歯科技工士の年収を調査!どんな仕事かも解説
歯科技工士は、私たちが健康的な歯を保つために欠かせない職業のひとつです。歯科医療で最も知名度が高い歯医者と違い、患者と顔を合わせることが少ないことから、ポピュラーとは言い難い職種です。
しかし歯科技工士は歯科医療では欠かせない存在と言われています。歯科医療においてどんな仕事を行っているのか知っていきましょう。
また歯科技工士を目指している人は、仕事の内容だけでなく年齢別の年収などより詳細な情報を理解しておくと良いでしょう。そうすることで、改めて自身が目指している職種について再認識をしてみてください。
歯科技工士ってどんな仕事?
「歯科技工士」という名前に入っている漢字を見てみると、歯に携わる仕事であることがわかります。歯科医療携わるものとして多くの人が挙げるのが歯医者です。
歯科医師の仕事は、患者の口の状態を診断し、必要な治療を行っていくのが主な内容です。しかし歯科技工士は表立って患者の口を調べたりすることは一般的に行いません。
歯科技工士は、主に歯科医療に必要な道具をつくるのが主な仕事になります。つくるときは、歯科医師などあらかじめ作成された注文書を基に作成していきます。
実際の治療に使われる道具ですから、熟練した技術が求められる仕事でもあります。しかし一人でも作業が可能なため、独立開業する人もいる職種です。
あらためて歯科技工士とはどういう仕事なのか、年収などもまとめて基本的な情報から紹介していきます。
歯科医療技術の専門職
「歯科技工士」とは、歯科医療に携わる専門職です。正式には、「医療技術専門職」に分類されます。入れ歯や被せもの、矯正器具など歯の医療に必要なものをつくりあげていくのが主な仕事になります。
つまり歯科医療にとっては欠かせない存在であることがわかります。仕事としては専門的な技術が必要になるだけでなく、歯科医師が診断した患者にあわせて作成した指示書に従い、作成していく必要があります。
ヒトの口内は歯も含めて全く同じ形をしているということはありません。そのため、指示書に従うだけでなく、実際に装着する患者に合わせて微調整が必要な場合もあります。
また、昨今は作成する際に必要な設計図をはじめ、あらゆる場面で精密機械を操作するのが一般的になっています。
つまり基本的な情報だけでなく、必要に応じて臨機応変に立ち回れるセンスも求められる職種と言えるでしょう。
歯科技工士になるためには
歯科技工士になるための最低条件として、高等学校を卒業と同等の資格を持っている必要があります。これは後に受ける必要となる国家試験においても必要となってくる資格となります。
また、国家試験を受けるためにはそのほかにも必要な知識を学んでいると判断する基準として、指定されたカリキュラムを2年以上受けている実績が必要です。
歯科技工士養成科を卒業して試験を受けよう
歯科技工士になるための国家試験を受ける前に、「歯科技工士養成科」などの専門知識を学べる場所で、定められているカリキュラムを2年以上学ぶ必要があります。
一般的な流れとしては、高校卒業後に歯科技工士の養成校に入学するケースです。この養成校というのは幾つか種類があ、2019年8月現在の記録では全国に約50校あります。
歯科技工士養成科といった専門のカリキュラムを受けられる養成校は、四年生大学・短期大学・専門学校の3つに分かれています。
基本的にどの学校も大差はありませんが、専門知識以外の一般教養も学びたい人は四年生大学や短期大学、国家試験を合格するために技術など専門知識を集中して学びたい人は専門学校が良いとされています。
学校卒業後は、国家試験を受けます。試験に合格した後は、国が指定している機関に登録申請の手続きを行うと、歯科技工士として働くことができます。
平均年収は医療系の中では低め
医療技術専門職であることから、歯科技工士もまた医療分野の職種になります。しかしその平均年収は約300~500万円と言われており、他の職種に比べるとやや低い傾向にあると言われています。
しかし日本人の平均年収と比較するとほぼ平均値と同じ値にはなっていますので、広い目でみれば悲観的に見る必要はありません。
また、独立など技術の向上などによって緩やかではありますが給与は上昇傾向にある職種でもあります。そして歯科技工士は高齢化が顕著であり、若手を求める求人も増えています。そのため、今後の傾向に注目できる職種と言えるのです。
