「言及」の意味とは?
「言及」はメディアの報道などで「首相の所信表明演説では〇〇問題に言及していた」「大臣の答弁は質問の答えになっていない。質問の主旨に言及すべきだ」のような使い方をする言葉で「〜について話す」という意味です。
言い換えると「話がある事柄まで及ぶこと」「話題に触れること」「話に出すこと」という意味になります。つまり話の内容が「〜まで及ぶ」「〜に触れる」「〜を話に出す」という意味です。
「言及」の読み方
「言及」は「げんきゅう」が正しい読み方です。「言」には「言語道断(ごんごどうだん)」「文言(もんごん)」のように「ごん」という読み方があるので、たまに「ごんきゅう」のような読み方をする方がいますが、この読み方は間違いです。正しくは「げんきゅう」です。
また「言」には「ものを言う」という意味があるので、「言及」は会話や話し言葉として使うものと勘違いされやすいのですが、「言」には「言ったことば」という意味があるので「言及」は文章の中でも使うことができる言葉です。
「言及(げんきゅう)」の正しい意味と正しい読み方をしっかりとおさえて、これから紹介する記事を参考にして正しい使い方を身につけましょう。
「言及」の対義語・類語
類語は、類義語(るいぎご)や同義語(どうぎご)とも呼ばれ、似通った意味や同じよな使い方をする言葉のことです。対義語は反対語とも言い、反対の意味を持っている言葉のことです。
「言及」は「話がある事柄まで及ぶ」という意味なので、この意味に近い言葉が類語になります。「言及」の反対の意味とは「話がその事柄に及ばないこと」なので、このニュアンスを持つ言葉が対義語になります。
類語とは
「類語」の読み方は「るいご」で、同類の「同」と「ことば」という意味の漢字「語」を組み合わせた熟語なので「同類のことば」=「似通った意味を持つ言葉」という言葉のことです。
類語の意味を調べることは「言及」の本来の意味を深く理解することにつながります。似通った意味の類語の意味や使い方を比較することで「言及」の意味がより明確になるからです。それでは「言及」の主な類語の意味や使い方「言及」との違いなどを紹介します。
「論及」
「論及」の読み方は「ろんきゅう」で、「論じてそのことまでいい及ぶ」「意見がそのことに及ぶ」という意味があり「言及」と似ているので類語になります。
また「彼の学説は、細部にまで論及していて非常に丁寧でわかりやすい」「総理の答弁は最後まで問題点に論及することがなかった」の例文の「論及」を「言及」に入れ替えても意味も内容も変わらず、非常によく似ています。
ただ「言及」は「話の内容が〜に及んでいる」という抽象的な表現なのに対し「論及」の場合は「論じている意見が〜に及んでいる」という具体的なニュアンスがあります。
つまり「言及」の「話の内容が〜に及ぶ」に比べ「論及」の場合は、及ぶ対象が単に「話」というだけでなく「論じている内容」や「意見」が「〜に及ぶ」というように「言及」より具体的に突っ込んでいるところに微妙な違いがあります。
「話題にする」
「話題にする」という言葉は文字の通り「話の題材にする」という意味で「言及」と似ているので類語になっています。フランクな日常会話でもよく使う言葉です。
「今感染拡大が懸念されているウイルスについて、連日のように話題になっています」「友達同士で集まると、いつもゲームの攻略法を話題にすることで盛り上がります」のような使い方をします。
「友達同士でゲームの攻略法に言及する」とはあまり言いません。「言及」という言葉は、かしこまった場面や、ニュースや報道など少し堅苦しい表現の使い方です。「話題にする」はフランクな場面でも使えるところに違いがあります。
また「言及」には「話の内容が〜に及んでいる」というニュアンスがありますが、「話題にする」には「〜に及ぶ」というニュアンスはなく、単に話のネタにするという意味のところにも違いがあります。
「取り上げる」
「取り上げる」には主に3つの意味があります。1つ目が「下にあるものを手にとって持ち上げる」、2つ目が「相手が持っているものを奪い取る」、3つ目は「意見や申し出などを聞き入れる。受理する。採用する」とい意味です。
3つ目の意味が「言及」と似ているので類語になります。例えば「社内会議ではB案を取り上げることが決まりました」「彼の意見を取り上げることは、リスクが大き過ぎるので反対です」のような使い方をします。
