「及び」とは
ビジネス書類や本などで「及び」という言葉を見かけることがありますが、実際自分が「及び」という言葉をよく使うという人は少ないでしょう。それは「及び」という言葉の使い方が良くわからないからです。「及び」を入れたら句読点をどこに入れるのか、「及び」には句読点は必要ないのかがわからない人も多いです。
まずは「及び」という言葉とは何なのか、どのような時に使う言葉なのかについてご紹介しましょう。
名詞のワード同士をつなぐ接続詞
「及び」という言葉は、名詞のワード同士をつなぐ接続詞です。Aという名詞とBという名詞があり、それをつなぎたい時に「A及びB」というように「及び」を二つの名詞の間に入れてつなぎます。「それならAとBでいいじゃないか」と言う人もいるでしょう。実は「及び」は「法令用語」で、法律に使われている言葉です。
「法令用語」とは誰にでも理解できるように書かれている法律に使われる言葉で、「及び」もその一つです。「及び」はビジネス文書などにおいても使われることがありますので、使い方を覚えておきたい言葉の一つになります。
「及び」の具体的な使い方と例文
次に「及び」の具体的な使い方と例文をご紹介します。「及び」とは名詞のワード同士をつなぐ接続詞だとご紹介しましたので、使い方も例文も必要ないという人もいるでしょう。ですが「及び」を実際に使おうとすると失敗するという人も多いです。それは、「名詞同士なら何でも使える」と勘違いしているからです。
実は「及び」という言葉は名詞同士なら何でもつなげることができるわけではありません。「及び」はどのような言葉同士をつなぐことができるのか、具体的な使い方と例文をご紹介しましょう。
名詞同士をつなげる場合
「及び」の具体的な使い方と例文の一つ目は、「名詞同士をつなげる場合」の例文です。「条例」と「規制」で定められているということを「及び」を使って言いたいという場合、「条例及び規制で定められている」というような「及び」の使い方の例文が挙げられます。このように「及び」は同じ種類の名詞同士をつなげる時に使うことができます。
「及び」は同じ種類の名詞同士をつなげる時に使いますので、「消しゴムとUSBメモリ持参」というのを「消しゴム及びUSBメモリ持参」とは言えません。消しゴムとUSBメモリは全く違う種類のものだからです。
1つの文に別の要素を加える場合
「及び」の具体的な使い方と例文の二つ目は、「1つの文に別の要素を加える場合」の例文です。入学試験の案内に「鉛筆とボールペン持参でご来場ください」と言いたい場合「鉛筆及びボールペン持参でご来場ください」という例文が挙げられます。「鉛筆もボールペンも両方持ってきてもらいたい」ということですが、実はメインはボールペンです。
「ボールペン持参」という文に「鉛筆」を付け加えたいという時に、「鉛筆及びボールペン持参」という「及び」の使い方ができます。
「及び」の句読点の位置
次に「及び」の句読点の位置についてご紹介します。「及び」を使って名詞と名詞をつなぐ時には、句読点を使う場合と句読点を使わない場合があります。先にご紹介したような使い方の例文では句読点は必要ありません。ですが「及び」という言葉には他にも色々な使い方があり、句読点が必要な場合もあります。
「及び」という言葉は言葉同士をつなぐ便利な言葉ではありますが、句読点がなく「及び」ばかり使ってしまうととてもわかりにくくなってしまいます。そのため「及び」ばかりではなく句読点もちゃんと使う必要があります。
「及び」という言葉にはどのような決まりがあってどのような時に句読点を使うのか、どんな位置に句読点を入れるのか、「及び」の句読点の位置についてご紹介しましょう。
公文書では句読点に決まりがある
「及び」を使う時に句読点をつける場合、公文書では決まりがあります。公文書において「及び」を使う場合、「及び」によってつなげられた名詞がそれぞれ読む人に伝わりやすくなるようにしなければならないという決まりがあり、公文書ではその決まりにのっとった「及び」と句読点の使い方をしなければなりません。
「及び」によってつなげられた名詞が、それぞれ独立した言葉として読む人に伝わりやすくするという決まりですが、「句読点もなくたくさんの名詞をつなげられたら、伝わりにくくなるのではないか」と思う人もいるでしょう。