働く年齢層が高い職種
歯科技工士が医療系の職種に比べて違うのは、働く年齢層が高いことです。歯科技工士の資格条件では18~40歳と年齢制限がされています。しかし歯科技工士として働いている年齢は20歳~60歳以上とかなり幅広いです。
2018年度の厚生労働省が行った調査によると、歯科技工士として働く年齢層の5割が50~59歳という結果が報告されています。次いで多い年齢が40~49歳、60歳以上と全体的に高齢化している傾向にあることがわかっています。
歯科技工士の国家試験は2019年度まで合格率9割ということから、目指すうえではハードルが低いわけではありません。しかし2009年度と2019年度の希望者数を比較してみると、半数も激減していることが判明しています。
歯科技工士の年齢層が高い原因は、職を目指す人が年々減少傾向にあることも原因として考えられます。そういったことから、若手不足の問題を抱えている技工所も増加傾向にあります。
今後に期待できる仕事
若手不足と高齢化による退職増加により、厚生労働省では検討会を2018~2019年にかけて問題対策のために議論も盛んに行われています。
歯科技工士は歯科医療の根本とも言える仕事であり、1992年から行われている国の健康政策を考えると今後も需要が高まる可能性は大いにあると言えるのです。そのため、歯科技工士は今後も期待できる仕事として挙げられます。
歯科技工士全体の平均年収
仕事において年収というのは生活に直接かかわる要素ですので、歯科技工士で働くうえでも大切な要素となります。医療系の職種と平均年収を比較してしまうと、確かに歯科技工士の年収は低めです。
しかし一般的な職種と比較してみると、決してその年収は低いとは言い切れません。また、歯科技工士は技術が必要な職種なこともあり、年齢以外にもその人自身のスペックによっても年収が変動します。
また、歯科技工士は独立して開業している場合も、年収が異なります。まずは歯科技工士の全体的な年収について、その平均値を確認してみましょう。
厚生労働省調べでは年収500万前後
平成27年度に行われた厚生労働省の調査によると、歯科技工士の年収は500円前後という結果が出ています。しかしこれは年齢や環境に関係なく、歯科技工士すべての年収を平均にした値になります。
2020年に人材派遣会社が行った調査では、一般企業で働いている人の年収は約300~600万と言われています。
この数値と歯科技工士の年収を比較してみれば、一般企業で働いている人とそこまで年収に大きな差はありません。普通に暮らしていくうえでは問題ありませんが、年収を重視して医療系の仕事で働きたいと考えている人にとってはデメリットになります。
また、日本歯科技工士会が2018年に行った調査では、全体の割合で最も多い年収は「200万~300万円未満」という結果も報告されています。平均値に比べてみると、実際の年収は少なめと考えた方が良いでしょう。
また独立している場合の歯科技工士の年収は、「300~400万円未満」となっています。厚生労働省が発表した平均年収と誤差は少ない結果です。やはり独立しているか、いないかは多少なりとも年収に影響する可能性があることがわかります。
もし歯科技工士で働きながら年収アップを目指すのであれば、独立することも視野に入れておくと良いでしょう。
月収は25万~30万超
歯科技工士の年収は、月の給与に換算すると「25万円~30万超」になります。厚生労働省が発表している年齢別の平均月収に照らし合わせると、性別によって誤差はありますがだいたい「20代後半~30代後半」の月収になります。
つまり歯科技工士の給与は、働き盛りの年齢として考えてみると平均値であることがわかります。都内で暮らす人の生活費の平均は約30万円ほどと言われています。
暮らしている場所によってその水準は変動しますが、基本的には生活するうえで不自由しない年収と給与額と言えるでしょう。
年齢別歯科技工士の平均年収と月の給与
歯科技工士の年収は、年齢によっても変化していきます。働く場所にもよりますが、その人が高い技術を持っていたり、役職を与えられたりと個人のスペックも影響されるからです。
新人と熟練のスタッフでは給与に違いが出てくるのは他の職種でも多くみられる傾向ではあります。しかし年収のアップする速さは仕事によってことなります。歯科技工士の実際の月収を年齢別にするとどのくらいの平均になるのか、確認していきましょう。
