ロケットストーブの魅力とは?
アメリカの応用生態学の学者であるエバンス教授による、室内薪ストーブの改良品がロケットストーブです。もとは発展途上国の農村で問題になっていた室内での薪ストーブを使うと煙や灰などが発生することを解決するために、1980年ごろ登場したコンロといわれています。
ロケットストーブは構造が簡単なので、自作することは器用な人でなくても可能です。また、キャンプ初心者だったり、火をおこすことに慣れていなくても比較的簡単に使うことができるのも、ロケットストーブの魅力です。
少ない燃料で高温調理ができる
ロケットストーブは燃焼効果が高いので、少ない燃料で高温調理ができます。東日本大震災のときも被災地で、ロケットストーブは少ない燃料で短時間で米を炊くことができる理想的な調理コンロと紹介されています。
2014年にロケットストーブを特集した雑誌の記事には、わずか0.8kgの薪で5合のお米をわずか20分で炊き上げたとあります。しかも燃料は燃えやすい薪を選ぶ必要はなく、燃えにくい針葉樹や竹なども燃料として使用可能な点が魅力です。
身近な材料で作れる
ロケットストーブの原理は簡単で、身近な材料で作ることもできます。設計図や作り方などはネットに散見されます。もっとも多いのはペンキ缶や一斗缶、ペール缶などを材料とした中型ロケットストーブの作り方です。
レンガなどを利用した大型のロケットストーブを作った猛者もいますが、多く愛用されているのは身近な材料で作った小型ロケットストーブです。キャンプ場で即席で作り上げる小型ロケットストーブは使い捨てコンロ感覚で使えるので人気です。
短時間で安定した火力
バーベキューやキャンプにおいて、一般的な「かまど」を作ったとき、火がついて炊事に使えるほどの火力になるには時間がかかります。ところがロケットストーブは短時間で着火し、完全燃焼する構造のため安定した火力が維持できます。
ロケットストーブが人気なのは、この点が最も大きく「キャンプに便利」「バーナーと同じ使い方が可能」などと称賛されています。低予算で自作できる点と火力の強さは、キャンパーにとっては最大の魅力となっているのです。
化石燃料を使わない
さらにロケットストーブの魅力でいえば、ガソリンなどの化石燃料を使わない点があげられます。東日本大震災のときにロケットストーブが注目されたのは、化石燃料を使わず、燃料は廃材などで十分だった点が大きかったのです。
石油や石炭や天然ガスなどの化石燃料には限りがあり、いつか枯渇してしまいます。貴重な燃料を使う石油ヒーターやカセットボンベ式ガスコンロなどに対して、ロケットストーブの燃料は燃えるものならば何でも燃料にできる点も魅力の一つです。
ロケットストーブの原理や構造
名前にロケットなどという仰々しい言葉が使われているにもかかわらず、ロケットストーブの構造や原理は極めてシンプルです。シンプルだからこそ手作りロケットストーブの設計図はネット上に多く見られ、キャンプや庭の落ち葉炊きにと大活躍しているのです。
ロケットストーブの構造は、「J」の字の縦線に相当する部分が熱上昇路(ヒートライザー)といわれる上昇気流発生部分で、その下部に燃焼炉(バーントンネル)があります。その入り口が焚口となっています。
煙突の中で燃料を燃やす
一般的なストーブには燃焼室があります。これに対してロケットストーブは「J」の字の煙突の中で燃焼させます。燃焼により上昇気流が発生し、それにより煙突の反対側から新しい空気を吸い込む力が発生するという原理です。
このため「ゴー」というロケットエンジンのような音を伴うほどの火力が発生し、一次燃焼で着火しなかった木ガスなども完全燃焼させてしまうのです。このためロケットストーブの特徴である、燃料が完全に燃えてしまうので煙や火花がほとんど出ないという構造になっているのです。
ロケットストーブの耐久性
自作のロケットストーブの場合、ロケットストーブの燃焼熱に煙突が耐え切れず、焼け溶けてしまうことがあります。ペンキ缶などを使った自作のロケットストーブはワンシーズンに数十時間使用したら壊れてしまうことが普通です。
自作ロケットストーブを数年間使用するにはヒートライザー部分が800度以上の高温に耐える材料で作られていなければなりません。ステンレス程度では溶けてしまうのです。安全のためには自作のロケットストーブは使い捨てと思ってよいでしょう。
ロケットストーブは暖房にもなる?
