休日手当とはどんな賃金?
今回は、休日手当(休日出勤手当)について解説をします。働き方改革が推進されている現在において、休日労働における規定を理解しておくことはとても重要です。
法定休日と法定外休日との違いであるとか、手当てが出る場合と出ない場合の違いなど、休日手当(休日出勤手当)を理解するうえで欠かせない事項を順を追って解説していきます。
さらに割増率の考え方を含めた具体的な休日手当(休日出勤手当)の計算方法、あるいは手当が支給されなかった場合の相談方法や対処方法についても紹介していきます。
休日手当(休日出勤手当)とは、簡単に言えば会社が定めている休日に仕事をしたときに支給される手当です。しかし、休日に出勤したからといって無条件で支給されるというわけではなく、一定の規定にのっとって支給されます。
法定休日出勤にのみ休日出勤手当が発生
休日手当(休日出勤手当)が支給されるケースとは、どんなものでしょうか。原則として、休日手当(休日出勤手当)が支給される要件には「法定休日」に出勤した場合というものがあります。
法定休日とは、会社が従業員に対して規定した、一週間に一日の休日のことです。労働基準法では、会社は従業員に対し、週に一日、あるいは四週に四日、休日を付与しなければならないという規定が設けられています。
会社が定めた法定休日に出勤をした場合にのみ、休日手当(休日出勤手当)が適用されます。法定休日とは異なる休日に出勤しても手当は支給されないので注意が必要です。
法定休日・法定外休日の違い
休日手当(休日出勤手当)を考えるうえで、法定休日と法定外休日をきちんと区別して理解することは非常に重要です。法定休日とは、前述のように労働基準法に規定された、会社が従業員に対し最低限付与の義務がある休日のことです。
一般的な企業では、日曜日を法定休日に設定しているケースが多いです。ただ、飲食店経営など休日をメインで営業する業種の場合は水曜日に設定するケースが多いなど、業種によって設定基準は異なります。
これに対し、法定外休日とは週一日、あるいは四週に四日定めた休日以外に会社が定めた休日のことです。例えば、土日の週休二日制を採っている企業が、法定休日に毎週日曜日と規定した場合、土曜日は法定外休日ということになります。
この企業の従業員が土曜日の休日に出勤したとしても、休日手当(休日出勤手当)は支給されないので、自分の会社の就業規則などをチェックして、法定休日と法定外休日の設定をあらかじめ確認しておきましょう。
働き方による休日手当の仕組みの違い
続いて、様々な働き方ごとの休日手当(休日出勤手当)の違いについて解説します。現在は、様々な働き方が認められる時代になりました。子育て中の労働者の強い味方であるフレックス制度もその一つです。
決まった労働時間や労働日がまちまちになっている時代において、休日手当(休日出勤手当)の考え方も制度により異なってしかるべきです。
自分が勤務する企業の規定、および自分の就労形態を考えて、どんなケースで休日手当(休日出勤手当)が出るのか、あるいは出ないのかあらかじめチェックしておきましょう。
年俸制の休日出勤手当の仕組み
まず、年俸制を採用している企業に勤務する従業員が休日労働をした場合の休日手当(休日出勤手当)が出るか出ないかについて解説をします。
年俸制とは、一年で支給される報酬金額があらかじめ決まっている就業形態のことです。年俸制において休日手当(休日出勤手当)が支給されるかどうかは、最初に定めた年俸の内訳がどうなっているかによります。
「基本給〇〇円、残業△△時間・□□円、休日出勤◇◇時間・●●円」などと休日出勤についての規定があれば、休日に出勤しても手当は支給されません。逆に内訳に休日手当(休日出勤手当)に関して規定がなければ支給されます。
裁量労働制の休日出勤手当の仕組み
続いて、「裁量労働制」を採用している企業の従業員が休日労働をした場合に、休日手当(休日出勤手当)が出るか出ないかについて解説をします。
裁量労働制とは、あらかじめ労使間で定めた労働時間を費やして与えられる業務をこなすことを契約して就労する形態のことで、主に研究職など一定の成果を求められる業種で多く採用されている制度です。
裁量労働制では、もっぱら平日の時間を使って就労することが前提になっているので、特別な事情がない限りは、裁量労働制の従業員が休日出勤をすれば休日手当(休日出勤手当)は支給されるのが通例です。