しかしこの例文の「取り上げる」の代わりに「言及」を置き換えると、意味が通じません。「彼の意見を言及する」とは言いません。意見などを採用するという意味では「言及」と似ていますが、話の内容が〜に及ぶというニュアンスがないところが違います。
このように似た意味を持つ類語と「言及」の違いを見つけるには例文で置き換えてみるとよくわかります。また「言及」には物理的に「持ち上げる」「奪い取る」という意味がないところにも違いがあります。
「触れる」
「触れる」の読み方は「ふれる」で、実際に「手でものに触れる」という意味と「話の内容が問題の核心に触れる」のような使い方をする場合があります。後者の使い方をする場合が「言及」と似ているので類語になります。
例えば「今日のA選手の記者会見では、引退の時期や理由について触れています」の例文を「引退の時期や理由について言及しています」と「言及」に置き換えても意味や内容に違和感がなく伝わります。
しかし「沸騰したヤカンにうっかり触れてしまい火傷をしてしまった」の例文では「言及」を置き換えることはできません。つまり「触れる」は使う場面により「言及」の類語になりますが、使い方によっては全く違う意味になる言葉です。
このように「言及」の類語は、似たような意味があり同じような使い方ができる言葉ですが、類語それぞれで「言及」とは違う意味を多く持っています。その違いを踏まえて、使う場面や使い方には注意しましょう。
対義語とは
対義語の読み方は「たいぎご」で、漢字の「対(つい)」と「義=意味」を組み合わせた言葉で、意味が相対して対(つい)になっているという意味です。
対義語(対になる言葉)とは「男と女」「生と死」「大と小」「善と悪」「白と黒」「遠くと近く」「高いと低い」のように、反対の位置や状況を意味する言葉で反対語、反意語とも呼ばれ、読み方はそれぞれ「はんたいご」「はんいご」です。
「言及」の対義語の意味を知ることで「言及」の本来の意味をより明確にすることができます。白い半紙に黒のすみで文字を書けばハッキリと文字が浮かび上がります。対義語にはそれと同じ効果があるから、「言及」の意味がより明瞭になります。
「言及」は「話の内容がある事柄まで及ぶ」という意味です。この意味と対をなす対義語とは「ある事柄まで及ばない」というニュアンスの言葉です。「言及」の対義語の意味や使い方をこれから紹介します。
「自粛する」
「自粛」の読み方は「じしゅく」と読み「粛(しゅく)」という字には「つつしみかしこまる」という意味があるので「自粛する」とは「自ら言動や態度をつつしむ」という意味になります。
「発言を自粛する」「風評被害にならないように報道を自粛する」「スキャンダルのため芸能活動をしばらく自粛する」「ケガや故障のため選手活動を自粛する」のような使い方をします。
つまり、ある事柄や行動に及ばないということで「言及」の対義語になります。また「自粛する」という表現は、自分が起こした失態や問題について、世間の評価を考慮したり反省の意を表すために、行うはずだったことを取りやめる場合に多く使われる対義語です。
「差し控える」
「差し控える」の読み方は「さしひかえる」で「物事をひかえめにする」「ある動作をなるべくしないようにする。見合わせる」という意味があり、自粛と同じようなニュアンスがある対義語です。
「疑惑の件については、現在捜査中なのでコメントは差し控えさせていただきます」「トラブルの経緯については、長くなるのでは説明は差し控えます。お手元の資料をご参照ください」のような使い方をして「言及」と反対の表現なので対義語になります。
また「健康のためタバコは差し控えています」「飲酒を差し控えてから毎日の食欲が増しました」「ダイエットのため脂肪分の多い食べ物は差し控えています」のように発言だけでなく、行動そのものを控える場合にも使います。
「ノーコメント」
「ノーコメント」は「コメントをしない」という意味で、ある物事についての評価や説明、釈明を拒否して断る場合に使う言葉です。「言及」とは正反対の立場を意味するので対義語になります。
「大臣は先日の失言に対して、いっさい釈明はせずノーコメントのままです」「今回のプロジェクトについては、まだ詳しく内容を検討していないので現段階ではノーコメントです」のように使います。