たくさんの言葉をつなげる時には、「及び」の他に句読点を入れて伝わりやすくするという方法を取ります。「及び」にとって句読点は大切な存在だと言えます。
「及び」を使って句読点を使わない場合
それでは、「及び」という言葉を使って句読点を使わない場合には「及び」をどのように使うのかということからご紹介します。例えば「県の職員」と「市町村の職員」が一堂に会したということを伝えたい場合には、「県の職員及び市町村の職員が一堂に会した」というように「及び」を入れれば大丈夫なので、句読点は必要ありません。
私文書で二つの言葉をつなぐ場合には句読点でつないでも構いませんが、公文書において句読点ではなく「及び」を使います。
「県の職員」と「市町村の職員」と言いたいなら「県の職員、市町村の職員」と言っても良さそうですが、公文書ではこういった句読点の使い方はせず、「及び」を使ってつなぐということが大切なポイントです。
「及び」と句読点を使う場合
「及び」に句読点を使わない場合についてご紹介しましたので、次は「及び」と句読点を使う場合についてご紹介します。二つの名詞をつなぐ場合には「及び」を使って句読点を使わない文になりますが、三つの名詞をつなぐ場合には「及び」と句読点をいっしょに使います。この場合「及び」の位置はつなげられる最後の名詞の前です。
「責任は国と県と市にある」という文で「及び」と句読点を使う場合、「及び」と句読点の位置は「責任は、国、県及び市にある」というようになります。句読点の位置は先の名詞の間で、「及び」の位置は最後の名詞「市」の前です。
こういった文書を作る機会に恵まれる人はあまりいませんが、覚えておいても損はありませんので、「及び」と句読点の位置について覚えておきましょう。
「及び」とまたは・並びにとの違い
「及び」と句読点の位置についてご紹介しましたが、次は「及び」と「または」「並びに」との違いについてご紹介します。「及び」の他に似たような使い方をする「または」と「並びに」ですが、「及び」と「または」と「並びに」はちょっと違う言葉です。同じように言葉同士をつなぐ接続詞ですが意味は少し違います。
また、たくさんの言葉をつなぐ場合には「及び」と「並びに」を併用することもできます。それでは、「及び」と「または」「並びに」の違いについてご紹介しましょう。
3つ以上の並列で使用
「及び」と「または」と「並びに」の違いについて、まずは法令用語における「及び」と「並びに」の違いをご紹介します。実は「及び」と「並びに」は同じ意味を持つ言葉ですが、法令用語として使う場合には「及び」は小さなもの同士をつなぐ時に使い、「並びに」は大きなものをつなぐ時に使うという決まりがあります。
なので公文書においては「A及びB、並びにC及びD」というように、「及び」と「並びに」は併用されることがあります。たくさんの言葉を並べる時に「及び」だけでは「及び」だらけになりますので、「並びに」を併用してわかりやすくします。
「A及びB、並びにC及びD」というようにたくさんの言葉を並べる時には句読点も使われます。句読点が入らなければわかりにくい文章になってしまう場合、句読点が必要です。
句読点が難しい文章で活躍
「並びに」という言葉は、句読点が難しい文章で活躍する言葉です。例えば明日の校外学習の持ち物がシャープペンシルと消しゴムとお弁当である場合、句読点ばかりでつなぐと句読点だらけになってしまいます。こういった場合には「明日の校外学習の持ち物は、シャープペンシル及び消しゴム、並びにお弁当」という文章にすることができます。
「シャープペンシル、消しゴム、お弁当」というように句読点でつなぐと一見して読みやすいようですが、文章の構成としては少しおかしな感じになってしまいます。
「と」ばかりでつなぐのも句読点ばかりでつなぐのも読みにくいという場合には、「及び」と「並びに」と句読点を使うことによって、読む人に理解しやすい文章を作ることが大切です。
または:2つ以上から1つを選ぶこと
次に「及び」と「または」の違いについてご紹介します。「及び」は名詞同士をつなげたり一つの文章に別の要素を加える時に使われますが、「または」は二つ以上のものから一つを選ぶという時に使われます。例えば「AかBかどちらかを持ってきてください」という場合には、「及び」ではなく「または」を使って「AまたはB」と言います。
