言葉足らずの意味とは?
言葉足らずとは読んでそのまま「言葉が足りていない」ということで、重要な説明が抜け落ちている、という意味になります。ビジネスでは謙譲表現としての使い方が多く、メールでも「言葉足らずですみません」と使います。言葉足らずは必須のビジネス用語ですので、使い方をおさえておきましょう。
言葉足らずの由来
「言葉足らず」は日本的な表現であり、敬語の中でも謙譲表現を重んじる日本らしい言葉であるとも言えます。ビジネスメールでも、「今回は私の言葉足らずで」などと、自分のミスや落ち度を認めるかたちで使われることが多く、おさえておくべき敬語表現のひとつです。
また、言葉足らずの代わりに言葉足りず、と使っているケースもありますが、これは言葉の誤用で、言葉足りずという表現はありません。もちろん、敬語表現としても成立していませんのでビジネスメールで礼儀を欠くことのないように注意しましょう。
最近ではバラエティなどで言葉足らずを「舌足らず」と混同しているケースも見られますが、これも誤りです。舌足らずとは、甘えた調子で話したりする様子を表す言葉ですので、敬語にもなりません。言葉足らずとの使い方の区別をしっかりとおさえておきましょう。
言葉足らずの類語
「舌足らず」と混同しやすい言葉足らずという言葉。ビジネスメールでも敬語表現として用いられることの多い言葉足らずの類語表現をしっかりとおさえておくことで、日常やビジネスでの誤用を防ぎましょう。
日本語での類語表現と合わせて英語での表現についても見ていきますので、外資系企業とのビジネスの機会が多い方も敬語表現としてぜひとも参考になさってください。
類語①思慮不足
言葉足らずとはつまり、相手に対する配慮が欠けているということです。ビジネスメールでは特に言葉のわかりやすさが求められ、重要な事柄ほど丁寧に順を追って説明することがマナーであるとされています。
ビジネスにおいて「相手に配慮する」とは要するに、事前の説明を徹底するということで、このくらいの説明でわかってくれるだろう、と勝手に思い込んで説明を省くのはビジネスでは非礼な行為とされています。
さまざまな事情でやむを得ず重要な説明が抜け落ちてしまった場合は、ビジネスメールをあらためて送り、「この度は当方の思慮不足により多大なる御迷惑をおかけしました」などと書き添え、補足の説明を送るのがマナーです。
類語②失念
失念とは本来「忘れる」という意味で、言葉足らずの類語として用いる場合は、「大切な説明を忘れてしまう」という意味になります。ビジネスメールでは一般的に使われる表現で、日常でも使いやすいため覚えておくと便利です。
ビジネスメールでの例文としては、「弊社の不手際により失念しておりました」などのようになり、ただ謝罪するだけでなく本来必要な説明をさりげなく書き添えるのがビジネスでのマナーとされています。
日常の場面で失念を使うとやや堅苦しい印象になりますが、明治・大正の文豪は小説の中に自然な表現で失念を取り入れていますので、そちらのほうも例文としておさえておくとビジネスでのボキャブラリーが広がります。
類語③曖昧
言葉足らずな説明は得てして曖昧で、わかりにくいものです。ビジネスでは特に曖昧さを嫌いますので、メールでも曖昧さが一切残らないように、具体的な説明のみで文面をつくる必要があります。
ビジネスにおいて曖昧な説明を避けるためには、事前のシミュレーションが非常に重要です。メールを実際に書く前にあらかじめ、先方からの疑問や質問事項を箇条書きで書き出しておき、それに対するするこたえをそのまま文面にすることで明快な説明になります。
もちろん、先方から言葉足らずな箇所を指摘された場合にはあらためて謝罪のメールを送り、より正確でわかりやすい説明をつけるのがビジネスマナーの鉄則です。
類語④尻切れトンボ
言葉足らずのやや口語的な類語として、尻切れトンボがあります。例文としては「説明が尻切れトンボに終わる」などのようになり、一種の慣用表現として定着しています。
口語に近い表現のため、ビジネスメールでは使いにくいかもしれませんが、同僚とのプライベートな会話などでさりげなく「あの説明は尻切れトンボだったね」などと使うとボキャブラリーがさらに広がります。
類語⑤中途半端
重要な説明が言葉足らずになってしまうのは、説明が中途半端になっているからです。それはすなわち、説明する側が話の要点について充分に整理できていない証拠であり、説明の前にあらかじめ重要な事柄を論理だててメモしておくなどの対策が効果的です。
言葉足らずの英語表現はある?
