「タクティクス」の意味
ビジネス書や自己啓発書などでタクティクスという言葉によく出くわします。一方でタクティクスは化粧品やRPG(ロールプレインゲーム)などでもおなじみです。恋愛指南書でもタクティクスという言葉が使われることがあります。
このように幅広く使われることが多いタクティクスとは本来どのよう意味を持つ言葉なのでしょうか。言葉の響きからは戦略的な意味合いを感じさせます。軍事用語から広まったという話からタクティクスの主な意味は戦術と言われています。
タクティクスという言葉の正しい意味と使い方を知れば、日頃のビジネスの場でさりげなく披露することも出来、周囲から一目置かれる事間違いなしです。これからタクティクスの意味や正しい使い方、類義語にはどのようなものがあるのか解説していきます。
意味①戦術
まずタクティクスの意味として挙げられる言葉は戦術です。戦術とは読んで字のごとく元々は戦争における軍事用語として使われています。任務達成のために部隊、物資などを効率的に配置して戦闘能力を最大限に高めるための方策を戦術と言います。
ここから派生してスポーツにおける戦い方や攻めのビジネス・シーンにおける方策においても使われるようになりました。類似語として戦略が挙げられますが、戦略とは総合的な策略や作戦を指すのに対し、戦術は戦略を具現化するための具体的施策と言えます。
ビジネス上での使い方としては会社全体の利益を上げる方策を具体化する場合に、ビジネス戦術や経営戦術という使い方をします。事業計画が大きな戦略だとすれば、戦術は事業計画を達成するためのアクションプランと言えます。
事業計画の進捗を節目で管理する方法をマイルストーンと言い、直訳の意味は標石のことです。ビジネス用語では中間地点を意味します。計画の中に正しくマイルストーンを設定することは目標達成のためのタクティクスでもあります。
意味②策略
タクティクスには策略という意味でも使われることがありますが、策略という言葉の使われ方が奸計を巡らせて人を落としこめる意味に通じているのであまりいい印象を持たれません。ただ策略自体は奸計ほど悪い意味ではなく、人の裏をかく計算高さという意味が強いです。
意味③かけひき
タクティクスの3つ目の意味として『かけひき』があります。かけひきも戦いの上では重要な戦術の一つです。ビジネスやポーカーなどのトランプゲームや格闘技などの1対1の戦いでは特にかけひきの使い方のうまさが勝敗を左右すると言ってもいいでしょう。
つまり戦術を巧妙に使いこなすことが出来る人はかけひき巧者であり、タクティカルな人と表現することが出来ます。かけひきの意味でのタクティクスの使い方は形容詞で使われることが多いと言えます。駆け引きが上手な人は相手の心理を読むことにも長けています。
「タクティクス」の語源
続いてはタクティクスの語源についてご紹介していきます。もともとタクティクスは軍事用語としての使い方を経て、スポーツやゲームの戦術的意味を表す言葉として広まっていきました。タクティクスは英語でTACTICSと綴り、意味は戦術ですから軍事用語として使用されたことは至極当然です。
ギリシャ語の配置を意味する言葉
タクティクスのルーツは遠く古代ギリシャの時代にまで遡ります。ギリシャ語ではタクティクスは『配置』という意味だそうです。古代ギリシャの軍隊はアレキサンダー大王のような歴史上もっともすぐれた軍事指揮官を輩出しています。配置とはつまり戦術の一つなのです。
アレキサンダー大王の優れた戦術の一つが地形を有利に用いてファランクスと呼ばれる重装備した歩兵を密集させて攻撃する方法です。正にこれは自分たちのリソースの最適配置による高等戦術と言えます。ギリシャ語の配置がタクティクスの語源である所以が分かるエピソードが以上です。
「タクティクス」の類語
タクティクスの類語について、どのような言葉があるか見ていきます。タクティクスには戦術の意味があることは前述したとおりです。戦術と似た意味として戦略がありますが、英語でストラテジーと言います。いずれもビジネス上でよく使われる言葉です。
