「万夫不当」の意味とは?
とあるアニメ・ゲームでは、「万夫不当の英雄王」「万夫不当の英霊」という使い方をされています。非常にかっこいい表現ですが、そもそも「万夫不当」はどういう意味なのでしょうか。また、正しい読み方はなんなのでしょうか。
「万夫不当」とは、多くの人が立ち向かってもかなわないほど強いこと、を意味する四字熟語です。「ばんぷふとう」が正しい読み方なのですが、「まんぷふとう」のような間違った読み方をしてしまった方もいるのではないでしょうか。
今回は、「万夫不当」の類語、使い方や由来について紹介します。「万夫不当」は座右の銘としても使えるので、気に入った方は座右の銘にしてみてはいかがでしょうか。
「万夫不当」の類語
「万夫不当」の類語には、「一騎当千」「百戦錬磨」「一人当千」「蓋世不抜」などがあります。どの類語も、人並み外れて強いこと、優れていること、という意味です。
「一騎当千」と「百戦錬磨」は、割とよく聞く表現なので読める方も多いはずです。しかし、残りの「一人当千」と「蓋世不抜」の読み方はわかるでしょうか。「一人当千」の読み方は「いちにんとうせん」です。「蓋世不抜」の読み方は「がいせいふばつ」になります。
「一騎当千」は、一騎で千人の相手をできるほど強いこと、という意味です。転じて、人並み外れた能力を持っていること、という意味もあります。「百戦錬磨」は、多くの戦いで鍛えられていること、という意味です。経験豊富なこと、という意味もあります。
「一人当千」は、一人で千人の相手をできるほど強いこと、という意味です。「蓋世不抜」は、世の中を圧倒するほどの優れた才能や気性をもっていること、という意味です。
「万夫不当」の使い方・例文
「万夫不当」の類語はいずれも、人並み外れて強いこと、優れていること、という意味を持っていました。「一騎当千」や「百戦錬磨」は有名な四字熟語なので、使い方を知っている人も多いでしょう。
では、「万夫不当」はどのような使い方をすればいいのでしょうか。結論から言うと、基本的には類語と同じ使い方をすれば問題ありません。例文で示しながら、「万夫不当」の使い方を見ていきましょう。
例文①
「万夫不当」は、多くの人が立ち向かってもかなわないほど強いこと、という意味でした。この意味からわかるとおり、類語の「一騎当千」や「百戦錬磨」のように、人並み外れて強いこと、優れていることを表現するために使います。
「彼は万夫不当の勇士だ」のような使い方です。「万夫不当」は人に対して使われることが多いです。そのため、基本的にはこの使い方を覚えていれば大丈夫です。冒頭で紹介した「万夫不当の英雄王」「万夫不当の英霊」という表現も、人に対して使われたものになります。
例文②
「万夫不当」や類語の意味から、「万夫不当」は人にしか使えない印象を受けた人もいるでしょう。しかし、類語とは異なり、「万夫不当」は人以外にも使うことができます。
詳細は後述しますが、「万夫不当」はきわめて守りの堅い関所を表現した言葉が由来です。そのため、「あの建物は猛吹雪のせいで万夫不当の要塞と化した」のような使い方もできます。
この使い方は、「万夫不当」の元になった言葉に由来するものです。そのため、「一騎当千」や「百戦錬磨」などの類語では、「一騎当千の要塞」というような使い方はできませんので注意してください。
例文③
類語の「一騎当千」のように、「万夫不当」も座右の銘として使えます。座右の銘とは、戒めや励ましのために常に自分の心にとどめて言葉のことです。日常では、あまり座右の銘を公言することはありませんが、自己紹介や面接で聞かれたりすることがあります。
「万夫不当」と呼ばれるような優れた人物になりたいという気持ちを込めて、「座右の銘は万夫不当です」と答えてみてはいかがでしょうか。「万夫不当」の意味をスラスラと答えることができれば、いいアピールになるでしょう。
「万夫不当」の由来・歴史
「万夫不当」は人以外にも使えると説明したときに、きわめて守りの堅いことを表現した言葉が由来であることも紹介しました。その由来となった言葉は、どのような言葉だったのでしょうか。「万夫不当」の由来について、詳しく見ていきましょう。
由来