フレックスタイム制の休日出勤手当の仕組み
フレックスタイム制度を採用している企業の従業員が休日出勤をした場合に、休日手当(休日出勤手当)が出るか出ないか、解説をします。フレックスタイム制度とは、出退勤時間を従業員の裁量で決めることができる制度のことです。
早朝の時間帯に子供を保育園に預けるなどの子育て世代にとって助かる制度です。フレックスタイム制度は、原則として平日の労働日の中で、自由に出退勤時間を変えられるという前提があります。
そのため、特別な事情がない限りは休日出勤をした場合は休日手当(休日出勤手当)が出ることになります。もし休日出勤をしても休日手当(休日出勤手当)が出ていない場合は、追加で勤務先に対して請求することができます。
休日手当が出る場合・出ない場合
就業形態ごとの休日手当(休日出勤手当)に関する解説をしました。続いては、休日勤務した場合に休日手当(休日出勤手当)が出るケースと出ないケースをより具体的に説明していきます。
同じ休日出勤においても、振替休日の設定があるのか、あるいは代休を利用したのか、または代わりの休日を取得していないのかによって休日手当(休日出勤手当)における考え方が変わってきます。
結構細かいパターンが考えられ、それぞれ休日手当(休日出勤手当)が出る場合と出ない場合に分かれるので、きちんとそれぞれのパターンを区別して理解し、手当てが出るか出ないか判断しましょう。
休日出勤手当が発生する場合
まず、休日出勤をして休日手当(休日出勤手当)が出るケースについて解説します。休日出勤をしても就労形態や振り替え休日、代休の取得の仕方によって休日手当(休日出勤手当)が出るケースと出ないケースが区別されます。
様々なケースが考えられ、区分が結構難しいので、きちんと理解をして休日手当(休日出勤手当)が出るか出ないか判断できるようにしましょう。
前述のように、年俸制で事前に休日手当(休日出勤手当)が規定されている場合は、別途手当が支給されることがないケースも考えられます。自分の就労形態についても勘案して考慮するようにしましょう。
法定休日に出勤する
休日手当(休日出勤手当)が支給されるパターンの一つ目は、法定休日に出勤するケースです。法定休日とは、労働基準法にのっとって各会社が設定する週に一日あるいは四週に四日の休日のことです。これ以外の休日は法定外休日として区別されます。
法定休日で出勤をして、他の勤務日との振り替えや代休の設定をしなかった場合、通常の賃金の1.35倍以上の賃金を休日手当(休日勤務手当)として支給することが義務付けられています。
法定外休日で出勤をして支給される手当もありますが、これは厳密には休日手当(休日出勤手当)とは異なるケースが多いので注意しましょう。
法定休日に出勤し代休を取得する
休日手当(休日出勤手当)が支給されるパターンの二つ目は、法定休日に出勤し、後日平日に代休を取得するケースです。この場合、休日出勤ではありますが代休として休日を取得しているため、基本給の部分は通常と変わりません。
ただ、休日に出勤しているという事実はゆるぎないので、通常の賃金に手当部分が上乗せされる計算結果になります。具体的には、基本賃金に対して0.35倍以上の金額を手当てとして支給することが求められます。
休日出勤手当が発生しない
続いて、休日に出勤したにもかかわらず休日手当(休日出勤手当)が発生しないケースを紹介します。休日出勤したのに手当てが出ないというのは違法と感じる方も多いかもしれませんが、場合によっては合法的にあり得ることです。
細かいパターンを理解して、自分が実施した仕事においてはどのように適用されるのか、手当てが出るパターンなのか出ないパターンなのかを見極めて誤解を覚えないようにしましょう。
休日の種類や振り替えの取得方法、雇用契約の形態によっては休日に出勤しても手当支給の対象外となるケースはあり得ます。
振替休日の適用対象になった
休日出勤をしたにもかかわらず、休日手当(休日出勤手当)が出ない事例の一つ目は、振替休日を取得した扱いになっているケースです。振替休日とは、休日出勤をする前にあらかじめその休日の代わりに平日を休みにするケースのことです。
これは意外に誤解している方が多いケースです。振替休日と代休とで性質が異なっていることを十分に理解しておきましょう。
振替休日の場合はあらかじめ休日の日程をそのまま変更したというイメージです。代休とは、休日に出勤した代わりに別の平日を休みにするというニュアンスです。