このように「言及」の対義語は「〜に言い及ばない」または「〜の行動を控える、または行動しない」というニュアンスの言葉です。これら対義語の意味や使い方を参考にして「言及」の本来の意味の解釈に役立ててください。
「言及」の使い方・例文
「言及」という言葉は「〜に言及する」「〜に言及される」という使い方が一般的ですが「〜に言及する必要がない」と否定する場合にも使うことができる言葉です。
また使う場面もメディアのニュース報道や、国会や議会なとの討論の場、ビジネス会議や学会などで発言する場合、論文や文書などに表記する場合など多岐にわたっています。それぞれの場面で使われる「言及」の使い方を例文で紹介します。
例文①
新聞やテレビなどの報道で使う場合は「内閣官房長官の緊急記者会見では、今回の災害の被害の甚大さを鑑み、非常事態宣言も視野に入れていることに言及した」「今回の失言騒動は、大臣の進退問題に言及するのではと予想される」のように使います。
また「経済問題に言及すると、人手不足で雇用が伸びないことはGNPの減少につながりかねない」「戦後の日本経済が発展してきたのは人口の爆発的な増加があったからです。その伸びが止まった現在は、政治家や学者がこの問題に言及して討議すべき」のように表現します。
「今世界規模で起きている異常気象のためは、次のG8サミットの議題で温暖化対策の取り組み方に言及されることは間違いない」「少子高齢化の現象は、将来の医療や年金制度にまで言及する問題なので早急の対策が必要です」のように使います。
このように政治経済の問題だけでなく、環境問題や社会現象にも「言及」という言葉は使われています。使い方や使う場面が広い言葉と言えるでしょう。
例文②
ビジネスシーンで「言及」を使う場合には「今期の売り上げが減少した責任の所在まで言及するつもりはありませんが、原因の求明は必須です」「本日の会議は、将来の方針を考えることです。利益を増やすことよりも利益の質を高めることに言及した意見を求めます」の例文のように使います。
また「社員の意欲を高めるためには、高い目標を掲げることではなく、職場の環境をいかに働きやすくすることに言及した改革が求められます」「今日皆さんに配布した資料には、プロジェクトの目的、進め方、予算の3点に言及した文書が入っています」のように表現します。
「今君が述べているのはトラブルの言い訳です。トラブルの原因や今後どうするかに言及した話をしてください」のようにビジネスでは様々な使い方があります。自分なりの状況を設定して例文を自分で考えてみることはビジネスで必ず役に立ちますのでオススメします。
例文③
「言及」を否定的に使う場合の例文では「議員の進退についてはここでは言及しません。むしろ議員の資質についてお伺いしているのです」「大臣の職を辞することは表明されていますが、議員の進退については言及されておりません」などは国会答弁でよく耳にするやり取りです。
記者会見などで記者の質問で「失言の撤回や釈明に言及する必要はないと言明してますが、それでは国民の納得が得られないのでは?」「撤回や釈明に言及しないということは、進退問題は考慮していないということですか?」などもよく聞くやり取りです。
ビジネスシーンでは「会議中は人を誹謗・中傷するような意見には言及しないでいただきたい。建設的な意見を求めます」「過去の実績や数字に言及する必要はありません。現在の経済状況を見極めて今後どうするかを主体に考えていただきたい」のように使います。
このように「言及」という言葉は、政治や経済、社会全体を考えさせる言葉です。またその力がある言葉でもあります。これらの例文からその意味を感じていただければ幸いです。
「言及」と「追求」の違い
「追求」は「ついきゅう」という読み方をして、漢字では「追い求める」と書きます。「〜について言及する」を「〜について追求する」と言い換えることができるので、似た意味を持った類語の一つにもなる言葉です。
それでは「言及」と「追求」にはどのような意味や使い方に違いがあるのでしょうか。漢字の字面を見比べると、どことなくニュアンスが違います。その違いを探るために「追求」の意味を詳しく調べてみましょう。
「追求」は「追い求める」という意味
