「かけがえのない」の意味とは?
「かけがえのない」という言葉があります。頻繁に耳にする言葉ではありませんが、「かけがえのない人」というように使われ、「かけがえのない」という言葉が「非常に大切だ」という意味の言葉であることは安易に想像できます。
「かけがえのない」が一般的ですが、稀に「かけがえない」と「の」を省くこともあります。これは正しいのですが「かけがえがない」というように「の」を「が」にすることがあります。一般にはこの「かけがえがない」は、誤用とされています。
「かけがえのない」の対義語・類語
「かけがえのない」という言葉の対義語としては「かえのきく」があります。他の対義語としては「ありふれた」があり、また対義語としては少し意味が弱くなりますが「あたりまえの」というような言葉が「かけがえのない」という言葉の意味の対義語として近い意味を表しています。
「かけがえのない」という言葉の類語としては、「代替できない」などが似た意味の類語だと考えられています。他にも「かけがえのない」という言葉の類語としては「唯一無二の」などが「かけがえのない」という言葉と似た意味の類語として適切といわれています。
「かけがえのない」の使い方・例文
「かけがえのない」という言葉は、人や物に対してだけではなく、抽象的な存在に対しても使われます。「かけがえのない」という言葉の意味が把握できたのであれば、「かけがえのない」という言葉を含んだ例文で使い方を覚えていきましょう。
「かけがえのない」という言葉の意味は「無くなると他にとってかわるものがない、そのくらい大切」という意味なので、「大切」という言葉の意味を強調したいときに使います。「かけがえのない」という言葉の意味を生かした使い方を例文を使ってご紹介します。
例文①
「私にとって彼女は、かけがえのない人です」という例文は、「かけがえのない」という言葉が類語でいうところの「とても大切だ」という意味を持たせています。「とても大切だ」では気持ちが足りないので、それをさらに強調させる意味で「かけがえのない」という言葉を使っています。
この例文での「かけがえのない」という言葉の使い方は「彼女以外は考えられないほどだ」という意味が含まれます。つまり「かけがえのない」という言葉は「程度の深さや気持ちの強さ」を表現する意味での使い方をしています。
例文②
「あの日の経験は、かけがえのないものとなった」という例文は、「経験」という抽象的存在を主語として、それが「かけがえのないもの」という状態になったとしています。「かけがえのない」という言葉は、人以外にも使う言葉であるということです。
ここでの「かけがえのない」の意味は「貴重な」という意味を含み、さらに「他では得られない」という「最上級である」という意味を持たせる使い方をしています。
例文③
「かけがえのない星である地球」という例文は、地球が「唯一無二の存在である」ということを意味しています。さらにそれは一般に「生物が存在するたった一つの星」とまで意味を含めていることになります。
「大切にすべき地球」という言い方でサラリとするのではなく、「地球はたったひとつ」という意味を含め、だからこそ「大切にすべきである」という意味をも含めた使い方をしています。
例文④
「かけがえのない財産の一つに、健康というものがある」という例文は、非常に大切なものは数多存在するだろうが、その中でも外すことのできないものという意味を「かけがえのない」という言葉で表現してます。つまり「とても重要だ」という意味で「かけがえのない」という言葉の使い方です。
「かけがえのない」と「かけがいのない」の意味の違い
文字だけでなく、発声でも「かけがえのない」を「かけがいのない」と言ってしまうことがあります。音声上では「え」と「い」の違いだけですが、「かけがえのない」と「かけがいのない」とでは意味の違いはあるのでしょうか。
「かけがいのない」は「価値がない」という意味
「かけがえのない」と「かけがいのない」は、実は対義語の関係です。「かけがいのない」は「価値が無い」という意味です。「せっかく応援しているのに、オマエは声のかけがいがない奴だな」というように批判するときに使われています。
「い」と「え」は曖昧に使われることが多く、例えば現代語では「行く」は「いく」でも「ゆく」でも正しいとされます。ところが「かけがえのない」「と「かけがいのない」は類語関係ではなく、対義語関係であることに注意しなければなりません。
「かけがえのない」を使う際の注意点
