ミスディレクションとはどういう意味?
ミスディレクションは英語で「misdirection」のことで、もともとの意味は「誤った指導」「(手紙の)宛名違い」「誤った情報を伝える」などを表現する言葉です。
マジックではミスディレクションを利用して、マジシャンのテクニックと合わせて様々なトリックを仕掛けているのです。
つまりミスディレクションの意味は、人の視線や思い込みを違った方向に誘導するテクニックのことです。ミスディレクションはマジックだけでなく、他の分野のスポーツや日常生活の中でも利用されているテクニックです。悪用されて犯罪に使われるケースもあります。
トリックが見破られないようにする技術
ミスディレクションはマジックでトリックが見破られないようにする技術として良く使われます。
たとえば右手の中にコインを握り、右手を高く差し上げます。観客の視線は高く上げた右手に誘導され、その間に左手でトリックを仕掛けます。視線誘導のミスディレクションです。
また話術で「コインはこの右手の中に握られていますね!」と強く断言することで、観客の思い込みの誤認を誘い、その後で右手をおもむろに開くと手の中には何もありません。
もうすでにトリックは完了しているのです。これは人の思い込みを利用したミスディレクションです。このようにマジックでは様々なミスディレクションを利用して、トリックが見破られないようにしているのです。
ミスディレクションの種類
マジックだけでなく推理小説など様々な分野で利用されているミスディレクションには、どんな種類があるのでしょう。また人間のどんな心理や性質を利用してミスディレクションに誘導しているのでしょう。
ミスディレクションを起こすのは一体どんな状況、やり方に起因するのでしょう。ミスディレクションには主に3つの種類があります。これからその内容や意味を紹介していきます。
タイムミスディレクション
タイムミスディレクションは言葉どおりタイム(時間)を利用して錯覚させるテクニックです。人は時間をあけてから結果を提示すると「あれっ心を読まれたのかな?」「超能力みたい!」と錯覚してしまう傾向があります。
時間差を利用して錯覚させるのがタイムミスディレクションです。たとえば恋人同士の女性のほうが何気なく「赤い色が好きなの」と呟いたのを、男性が覚えていて、しばらく時間が経った頃に赤い色のバッグをプレゼントすれば「えっどうして私の好みが分かったの?」と錯覚して驚きます。
マジックで言えば、カードの中から1枚のカードを選んで覚えて下さいと言った後、あなたの覚えたカードはこれでしょうと言ってわざと一度間違えます。
そして少し時間をあけてから、それでは胸のポケットを見て下さいと言うとそこに覚えたカードがあるというトリック。時間差を利用してサプライズを演出するタイムミスディレクションのテクニックです。
サイコロジカル・ミスディレクション
サイコロジカルとは心理学的とか精神学的と言う意味で、サイコロジカル・ミスディレクションとは言葉どおり人間の心理や思い込みを利用したミスディレクションのテクニックです。
サイコロジカル・ミスディレクションを犯罪に悪用したのがオレオレ詐欺です。「俺だよ俺」といって思い込みの心理を誘導し、緊急を装い焦らせることで判断能力を失わせて人を騙す犯罪です。惑わされないように注意しましょう。
マジックでカップにコインを落とすシーンが良くあります。チャリンと音がすれば観客はカップにコインが落ちたと思い込みます。
ところがカップには何も入っていないと言うトリックは、人の先入観を利用したミスディレクションです。マジシャンがこっそり別の場所でチャリンという音を立てても、観客は目の前にあるカップにコインが入ったと思い込んでしまうわけです。つまり音を使ったサイコロジカル・ミスディレクションです。
フィジカル・ミスディレクション
フィジカルとは肉体的とか身体的、物理学的などの意味を持つ英語です。フィジカル・ミスディレクションとなると身体的、物理的な動作や目線を利用してミスを誘導するテクニックという意味になり、バスケやサッカーでも使われるミスディレクションです。
サッカーやバスケなどのスポーツで、パスをすると見せかけてシュートをする、見ている顔の向きと逆方向にパスを出すなどのフェイクモーションは、まさにフィジカル・ミスディレクションを応用した動作です。
マジックで右手でコインを高く投げ上げたように見せかけて、実は左手にこっそり隠し持っているなどもフィジカル・ミスディレクションです。
