一同の意味とは?
一同とは、「仲間全員」、「メンバーそろって」という意味です。この場合の「同」にはすべての人、という意味があり、ある集団の意志や目的、気持ちがきれいにそろっている、というニュアンスがあります。
したがって、たとえば「社員一同」とビジネス文書などで用いた場合には「弊社に所属しているすべての社員」という意味になり、すべての社員を代表して謝意を表す、という使い方になります。
一方、単独で一同と用いる使い方もあり、その場合には「その場にいるすべてのメンバー」を表します。学校の朝礼で「一同、起立」といえばすべての生徒に起立するように促す、という使い方になります。
ビジネスでは「社員一同」などのように前に何か言葉をつけたうえで用いる使い方がメインとなり、かしこまったビジネス文書では本文の最後に記すのがマナーとされています。
一同の由来
一同は実は抽象的な表現で、「何人以上であれば一同という使い方が適切である」という明確な定義はありません。もともと、同という漢字には「共有の、共有している」という意味が込められています。
同志、同胞、同輩などのように、同が用いられた熟語には「共通の想いや志を共有している」という意味があり、固い絆や結びつきを表しています。
ただ、ビジネスシーンや手紙で用いられる一同は形式的な使い方であり、「社員一同」、「スタッフ一同」などのようにビジネス文書やお知らせの最後に添えられる使い方が多く見られます。
一同の対義語・類語
ビジネスシーンでも私的な手紙でもよく使われる「一同」という言葉。一同の意味やニュアンスを理解し、社会人として正しく使うために、一同の類語表現とそれぞれの例文、使い方について具体的に把握しておきましょう。特にビジネスシーンでは注意点もおさえておいてください。
類語①満場
「その場にいるすべてのメンバー」という意味では、一同と満場は類語の関係にあると言えます。一同の意見が一致した、と満場一致はほぼ同じ意味であり、会議や会合が順調に進んでいることを表すことができます。
ただ、満場一致という使い方はあっても一同一致という熟語はありませんので、うっかり混同することのないように、ビジネスシーンでは例文と使い方に特に注意しましょう。
類語②全会
全会は一同のように、「その空間にいるメンバー全員」を表す言葉です。なお、全会一致と満場一致は同じ意味であり、意見や結論が無事に一致したというニュアンスがあります。
全会の例文としては、「首相肝煎りの法案は、全会一致で可決した」、「全会一致でないかぎり、この会議が結論を見ることはないだろう」などがあり、主にビジネスシーンで用いられる表現であることがわかります。
全会一致も満場一致も多数決を前提とした決め方であり、民主主義とその場の空気を何よりも重んじる日本らしい表現であるとも言えます。
類語③一座
この場合の「一座」は一同や満場と同じく、かぎられた空間の中にいるメンバーや、特定の集団・団体に所属している仲間、という意味があります。
歌舞伎や大衆演劇などで使われる一座は、「座長を中心としてまとまっている団員」というニュアンスになります。ただし、一座は一同のようにかしこまったビジネス表現には使えない、という意味で使い方の違いがあります。
類語④満座
「満」には「いっぱい、限界まで」という意味以外に、全員、みんな、という意味もあります。一方、日本語では一定以上の規模の集団や団体を「座」と表す習慣があり、ふたつを合わせて「メンバー全員」というニュアンスになります。
満座も一座と同様、演劇の世界などで用いられる表現であり、かしこまったビジネスシーンでは一同や全会を使うのが一般的と言われています。
一同の英語表記
一同の類語表現は日本語ではいろいろと見つかりますが、英語表現はいたってシンプルで、基本的には「everyone」ひとつで充分です。あるいは、学校の教室などフランクな場ではよりカジュアルに「Hi」などと使うことが多いようです。
また、社交界など、ある程度かしこまったシチュエーションでは「Ladies and Gentleman」という風に格式をつける使い方もあり、英語での例文をおさえておくことでビジネスでのボキャブラリーがさらに広がります。
一同の対義語
辞書で調べてみても、一同のストレートな対義語表現を見つけることはできません。ただ、一同本来の意味や類義語の例文、使い方から、一同の対義語表現をいくつか挙げることは可能です。類語とともに対義語表現のほうもおさえておくことで語彙力アップにつなげましょう。
対義語①各々
各々の読み方は「おのおの」になります。つまりはそれぞれということで、「イベント当日の参加判断については各々の自己責任となる」というような使い方になります。各々はそれぞれよりもややかしこまった使い方であり、ビジネス文書などでもよく用いられます。
対義語②三々五々
三々五々とは、複数人がそれぞれ違う行動をしたり、ばらばらな方向に帰ったりする様子を表す四字熟語です。例文としては、「遠足を楽しんだ小学生が三々五々家路に着く」という形になります。ちなみに、この場合の三と五は単なる語呂合わせのようです。
一同のビジネスでの使い方
ビジネス文書や手紙でも使う機会の多い一同。礼節と礼儀、言葉の正しい使い方が重んじられるビジネスシーンでは、ビジネス用語の使い方をしっかりとおさえておくことが評価につながります。
いざという時にあわてないように、ビジネスシーンでの一同の正しい使い方と注意点について、具体的な例文とともに見ていきましょう。
一同はビジネス文書でどう使う?
