象に含まれます。学生さんや図書館に通う方には馴染み深い言葉でしょう。
さっと確認したり目を通すというより、じっくりと読んで調べるというニュアンス。図書館などに設けられている閲覧コーナーをイメージすると分かりやすいでしょう。こういった場所に置いてある持ち出し禁止の書籍などは、「閲覧」の対象です。
「参照」との違いは、じっくり調べるのか、その場でさっと目を通すのかの違い。「資料を参照してください」では、説明などをしながら手元で資料を見てもらうということですが、「資料を閲覧してください」では、よく読んで調べてください、という意味合いになってきます。
敬語で使用する際には、「資料を閲覧してまいります」「図書室内での閲覧をお願いします」といった使い方ができます。
類語⑥「参酌」の意味
「参照」によく似た言葉では、「参酌」という類語もあります。「参酌」とは、「他のものと比べ合わせて長所を取り入れる」という意味。
「参照」との違いは、こちらは「取捨選択を行う」という意味を含んでいるところです。例文としては、「各国の意見を参酌する」「資料を参酌し、対策する」などがあります。
「参照」の使い方
プレゼンやメールなど、ビジネスシーンでよく使われる「参照」。「見てください」の代わりに使える便利な言葉ですが、敬語で使う場合がほとんどで、誤用しやすい言葉でもあります。敬語での使い方の例をいくつか見て、確認してみましょう。
例文①
まずは相手に「参照」してもらう場合の敬語の例文をご紹介します。「弊社ウェブページをご参照ください」「添付データをご参照いただけますか」「お手元の資料をご参照願います」などがあります。
「ご参照ください」は相手に対して「照らし合わせて見てください」という場合の丁寧な謙譲語。目上の方に対して幅広い使い方ができ、使用頻度がかなり高い言葉であると言えるでしょう。
例文②
次は「参照」を自分が使う場合の例文です。「例の資料を参照いたします」「貴社の事例をご参照申し上げます」「先生の論文を参照させていただきます」などになります。
「~いたす」「~させていただく」「申し上げる」などで、自分の行為(参照する)を相手に丁寧に伝えることができます。
例文③
「参照」を使った、少しラフな言い方の例文としては「あのデータを参照します」「テキストを参照してください」といった使い方があります。
比較的フラットな関係の相手に対して使用することができる言い方です。また別の言い回しの例文では、「ご参照願います」という言い方も、比較的親しい上司や同僚に使える簡潔な表現です。
例文④
「参照」をより丁寧な言い方で使用する場合の例文は、「作成したデータをご参照いただけますと幸いです」「資料をご参照賜りますと幸甚に存じます」「昨年度の事例をご参照くださいませ」などがあります。
「~していただければ幸いです」という使い方で、相手を気遣う言い方にすることができます。「幸甚」は「これ以上ない幸せ」という意味。より大きな感情として表現する言い方です。
また「くださいませ」は「ください」と終わるより丁寧で柔らかい印象を与えることができます。女性の言葉と言われることもありますが、男性が使用しても何ら問題はありません。
「参照」の英語表現
「参照」を英語で表現するとどのような言葉になるのでしょうか。「ご参照ください」はよく使う言葉なので、ぜひ英語での言い方も覚えておきたいところです。ここでは「参照」の便利な英語とその例文についてまとめました。
「参照」の英語例①「reference(レファレンス)」
「参照」を英語で言うと、「reference(レファレンス)」。「言及、参照、参考、参考文献、引用文、証明書」などの意味があります。「~に関して言及する」「~について触れる」を英語で「make reference to~」と表現することができます。
また英語で「参考書」はそのまま「a reference book」。また「a letter of reference」という英語は「推薦状」という意味にもなります。「a list of reference」なら「参考文献一覧」です。
「参照」の英語例②「refer(レファー)」
また、別の英語の例として「refer(レファー)」もあります。「refer to~」はよく使われる英語で、こちらも同じく「~について言及する」「~を参照する」などの意味。
「Please refer to it.」で「ご参照ください」という英語になります。別の英語表現としては、「please see」で「ぜひご覧ください」「見てください」という言い回しもあります。
「参照」の注意点
「参照」はよく使われる分、誤用も多い言葉です。そこも含めて広く認知されている言葉なので、間違えて使っても意味が伝わらないということはあまり無いでしょう。
しかし、社会人としてはできれば正しい意味を覚えておきたいところです。ここでは「参照」のよくある誤用と注意点についてまとめました。
「ご参照”して”ください」は間違い
紛らわしい使い方として、「ご参照”して”ください」という言い方をしている場合がありますが、これは誤用です。「ご参照する」という言葉は謙譲語であり、自分の行為に対して使う表現なので、それを相手に使用するのは正しい使い方ではありません。
この場合、正しい表現は「ご参照なさってください」となります。「する」を尊敬語に変更した「なさる」を使うことで、相手に対して使う表現に変えることができます。
相手に対して敬語で使う際の例文としては、「部長が資料をご参照なさいます」「この企画書を作るにあたり、A社のウェブページをご参照なさったそうです」などがあります。
「参照」は「照らし合わせて参考にする」という意味
「参照」とは、「何かを行いながら並行して、視認できるものを照らし合わせ参考にする」という意味です。対象となるのが「目に見えるもの」なので、他者の意見・考えなど形の無いものは含まないのがポイント。
手元の資料を見る、メールの添付データを見る、などビジネスシーンで使用頻度の高い便利な言葉です。意味の似た類語も多く、一度に頭に詰め込むと混乱してしまいそうですが、そんな時にはこの記事を「参照」して乗り切りましょう。