「交代」と「交替」の意味とは?
「交代」と「交替」は使い分けが難しい日本語の一つです。どちらも「こうたい」と読みますが、同音異義語ではありません。「交代」と「交替」はどちらも「役割や順番を入れかえる・かわる」という日本語としてはほとんど同じ意味を持っています。
厳密にいえば「交代」は「役割や順番を別の人・モノに受け継ぐ」という意味で、基本的に受け継がれた人・モノが元にかえることはありません。
一方「交替」は「役割や順番を代わり番こに受け持つ」という意味で、輪番制のように何度でも同じ役割や順番を務める可能性があります。
このように、「交代」と「交替」は基本的な意味に大きな違いはありませんが、微妙なニュアンスの違いがあります。そしてその使い方には例外も多く、「交替」の意味で「交代」が使われたりすることがあることを念頭に置いておきましょう。
「交代」と「交替」の言葉の由来
「交代」も「交替」も「交」の字は同じですから、「交代」と「交替」の違いは「代」と「替」ということになります。「交」は「人がすねを組む形」を字にしたもので、「まじわる」「かわるがわる」などの意味になります。
「代」の字は「横から見た人」「2本の木を交差させてつくった木」を字にしたもので、「かわる」という意味になります。一方の「替」の字は「太陽の下で2人の役人が引継ぎを行うさま」を字にしたもので、次第に「かわる」を意味するようになりました。
「交替」は古く律令制の時代から使われており、役人(特に国司)が人事異動で事務引き継ぎをする際に使われていました。
「代」には「とりかえる」という意味があり、「替」には「いれかえる」という意味があります。「交代」は「とりかえる」のですから、かえるのは基本的に一回限りのニュアンスがあり、「交替」は「いれかえる」のですから、かえる回数を制限するニュアンスはありません。
「交代」と「交替」の違い
「交代」と「交替」はどちらも「役割や順番をかえる・かわる」という意味があり、日本語的に大きな違いはありません。
ただし実際の使い方としては、「交代」は「社長交代」「世代交代」のように「かえる・かわる」ことが一回限りの場合に使われることが多く、一方の「交替」は「当番交替」「一日交替」のように「かえる・かわる」ことが何度も繰り返される場合に使われるという違いがあります。
あまり厳密に使い分けに神経を使う必要はありませんが、日常生活の中で使うシーンが少し異なる場合があるという認識で構いません。
言葉としては「交代」の方が「交替」よりやや広く使われており、「交替」の意味で「交代」が使われることも珍しくありません。
「交代」と「交替」の使い方
「交代」と「交替」の微妙な意味の違いが理解できたところで、両者の具体的な使い方を見てみましょう。ビジネスシーンやプライベートなシーンでも実は「交代」と「交替」の違いを意識しないで使うことが多くあります。例文で両者の使い方・使い分けをしっかり身につけましょう。
「交代」「交替」の使い方のコツ
「交代」と「交替」の使い分けは、かえる回数が一回なのか繰り返し行われるかの違いですが、その使い方にはコツがあります。
ローテーションの中で人やチームがくるくるいれかわる場合には「交替」を使い、そのほかのかわる場面では「交代」を使うようにすれば使い方に大きな間違いはありません。
もちろん例外はありますので、慣用句などに注意しながら「交代」「交替」を積極的に使っていきましょう。
例文①
「我が社では次回の役員会で大幅な役員交代が実施されるようだ。これで我が社の勢力図も大きく変わることになる。現在のA常務一派は今後冷や飯を食わされること間違いない。」
会社でよく見られる役員人事刷新の例文です。前職の人が退いて別の人がそのミッションを引き継ぐ場合は「交代」が使われます。例外を除けば、退いた人が復帰することはまずないからです。役員交代には輪番という概念はありません。
例文②
「ピッチャー浅野は監督加地にピッチャー交代されられたことを未だに根に持っているようだ。この相互不信を解消するのは並大抵のことではない」
スポーツの試合において選手をいれかえる場合は「選手交代」と「交代」を使います。例文にあるように野球やサッカーにおいては、一度選手交代でその選手がベンチに下がると同じ試合ではもう出場機会がないからです。
しかしながら、バレーボールやバスケットボールの選手交代の場合は、同じ選手が何度もベンチに下がったりコートに入ったりを繰り返します。この場合厳密には「選手交替」と「交替」を使うのが正しいのですが、慣例的にどのようなスポーツでも「選手交代」が使われます。
