ここ数年の将棋ブーム
昨年の2018年には「平成の大棋士」である、羽生善治九段が永世七冠の偉業を達成したり、藤井聡太七段という中学生の天才棋士が登場したり、将棋が度々ニュースやネットの記事などに取り上げられました。しかし、実際の将棋はルールこそ比較的単純ですが、戦術や定跡などを覚えなければならず、なかなか始めにくい趣味と言えるでしょう。
そんな方は「回り将棋」という、将棋盤と駒を使用したスゴロクのようなゲームがありますので、特に将来本物の将棋を覚えさせるために、子供に回り将棋を教えて、実際の将棋盤や駒の感触に触れるという体験をさせるのは良い教育の一環だと言えるでしょう。
回り将棋とは
回り将棋とは、将棋の駒を使用して遊ぶスゴロクに似た遊びです。スゴロクではサイコロを振りますが、回り将棋では駒をサイコロの代わりに振り、出た向きによって駒を進めるというのが基本的なルールです。非常にシンプルな遊びですので、子供でも簡単にすることができて、将来本物の将棋を覚える為に、将棋盤や駒に触れるきっかけにもなります。
将棋盤を使用したスゴロク
先述のように、回り将棋とは将棋盤と将棋の駒を使用したスゴロクのようなゲームで、今子供の間で非常に流行っているようです。周り将棋をするにあたり、必要なプレイヤーの数は2人~4人です。そして使用する将棋の駒は「全ての駒」になります。2人からでも出来るゲームなので、学校の友達や、兄弟・姉妹同士で手軽に出来るゲームです。
回り将棋の遊び方のルール
つぎに、回り将棋の遊び方のルールを説明します。先述の通り、回り将棋の際に必要なのは将棋盤と、全ての種類の将棋の駒です。また、回り将棋の遊び方のルール上、このゲームは2人~4人でできると説明しましたが、ここでは、遊び方をより分かり易くするために、4人で遊ぶ場合の遊び方を説明します。
用意するものは盤と駒のみ
回り将棋を始める為の将棋盤と駒が用意できたら、まず将棋の駒の「歩」を各人1枚ずつ用意し、将棋盤の各隅に1枚ずつ配置ましょう。将棋盤の各隅とは符号で表すと、それぞれ「1・1」、「1・9」、「9・1」、そして「9・9」の地点になります。その「歩」を置いた位置が各人のスタート地点になります。
そして次に、サイコロの代わりとして将棋の駒の「金将」を4枚用意します。将棋の駒は裏返すと何らかの文字が書いてあるものがほとんどですが、「金将」と「王将」にのみ、裏に何も書いてありません。
回り将棋の駒について
将棋の駒の「歩」と「金」が4枚ずつ用意出来たら、今はまだ使いませんが、残りの駒もいずれ使うことになるので用意しておきましょう。順番の決め方ですがいろいろな方法で決めることができますが、一般的にはじゃんけんで、サイコロ代りの「金将」を振り、「歩」を動かす順番を決めます。
回り将棋に限らず、いろいろなスゴロクのゲームに於いて、初めの方に駒やサイコロを振る人が、最終的に1番多く駒を振れる可能性があるので、有利だということは覚えておきましょう。普通の将棋でも、先手番が後手番より圧倒的に有利です。
サイコロ駒の状態で進むマス数が決まる
回り将棋の遊び方のルールの基本として、4枚の「金将」(サイコロ駒)を振って、その駒の状態によって、自分の駒を進めていきます。駒を進めるのは左回り、つまり反時計回りです。遊び方には様々なローカルルールがあるようですが、基本的に4枚のサイコロ駒のうち1枚でも盤外に落ちてしまったら自分駒を動かすことが出来ないというのが一般的です。
従って、コツとしては、4枚のサイコロ駒を振る際にあまり勢いをつけて振らないことがコツだと言えます。そして、サイコロ駒を振った後の状態により、自分の駒を何マス進めるかが決まります。サイコロ駒を振った後の状態は7種類あるので、それぞれ説明します。
進み
先ず、最も一般的な駒の状態として全ての駒の1番面積の大きい部分が4枚とも将棋盤の上に落ちることが考えられます。そして、その4枚のサイコロ駒の落ちた面の何枚が「金将」の文字が書いてある方か、そして逆に何枚が何も書いていない状態かによって自分の駒を何マス進めることができるのかが決まります。
例えば表面が1枚で、裏面が3枚の場合1マス進むことができ、例えば表面が2枚で、裏面が2枚の場合は2マス進めることができます。何枚裏が出るのかは正直運のみで決まるで、特にこれといったコツはありません。この状態のことを「進み」と言います。
戻り
例えばサイコロ駒を振った結果、表が3枚、裏が1枚になった場合、本来だと3マス進みめるのですが、駒が1枚でも重なってしまうと、本来であれば3マス進めるところを、逆に3マス戻らなければならないというルールがあります。コツとしては駒が重ならないようにある程度散らばるように駒を振るのが「戻り」にならないコツだと言えるでしょう。
裏駒