基本給に休日出勤手当が含まれている
休日出勤をしたにもかかわらず、休日手当(休日出勤手当)が出ない事例の二つ目は、基本給に休日手当(休日出勤手当)が含まれている契約を行っているケースです。
例えば前述のような年俸制の報酬制度の場合によく見られるケースですが、年俸の内訳の中に休日出勤にかかる手当てが含まれている場合です。
この場合は、最初の規定の範囲内においては休日に出勤をしたとしても休日手当(休日出勤手当)が支給されることはありません。
法定外休日にしか出勤していない
休日出勤をしたにもかかわらず、休日手当(休日出勤手当)が出ない事例の三つ目は、法定外休日のみに出勤したケースです。法定外休日とは、労働基準法に準じる休日とは別の休日のことです。土日休日の場合は土曜日に当たるケースが多いです。
法定外休日での出勤の場合は、休日手当(休日出勤手当)は支給されないのですが、週に40時間以上の労働をした場合には残業手当を支給するという要件があります。
給料明細上では、法定外休日の出勤にかかる手当は残業代に含まれることが多いため、休日手当(休日出勤手当)とは異なるケースが多いです。
休日手当の計算方法
休日手当(休日出勤手当)が出るケースと出ないケースについて具体的に解説をしました。続いては、休日手当(休日出勤手当)の具体的な計算方法について紹介をします。
計算自体は勤務先側で行われるので計算方法を熟知しておくことは本来は必要ありませんが、もし企業側で不正な取り扱いをしている疑いがある場合は、自分で計算できるようになっていたほうが安心です。
もし企業側に適正な休日手当(休日出勤手当)を請求するとしたら、その金額の根拠となる計算方法は知っておいて損はありません。
基礎時給を計算する
休日手当(休日出勤手当)の計算方法を知るうえで第一に理解するべきは、基礎時給を算出することです。休日手当(休日出勤手当)の金額の計算方法の基礎となる金額です。
基礎時給の計算方法は、給料が時給制の場合はその単価、月給制の場合はその月給を一月の平均労働時間で割る計算になります。この場合の月給に含まれる金額は、基本給に加え、資格手当や地域手当などになります。
通勤手当や家族手当、住宅手当など生活の補助となるような手当ては含まれないということを理解しておくべきです。
割増率をかける
休日手当(休日出勤手当)の計算方法を知るうえで二番目に行なうことは、基礎時給に対して割増率を乗じることです。割増率とは、休日手当(休日出勤手当)を算出する上での基本給に対し上乗せされる割合のことです。
割増率は、通常基本給の1.35倍とされています。この割増率を基礎時給金額に乗じることで、一時間当たりの休日労働に対する手当額が決まります。
割増率自体は1.35倍と法的に定めれているので、自分の会社の割増率が適正かどうか、法定の割増率と比較して確認しておくことをお勧めします。
法定休日に出勤した日数・時間数を把握する
手当(休日出勤手当)の計算方法を知るうえで三番目に実行するべきことは、休日勤務をした日数と時間数を明確に把握しておくことです。先ほどまでに紹介した基礎時給額に割増率を乗じて算出した金額に休日労働時間を乗じることで手当額が算出されます。
企業側が人件費削減を不当に行う場合の手法として、割増率の勝手な軽減に加え、休日労働時間の不当な削減がよく見られます。確認をする際には、計算方法のチェックポイントとして割増率と休日労働時間は注視するようにしましょう。
休日手当の注意点
ここまで、基礎時給や割増率などを用いた休日手当(休日出勤手当)の計算方法を解説しました。続いて、休日手当(休日出勤手当)を考える際の注意点や誤解されやすいポイントについて解説をします。
休日手当(休日出勤手当)が支給されず勤務先に対して不信感を抱いているという方も多いかもしれませんが、まずは自分が行っている休日勤務が正しい手続きで行っているのか、十分に確認しましょう。
ここで紹介する注意点をクリアしてもなお休日手当(休日出勤手当)が支給されていない場合は、企業に対して請求することを検討してみてください。
休日出勤を行うことは上司に報告
休日出勤をする場合は、必ず上司に事前に連絡をしておきましょう。これをせず、勝手に休日に出勤した場合は、会社からの命令もなく自己判断で仕事をしたとみなされてしまう可能性があります。
