非難の意味とは?
非難とは、「相手の欠点やミスを指摘し、責めたてる」という意味の言葉です。言葉としてはネガティブな意味があり、きついニュアンスを含んでいるため、日常の会話ではなかなか使いにくい表現かもしれません。
また、非難は「F国の決議を強く非難する」などのように、かしこまった公的文書においても用いられる表現であり、その場合には、経済制裁や国交断絶などを視野に入れている、という意味も込められています。
日常の表現としては、「あなたを非難します」のように直接的な意味で使われることは少なく、相手を厳しく責めたてているその行為全体を非難、という意味で表す使い方が一般的になっています。
非難の由来
非難は、「非」と「難」、それぞれの意味が組み合わさってできた表現です。難には「欠点、難点」という意味があり、一方の非には「悪く言う、責めたてる」という意味があります。
このことから、非難は「相手の欠点や難点をきつく責めたてる」という意味であると解釈することができ、批判や論難、指摘などと似ている表現としてとらえることができます。やや響きの強い言葉といえるかもしれません。
なお、二字熟語には、「同じ意味の漢字を重ねた言葉」、「正反対の意味の漢字を組み合わせた言葉」、「前の漢字が後の漢字に修飾されている言葉」というパターンがあり、非難はこのうちの3番目のパターンに入ります。
熟語表現の成り立ちをさかのぼってみることで、表現としての意味や使い方をより深く理解することができますので、耳慣れない表現に出逢った際にはぜひ語源や由来にもあたってみましょう。
非難の類語表現と意味
非難にはいくつもの類語があり、それぞれに意味と使い方が異なっています。非難の意味やニュアンスをより正確につかみ、日常生活で正しく使うためにも、非難の類語表現とそれぞれの意味、使い方について具体的に把握しておきましょう。非難との違いについてもぜひチェックなさってください。
類語①批判
非難と意味のうえで最も近いといえる熟語表現は、批判です。どちらも相手を厳しく責めたてる、という意味の言葉であり、口論や議論の中で用いられる表現でもあります。批判は英語では「clitic」であり、cliticalなら批判的、という意味になります。
日本でも現在、「批判的思考」が重視されており、海外の大学では論文や書物などを論理的かつ批判的なスタンスから比較検討する「クリティカル・リーディング」というトレーニングが取り入れられています。
批判というと大げさな意味に感じられるかもしれませんが、暮らしの中でもたとえば、メディアから一方的に流される情報をその都度批判的に検討することによって、健全な意味でのメディア・リテラシーが身につけられます。
類語②論難
論難は非難よりもやや強い意味があり、かしこまったニュアンスが込められています。論、という漢字が使われているように、論難には「相手を論理的に問い詰める、欠点を指摘する」という意味があり、相手の欠点をただ指摘する非難とは意味のうえでも大きな違いがあります。
論難は日常語としては使い方がやや難しいかもしれませんが、論壇や研究の世界では「A氏の矛盾を論難する」などのような文脈で使われています。日常の中でさりげなく使うとおしゃれな表現のひとつです。
類語③糾弾
糾弾は、「相手の失敗や矛盾を法的に訴え、改善を求める」という意味です。米国などで大統領が公的に糾弾されると弾劾裁判となり、訴えが認められれば大統領の訴追が行われます。
このように、糾弾には「法的根拠をもとに相手を追及する」という意味があり、ただ単純に相手の欠点やミスをあげつらう非難とは意味のうえでも、またニュアンスとしても異なっているため注意が必要です。
批判との意味の違いは?
非難と批判は意味がよく似ているため、日常の場面でもしばしば混同されがちですが、本来は使い方も大きく異なる言葉です。まず、非難のほうは「相手の欠点やミスを感情的に指摘する」というニュアンスがあり、怒りにまかせて相手を怒鳴り問い詰める場合にも使われます。
一方、批判には「相手の欠点やミスを論理的に指摘する」という意味があり、怒りにまかせて欠点やミスをあげつらうだけでは批判とは言えません。非難は感情的、批判は論理的という風に違いを覚えておくとわかりやすいのではないでしょうか。
また、非難が一方的に相手を遠ざける意味の言葉であるのに対し、批判のほうはあくまでも論理的な議論の中で相手との一致点や妥協点を見出していく、という意味で使われています。
非難の英語表現は?