回り将棋では、サイコロ駒を振った結果、全ての駒が裏面の場合20マス進めるという特殊なルールがあります。全ての駒が裏になる確率は(1/2)^4の数式で1/16ということが解ります。16回に1回全ての駒が裏面になる「裏駒」が出現するので、4人で遊んだ場合比較的「裏駒」は出易いと言えるでしょう。
因みに、1枚だけ表の場合は(1/2)(1/2)^3・4C1=4/16=1/4、2枚だけ表の確率は(1/2)(1/2)^3・4C2=6/16=3/8、3枚が表の確率は(1/2)^3(1/2)・4C1=4/16=4/1という計算式からそれぞれ、1枚だけ表の確率は4回に1回、2枚だけ表の確率は8回に3回そして3枚が表の確率も4回に1回となります。全て表の確率は、全て裏の確率同様16回に1回です。
立ち駒
また、回り将棋の特殊なルールとして「立ち駒」というものがあり、これはサイコロ駒を振って、駒が経て向きに立ったら10マス、横向きに立った場合は5マス進めるというものです。例えばサイコロ駒を振った結果、1枚が縦に立ち、1枚が横に立ち、残りの2枚が普通に表面で目が出た場合は10+5+1+1=17となり、17マス進むことができます。
逆立ち駒
また、別の回り将棋の特殊なルールとして「逆立ち駒」というものがあります。台形の駒の一番短い部分が底になって駒が立つという現象です。これは計算式で求めることは不可能ですが、起きる確率は非常に低いと考えられます。「逆立ち駒」が成立すると100マス進むことができます。
裏なし
また、回り将棋には「裏なし」という特殊なルールもあり、裏の面が1つもない場合はもう一度、サイコロ駒を振ることができるというルールがあります。例えば、横向きの立ち駒が1つに、残りが全て表面という状況では、横向きの立ち駒は5マス進むことができる為、全部で18マス進める上にもう1度サイコロ駒を振ることができます。
落ち駒
先述したように、将棋盤やテーブルの上から駒が1枚でも落ちてしまった場合「落ち駒」と言って、駒は1つも進みもしなければ、戻りもしません、言い換えると「1回休み」のような表現になると言えるでしょう。あまり勢いよく駒を振りすぎると「落ち駒」になってしまうので、コツを掴んで勢いを突けずに駒を振るように注意しましょう。
回り将棋の進み駒について
ここまで、サイコロの目について説明してきましたが、このゲームの本来の目的・ゴールについて説明します。しかしこれに関しては様々なローカルルールが存在し一概に「このルールが正しい」というものは無いので、最も一般的に認知されている遊び方のルールをここでは紹介します。まず、進んでいく駒のことを「進み駒」と呼びます。
そして、その「進み駒」がどんどん進んでいくうちに、元の位置に戻ったり、相手の駒を追い抜かしたりします。これらのルールを詳しく説明します。
出世
初めは「歩」から始まった自分の進み駒が一周して戻ってくると「歩」が「香」になり、更にもう1周すると「桂」になり、そして最後に「銀」になります。このことを回り将棋では「出世」と呼びます。そしてこの「銀」になった進み駒が一周した時点で、その進み駒を持っている人が1位、残りの3人の順位は出世によって格が上がった順に決まります。
寝かしと起こし
回り将棋の遊び方のルールの1つとして、「寝かし」と「起こし」というものがあります。これは、自分より格下の駒を抜いた場合、その駒はひっくり返されて、列外に置かれます。これを「寝かし」と呼びます。「寝かし」の状態になっている駒は、誰かがその駒を追い抜かすまで、サイコロの駒を振ることができず、実質ゲームに参加できない状態になります。
そして、誰かが「寝かし」の状態の駒を抜くと、「寝かし」の状態が解除され、ゲームに復帰することができます。これを「起こし」と呼びます。
2あがり
回り将棋の中の、もう1つの特殊なルールの1つに「2あがり」というものがあります。例えば、自分の進み駒が「香」で、そしてその4マス先に相手の「桂」があると仮定します。この状態で、自分のサイコロの目が4だった場合、4つ先にある相手の「桂」と同じ場所に行くことになり、駒が重なります。
この場合、駒の格に関係なく自分の「香」と相手の「桂」は一緒に2マス進むことができます。これを「2あがり」と言います。
飛び
自分の陣地以外の相手の陣地の隅にちょうど自分の進み駒が止まった場合、次の隅まで一気に飛ぶことができます。これを「飛び」と言います。但し「2あがり」によってちょうど相手の隅に止まることができても、「飛び」は適用されません。符号を使って説明すると、自分の陣地が「1・9」だった場合、その他の隅にピッタリ止まると「飛び」が成立します。
つまり、自分の陣地が「1・9」だった場合、例えば「1・1」にピッタリ止まった場合「1・9」まで一気に進めるということです。
戦
