「神妙な面持ち」の意味とは?
「神妙な面持ち」という表現は「神妙な」と「面持ち」のふたつの言葉から成り立っています。まずは「神妙な」と「面持ち」それぞれの言葉の意味を見ていきましょう。
「神妙な」という言葉の「神妙」には「不思議」「立派」「素直」「従順」といった意味があります。表情だけではわからない不思議で謎めいている雰囲気、心がけや行動が立派なさま、おとなしくて素直な態度、従順に控えている様子などを表しています。
「面持ち」という言葉には「ある感情の表れている顔つき」や「表情」といった意味があります。「面持ち」という言葉はマイナスの感情が表情に出たさまを意味します。プラスの感情である喜んでいるさまや明るいさまを意味するときには「面持ち」とは使われません。
「神妙な」と「面持ち」それぞれの言葉の意味を理解したところで、次は「神妙な面持ち」の意味を見ていきましょう。
「神妙な面持ち」という言葉には、大きく分けて「普通の状況とは異なる、特別な何かを抱えているような表情」と「しおらしい表情やおとなしいさま」の2つの意味があります。
意味①
1つ目に紹介する「神妙な面持ち」の意味は「普通の状況とは異なる、特別な何かを抱えているような表情」です。いつもとは違い、深刻なことを考えていたり、思いつめたりしている表情のときに「神妙な面持ち」と表現します。
投資に失敗した、受験が不合格だった、初めて任された仕事で重大な間違いをおかしてしまったなど、本人にとって厳しい状況のときにする表情です。
意味②
2つ目に紹介する「神妙な面持ち」の意味は「しおらしい表情やおとなしいさま」です。本人の行動が原因で、先生や親、上司などに叱られ、反省の気持ちや罪の意識を感じている表情のときに「神妙な面持ち」と表現します。
「神妙」には「不思議」という意味が含まれていますが、「神妙な面持ち」には「不思議な」という意味はありません。不思議そうな顔や表情をしているときは「神妙な面持ち」とは使いません。
「神妙な面持ち」という表現は、謝罪会見に臨んだ方の表情に使われることも多いです。謝罪会見ということで「申し訳なさそうな表情」を表していると勘違いする方もいます。
「神妙な面持ち」には「申し訳なさそうに」という意味はありません。「かしこまった表情」という意味で使われているので覚えておきましょう。
「神妙な面持ち」の類語
「神妙な面持ち」の類語として、この記事では「神妙な顔」と「神妙な顔つき」、「神妙な表情」、「しおらしい顔つき」の4つの表現をピックアップしました。ここからは、「神妙な面持ち」の類語について紹介します。
類語①神妙な顔
1つ目に紹介する「神妙な面持ち」の類語は「神妙な顔」です。「面持ち」という言葉には「ある感情の表れている顔つき」や「表情」といった意味があります。
「表情」の類語のひとつが「顔」です。「顔」という表現は「面持ち」よりも一般的に使われる言葉なので、会話の中でも取り入れやすい表現になります。
「神妙な面持ち」と「神妙な顔」はほぼ同じ意味合いですが、「顔」と言い換えることでイメージがしやすい表現の使い方になります。
類語②神妙な顔つき
2つ目に紹介する「神妙な面持ち」の類語は「神妙な顔つき」です。「面持ち」という言葉には「ある感情の表れている顔つき」や「表情」といった意味があります。「面持ち」の持っている意味のひとつ「顔つき」を使い、そのまま言い換えることができます。
「神妙な顔つき」は「神妙な顔」よりもかしこまった表現になり、会話の中で使われるよりも文学に向いている表現の使い方になります。
類語③神妙な表情
3つ目に紹介する「神妙な面持ち」の類語は「神妙な表情」です。「面持ち」という言葉には「ある感情の表れている顔つき」や「表情」といった意味があります。「面持ち」の持っている意味のひとつ「表情」を使い、そのまま言い換えることができます。