「進退問題に言及する」を「進退問題を追求する」と言い換えると意味は似ていますが、どこかニュアンスが違います。それは「追求」は、追い求めるという行為を表す言葉で「言及」は〜に及ぶという状況を表す言葉なので、根本的に意味が違うからです。
しかし使い方ではその違いがはっきり見えないために、前述のように同じように解釈される場合があります。例文で検証してみるとその違いがはっきりします。
「今回は不透明な政治資金の流れについて、徹底的に追求するつもりです」の例文「追求」を「言及」に言い換えると違和感が出ます。「徹底的に言及する」のような使い方はしないからです。
また「トラブルの原因を言及する」「税金の使い道を言及する」「事故が起きたのが、人的ミスなのか原因を言及する」などとは言いません。この場合は「追求」が正しい使い方です。
「言及」は対象となる事柄を「議論の対象として話の中に盛り込む」場合に使う言葉ですが、「追求」は対象となる事柄を「追い求めて追求する」または「原因を突き止める」という場合に使う言葉です。つまり対象に対する姿勢が違うのです。
「言及」の英語表記
「言及」を英語で表現するには「speak to〜(〜について話す)」「mention〜(〜に軽く触れる)」「refer to〜(〜を話題に取り上げる)」「allude to〜(〜をほのめかす)」などがよく使われる英語表記です。
いちばん馴染みの多い英語表記は「speak to〜」ですが、〜の部分に人物を入れると「〜に話しかける」という意味になります。〜の部分に物事を入れると「〜について話す(言及する)」という意味の英語表記になります。
例えば「I won't speak to it, because we haven't announced that information officially.」のような英語例文で「その情報については公式に発表されていないので、話をする(言及する)ことは避けます」のように「言及」を表現します。
「mention」という英語は「簡単にふれる」「ちょっと言っておく」のようなニュアンスの意味で、日本語の「言及」より軽い感じで使う英語表現です。
「I mentioned your name to him in my letter. (あなたの名前を手紙で彼にちょっと伝えておきました)」「His name is sometimes mentioned in the newspapers. (彼の名前は時々新聞で触れられています)」のように軽く「言及」する場合に使われる英語です。
「refer to〜」は「〜にふれる」「〜を話題に取り上げる」「〜を参照する」という意味の英語で「to refer to something(引き合いに出す)」「Refer to the following(下記を参照してください)」のような使い方をします。
例文では「When she gives a presentation, she always refers to the economic world.(彼女がプレゼンテーションするときには、いつも経済界を引き合いに出します/言及します)」のように英語では「refer to〜」を使って「言及」を表現します。
「allude to」は「間接的に話題に触れる」という意味の英語で「He alluded to Takahashi, but never said his name.(彼は暗に高橋のことを話題にしているが、決してその名前は出さなかった)」は「allude to」を使って「言及」を英語で表現した例文です。
このように英語には「言及する」を直訳する言葉がありません。そのために「speak to」「mention」「refer to」「allude to」などの英語の言い回しで「言及する」を表現しています。
「言及」は「話題にする」という意味
「言及」は「話がある事柄まで及ぶこと」つまり「〜を話題として取り上げる」簡単に言えば「話題にする」という意味で、新聞やテレビの報道などでよく使われる言葉です。
ここまで「言及」の意味と読み方、類語や対義語、例文による使い方、「言及」と「追求」の違い、英語表記などを紹介してきました。これらを参考にして「言及」の正しい使い方でビジネスシーンなどに役立ててください。