非難の英語表現は、「condemnation」です。これは、強調の意味がある接頭辞「con」と「demnation(相手を責めたてる)」というふたつの言葉が組み合わさってつくられた言葉で、日本語と同じく、きつい調子で相手を責めたてる、という意味になります。
なお、批判は英語で「clitic」ですが、cliticとcondemnationにも意味やニュアンスのうえで違いがあり、英語表現としてもシチュエーションに合わせて使い分ける必要があります。英語での表現も合わせておさえておくと、非難本来の意味をより深くまで理解することができます。
非難の対義語表現と意味
日常の場面では使い方がなかなか難しい非難という言葉。類語を覚えるだけでは、意味がわかりにくいかもしれません。非難の対義語表現の意味と使い方、例文について詳しくおさえておくことで、非難の意味を把握し、日常のさりげない場面で使いこなせるようにしましょう。
対義語①賞賛
非難が「相手の欠点やミスをあげつらう」という意味ですから、対義語は賞賛になります。賞賛は「相手を無条件にほめたたえる」という意味で、例文としては「君の勇敢な行動は賞賛に値する」などが挙げられます。
ちなみに、賞賛は称賛とも書きますが、称賛のほうは「称える」という漢字が使われているように、相手の行動や言葉を称え、敬意を払う、という意味が込められています。細かいニュアンスの違いもチェックすることで違いがより明確に見えてきます。
対義語②賛辞
賛辞とは、「相手を無条件に称える」ということで、わかりやすい表現で言えば褒め言葉ということになります。「オリンピックの金メダリストには国じゅうから最大級の賛辞が贈られた」などの例文が挙げられます。
賛辞は基本的にはポジティブな意味で使われますが、政治の内幕などでは「野党のするどい追及にはひとまず、条件つきの賛辞を贈っておこう」という風に皮肉の意味でも用いられる場合があり、日本語の奥深さがうかがえます。
非難の使い方
日常語としても使いやすく、類語や対義語表現も多い非難という言葉はネガティブな意味があるだけに、使い方が難しい言葉でもあります。ここからは具体的な例文を通して、非難の正しいニュアンスや使い方、意味についてより詳しく掘り下げていきましょう。
例文①
「そうやって人のことを非難ばかりしていると、いつか自分が非難される立場になるよ」。人を呪わば穴二つ。日本人は昔から、他人を一方的に罵り、批判することを戒めていました。口汚いだけの非難は、周囲をも非常に不愉快な気分にさせます。
人にむかって指を差すなかれ。人差し指の他の指はみんな、自分自身を向いているのだから。学校などで一度は言われたことがあるかもしれません。言葉はある意味でブーメランであり、口ぐせのように言っている非難は必ず、いつの日か自分自身に返ってきます。
例文②
「スキャンダルでどんなに非難されても、それが事実無根であるかぎり、私は負けない」。不倫、DV、覚醒剤。空前のスキャンダルブームと言えるほど、最近の芸能界はゴシップ報道であふれています。ゴシップのほうが視聴率を取れるのかもしれません。
もちろん、健全な意味での非難や批判はひつようですが、たんなる興味本位であったり、好奇心を満たしたりするためだけの根拠なき非難は決して有益ではなく、時として人権侵害につながる危険さえはらんでいます。
例文③
「心ない非難に立ち向かう武器は口汚い非難ではなく、冷静な批判である」。国会やテレビの討論番組でも、議論が白熱するにつれて次第にお互いがヒートアップし、建設的な議論ではなく単なる非難合戦になってしまう光景をよく目にします。
口汚い非難に感情で対抗したところで、実のある対話にはなりません。非難は気分を不快にしますが、そんな時にこそ冷静さを保ち、客観的な論理をもとにして相手の矛盾をひとつひとつ指摘し、非難をかわすことが必要です。
例文④
「多くの非難を浴びるほど、たくさんの人から注目されているんだと思いなさい」。かつての日本では、有名税という言葉がありました。政治家や芸能人は公的な地位と名声を手に入れるかわりに、多くの非難にさらされることを覚悟しなければならない。
現在はコンプライアンス意識がかなり浸透し、昔ほど悪辣な非難や誹謗中傷は寄せられなくなりましたが、ネットなどでは未だに特定の芸能人をターゲットにした罵詈雑言が平然と書き込まれており、ある意味で無法地帯と化しています。
非難の注意点
非難を日常生活で使う際には、同音異義語の意味に注意する必要があります。非難に対し、批難という同音異義語があり、また、批判も意味がよく似ているため、しばしば混同されています。批難は批判に近い意味で、感情ではなく論理で相手のミスをただす、という意味があります。
非難は「相手の欠点やミスを感情的に指摘する」という意味
非難は「相手の欠点やミスを感情的に指摘する」という意味のある言葉です。類語表現としては批判、論難、糾弾などがありますが、感情的か論理的か、という意味で違いがあります。
類語表現の意味や使い方の違いをチェックし、また、対義語表現についても深く掘り下げたうえで非難を日常生活の中で正しく使いこなし、ボキャブラリーを広げましょう。