20~29歳
20~29歳の平均年収は200万~300万になります。月の給与に換算すると15~25万という計算になります。20~29歳は年齢的に歯科技工士として働き始めて経験を積み重ねていく時代になります。
平均的な給与としては多いと断言できる額ではありませんが、伸びしろを考えると一概にマイナスに捉えてしまうのは早計だとも言えます。
30~39歳
30~39歳は400万~500万円になります。この年齢になると仕事を通して経験をかなり積んでいる時期になるので、一般企業でいうところの中堅として活躍する時代です。
歯科技工士は技術力の向上が、給与のアップに繋がっていきます。約30~約40万円の計算になります。またこの年齢になると独立して職場を構える人も出ていきます。すると更なる給与のアップを期待することもできるでしょう。
40~49歳
40~49歳の年収は400万~500万円で、30歳~39歳と差ほど代わりありません。しかし中堅として働いている人もいれば、独立して活躍している人、若い世代の教育に力を注ぐ人などスタンスは多種多様です。
400万~500万円の年収を得ていると仮定した場合、月の給与に計算すると約30~約40万円です。歯科技工士の場合は、急激に年収や給与がアップするわけではありません。
この年齢では技術力だけでなく、独立しているかいなかによっても年収には差が出てくる傾向にあります。
50~59歳
50~59歳の年収は500万~600万です。歯科技工士は20歳~60歳まで幅広い世代が働いていますが、最もその割合が多い年齢層でもあります。歯科技工士の場合、徐々に年収がアップしていくのが一般的です。
そのため年収を100万円アップさせるためには、平均して20年はかかると言われています。つまり早い人だと40代からこの年収になり、遅くても59歳までにはピークを迎える計算になります。
月の給与として計算すると、約40万~約50万円になります。また、年収や給与は働いている職場の規模も変動の要因とされることもあります。
この時点で独立しているケースもありますので、その場合はまた平均値と実際の年収や給与額が異なる場合があるでしょう。
年齢別歯科技工士の給与ボーナス
歯科技工士は年齢によって年収や月の給与に差があります。それは技術力や独立しているかしていないかなど幾つかの要素によって変動されるのが大切なポイントです。
また年収や月の給与だけでなく、ボーナス面も他の企業と金額が異なります。今回は一般的な企業と同じく春と夏で年2回の給与ボーナスがあると仮定した給与ボーナスを年齢別に紹介していきます。
20~29歳
20~29歳の給与ボーナスは約50~60万になります。あくまで平均ではありますが、年収と比較してもボーナスに誤差はありません。
給与ボーナスについて比較する場合は、年齢だけでなく性別や学歴によっても差があります。また、20~29歳までは新社会人からある程度働いて活躍している年齢でもあるので、立場によってもばらつきがあります。
もし歯科技工士を目指しているのであればひとつの目安として、転職などを考えている人は求人を確認する参考と考えておくと良いでしょう。
30~39歳
30~39歳になると、歯科技工士でも新人よりも経験を積んでいるので役職に就く人も出てきます。そのため、働いている立場や環境によって年収だけでなく、給与ボーナスも人によって差が出てきます。
給与ボーナスの平均は、30~39歳だと約70万~80万だと言われています。5歳刻みにして給与ボーナスを比較してみると、給与ボーナスは80万を超えている人はかなり少ない傾向にあります。
40~49歳
40~49の年齢になると熟練スタッフとして活躍している人が殆どなため、20代や30代とは異なりその給与ボーナスの額も大きくなります。
その平均の給与ボーナスは約80万~90万円です。20歳~29歳の給与ボーナスと比較してみると倍近い数字になっていることがわかります。
歯科技工士は年収と同じく給与ボーナスも比較的緩やかにアップしていきます。そのため、金額として大幅なアップを目指すには長く働き続けることが大切です。
50~59歳
50~59歳になると給与ボーナスの平均は約90万~100万円になります。歯科技工士として現役で働いている人を年齢別に見てみると、だいたい40代~60代の人が多くの割合を占めているのがわかります。そのため、給与ボーナスもこの年代でピークになります。