キャンプでのストーブは調理器具の一つですが、暖房器具の一つでもあります。エバンス教授が考えたロケットストーブ原理は、室内の土間で使うことを前提条件とした調理コンロとしてのストーブのためのものでした。
小さなテントの中で使うカセットボンベ式のコンロであれば、調理しながら同時に暖房器具になることもあります。それではロケットストーブを、調理器具として使うのではなく暖房器具として使用することは可能なのでしょうか。
熱を外に逃がさない為暖房効果は薄い
耐火煉瓦で大型ロケットストーブを作り、燃焼炉を長くして床暖房のようなベンチを作った猛者もいます。しかし、自作の小型ロケットストーブの構造からは、暖房を第一使用目的として使うことはおすすめできません。
それは、ヒートライザー部分は断熱材で覆われて放射熱はあまり発生しないからです。ヒートライザー上部に鍋などを乗せて調理することがロケットストーブの原理や構造なので、暖房器具としての効果は薄いと考えてよいでしょう。
ロケットストーブ(コンロ)の人気おすすめ
もとは貧困地域の室内調理器具問題を解決する手段として発明されたロケットストーブでしたが、その構造や原理の簡単さからキャンプなどの野外活動などにも活躍するコンロということで、近年人気になっています。
耐久性を考えると、自作よりは市販されているロケットストーブがおすすめです。調理コンロとしてキャンプなどに大活躍するものや、災害時に備えておくと便利なもの、また日常的に部屋の中で使える魅力的なものまで幅広い選択肢があります。
エコズーム・Versa
本体に高い断熱効果を施されているため、燃焼中であっても外側があまり熱くならないのが最大の特徴です。小さな子供がいる場合は、おすすめの商品です。ロケットストーブの最大の特徴である少量の燃料で効率的な燃焼をすることができている商品です。
遮断された熱が上昇し、上部の吹き出し口に集中します。水をたっぷり入れたやかんであっても、非常に短い時間で沸騰します。完全燃焼のために「すす」がつかないといわれますが、それは事実ではありません。
焚火缶
ロケットストーブ自作キットです。すべてのパーツがペール缶の中に収納できるので、持ち運びや収納には便利です。重さも3kg程度しかありません。足がついておらず本体に断熱材を使っていないので、相当な高温になります。直火禁止の場所や室内での使用はできません。
ペール缶などが入手しやすい環境であれば自作も楽ですが、材料をそろえるところから始めると意外と費用もかかります。はじめはこのキットを使ってロケットストーブ制作と使用に慣れてから、という方法もおすすめです。
テーブル暖炉「こばこ」
商品コンセプトは、屋外のテーブルの上で炎を見て楽しめるように設計したとあります。ガラス窓の小窓がおしゃれです。調理器具として使用すると同時に、暖炉としても十分に温かいと評判です。おしゃれ重視の場合であれば、一番おすすめの商品です。
無煙薪ストーブではないので、室内での使用は考えられていません。9kgと相当な重量なので、女性が一人で持つには厳しいかもしれません。不使用時には付属のコンテナに収納可能となっています。
PETROMAX・ロケットストーブ
安定感のあるスタイルで倒れにくく、安心な設計です。取っ手はついていますが、7kgと決して軽くはありません。多少の風の中でも確実に燃焼できる焚口で、完全燃焼することで煙や火花も非常に少なく、後片付けも楽だと評判です。
ロケットストーブ原理の特徴である上昇気流が作り出す負圧のために、多少はぜる木材を投入したとしても火花が飛んだりすることがありません。ヒートライザー部分の熱遮断と密閉率が高いということです。オートキャンプにはおすすめの商品です。
焚火箱
オプションでピザ窯なども用意されている焚火箱は、燃料を投入する焚口も上部に設けられています。本体内部の仕切りが、上昇気流を作る構造になっており、それまでのロケットストーブの基本形である「J」の字構造を覆したスタイルとなっています。
ロケットストーブで簡単な火起こしを実践してみよう!
ロケットストーブは高い燃焼効率を誇り、二次燃焼まですることで煙が少ないということがわかりました。小型の自作ロケットストーブは簡単に作成が可能ですが、耐久性に劣るためにワンシーズン使い切りがおすすめということもわかりました。
市販のロケットストーブにはおしゃれなものから耐久性に優れたものまで、幅広い選択肢が用意されています。災害時用、キャンプ用、室内用など、使用目的をはっきりさせれば、ロケットストーブがもっと身近な存在になるでしょう。