「あまねく」の意味とは?
「あまねく」という言葉を聞いたことはあっても、実際の意味を知らない方もいらっしゃるのではないでしょうか。また、漢字で書くとどのような字になるのかも想像できないという方もいるでしょう。「あまねく」とはどういう意味なのでしょうか。
まず、「あまねく」の意味ですが、「全ての」や「全体の」、「一つ残らず」や「隅々にわたる」といった意味を持っています。「あまねく光を照らす」という言葉で例えると、「全てに光を照らす」や「隅々まで光を照らす」という意味になり、行き届いた状態を表します。
言い方を変えると「もれることなく」という意味としても考えられますが、現実的に考えると難しいことでもあります。なので「あまねく」は、比喩的な意味で使うことが多いのです。
今回は、そんな「あまねく」の意味だけでなく、類語に使い方、由来や歴史に続いて「あまねく」を漢字で書くとどうなるか、また注意点などもご紹介していきます。
「あまねく」の類語
「あまねく」は「全体的に」という意味ですが、「あまねく」の類語となる言葉はあるのでしょうか。意味を見ると、「似ている用語は沢山あるのでは?」と推測しやすい言葉ですが、果たしてどのような言葉があるのか気になるところです。
ここからは、「あまねく」の類語をご紹介していきます。実際に「あまねく」の類語となる用語は沢山あるようで、代表的に使われているものをご紹介していきます。「あまねく」と意味はほぼ同じである言葉もありますが、若干ニュアンスが違っていたりします。
このニュアンスを理解することで、「あまねく」の正しい使い方ができると言えます。是非、「あまねく」の意味と類語の意味を比べて考えてみてください。
それによって、正しい表現ができるので、文章などで受け取る側も正しく理解することができるでしょう。
「あまねく」の類語は同じ意味?
「あまねく」の意味をお伝えしましたが、ここからは類語となる言葉をご紹介していきます。よく知られているもので、「あらゆる」や「一般的に」に「どこもかしこも」などが「あまねく」の類語として挙げられます。一つずつ、意味をご紹介していきます。
「あらゆる」は対象をすべてに置いている意味を持ち、「あまねく」の類語になります。次に「一般的に」は、全体に共通した事例に対して示す意味の言葉です。そして「どこもかしこも」は全般的に広範囲にわたっている意味があり、類語だと言えます。
仮にこの三つの言葉を「あまねく」に置き換えて、文章を作ったとしても、同じ意味になるということです。ここから分かるかもしれませんが、まだ他に沢山の類語もあります。
しかし類語に近いものも多く、意味が異なっていても気付きにくい場合があります。後程お伝えしますが「おしなべて」という言葉があります。若干意味が違うので要チェックです。
あまねくの使い方
「あまねく」の意味を理解することで、実際に使い方を理解できるわけですが、ここからは「あまねく」の使い方をご紹介していきます。使い方として特徴があります。動詞にかけた表現の仕方と、名詞にかけた表現の使い方があります。
しかし、本来は動詞にかけるのが一般的な使い方だと言えますが、実際に名詞で使われていることも多く、一概に間違っているとは言えません。古くから有名な作家も「あまねく」という言葉を名詞で使っていたりするので、表現の仕方としてはアリなのかもしれません。
このように「あまねく」という言葉は使い方によって、アクセントの一つとして文章を魅力的にしてくれます。意味を理解して、上手に使えると文章力がワンランクアップするでしょう。
また、「あまねくを使う時の注意点」でもお伝えしますが、「あまねく」という言葉を使うシチュエーションとしましては、文章で表現することが多いので参考にしてみてください。
例文①
「あまねく」の類語をご紹介しましたが、ここからは、使い方を例文でご紹介していきます。「世間全体からあまねく知られている」という例文があります。ポイントは「あまねく知られている」というところで、動詞にかかった表現になっていることが分かります。
これは「全ての世間に隅々まで知れ渡っている」という意味になります。「隅々まで」という表現によって、反対に「もらすことなく全ての人々に知れ渡っている」という意味としても解釈することができます。つまり「まんべんなく」といった漏れがない状態を指します。