「及び」の場合「及び」でつながれた両方を指しますが、「または」の場合「または」でつながれたもののどちらか一つを選択することを指すという点が「及び」と「または」の大きな違いです。
並びに:2つの事柄を併記すること
「並びに」の使い方は先にご紹介しましたが、「並びに」は「または」とは違い、二つの事柄を併記する場合に使われます。なので「並びに」は「及び」と同時に使うことができます。「及び」は同じ種類の名詞にしか使えないと先にご紹介しましたが、「並びに」も同じ種類の名詞同士をつなぐ場合に使います。
例えば「料理」と「飲み物」は同じように「食べるもの」なので、「料理並びに飲み物」という言い方ができます。ですが違う種類の名詞同士には使えませんので、この点では注意が必要です。
「及び」の使い方に注意
ここまで「及び」について使い方の例文や「または」や「並びに」との違いをご紹介してきましたので、「及び」という言葉を使いこなす自信がついたという人もいるでしょう。ですがまだ「及び」の使い方にはちょっとした注意点があります。「及び」は同じ種類の名詞同士をつなぐ言葉ですが、名詞の種類を勘違いしてしまう人もいます。
実は同じ種類ではない名詞同士を、うっかりつないでしまうということもあります。それでは「及び」の使い方の注意点についてご紹介しましょう。
名詞の途中で使用した場合
「及び」を名詞の途中で使用した場合には特に注意が必要です。面接を受けにくる学生に対して「面接に来るときには、履歴書と筆記用具と印鑑を持参してください」と言いたい場合、「面接に来られる際には、履歴書及び筆記用具、印鑑を持参してください」と言ってしまうと「及び」の使い方としては間違いになります。
「及び」はそれぞれの名詞を独立した存在として強調する言葉で、しかも同じ種類の名詞同士をつなぐ言葉です。履歴書と筆記用具は違う種類の言葉なので、このような名詞を羅列する場合には「及び」を使うことはできませんので注意しましょう。
「及び」の英語表現
次に「及び」の英語表現についてご紹介します。「及び」の使い方についてここまでご紹介してきましたので、「及び」の英語表現は大体想像がつくという人が多いでしょう。「及び」という言葉はちょっとお堅い表現の日本語ではありますが意味は単純ですので、英語に直訳することができます。
逆に英語の公文書などを日本語に訳す場合、簡単で単純な英単語を「及び」と訳すこともできます。それでは「及び」の英語表現についてご紹介しましょう。
and
「及び」の英語表現の一つ目は、「and」です。学校で習う初歩的な英語でも必ず習う「A and B」などといった文章に使われる「and」が「及び」の英語表現になります。「及び」の英語表現というと何やら難しい単語を想像する人もいるでしょう。ですが「及び」を英訳する場合にはこの単純な「and」という単語に訳します。
逆に英語の公文書などに「and」が使われている場合には、「及び」と翻訳することもできます。私文書を訳す場合には「と」で構いませんが、公文書の場合にはやはり「及び」と訳すのがニュアンス的に適していると言えます。
as well as
「及び」の英語表現の二つ目は、「az well as」です。「as well as」という英語表現は「Aと同じように」「AはもちろんBも」といった言い方をする場合に使われます。「as well as」は「及び」や「共に」を翻訳する時に使われる英語表現で、「and」よりやや「及び」に近い表現だと言えます。
ですがやはり「及び」というのは公文書での使い方が決められているという、日本語の中でも特殊な言葉ですので、ニュアンスまで英訳するのは難しいです。「及び」も他の繊細な日本語と同じように、繊細な日本語の一つだと言うことができます。
「及び」と句読点を使う場合は文章に注意しよう!
「及び」の意味や使い方の例文、「または」や「並びに」との違いや句読点の使い方についてご紹介してきましたが、如何だったでしょうか。「及び」と句読点を併用すると読む人に伝わりやすい文章にすることができますが、先に挙げたような注意点もあります。「及び」と句読点を使う場合には文章の作り方に注意しましょう。