つまり常識的な動作の予測を裏切るように、常識的な思い込みの裏をかいて相手の目線や思考をミスリードするのがフィジカル・ミスディレクションです。フィジカルはバスケなどのスポーツだけでなくマジックでも重要なのです。
その他のミスディレクションの種類
これら主な3つの他にもミスディレクションには色々な種類があります。たとえばテレビ番組などでの活躍するメンタリストのDaigoさんの用いる心理誘導のメンタリズムもミスディレクションの種類に入ります。
また暗示やリラクゼーションで意識の覚醒レベルを下げ、行動や記憶を誘導していく催眠術や催眠療法にもミスディレクションのテクニックが応用されています。このように色々と応用されるようにミスディレクションには多くのやり方や種類があるのです。
ミスディレクションが使われる場面
ミスディレクションが使われる場面は数えきれないほど沢山あります。普通に見過ごしている日常の生活の中でも、ひょっとしてミスディレクションだったかも知れないということが多々あります。意外な場面でも使われているのです。これから代表的な使われている場面を紹介しますが、これらを参考にしてあなたなりに探してみるのも面白いものです。
マジックで使われている
マジックの種類にはカードやコインを使ったテーブルマジックと言われる小規模のものから、大掛かりな道具を使った大脱出、空中浮遊などイリュージョンといわれる大規模なマジックまであります。
そのマジックのトリックのほとんどがミスディレクションを利用していると言っても過言ではありません。
マジックは視線誘導、心理誘導、思い込み誘導、常識の盲点など、あらゆる種類のミスディレクションを駆使して、話術とテクニックで観客を驚かせて楽しませるショーです。つまり種類の豊富さと言う意味でマジックはミスディレクションの集大成とも言えるのです。
推理小説で使われている
推理小説ではよくサングラスの男や怪しげな女性が登場します。その登場人物の風貌が読者に、何かが起こりそうと先入観を持たせるのです。
そしてミスディレクションを利用して読者の心理を操って行きます。なんと言っても推理小説の最大の面白さは、結末での大逆転劇です。
最後の最後までミスディレクションで読者の推理を別の方向に引っ張って行き、ラストの結末で全く予想してなかった形でどんでん返しを食らわすのが推理小説の醍醐味です。
つまり推理小説はあらゆる種類のミスディレクションをあらゆるやり方で、読者の推理を結末の答とは全く違う方向にどんどんと誘導して行くのです。だからこそ結末のどんでん返しがサプライズと感動を与えるのです。
言葉を変えると、いかに多種類のミスディレクションを作品に盛り込むか、いかに様々なやり方で心理誘導をするか、いかに新しいミスディレクションを生みだすかが推理小説の作品の命とも言えます。
黒子のバスケで使われている
「黒子のバスケ」は単行本の発行部数3000万部を突破している超人気バスケ漫画で、テレビアニメやゲームにも登場する大ヒット作です。
高校のバスケ部を舞台にするスポーツ漫画ですが、なぜミスディレクションと関係しているかと言うと、主人公の黒子テツヤのキャラクターがミスディレクションそのものだからです。
黒子テツヤは普段から影の薄い存在で、そばに立っていても気づかれない位の存在感のなさです。バスケではシュートも満足に打てない技術レベルですが、並外れた観察眼とパスワークの上手さだけは群を抜いていました。
そのため試合では存在感のなさを利用したミスディレクションのパス回しで、次々と得点に結びつける才能がありました。
バスケの強豪校のチームメイトで10年に一度の逸材が同時に5人集まった「キセキの世代」と呼ばれるバスケの天才メンバーからも一目置かれ「幻の6人目」と呼ばれる存在なのです。
黒子テツヤのバスケは視線誘導を利用したミスディレクション、フェイクモーションで得点をあげる活躍をしたのです。つまりこのバスケ漫画は、ミスディレクションという言葉にあまり馴染みの無かった日本人の多くに、バスケを通してその意味を定着させた作品でもあるのです。
映画やドラマで使われている
映画やドラマでもミスディレクションは良く使われているテクニックです。推理小説と同様に筋書きが意外な方向に展開にすることは観客を映画やドラマの中に引き込むテクニックです。
意外性を持たせるにはミスディレクションがあちこちにちりばめられていることが必要になります。つまり映画やドラマの構成要素にミスディレクションは必要不可欠なのです。