また策略と似た意味として作戦があげられます。作戦とは一連の軍事行動を指しますが、勿論軍事用語の意味だけではありません。ビジネスやスポーツのあらゆる場面で使われます。では戦法や用兵は戦術や配置と比べると、その違いは何なのでしょうか。
戦法の意味は戦いのやり方のことです。戦術とは戦闘力を如何に使うかという技術的な意味が強いです。配置は軍事用語の意味から考えると用兵の中に含まれると言えます。このようにそれぞれのタクティクスの類語について、意味や使い方を解説していきます。
作戦
作戦とは言い換えれば計画と同義語です。どちらも軍事用語としても使われています。英語で言えば作戦はOperationです。タクティクスの戦術よりも作戦は大枠になります。会社の経営によく軍事用語が使われる理由は経営と戦争が手法的に共通しているからです。
会社は事業計画を立てる際にまず戦略を立て、それを実現させるためのプロジェクトが作戦です。そして作戦を遂行するためのアクションプランが戦術です。戦略とは英語で言うとストラテジーですから、タクティクスとは類似語と言えます。
一方作戦も軍隊では大きぼなプロジェクトに使われます。作戦の具体例として、東日本大震災発生の時にアメリカ軍が空母ロナルド・レーガンを宮城に急遽向かわせて被災者の救助やサポートにあたった『トモダチ作戦』は有名です。ここでいうトモダチは『日米同盟連携』強化を意味します。
戦法
戦法とは勝つための戦い方を方法化することを意味します。従って戦術とほぼ同じ意味を成します。ただし戦術はビジネス用語として使われますが、戦法はあまり使われることはありません。どちらかと言えばスポーツや格闘技の場で使われることが多いです。
ビジネスの場での戦法や戦術の使い方は、如何に競争力のある見積書を作るかとか取引先に食い込むためにはどのような接待攻勢をかけるかなどの方策が戦法と言えます。営業戦術という意味でもあります。またパソコンのスキルを上げることも戦術です。
用兵
用兵とは軍事用語で、戦場で兵を動かすことを言います。その方策を用兵術と言います。つまりタクティクスの意味である配置と似ています。配置とは兵を戦場で適材適所に配置することですから用兵はタクティクスの類似語と言えます。
用兵術は歴史上の英雄である武将・武田信玄や上杉謙信にとっても群雄割拠の戦国の世を頭一つ抜き出る力となりました。それはナポレオンにも当てはまります。優れた武人は用兵術の素養を生まれながら備えていたと言えるでしょう。
孫子の言葉に"孫子曰、凡用兵之法、全国為上、破国次之"というものがありますが、この意味は敵国を破るときは相手を破壊して屈服させるのではなく、傷つけずに降伏させることが最も良い用兵術であるというものです。これはビジネスにおいても当てはまる戦術と言えます。
ビジネスの世界で相手を屈服させる状況とは合併や買収を意味するM&Aのような場合を思い浮かべます。往々にして合併話がご破算となるケースは吸収する側が一方的に相手を飲み込もうとする戦略が見えた場合です。
吸収される側はリストラや役職の降格、減俸など負のイメージが拡散されていきますので、社員に動揺が広がり話がまとまらなくなります。M&Aの戦術を誤ると失敗する大きな原因と言えます。
「タクティクス」の使い方
ここではタクティクスという言葉の使い方について、解説していきます。正しい使い方を知るためには、まずタクティクスの意味をよく理解することが必要です。
加えてタクティクスを使うべきシーンも区別するべきです。例えばビジネスの場合やスポーツの場合では違いは何か、タクティクスとストラテジーの使い分けや適切な使い方とはなどをよく理解しましょう。
ビジネスの場合
ビジネスシーンでタクティクスを使う場合、どちらかと言えばまず類似語であるストラテジーの後に使われることが多いようです。なぜならタクティクスの意味は戦術ですが、ストラテジーの意味は戦略だからです。ストラテジーの中にタクティクスが含まれるという考え方です。
つまりビジネスの方法論を語る場合、例えば何らかの達成目標を攻略するには段階的に大枠の戦略を立ててから、個々のアクションプランである戦術を戦略に落とし込んでいく必要があるからです。よってビジネスの場合、戦略がまず全面に出てくることが多くなります。