もちろん現実的に考えて、「まんべんなく知ってもらう」ことは難しい話でもあるので、「それぐらい沢山の人に知ってもらっている」という比喩的な意味だということが分かります。
例文②
続いてご紹介する例文ですが、「あまねく光に照らされた世界」という表現があります。「あまねく光」という名詞にかかった言葉になっているのが、特徴としてあります。あまねく光で、隅々まで明るく照らされている様を、容易に思い浮かべることができます。
このような表現を会話ですることはまずありません。反対に文章で表す時に「あまねく」という言葉が活きてきます。ここから分かるのが、「あまねく」という言葉は、例えで表す時に力を発揮する言葉かもしれません。そして人の想像を掻き立ててくれる言葉とも言えます。
この例文の場合、古語でもある「あまねし」を使うこともできそうです。「あまねし光に照らされた世界」も、読み手が理解できると言えるでしょう。
もちろん「あまねし」は今では使われませんが、このような幻想的で非現実的な印象を持たせたい時に、ピッタリの言葉だということが分かります。
例文③
「偉人は世界にあまねく影響を与えている」という例文をご紹介します。「偉い人、偉大な人は世界全体に影響を与えている」という意味の例文になりますが、ここから偉人が成し遂げたことが、世界中の人々全体に良い影響を与えていることを示しています。
また、この例文で分かるのが、その影響が全体に行き届いていることから、世界というマクロ的な視点で捉えた表現をすることができるということです。例文は動詞としての使い方になります。「隅々まで影響が及んでいる」様が分かる表現です。
そして、文明の発展に貢献しているという意味にも解釈できますが、その偉人の思念や思想が世界中の人々に、しっかりと行き渡っていることも伺えます。
例文④
次にご紹介する例文として「春になると野山にあまねく立ち並ぶ桜が咲き乱れる」という表現の仕方があります。山全体に生えている桜の木が、春になると山全体が桃色に様変わりしているのが想像できます。文章で綺麗な表現にしたい時に力を発揮する言葉です。
そして、ここでも「あまねく」という言葉が、比喩的な意味で使われていることが分かります。野山には他の木々が存在する中で、まんべんなく桜の木が立っている様子を思い浮かべることができるでしょう。情緒も感じさせてくれる素晴らしい言葉だと言えます。
「あまねく」という言葉は草、花、木などの自然を豊かに表現したい時にぴったりの言葉なので、例文から見ても分かりますが、とても使いやすい印象があります。
例文⑤
次の例文ですが、歌人でもある石川啄木が表現した文章をご紹介します。「強権の勢力は普く(あまねく)国内に行わたっている。」という表現をされています。権力という強い力が猛威を振るって国内に隅々まで行きわたっていることを表しています。
「あまねく」という用語を使うことによって、権力という「見えないもの」の進み方が見て取れます。このように目に見えない、はっきりとしていないものの動きを表現する際に、効力を発揮する言葉だということが分かります。
こうしてみると、人の力では抗えない様を映し出す時に、フィットしやすい言葉だということが伺えます。「あまねく」は人知を超えた力を表現する際にも適切な言葉だと言えます。
「あまねく」と「おしなべて」の違い
「あまねく」と似た意味を持つ言葉で「おしなべて」という言葉があります。二つの言葉で共通する意味は「全体的に」ですが、違いが分からない方もいらっしゃるのではないでしょうか。意味としては同じですが、雰囲気や文章で使ってみると気付く方もいるかもしれません。
実際には「あまねく」と「おしなべて」は細かい意味を見ていくと、ニュアンスが異なるため、使い方に注意が必要です。「全体的に」の捉え方が違うので、この「捉え方」が理解できると、使い分けることができるでしょう。
そしてここからは、「あまねく」に似た意味を持つ「おしなべて」という言葉の意味について細かくお伝えしていきます。先程の例文に当てはめてみると分かりやすいかもしれません。
「おしなべて」という言葉の意味を理解することで、より適切な表現をすることができ、相手に誤解を与えずに済むので、参考にしてみてください。
「おしなべて」は「全体的に」という意味