例文③
「私がパートで勤務しているスーパーでは午前2回、午後3回レジ要員が交替するようなシフトを組んでいます。私はできるだけ午後のチームに入れてもらえるよう店長にお願いしています。」
例文のようなシフトによる要員交替はメンバーを時間帯によって次々といれかえるニュアンスがあり、何度も同じチームがレジを担当しますので、「交替」の方が使われます。
例文④
「長距離ドライブは疲れるので、危険を回避するという意味でも運転は交替しながら複数人でするほうがベターだ。くれぐれも気をつけるように。」
長い距離の車の運転をドライバーがかわりながらドライブするシーンです。例文は同じ人が一回限りではなく何度も運転手になる形ですから「交替」を使っています。
「交代」と「交替」の注意点
使い方・使い分けが非常に難しい「交代」と「交替」ですが、両者を使い分ける場合の注意点を整理しておきましょう。また、日本語には「交代」「交替」以外にも「かわる」という意味の言葉があります。これらの言葉との使い分の注意点も見てみましょう。
かわる回数による違いは例外あり
「交代」と「交替」はどちらも「かわる」という意味では同じですが、微妙なニュアンスの違いがあります。「交代」は後を引き継ぐという形で、かわる回数は基本的に一回です。
一方、「交替」の方は輪番制でかわるというニュアンスがあり、パートのシフトのように何度でも自分の順番がやってきます。
気をつけたいのは、この原則は絶対ではなく例外も結構あるということです。スポーツの選手交代では種目によって何度でも選手がかわることが可能でも「選手交代」と「交代」が使われるのが慣例になっています。
江戸時代に「参勤交代」という制度がありました。これは地方の大名が国元と江戸を行き来する制度です。行き来は当然何度も繰り返し行われますので、本来ならば「参勤交替」と「交替」が使われるのが自然ですが、実際は「参勤交代」と「交代」が使われています。
公文書などでは「交代」が使われる
意味がほぼ同じといってもいい「交代」と「交替」ですが、新聞などのマスコミや公文書では「交代」を使うように統一されています。これは戦後まもなく文部省(現在の文部科学省)が学術用語としては「交代」を使うように統一する旨の方針を出したためです。
役所に提出する公的な文書や少し固めの文書では、たとえそれが「交替」のニュアンスが強くても「交代」を使うように注意しましょう。
「交代」と「交替」の英語表現の注意点
日本語の意味としては大きな差がない「交代」と「交替」ですが、英語表現では全く違う表現が使われます。「交代」のは語表現は「change」です。一方「交替」の英語表現は「take turns」となります。
「change」は幅広い意味で「かわる」を表し、「変化」や「変更」「変換」という意味も含んでいます。一方「Take turns」は「交替で入れ替わる」という意味を持ち、日本語の「交替」に近い使い方をします。
「交代」「交替」以外のかわる意味の言葉
「交代」「交替」に似た言葉に「変更」があります。「変更」も「かわる」という意味では「交代」「交替」と同じですが、「変更」には「交代」「交替」にはない、「元の状態からかえる」という意味があります。
「交代」「交替」の方は同じ役割を人をかえて実施するというニュアンスがあり、基本的に内容自体がかわることはありません。使い分けに気をつけたい言葉です。
また、「交代」「交替」に似た言葉に「交換」という言葉があります。「交換」には「いれかえる」という意味があり、「交替」に極めてよく似た言葉です。
「交替」が同じ種類をいれかえる意味を持つのに対して、「交換」は同じ価値をいれかえる意味があります。種類か価値かの違いで、微妙なニュアンスの違いになりますが、これも使い分けに注意したい言葉です。
「交代」と「交替」はともに「かわる」という意味
「交代」と「交替」はともに「かわる」という意味を持つ言葉です。明かり厳密な使い方・使い分けを意識する必要はありませんが、使うシーンでの微妙なニュアンスの違いはおさえておく必要があります。
両者の違いはかわる回数です。「交代」のかわる回数は基本的に一回で、一度かわると元に戻ることはありません。一方「交替」の方は輪番制のように担当が何度もくるくるとかわるニュアンスがあります。
ただし例外も結構多く、スポーツにおける選手交代や参勤交代のように「交替」の意味で「交代」が使われることも珍しくありません。