勿論目標を達成するための戦術が無ければ何も成し得ないのですからタクティクス・戦術もビジネスシーンで重要な意味を持ちます。出来るビジネスマンとはストラテジーとタクティクスの意味を理解し使い分けることが出来る人です。
スポーツの場合
タクティクスという言葉はスポーツ界でもよく使われています。アメリカではアメリカンフットボールにおけるゲーム攻略法の中でタクティクスという言葉は使われていました。最近ではサッカーでもよく目にするようになりました。
スポーツはなんでもそうですが、特にサッカーというスポーツは戦術とスキルが大切だと言われています。だから言葉としてタクティクスを多く取り入れているのです。サッカーは選手のフォーメーション・パターンによってストラテジー・戦略やタクティクス・戦術に違いがあります。
選手選手一人ひとりのスキルを向上させることはもちろん重要ですが、個人ではなく複数のタクティクスによって相手ゴールを攻めることが何よりもサッカーのようなスポーツでは重要なのです。タクティクスがストラテジー同様に重要な意味を持っています。
「タクティクス」とストラテジーの違い
タクティクスの類似語としてストラテジーを挙げてきました。戦術の意味を持つタクティクスに対して、ストラテジーは戦略の意味があります。戦術と戦略の違いは戦い全般において、タクティクスが具体的なアクションを指すのに対し、ストラテジーは兵力を運用する総合的な方法を指す点です。
タクティクスとストラテジーの違いについて、もう少し詳しく解説していきます。総合的な計画を指すストラテジーの下に具体的アクションのタクティクスが位置すると前述しました。確かにその通りなのですが、ストラテジーを持たないままタクティクスを実行する人もいます。
勘の鋭い人は短期的勝負に強く、駆け引きに長けた戦術の持ち主と言えます。対して長期的、マクロ的に物事を俯瞰できる人は総合的な戦略を立てることが出来ます。ストラテジーの持ち主は長期戦に強く、修正やリカバリーの方法も予め準備できる人です。
要するにタクティクスとストラテジーの端的な違いと言えば、期間の長さだと言えます。ビジネスシーンで例えればタクティクスは人の配置や予算の使い方、業務効率の改善方法などを指しますが、ストラテジーは事業計画の目標を達成するための経営戦略や営業戦略を指します。
ストラテジーの意味は「戦略」
現在のビジネスシーンではストラテジーという言葉を使うが事が多くなりました。ストラテジーとは戦略という意味なので、ビジネスシーンで使われる場合は『情報ストラテジー』とか『販売ストラテジー』というように他名詞とくっつけて一つの言葉にすることが多いです。
スポーツで使われる場合はビジネスの場合と違い、〇〇ストラテジーという使い方は少ない傾向にあります。スポーツの場合はテニスや卓球で言えばバックハンドの打ち方やスライスを効かせたサーブの習得と言った技術はタクティクスにあたります。
それらタクティクスを総合的にゲームで勝つための活かし方を考えることは戦略であるストラテジーとなります。タクティクスと言われる戦術や技術をスポーツ選手に学習させる方法も学習ストラテジーとして戦略化すると効果的です。
「タクティクス」は戦術を意味する言葉
『タクティクス』という言葉について、意味や使い方、類似語であるストラテジーとの違いについてなどを解説してきました。タクティクスは元々軍事用語として使われた言葉で、意味は戦術です。戦略の意味を持つストラテジーとの大きな違いは時間軸です。
戦略は大局的な計画であるのに対し、戦術であるタクティクスはその計画を達成させるための随所で実行するアクションです。戦闘で言えば兵士が敵部隊を強力な武器によってせん滅するというような場合です。
ビジネスの場合ならば新規顧客開拓のために具体的な営業活動を実践する場合のアクションなどを指します。ビジネスマンもスポーツ選手も戦略と戦術の双方を兼ね備えていないと思うような成績は残せません。タクティクスもストラテジーも現代を生き抜くために必要なスキルなのです。