独立開業した場合の歯科技工士の年収
歯科技工士の強みとして技術力さえあれば独立して働くことが可能です。まず技工所である程度の知識や技術を身に着け、必要な資金など準備が整い次第、必要な手続きを済ませていきます。
独立をする理由も歯科技工士によって様々ですが、年収や給与面のアップを考えて行動するケースも決して少なくはありません。また国内にある技工所の八割は従業員が一人となっており、将来的に独立を目指す歯科技工士が多いことがわかります。
その年収額は技工所で働く場合と異なるので、独立した歯科技工士のモデルケースについても知っていきましょう。
平均は400万円前後
独立した歯科技工士の年収は400万円前後と言われています。一般企業で働く人の年収とほぼ差はありません。
どの職種にも共通していますが、歯科技工士も同様に独立すれば自営業になります。そのため、一般的な自営業の平均年収と比較してみた場合も、年収の平均値に近い数値になっています。
しかし独立した場合の歯科技工士は、技工所で働くのと違い、仕事を依頼される形になります。つまり仕事を依頼されなければ年収額は大幅に下がってしまうのです。
技術があれば一人でも経営できる点は強みでもありますが、仕事面において苦戦するケースは少なくありません。そのため、歯科技工士で独立したい場合は、ある程度リスクがあることを理解して行動した方が良いでしょう。
業務形態によっても異なる
独立して開業している歯科技工士のほとんどが、フリーランスのような形態で経営しています。その理由としては、技術と道具さえあれば依頼された詰めものや入れ歯など歯科医療に必要なアイテムが作成可能だからです。
専門知識が技術は必須となりますが、独立して開業しやすい職種という点において歯科技工士は大きなメリットと言えます。
しかし中には法人化して少人数のスタッフで経営している技工所も存在します。従業員の平均人数はし3人から~9人とかなりばらつきがあります。
従業員の人数は技工所がどれくらいの規模なのか直結している要素になります。つまりそのほとんどは小規模な形態をとっているということがわかります。
しかし規模が多く従業員が多いということは、それだけたくさんの仕事を受注しているということです。つまり将来的には、独立後にも年収がアップする可能性があります。
1000万円超も夢じゃない
歯科技工士は医療系のなかでは年収が低めと言われています。しかししかしこれはあくまで技工所に雇われている場合の平均年収なので、独立した歯科技工士の年収はまた少し異なります。実は、年収1000万円を目指すのは不可能なことではないのです。
独立して開業した歯科技工士でも、その一割が約1000万円以上の売り上げを叩き出しています。全体的な平均売り上げは約940万円という数値から見ても、歯科技工士は一定の需要がある職種であることを証明しています。
自営業の場合は、人件費など経費を引いていく必要があります。そのため、平均の売り上げが年収に直結するわけではありません。しかし独立して開業した歯科技工士の多くは、売り上げによる収入が1000万円に近い数値を叩き出していることから、年収1000万円は実現可能な年収と言えるのです。
2018年に日本歯科技工士会が行った調査によると、約1000万円以上の年収を得ている人は約10%という結果も発表されています。つまり独立のした方が、年収の水準は高めであることがわかります。
また技工所が開業されてからの経過年数で「20~25年」が最も多くの割合を占めています。独立すれば倒産や廃業などのリスクを考える必要がありますが、歯科技工士は軌道に乗せることができれば長く働ける職種でもあるのです。
歯科技工士の年収は会社員よりも高め
歯科技工士は、歯科医療において欠かせない存在です。だからこそ若手不足は深刻な問題です。働くためには資格と国家試験の合格が必須ですが、合格率は9割と高い傾向にあります。
また、年収や給与、ボーナスは日本の平均額から見ても決して少なくはないと言えます。大幅なアップを目指すには独立をしたり、経験を積み重ねて技術を上げていく必要がありますが、実現不可能な道ではありません。
今後の求人も増える可能性が高いので、歯科技工士として歯科医療の第一線で働くことを目指してみてください。