ビジネスでも言葉足らずの英語表現が気になるところですが、結論を言うと、言葉足らずに完璧に合致するニュアンスの英語表現はありません。ただ、英語でも似たような意味の表現はあり、「説明が足りなかった」という言い方で表現するのが一般的のようです。
英語圏では日本と比べて、物事を論理的に整理し、過不足なく伝える力が重んじられるため、英語でも言葉足らず、という表現そのものが浸透しなかったのかもしれません。
言葉足らずの対義語
類語と合わせて言葉足らずの対義語表現についても把握しておくことで、ビジネスシーンでのボキャブラリーが格段に広がり、社会人としての力になります。表現だけでなく、それぞれの例文についても使い方とともにしっかりと把握し、日常で使いこなせるようにしましょう。
対義語①過不足なく
説明が中途半端な様子を表す言葉足らずの対義語としてはまず、「過不足なく」が挙げられます。過不足なくとは物や環境がちょうどいい具合にととのっている、という意味の言葉であり、説明が充分である、というニュアンスにも使うことができます。
対義語表現②明瞭
わかりにくく不透明、というニュアンスももっている「言葉足らず」。明瞭とは論理が明確て誰にとってもわかりやすい様子のことで、言葉足らずとはまさに対極の意味になります。
ビジネスでもつねに明瞭で疑問の余地のない説明が求められますので、早い段階から論理的思考力を磨き、どんなシチュエーションでも明瞭な説明ができる力を身につけておきましょう。
言葉足らずの使い方
ここまで、言葉足らずの類語や対義語について見てきましたが、ビジネスシーンでの使い方をより正確に把握するためには例文について深く見ていく必要があります。
ここではビジネスシーンを中心に、言葉足らずの正しい使い方がよくわかる身近な例文について詳しく御紹介していきますので、ぜひとも参考になさってください。
例文①
「先日お送りしたメールでは言葉足らずの部分がありましたので、あたためて詳細な重要事項のほうを説明させていただきます。この度は多大なる御不便をおかけしてしまい、誠に申し訳ございません」。
ビジネスシーンで言葉足らずを使う場合は、謝罪とセットになっているケースがほとんどです。重要なのはむしろ謝罪の部分であり、ミスをいかにしてリカバリーできるかが社会人としての力量とも言えます。
例文②
「言葉足らずな説明になってしまうのは、君が本当の意味で相手の立場になっていないからなんだよ」。ビジネスにおいても、本当の意味で説明上手な人は、つねに聞く側の視点に立った説明を組み立てています。
もしも、あなた自身が言葉足らずな部分を指摘されているのなら、自分自身に説明するつもりで一度説明を組み立て、箇条書き形式でメモすることで論理的な考え方が自然と身につきます。
例文③
「あえて言葉足らずな説明に終始することで法案の論点を巧みにぼかし、野党の追及をかわす。大泉首相の常套手段だよ」。日本の政治家は特に言語的な説明力に乏しいと言われ、国会論戦でもしばしば言葉足らずな釈明が飛び交っています。
一見わかりやすく、耳になじみやすいフレーズが必ずしも論理的ではないということは、郵政民営化で話題をさらったあの総理大臣の例を見ても明らかです。
例文④
「そんな曖昧で言葉足らずな説明でも何とか許されるのは新人のうちだけなんだからね。覚悟しておきなさいよ」。新人の方にとっては少し厳しい例文かもしれません。
誰しも社会人である以上、新人時代はあるものですが、新人のうちから言葉足らずな部分を自覚し、わかりにくい部分を克服できるように努力しているかどうかが、キャリアアップできるかどうかの分かれ目とも言えます。
言葉足らずの注意点
ビジネスにおいて、言葉の使い方は重要です。言葉足らずと一見意味が近い言葉として、舌足らずがあります。舌足らずは甘えた喋り方という意味の言葉で、言葉足らずとは意味や使い方の違う言葉ですので注意が必要です。また、「言葉足りず」とも間違えやすいため、使い方には注意しましょう。
言葉足りずは「説明が曖昧で不充分」という意味
言葉足らずとは、「説明が不充分」という意味の言葉です。ビジネスにおいては謝罪とセットにして用いられるケースが多く、ビジネスメールでも「言葉足らずな部分があり、申し訳ございません」という使い方が主流です。
舌足らず、言葉足りず、などの言葉とも混同しやすい意味の言葉ですので、ビジネスで言葉足らずにならないよう、新入社員のうちから明快でわかりやすい説明を心がけ、言葉足らずの英語表現もチェックしておきましょう。