ビジネス用語としても定着している「一同」。ビジネス文書や手紙では時候の挨拶や本文の最後に「社員一同」などと記すのが一般的な使い方であり、ビジネスの基本的なマナーとされています。
会社全体を代表して文書や手紙を送る際には「社員一同」と書けば充分なのですが、たとえば部署ごとに文書や御礼状などを出す際には「事業部一同」などと部署単位でまとめるのが一般的な使い方ですので、違いについても注意しておきましょう。
会社の規模によって一同の使い方が違う?
ビジネス文書などで「社員一同」と書き記す場合、会社の規模や業態によって一同の意味が異なる場合がありますので注意しましょう。基本的に、規模の大きい企業の場合、一同には社長も含まれていると考えられます。
一方、中小企業の文書で一同とあった場合、社長も含めて一同と表記し、「社長も同じ想いですよ」ということを先方に伝える意味合いが込められています。
看板にも一同は使える?
お店などに行くとよく、入り口や店頭に「スタッフ一同」などと書かれた看板が立てられています。看板の内容はさまざまで、日頃の感謝を伝える文であったり、お詫びを記したりする文脈で一同と使われることが多いようです。
この場合のスタッフ一同はよりカジュアルな意味で、「スタッフ全員からお客様に気持ちをお伝えします」というニュアンスが込められています。
一同の使い方
意味が広いだけに使い方が意外とわかりにくい一同という言葉。一同の正しい使い方をつかむためには、具体的な例文からニュアンスをおさえるのが早道です。
ビジネスやプライベートの手紙でうっかり誤用することのないように、一同の例文を通して正しい意味と使い方をしっかりと把握しておきましょう。
例文①
「一度ならず2度、3度とたてつづけに発覚した悪質な食品偽装問題に、企業Bは社員一同謝罪し、責任を厳しく追及されることとなった」。不祥事で一同という言葉が使われるケースは、意外と多いものです。
例文②
「平素より格別のお引き立てを賜りまして、社員一同より厚い謝意をお伝えいたします」。この例文のように、文章の中で一同と使う場合は、お引き立て、御高配などの敬語表現とセットになっているケースが多いため、注意しておきましょう。
例文③
「長時間の会議の結論を根本から覆す社長の鶴の一声に、社員一同疲労を隠せない様子だった」。いつの時代も、ワンマン社長というのはいるものです。この例文のような形で一同の気持ちが一致するのは、ビジネスにおいては建設的とは言えません。
例文④
「一同、礼。この声を聞くと今でも、時間が有り余って仕方がなかった学生時代を思い出すよ」。ビジネス文書などであればともかく、社会人になってから直接的に一同、と言われる機会は意外と少ないものです。学生時代が懐かしい、という方も多いのではないでしょうか。
一同の注意点
一同と混同しやすく、注意が必要な言葉として、一堂があります。一同と一堂は読み方は同じですが、意味や使い方は異なっていますので日常やビジネスで使う際には注意しなくてはなりません。
一同は人に対して用いる言葉で、一堂は場所を表す際に使う言葉です。「一堂に会する」というのは、「大勢のメンバーが同じ場所に集まる」という意味で、一同に会すると書くのは誤用と見なされますので注意しておきましょう。
一同とは「所属しているメンバー全員」という意味
一同とは「その場にいるすべてのメンバー」、「団体や集団に属しているメンバー全員」という意味の言葉です。ビジネスでは社員一同、スタッフ一同などの形で用いられ、感謝やお詫びの気持ちを伝える文脈で使われます。
一堂と読み方が同じなので混同しやすいかもしれませんが、一同は人、一堂は場所に使う、という違いがありますので、ビジネスシーンで誤用することのないよう、使い方には注意しておきましょう。