仰々しいの意味とは?
日常では「仰々しい」という使い方が定着していますが、仰々だけでも言葉として成立し、大げさな様子、という意味になります。
「~しい」というのは形容詞の形であり、「~である様子」というニュアンスをさらに強めた使い方になります。
現在では「仰々しい」の形で使うのが一般的であり、言動や儀式などが必要以上に大げさである様子を表す言葉として使われています。
ちなみに、仰々しいの仰は仰ぐ、仰るなどの使い方もあり、「目上の人を敬う、立てる」という意味をもっています。
仰々しいの由来
現在使われている「仰々しい」は、実は、明治時代以降に生まれた当て字であり、もともとの形ではありません。
江戸時代まで、仰々しいという言葉には「業業しい」、「凝凝しい」の漢字があてられており、意味は現代とほぼ同じであったと伝えられています。
ちなみに、江戸時代の「業業しい」には大げさな態度、という他にめずらしい、めったにない、などの意味が込められており、現代よりもさらに貴重な出来事に対して使われていたと言われています。
仰々しいの類語表現
もともとは江戸時代から使われ、明治時代以降に使い方が多少変化した「仰々しい」の類語表現について詳しく見ていきましょう。
仰々しいの類語表現と合わせてそれぞれの使い方についても具体的におさえておくことでボキャブラリーが広がりますので、ぜひとも参考になさってください。
類語①大げさ
仰々しい態度、仰々しい仕草、仰々しい演出。これらはすべて、「大げさな~」という形で置き換えることができます。
仰々しいと言えば、現代ではどちらかというとややネガティブなイメージになり、「そんな仰々しいことはもういいよ」と、呆れたように使われることが多いようです。
ちなみに、大げさは漢字で大袈裟と書き、僧侶が身につける袈裟が必要以上に大きく、身分に合わないことが語源となったという説が有力です。
類語②過剰
テレビでも最近は仰々しい演出が増えてきましたが、それらを指して「過剰な演出」と表すこともあります。仰々しいと同様、ネガティブな使い方としておさえておきましょう。
もともと、「仰々しい」にはネガティブな意味はありませんが、大げさ、過剰という言葉のイメージと結びつき、いつしかマイナスの使い方のほうが定着したのかもしれません。
類語③誇大
メディアの世界でもここ数年、仰々しい誇大広告が問題になっています。大げさなキャッチコピーで消費者にアピールし、実際には価値の低い商品を売りつける。
いつの時代も誇大広告は存在し、多少の仰々しい演出や宣伝はつきものなのかもしれませんが、今の時代、消費者を欺くようなPRは控えるべきなのでしょう。
これからは消費者も賢くなり、大げさな誇大広告をひとつひとつチェックし、悪質なものは通報していくことが一種のリテラシーなのかもしれません。
類語④トゥー・マッチ
「仰々しい」の英語表現としては、「too much」が挙げられます。日本語に直訳すると「充分すぎる」という意味になり、過剰、大げさという言葉にも置き換えられます。
基本的には料理や仕事など、可算名詞に対して使うのが正しい使い方ですが、相手の態度や演出にうんざりしている時にも使うことができ、意味の幅が広い表現であると言えます。
類語⑤ビッグ・フィッシュ
「big fish」は「大げさな嘘をつく」ことを表す英語のスラングです。釣り人が釣った魚の大きさを大げさに伝えることから、成果を実際以上に大きく見せるという意味で使われています。
また、嘘つき自身を表す表現としても一般的に使われており、どちらかというと「作り話ばかりする人」というニュアンスが込められています。
仰々しいの対義語
「仰々しい」の意味と使い方をより正しく理解し、日常生活で使いこなすためには、類語と合わせて対義語表現についておさえておくのも有効です。「仰々しい」の対義語表現について見ていきましょう。
対義語①控えめ
「仰々しい」が必要以上に形式ばった様子を表すのなら、対義語は控えめ、ということになります。控えめな人は自分を低く見せようとするため、初対面でも好印象につながりやすい面があります。
ただ、控えめな態度も度が過ぎれば嫌味となり、かえって仰々しく感じられることもありますので、そのあたりのバランスには注意が必要です。