休日勤務や残業勤務のような規定外の時間での労働というのは、通常企業側から命令されて行うこととされています。そのため、実質的には自分の判断で仕事をしないといけない環境である場合でも、上司の理解は得ておく必要があります。
上司に連絡して理解を得たということは、会社側から命令されて休日勤務するという大義名分が立ちます。休日勤務が多い方は、その都度上司などに事前に連絡をしておくことを忘れないでください。
パート・アルバイトにも休日出勤手当は出る
パートやアルバイトの立場で本来の休日で勤務した場合、休日手当(休日出勤手当)は支給されるのでしょうか。アルバイトやパートという身分でも、労働者であることに変わりはなく、企業に使役されて働くという点は正社員と同じです。
これは休日手当(休日出勤手当)を考えるうえでも同様で、アルバイトやパートといっても休日勤務した際には手当てが支給されてしかるべきです。
ただ、アルバイトやパートの場合は法定休日を設定するケース自体が少なく、たいていがシフト制などをとっているため、休日手当(休日出勤手当)が支給される事例は多くありません。
管理職には休日出勤手当が出ない
管理職の身分の社員の方が休日出勤をした場合、休日手当(休日出勤手当)は支給されないという決まりもあります。ただ、これは判断が難しい面があります。いわゆる
「名ばかり管理職」の問題です。
管理職という身分は、経営者と同様の立場で企業を運営し、出退勤時間も明確な決まりはなく、一般社員と比較して立場が異なっているという要件があります。
肩書は管理職の身分でありながら、一般の社員と同様の業務を担っているという管理職の方が多いのが現状です。この場合、休日手当(休日出勤手当)は支給されるのが正しいと考えるべきです。
休日手当が出ない時の対処法
最後に、もし企業側に休日手当(休日出勤手当)を請求してもそれに応じてくれない場合での対処方法について解説をします。労働者側は権利が弱く泣き寝入りしてしまっている方も多いかもしれませんが、適正な手段をとって対抗することができます。
自分の労働環境などを勘案して、もし手当支給の面で違和感や不信感がある場合は、早めに相談をして対処するようにしましょう。他にも手当不払いの件で悩んでいる社員がいるかもしれません。
会社に配達証明付き内容証明郵便を送る
休日手当(休日出勤手当)が支給されない場合の対処方法の一つ目は、会社に配達証明付き内容証明郵便を送って請求する方法です。
紙面で正式に手当請求をするというのは非常に意味があります。直接担当者に会って話をするよりも落ち着いて文章を構成することができるという利点もあります。
配達証明付きですから、確実に会社側に届けられます。会社側できちんと受け取ったかどうか、この送付方法なら確実に確認することができます。
弁護士に依頼する
勤務先に相談しても進展がない場合は、信頼できる弁護士などに相談をすることをお勧めします。しかも残業や休日出勤関連の手当てに詳しい、実績のある弁護士事務所を見つけることが重要です。
弁護士事務所といったプロに相談することで、手間や勤務先企業との折衝などをすべて代行したりサポートしてくれるので非常に頼りになります。
最近では、完全成功報酬制という形式を選択している弁護士事務所も多いです。訴訟関係で勝利を得た場合のみ弁護士費用の負担を受けることになるので、事前の費用負担がいらなくなり大変効率的です。
労働基準監督署に相談する
休日手当(休日出勤手当)が支給されないことを相談する相手先としては、やはり労働基準監督署が挙げられます。こちらに相談することで、監督署から対象の企業に調査を実施することになります。
自宅最寄りの監督署ではなく、勤務先企業の地域を担当する監督署に相談に行きましょう。担当の方と対面式で何でも相談することができるので、包み隠さず何なりと相談することが可能です。
休日手当は法定休日に出勤すると請求できる
以上、休日手当(休日出勤手当)について解説してきましたがいかがでしたでしょうか。法定休日と法定外休日の違いや割増率を含めた手当の計算方法などについて紹介してきました。
法定外休日の定義や割増率の適正な設定など難しい部分もありますが、企業側の手当支給に不満を持っている場合は、法定外休日や割増率及び手当の計算方法について十分理解しておき、いざというときに企業側に請求できる知識をあらかじめ身に付けておくことをおすすめします。