また特殊なルールとして「戦」というものがあります。少し説明が複雑になってしまうのでここでも符号を使って説明します。例えば自分の駒「1・5」にいて、相手の駒が「9・5」にいる場合、駒同士がちょうど向き合う形になります。この時に最後に駒を振って向き合う形を作った方が「戦」を宣言する権利を持ちます。
但し、権利を持つだけで、必ず「戦」をしなければならないということではありません。しかし「戦」の権利を持っている方が相手に「戦」を宣言した場合、相手はそれを拒否することができません。
「戦」のルールは、例えば「1・5」の地点と「9・5」の地点で、「戦」を宣言した場合、「戦」を仕掛けた方が「9・5」の地点にいる場合、「戦」を仕掛けた方が先手番でサイコロを振り「戦」を仕掛けた方は、先に「9・5」から「1・5」に向かい進み、後手番はその逆です。そして先に往復出来た方あ「戦」に勝利したことになります。
「戦」に勝って得られるメリットは「出世」です。「戦」に負けても、引き分けの場合も「戦」を仕掛けた側は何も変わりません。また「戦」の時点で既に最も格が高い「銀」になっていた、「戦」に勝った場合、その人が1位でゲームが終了します。
回り将棋のローカルルール
先述した通り、回り将棋にはいくつものローカルルールが存在します。例えば、先ほどまで説明していたのは「銀」が一番格上の駒で、その駒がゴールしたらゲームが終了というものでしたが、場合によっては、ゲームを長丁場にさせる為、「銀」の先にも「角」→「飛車」→「王将」といった出世があるといった設定もあるようです。
様々なルールを取り入れてみよう
また、最も格が高い駒を「王将」として、「銀」→「成銀」(銀の裏面)→「王将」とするケースもあるようです。この場合「王将」は2つしかない為、3人以上で遊ぶ際はコツとして「王将」の代わりに「龍」(りゅう・飛車成りの状態)と、「馬」(うま・角成りの状態)の2枚を「王将」の代わりの駒として使用するなどといったローカルルールがあります。
回り将棋の歴史
回り将棋の起源は定かではないとされています。この遊びの正確な起源は定かではありませんが、1830年に発刊された「嬉遊笑覧」(きゆうしょうらん)という、江戸時代後期の風俗習慣・歌舞音曲などが記されている、現代で言う百科事典のようなものには、既に回り将棋のルールなどが記されていたとされている為、200年以上の歴史があるとされています。
因みに現代の一般的な将棋の歴史は長く、1532年の室町時代にまで遡ります。また、その時代から現代までの約600年の間に1度もルールの変更が行われていないという、予め非常に優れたルールが設定されていたものだと言えるでしょう。
回り将棋の他に将棋盤と駒を使ってできる遊び
回り将棋の他に、将棋盤と駒を使用した遊びでルールが簡単なものとして「はさみ将棋」が有名です。はさみ将棋は2人で行うゲームです。先ず将棋盤のマスの最下段に歩をそれぞれ9個ずつ配置します。この際、片側は歩を配置して、もう片方は歩が成った状態の「ト金」として配置します。
ルールはご存知の方も多いかもしれませんが、相手の歩を自軍の歩ではさむことができれば相手の駒を取ることができます。また、はさまれる歩は、つながっていれば何枚でも取れ、最大9枚まで一度に取ることができます。
はさみ将棋はルールが非常に単純で子供でもできますが、押さえておくべきコツが沢山あり、はさみ将棋を突き詰めて研究すると、様々な定跡や戦術があります。ハサミ将棋のコツで簡単なものを1つ紹介すると、相手の駒と隣り合わせにならないように差し、自分の手番の時にはなるべく相手の駒に対し斜めに駒を配置するという勝ち方のコツがあります。
はさみ将棋には必勝法は存在しません。従って、はさみ将棋の巧者同士の対局で、お互いが常に最善手を指し続けることにより、将棋のように千日手が成立する場合もあります。千日手とは「せんにちて」と読み、同局面が4回続くと、その勝負はその時点で引き分けになり、もう一度初めから差し直すというもので、プロ棋士間の対局では頻繁に見られます。
はさみ将棋のルールは非常に単純ですが、奥が深いと説明しました。実際にトップ棋士間の間で指されたこともあります。有名なものでは、2007年に行われた、故米長邦雄永世棋聖と加藤一二三(当時九段)の1戦が有名です。また、この勝負の立会人は森内俊之十八世名人という非常に豪華な顔ぶれでした。
回り将棋のコツを押さえて楽しく遊ぼう!
今回は、回り将棋の遊び方やコツ、またローカルルールやその歴史などについての説明しましたが如何でしたでしょうか。回り将棋やはさみ将棋では、本来の駒の役割や名前を憶えて、普通の本格的な将棋に興味を持つきっかけにもなる可能性があり、子供同士で楽しく遊ぶ際に、とてもおすすめできる遊びの1つだと言えるでしょう。