李白という人物をご存知でしょうか。もしかしたら、古典や歴史の授業で名前を聞いたことのある人もいるかもしれません。昔の中国の詩人で、後に『詩仙』と称されたほどの人物です。「万夫不当」という言葉は、彼の「蜀道難(しょくどうなん)」というタイトルの詩に由来します。
李白は「蜀道難(しょくどうなん)」で、剣閣(中国にある山の名。剣門山とも)の山道がきわめて険しいと述べています。原文では、その険しさは「一夫當關 萬夫莫開」とのことです。書き下し文にすると、「一夫関(かん)に当れば万夫も開くなし」となります。
この書き下し文を現代語訳すると、「一人が(剣閣の)関所を守れば、一万人が攻めても開きはしない」という意味になります。この「一夫関(かん)に当れば万夫も開くなし」という言葉が、「万夫不当」の由来になった言葉です。
歴史
「万夫不当」の由来は、李白の詩「蜀道難(しょくどうなん)」の「一夫関(かん)に当れば万夫も開くなし」という言葉です。上述のとおり、元々はきわめて守りの堅いことを表現した言葉でした。
しかし、現代の「万夫不当」は、多くの人が立ち向かってもかなわないほど強いこと、というのが主な意味です。人に対して使われることが多くなっています。歴史の流れとともに、言葉の意味や使い方が変わったためです。
「万夫不当」の英語表記
「万夫不当」は、中国の古い詩に書かれている「一夫當關 萬夫莫開」という言葉が由来でした。元になった言葉を中国語でどう表記するのはわかりました。それでは、英語ではどのように表記すればいいのでしょうか。
人に対して使う場合
人に対して使う場合、「万夫不当」と類語の「一騎当千」はほとんど同じ使い方ができます。これは英語にも当てはまるので、「一騎当千」の英語を確認しましょう。「一騎当千」の英語の一例として、「mighty warrior」があります。強大な戦士、という意味です。
この「mighty warrior」を「万夫不当」の英語として使っても問題ありません。「彼は万夫不当の戦士だ」を英訳すると、「He is a mighty warrior.」になります。
無敵の、という意味のある形容詞「invincible」もおすすめです。「He is invincible in soccer.」で、彼はサッカーでは無敵だ、という意味になります。
人以外に対して使う場合
「万夫不当」を人以外に使いたい場合はどうすればいいのでしょうか。人以外に使うときは、きわめて守りの堅いこと、という意味になります。
難攻不落の、という意味の形容詞「impregnable」を使うのがいいでしょう。「an impregnable fortress」で、難攻不落の要塞、という意味になります。李白が「蜀道難(しょくどうなん)」で詠んだ元々の言葉にもぴったりです。
「万夫不当」の漢字
「万夫不当」の意味や元になった言葉を見てきましたが、それぞれの漢字はどのような意味を持っているのでしょうか。改めて「万夫不当」の漢字について詳しく見ていきます。
「万夫」は、多くの人、という意味です。「当」は、あたる、という意味になります。否定の「不」がついて「不当」になることで、かなわない、という意味に変わります。そのため、「万夫不当」は、多くの人が立ち向かってもかなわないほど強いこと、という意味になるわけです。
ちなみに、「万夫不当」は現代では「ばんぷふとう」と読みますが、訓読した場合は「万夫当(あた)らず」と読みます。訓読とは、漢文を直訳的に読むことです。「万夫不当」を座右の銘にしている人は、意味を説明するときにさらっと訓読もできたらかっこいいかもしれません。
「万夫不当」は「多くの人が立ち向かってもかなわないほど強いこと」という意味
「万夫不当」は、多くの人が立ち向かってもかなわないほど強いこと、という意味になります。「万夫不当」自体は聞き慣れない言葉なので、日常ではあまり使うことはないでしょう。しかし、類語の「一騎当千」などと同じような意味だとわかれば、使い方もすぐに理解できます。
「万夫不当」は座右の銘として使うこともできる言葉です。今後の自己紹介や面接でビシッと決めるためにも、人並み外れた優れた人物になりたいという気持ちを込めて「万夫不当」を座右の銘にしてみてはいかがでしょうか。