「かけがえのない」と「かけがいのない」が対義語の関係であることの他にも、「かけがえのない」という言葉を使うときには、いくつか注意しておくべきことがあります。「かけがえのない」という言葉を使うときの注意点をご紹介します。
「欠け」は意味が違ってしまうので使えない
ひらがなで表記したときに「かけがえのない」を「かけがいのない」とすると、むしろ意味が逆になることは最も注意すべき点です。その他にも漢字を使っての表記で注意すべき点があります。漢字で「欠けがえのない」としてしまうと、間違いです。
「かけがえのない」という言葉に対して「欠け」としてしまうと、「かけがいのない」という言葉の類語に近くなってしまいます。実際は「欠けがえのない」「欠けがいのない」などは誤字ですので、気を付けましょう。他にも途中に「が」が含まれる「かけがえがない」も一般的ではありません。
「かけがえのない」の由来・歴史
言葉には由来があったり、歴史があったりします。漢字を持っている言葉であれば、中国で使われていたときの意味と、日本に入ってきてからの意味が同じであったり違っていたりします。「かけがえのない」という言葉の由来や使い方の歴史はどうでしょう。
「かけがい」とは何でしょうか。「ない」という言葉は否定の意味でしょうけれど、「かけがい」が無い状況とは、どのような状況を指しているのでしょうか。それが「かけがえのない」ということばの由来につながるとされるでしょう。
由来
「かけがえ」は、「予備」という意味を表す言葉です。着物の予備であったり、刀の予備であったり、また弓道で使う「かけ」という名前の革製の手袋の予備であったり、という説があります。その他にも「掛け軸」の予備ではないかという説もあります。
いずれにせよ、それらが「ない」と否定されていますので、「これらの予備が存在しない」という意味では共通しています。「かけがえのない」という言葉はどうやら口語のようなので、はっきりとした由来や語源はわかっていないというのが現状です。
歴史
歴史的には「立派な掛け軸」のことではないかとされてきました。服や刀剣なども「掛ける」ということもあるので、特定のものを指示したのではないともいわれてきました。いずれにしても予備もなく、非常に立派なので、他に替えようがないという意味で「唯一」を意味するようになったとされています。
弓道で使われる言葉には「図星」「筈」などがあります。このため、「かけ」も弓道の手袋の説や他にも弓の弦を張る作業を「かける」ということから「大事」ということから「かけがえのない」という言葉の語源ではないかといわれています。
「かけがえのない」の意味がある英語表記
「かけがえのない」という言葉の意味と同じような意味を持つ英語にはirreplaceableやonlyやpreciousなどがあります。英語のpreciousは財産などに対して使うことが多く、日本語の「かけがえのない」という言葉に一番近い英語はirreplaceableとされています。
ひとつの単語の英語で「かけがえのない」という意味を表現するのは難しく、例えば人に対しては"He is hard to replace.""You are the apple of my eyes." という英語で表現されることもあります。さらに類語として"She is all in all to him."という英語も「かけがえのない」という意味があります。
「かけがえのない」の漢字
「かけがえのない」を漢字で書く場合は、「掛け替えのない」が正しい表記です。「欠け」とすると誤字であり、また意味も反対の意味になってしまいます。弓道の説では、「かけ」を革偏に柔らかいと書く「かけ」としていましたが、現在では「掛け」と表記しています。
「かえ」も「代替」の意味を持たせるので「替え」でなければならず、「変え」は誤字になります。稀に「掛け替えがない」と表現することがありますが、「かけがいがない」と混同されるためか、間違いとされています。
「かけがえのない」は「他に替わるものがない」という意味
「かけがえのない」という言葉は「掛け替えのない」と書き、「他に替わるものがない」という意味で使われます。「唯一無二」や「この上なく大切な」という意味で、「他に替わるものがない」として「かけがえのない」という言葉が使われています。
「欠けがえのない」や「かけがいのない」は間違いであり、そして「批判」を意味するので反意語になります。また「かけがえがない」とするのも一般的ではありません。「かけがえのない」は口語であり、語源を特定することはできません。