またクイズ番組の引っかけ問題にも、先入観や思い込み誘導のミスディレクションが使われます。漢字クイズやことわざクイズでも、何となく誤認していた隙間をミスディレクションで誘導して回答を迷わせるのです。
ミスディレクションの使われ方や、やり方は千差万別です。映画やドラマの面白さにもなりますが、クイズのミスジャッジにもなるので注意しましょう。
ミスディレクションのやり方①マジックでのテクニック例
マジックはミスディレクションのやり方、ミスディレクションの意味やテクニックの種類の豊富さで言えば、ミスディレクションの宝庫と言えます。
マジシャンはトリックを考える上でミスディレクションを最大限に利用していかに観客の視線や心理を騙そうとテクニックを駆使します。また常に感覚を鍛える練習も欠かしません。
つまりマジシャンとはミスディレクションのやり方、使い方のプロなのです。マジックの様々なテクニックの例をあげて、トリックのミスディレクションを検証してみましょう。
テクニック例①オーディエンスを言葉で誘導
オーディエンスとは英語で観客や聴衆と言う意味です。オーディエンスを言葉で誘導するとは、マジシャンの話術で観客の心理や視線をトリックが分からないように誘導するミスディレクションテクニックのことです。
バスケやサッカーの選手が、フィジカルトレーニングの他にミスリードを誘うファイクモーションを練習するのと同じで、マジシャンは手先のテクニックの他に話し方・話術のテクニックを磨く必要があるのです。
どんなに手先のテクニックがあっても、オーディエンス(聴衆)を言葉で魅了させ、話術でミスディレクションを誘発させるテクニックが無ければマジックは完成しません。マジックのトリックは上手なフィジカルテクニックと上手い話術の共同作品なのです。
テクニック例②別の動作に注目させる
別の動作に注目させるテクニックも、マジックの典型的なミスディレクションの応用です。黒子のバスケの視線誘導や、サッカーやバスケのフェイクのように、本来の動作を他の動作に注目させることによりトリックを完成させるやり方です。
人の視線や意識はどうしても動きにつられて派手な動作の方を注目します。その性質を利用してトリックを完成させるのです。
腕を高く上げる、グルグル速く回す、ものを投げ上げる、手を叩く、指を鳴らす、様々なやり方でその動作に注目させ、視線や関心がその方向に向いている隙をついてトリックを仕掛けるのです。つまり別の動作に注目させるテクニックはマジックにとっては重要なミスディレクションなのです。
テクニック例③オーディエンスに先入観をもたせる
オーディエンス(観客)に先入観をもたせるとは、人の常識や思い込みを利用するテクニックです。空のカップを振ってカラカラと音がすれば中に何か入っていると思い、ドサッと音がすれば何か物が落ちたと思うのが人の先入観です。
その先入観を逆手に取ってマジックに応用するやり方が、オーディエンスに先入観をもたせるテクニックの例です。
例えばまず空のカップの中を観客に見せます。次にコインをカップに入れる振りをしてチャリンと音を立てます。これでカップにコインが入ったと観客は思い込みます。
さらに2枚目を入れるとコインとコインがぶつかる音がします。これで2枚カップに入ったと錯覚します。3枚4枚と続けて行き最後にそれではと言ってカップの中を見せるとコインは消えて何も入っていない空の状態です。
もちろんコインが消えたのではなく始めから入っていないのです。音がすると言うミスディレクションを使って、先入観でコインが中に有ると思い込ませたのです。
さてここからがマジシャンの腕の見せ所です。消えたコインは耳の後ろから、観客の胸のポケットから、奇想天外な場所から現れて拍手喝采となるのです。
カード使う場合などテーブルマジックと呼ばれる種類のマジックにおいては、オーディエンス(観客)に先入観をもたせ、それをサプライズに繋げるテクニックは話術と同様に基本的なスキルなのです。
ミスディレクションのやり方②日常生活でのテクニック例
ミスディレクションは日常生活のなかでもやり方、利用の仕方によっては大変意味のあるテクニックになります。しかし残念ながらオレオレ詐欺のようなやり方で悪用されているのも事実です。
ミスディレクションは上手に正しい方向でそのテクニックを利用すれば日常生活を豊かにするアイテムでもあるのです。日常生活でのテクニックの例や、やり方の種類をこれから紹介します。
思い込みや偏見を利用する
これはマジックでよく利用されているテクニックですが、普段の日常生活でも無意識のうちに利用されているのです。例えば人と面談する時にスーツを着ているだけで、律儀でまじめな印象を与えます。