「おしなべて」は「全体的に」という意味ですが、実は「あまねく」とは若干意味が異なります。「あまねく」は「全てに隅々までいきわたっていること」という意味ですが、「おしなべて」は「全て同じような様子であること」という意味になります。
ポイントは「ような」が付いていることで、大まかに全体を表す時の表現となります。そして「おしなべて」を漢字で書くと「押し並べて」となり、全体を同じように押し並べている様が分かります。なので「あまねく」とは少し意味が違うのです。
曖昧な印象だったり、大まかな表現の時は「おしなべて」になるということを理解すると、「あまねく」との違いに気付きやすいでしょう。使う際はイメージしてみてください。
ちなみに、「おしなべて」の古語は「普通に」や「ありきたり」という意味としてあるようです。ここからも、「あまねく」と意味が若干違うことを伺えます。
あまねくを使う際の注意点
「あまねく」という言葉の意味を説明してきましたが、使う時に注意点があります。先程は類語をお伝えしましたが、意味は似ていても表現が違います。そこから見比べてみた時に、特徴に気付いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「あまねく」を使う時に、最適なシチュエーションがあるということです。要するに、文章で使いやすいか会話で使いやすいかを比べてみることで、注意するべき部分が分かります。ここで言えるのは「あまねく」は会話には適さない言葉だということです。
何故「あまねく」は会話に適さないのか、これからその理由についてお伝えしていきます。そこから「あまねく」という言葉の、正しい使い方を理解することができるでしょう。
会話では使えない
「あまねく」を使う時の注意点ですが、「会話で使うことはあまりない」ということです。文章で使うことは多々ありますが、日常会話で使う場面は少ないです。実際に会話で使うと違和感を覚えることでしょう。また、聞き手にも伝わりにくいので、使わないのが無難です。
「今日は天気が良く、太陽の日が部屋をあまねく照らしてくれて暖かった」と言うより「今日は天気が良く、太陽の日が部屋全体を照らしてくれて暖かった」と言った方が、相手は理解しやすいということです。ここから「あまねく」は会話に適さないことが分かります。
「あまねく」の用途を考えてみるといいかもしれません。また先程の例文のように、「あまねく」を使って文章化したものを実際に読み上げると分かりやすいでしょう。
というわけで、「あまねく」は、あくまで文語であるということを理解して、会話ではなく、なるべく文章で表現する時に使いましょう。
「あまねく」の由来・歴史
「あまねく」の意味に続いて例文や注意点をお伝えしましたが、「あまねく」という言葉は会話には適さないことが分かりました。そして「あまねく」が、会話に適さない理由を知ると更に適切な形で使うことができます。それは一体何でしょうか。
その理由を知るために、「あまねく」の由来や歴史を理解する必要があります。ここからは「あまねく」の由来と歴史についてお伝えしていきます。「あまねく」という言葉の意味だけでなく、由来も知ることによって、先程の注意点の意味が理解できるでしょう。
そして、「あまねく」を使う時に文章で表現すると活きたものになることも分かるはずです。「あまねく」は「あまねし」という古語から来たと言われています。
由来
冒頭では「あまねく」の意味をお伝えしましたが、ここでは由来についてご紹介していきます。元々、形容詞で「あまねし」という言葉がありましたが、それが形容詞である「あまねく」になったということです。また、「あま」は「数多(あまた)」から来ているようです。
「あまねく」の語源である「あまねし」ですが、現在は使われていません。「あまねく」も「あまねし」同様、文章で表現する時に使われていたそうです。ここからも、「あまねく」は会話に適していないことが分かるのではないでしょうか。
また、いまいちピンと来ていない方は一度会話に当てはめて考えてみると分かりやすいです。「あまねし」という言葉の響きからも会話より文章の方が合っていると判断できるでしょう。
歴史
「あまねく」の語源である「あまねし」ですが、由来となった背景にいくつかの説があります。一つは、元々は朝鮮語の「man」という「多」の意味がある言葉から由来した「まねし」が元になったのではないかと考えられているようです。