対義語②質素
仰々しい儀式は苦手だけど質素で厳かなイベントなら好き、という方も多いのではないでしょうか。質素というとマイナスな印象もあるかもしれませんが、身の丈に合っているという意味ではポジティブな意味にもなります。
質素倹約が美徳とも言われるように、日本人はもともと仰々しさよりも質素な儀式や日常を好む国民性なのかもしれません。
対義語③分相応
実際以上、身の丈以上のものを見せようとする「仰々しい」暮らしは、時として息苦しく感じられます。日本人はもともと控えめであり、分相応な暮らしを大切にしてきました。
若いうちはとかくプライドや好奇心が先に立ち、ついつい身の丈以上の暮らしに憧れてしまいますが、年齢を重ねると自分自身が客観的に見えてきて、分相応の暮らしがわかってくるようになります。
仰々しいの使い方
日本語でも英語でも意味が広く、慣れない人にとっては使い方がややわかりにくい「仰々しい」。明日からの日常ですぐにでも使える「仰々しい」の使い方を具体的な例文とともに詳しく見ていきましょう。
例文①
「仰々しい儀式は見た目は華やかだが、当事者としては意外と気疲れするものだよ」。仰々しい儀式と聞いて、皆さんはどのようなイベントを思い浮かべるでしょうか。
お金をかけた結婚式のようなイベントは確かに豪華で、一生の想い出に残るかもしれませんが、招待される側は意外と遠慮したり、気後れしたりしてしまうものです。
仰々しいばかりで中身がともなっていないイベントよりも、見た目は質素で控え目でも身の丈に合ったものであれば自然な印象になりますし、本人たちの満足度も高くなるはずです。
例文②
「あの役者は演技が仰々しいから見ていられないよ」。人気があっても実力がともなっていない俳優は、得てして演技が過剰で自己陶酔的です。
内面に冷静さを持ち、つねに客観性を保っているからこそ、感情のこもった演技でも決して大げさにならず、自然に見えるのです。
例文③
「近頃はフラッシュ・モブを使ったプロポーズが人気らしいが、シニア世代から見ると仰々しいだけでこそばゆいよ」。
プロポーズにかぎらず、最近ではフラッシュ・モブという演出が人気のようです。もちろん、見た目にも華やかでその場では盛り上がりますが、後々気まずくなることも多いようです。
大切なのは見た目だけを演出し、取り繕うことではなく、きちんと本質をわきまえ、地道な方法でも時間をかけて想いを伝えていくことなのかもしれません。
例文④
「嘘も方便と言うだろう。時には仰々しい演技で泣きつくことも、一世一代の場面では大切なのさ」。映画のセリフのような使い方です。
人生の中でも、長く生きていればあえて演技をし、仰々しい態度で思いを訴えることも効果的なのかもしれません。
例文⑤
「あの小娘ときたら、工賃を倍にしてくれなきゃすぐにでも死んでやるというんだ。まったく、仰々しいったらありゃしないよ」。
ジブリ映画にでも出てきそうな例文です。今の日本ではさすがにここまでの状況はめずらしいかもしれませんが、世界のどこかでは今でも貧しさにあえぐ少女がいるのかもしれません。
例文⑥
「その開会セレモニーは、議長の仰々しい挨拶から始まった」。格式ばった儀式で述べられる言葉は、往々にして仰々しい響きを持ちます。
仰々しい言葉は公式の場では重みを持ち、場の空気を緊張させますが、内容がともなっていなければ聞く側の心には響きません。
皆さんがスピーチをする側にまわる際にはその点を意識し、きちんと相手の心に届く言葉選びを心がけましょう。
例文⑦
「近頃の政治家は仰々しい言葉を並べるばかりで、国民のほうを向いていないようだ」。一部の人にとってはいささか耳の痛い例文かもしれません。
政治家は時として国のリーダーとして仰々しい態度を見せる必要がありますが、それ以上に、その言葉がどの方向を向いているか、ということも厳しい目でチェックする必要があります。
仰々しいは「大げさな言葉や態度」の意味
「仰々しい」とは大げさ、形式ばった、という意味の言葉で、語源は江戸時代の「業業しい」、「凝凝しい」にさかのぼります。
一般に、仰々しい言葉、仰々しい態度というとややネガティブな意味合いがあり、相手を不愉快にさせる可能性がありますので、使い方には充分に注意しましょう。