逆にプロジェクトチームの会合などで上司がラフな服装でいると、話しやすく議論が活発になることもあります。つまり服装だけで相手の心理が変るのは、思い込みや偏見のミスディレクションが大きく作用しているのです。
つまり無意識のうちに普段の生活の中でもミスディレクションを利用しているのです。思い込みや偏見を利用するというと何か後ろめたいイメージがあるのですが、決してそうでは無いのです。人間関係やコミュニケーションの向上と言う意味で役立っているのです。
記憶の曖昧さを利用する
日常のなかで使われるミスディレクションに、記憶の曖昧さを利用するやり方があります。人の記憶は時間が経つとだんだん曖昧になっていきます。
例えば「私あの時AとBのどっちを選んだっけ?」など記憶が曖昧になった時、友人が「あなたは確かAを選んでいたわ」と言われればその気になってきます。
さらにもう一人の友人が「そうよあなたはBを選んでいたわ!」と言われれば、あなたの気持ちは完全に他の人に同調してBに傾いてしまいます。
また夫婦喧嘩で「おまえがこう言ったからいけないんだ」「いやあなたがそう言ったんでしょ」などの言い争いもミスディレクションで、言い合えば言い合う程どんどん記憶にズレが出てきて収まりがつかなくなるのです。
このように日常でも記憶の曖昧さを利用したミスディレクションが、記憶や気持ちを誘導してしまうのです。警察で目撃者情報の事情聴取を基本的に一人一人で行うやり方は、ミスディレクションで本人の記憶が他人の記憶に同調することを防ぐ為のやり方なのです。
同時進行を利用する
日常のなかで同時進行を利用したミスディレクションがあります。人はいくつかのことを同時に行うと、どちらか一方がおろそかになったり、注意が散漫になったりします。
その性質をミスディレクションに利用するのです。幼い子供をあやす時によく見られる光景で、泣いている子供におもちゃやお菓子などで興味を別な方向に向けて泣き止ませるやり方です。無意識でやっている行動ですがミスディレクションを利用したやり方です。
子供の興味を他に向けさせるのは良い種類のミスディレクションですが、悪い種類で利用されたミスディレクションの例は、投資詐欺の説明会や宣伝パンフのなかに利用されるケースです。
投資詐欺では、世の中にそんな上手い儲け話があるはずは無いと言う懐疑心と、ひょっとして儲かるかも知れないと言う期待感の心理の同時進行を悪用しています。
説明会などで成功した人のもっともらしい話や、あなたも数ヶ月でセレブの仲間入り!などの誇大な宣伝文句を次から次とたたみ掛けられると、懐疑心の注意が薄れ、期待感に誘導されてしまいます。
また照明効果や音楽を使ったマインドコントロールもあります。これが同時進行のミスディレクションを悪用した詐欺の手口、2つの心理状況の一方の注意を散漫にさせる詐欺のやり方なので注意しましょう。
会話を誤魔化す
会話を誤魔化したり話をすり替えて本筋をずらすのは日常でよく使われるミスディレクションの1つです。相手と議論中に、形勢が悪いときや突かれてはまずい時などに、話題を変えたり、話をすり替えたりする行動はよく見られます。
話の本筋を変えることによって弱みを回避しようとする自衛行動で、ほとんど無意識の場合が多いようです。しかし議論に正面から向きあわず誤摩化すのは、後々の自分のスキルや成長という意味では、あまりおすすめ出来ない種類のミスディレクションです。
スリの世界でも使われる
これは悪い意味でミスディレクションが使われた例です。何気ない会話で相手に近づき、気づかない内に物品を奪い取ったり、相手にわざとぶつかり、その瞬間に財布を抜き取るなどはスリの世界の常套手段です。
これらのスリの手口は、相手の注意を他に向けさせておいた隙に物品を盗み取るミスディレクションの悪用です。
外国や観光地などでよく見られる置き引きもミスディレクションの悪用です。仲間と組んで一人が写真を撮ってくれと近づき、カメラを向けようと荷物を置いた隙に、別の仲間が荷物をうばって逃げると言う手口があります。
また空港などで道を聞く振りをして近づき、教えることに気を取られ注意が薄れた瞬間に荷物を奪う手口などもあります。オレオレ詐欺、投資詐欺、スリ、置き引きなど様々な種類の犯罪でミスディレクションが使われていると言う実例です。くれぐれも注意するように心がけましょう。
ミスディレクションは誤認ではない
誤認とは、「誤ってそれと認めること」「ある事物を他の事物とまちがえて認めること」と言う意味で、誤認逮捕などのように使われます。