しかし、一方で元は「あまねし」であり、そこから頭の母音が抜けて、「まねし」が生まれたのではないかと言われています。「あまねし」や「さまねし」という「数が多い」という意味の言葉がありますが、「まねし」に接頭語の「あ」や「さ」が付いたとも考えられています。
いかがでしょうか。時代背景から見ることによって、「あまねく」の適切な使い方を理解できることが分かります。先程の例文に由来となる「あまねし」を当てはめてみてください。
「あまねく」と意味は変わらないだけでなく、そこまで表現にも違いはないので、ここから文章が適していることを伺えます。
「あまねく」の漢字
「あまねく」の意味に続き、由来と歴史をお伝えしていますが、実際に漢字で書く場合、分からない方もいるでしょう。ここからは、「あまねく」の漢字をご紹介していきます。基本的に「あまねく」の漢字で知られているのは二種類で「遍く」と「普く」があります。
この「遍く」と「普く」の漢字の意味もお伝えしていきますが、この意味を理解することで、「あまねく」の言葉の意味をより深く想像することができるでしょう。また、音読みでは読み方も変わっていくので、そこも補足でお伝えします。
「遍」と「普」の意味は漢字で見ると、意味もそうですが若干違う性質を持っています。この二つの漢字を使い分けることができると、きっと文章力は高まるでしょう。
あまねくの漢字は「遍く」意味は?
あまねくの漢字で「遍く」という言葉がありますが、ここで「遍」の意味をご紹介します。「遍」には「何もかも」や「どこもかしこも」、「どれもこれも」の意味があるようです。いっぺん通りに及んでいることを表す意味があります。
ちなみに「遍」には「一遍、二編」など、回数を表す意味としても使われています。この時には「へん」や「ぺん」という音読みに変わっていることが分かります。「遍」という漢字の意味からも、「あまねく」の意味に共通するものが見て取れます。
「あまねく」の漢字は「普く」意味は?
続いて、「あまねく」の漢字で「普く」という言葉があります。こちらの「普」という文字の意味もご説明していきます。「普」とは、「全体に広くいきわたる」という意味になります。性質としては、その中のもの、一つ一つには関わっていない特徴があります。
そんな「普」ですが、「ふ」という音読みが出来ます。「普通」などの漢字に使われています。この「普通」という用語からも、「広く全体にいきわたる」様が想像できるのではないでしょうか。「あまねく」の意味と同じであることが分かります。
「普遍」という意味
あまねくの漢字である「遍く」と「普く」の意味をお伝えしましたが、この二つの漢字を見て、ピンときた方もいらっしゃるのではないでしょうか。この二つの漢字が合わさると「普遍(ふへん)」という用語に変わります。
「普遍」の意味ですが先程お伝えした「普く」と同じで、「広く全体にいきわたること」や「すべてのものにあてはまること」という意味を持っています。つまり、「あまねく」と同じような意味であるということです。ちなみに哲学の用語としても使われています。
哲学では「宇宙や世界など全体にたいしていえること」や「ある範囲のすべての事物に共通する性質」という意味合いがあるようです。
「あまねく」は「全体的に」という意味
「あまねく」の意味や使い方や類語に注意点などをご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。「あまねく」の類語は沢山あり、類語の細かい意味を知ることで上手な使い方ができそうです。そして「あまねく」は文章に適した言葉だということが言えます。
また、使う時に混乱しないように類語の意味に加え、「あまねく」の由来を知ることも大事だということが分かりました。由来を知ることで、適切な表現をすることができて、文章のレベルが上がることでしょう。また、文章にすると漢字で書くことになります。
今回は「遍く」と「普く」の二つの漢字をお伝えしましたが、それぞれ意味が異なっていました。そこを理解することで正しい使い方ができるというわけです。
是非「あまねく」という言葉を用いて文章で表現してみてはいかがでしょうか。この「あまねく」という用語があまねく知れ渡ると、言語に対するリテラシーが全体的に上がるでしょう。