ミスディレクションは誤認するように誘導することなので、誤認とは少し意味合いが違います。誤認は言葉どおり「誤ってそれと認めること」で、ミスディレクションは誤認させるテクニック、手段を指す言葉です。ですから言葉の意味としては、ミスディレクションは誤認ではないと言えます。
マジックにおけるミスディレクション
マジックの世界ではミスディレクションのことを「誤認誘導」とも言います。つまり観客の視線や心理、認識を間違った方向に誘導するテクニックがミスディレクションなのです。
マジックを少し心理学的に分析してみます。テクニックという意味ではマジックも推理小説も黒子のバスケも誤認誘導です。ミスディレクションは心理学的表現では「不注意による見落とし」と呼ばれています。
マジックでは本来注意して見なければいけない情報を、他の情報を与えることで「不注意による見落とし」を誘導するのです。
観客はマジシャンのミスディレクションで、本来あったはずの情報を見落とすように仕向けられているのです。ですから最後に本来あった情報を見せられると驚くのです。不思議だとかサプライズという気持ちは誤認誘導による「不注意による見落とし」から起こる心理現象なのです。
ミスディレクションを成功させるコツ
ミスディレクションの種類を最も利用しているのがマジックです。マジックはトリックが見破られては商売になりません。
観客をどうやって魅了し、どうやってサプライズを見せて喝采を浴びるのか、マジシャンのテクニックや話術を知ることで、ミスディレクションを成功させるコツが見えてくるはずです。
マジシャンはまず巧みな言葉で観客の心理を誘導します。「タネも仕掛けもありません」と言うことで観客は何か仕掛けがあるはずと注意深く一挙手一投足に目がいきます。
人の目はある一点に集中すると必ず不注意に見ていない部分が出てきます。マジシャンの最初のひと言でもうすでにミスディレクションの誘導が始まっているのです。
次にここに1枚のカードがありますと言ってカードを見せます。この「1枚」という言葉がくせ者なのです。人は1枚と言われただけで1枚だと先入観を持ってしまいます。実は2枚重なっているかも知れないのです。
このようにマジシャンの使う言葉はタイミングや動作でミスディレクションに誘導しているのです。この他マジシャンの典型的なテクニックは「注意をそらす」「油断させる」「思い込みをさせる」などがあります。もちろん一流のプロのマジシャンはこれらのテクニックが落ちないように日々訓練しているのです。
繊細さと大胆さ
マジックには繊細な手先のテクニックが必要ですが繊細なだけではマジックは成功しません。時には大胆な動作や言動が必要になります。
繊細さと大胆さの両方があるからこそ、観客を困惑させミスディレクションを成功させ魅了することが出来るのです。繊細なだけではマジックが小さく纏まってしまい大きな喝采は得られないのです。大胆さがあればこそ大きなサプライズが生まれ、マジックそのものを大きく見せられるのです。
マジックが上手くなる方法
プロのマジシャンになるわけではないけど、一寸したマジックが出来ればイベントや隠し芸大会で人を楽しませることが出来て楽しいかもしれません。
もちろんそれには練習が必要なのですが、やみくもにアレコレとやるのは反って上達が遅れます。とにかくカードマジック、コインマジック、ハンカチのマジックなど1つに絞って練習するのが上達の早道です。
バスケやサッカーの練習でも1つの要素に絞った練習方法、黒子のバスケでもテツヤがパス回しに特化したように、例えばシュートの練習、パスの練習、ドリブルの練習、とにかく自分の一番得意な物を見つけることが練習にも熱がはいり上達が早くなります。
マジックでも同じで自分に合ったもの、得意な物をまずは見つけて、練習アイテムを絞って特化することが上手くなる早道かもしれません。
ミスディレクションはマジックだけでなく日常でも使える!
ミスディレクションはこれまで紹介したように、マジックだけでなくスポーツでも推理小説、映画やドラマなど様々な分野や、日常でも使えるテクニックです。しかし日常では人を騙すためや、自分を誤摩化すために使われることもあります。
オレオレ詐欺や投資詐欺のように犯罪に利用されることもあります。正しく使えば人生を豊かにするテクニックなのですが、間違った使い方をするとダークにもなります。ミスディレクションにはプラスの面とマイナスの面の両方の性質があることを認識して、正しく使うように心がけましょう。