「神妙な表情」は「神妙な面持ち」よりも一般的に使われる言葉なので、会話の中でも取り入れやすい表現になります。顔に表れる気持ちや人の顔によって伝えられる様子という意味がわかりやすく表現されています。
類語④しおらしい顔つき
4つ目に紹介する「神妙な面持ち」の類語は「しおらしい顔つき」です。「神妙」には、他人に対してよく思われるために行動したり振る舞う、いい顔をするという意味の「しおらしい」と、素直で控えめな気持ちの内面を表す意味で「しおらしい」という類語表現があります。
「しおらしい」は魅力的な人に使われることが多い表現です。「いたいけ」「可憐」「純粋」といったプラスのイメージから、可愛い雰囲気の純真無垢な内面を持った女性を表す言葉として多く使われます。
「しおらしい顔つき」には、「おとなしく控えめ」「遠慮深い」「けなげな様子」などが顔に出ていることを言います。
「神妙な面持ち」の使い方・例文
「神妙な面持ち」の使い方・例文として、この記事では「神妙な面持ちで話を聴く」と「神妙な面持ちから彼女の内面がうかがえる」、「神妙な面持ちで真実を語りはじめた」、「神妙な面持ちで謝罪をしていた」、「神妙な面持ちで話し始めた」の5つの項目をピックアップしました。
「神妙な面持ち」とは、一般的に普段からおとなしい顔をしている人ではなく、普通の状況とは異なる、特別な何かを抱えているような表情に変化した場合に使われる表現です。
また、周囲の誰かに対して確固たる意志で接するときではなく、本人の意思や周囲からの受動的な状態のときに使われる表現です。
例文を参考にして、具体的な使い方を身につけましょう。ここからは、「神妙な面持ち」の使い方・例文について紹介します。
例文①
1つ目に紹介する「神妙な面持ち」の使い方・例文は「神妙な面持ちで話を聴く」です。仕事や勉強、家庭などで、上司や先生、親といった目上の人の話を真剣に聴いている場面で「彼は神妙な面持ちで上司の話を聴く」という使い方をします。
目上の人の話を真剣に聴いている場面では「かしこまった表情」という意味見合いで話を聴いている人に使う表現です。
叱られている場面でも、相手の話を真摯に受け止めている気持ちがあれば「神妙な面持ちで話を聴く」と使うことができます。本人が相手の話をどう受け止めているかが重要になります。「申し訳なさそう」や「縮こまっている」ような意味ではないので注意しましょう。
例文②
2つ目に紹介する「神妙な面持ち」の使い方・例文は「神妙な面持ちから彼女の内面がうかがえる」です。仕事で重大なミスをしたりトラブルが発生して、すぐに解決できないような悩みがあるときに考え事をしている場面で「神妙な面持ちから彼女の内面がうかがえる」という使い方をします。
考え事をしている場面では「思い詰めた顔」や「思い詰めた表情」という意味合いで悩んでいる人に使う表現です。
普通の状況とは異なる、特別な何かを抱えているような表情という意味で使うことができる例文です。周囲の誰かに相談できず、解決できない悩みを一人で抱えて思い詰めている状態です。
例文③
3つ目に紹介する「神妙な面持ち」の使い方・例文は「神妙な面持ちで真実を語りはじめた」です。ずっと隠し黙っていた秘密を打ち明ける場面で「神妙な面持ちで真実を語りはじめた」という使い方をします。
例文④
4つ目に紹介する「神妙な面持ち」の使い方・例文は「神妙な面持ちで謝罪をしていた」です。謝罪会見など、緊張をしている場面で「神妙な面持ちで謝罪をしていた」という使い方をします。
顔が青ざめていたり緊張のあまり体が硬直しているような状態でありながら、冷静で真剣な態度であることを意味しています。
例文⑤
5つ目に紹介する「神妙な面持ち」の使い方・例文は「神妙な面持ちで話し始めた」です。言わなくて済むなら言いたくはないが、言いづらいことを言わなければいけない場面で「神妙な面持ちで話し始めた」という使い方をします。
会社倒産の危機や解雇の通達、不合格の連絡など、人と関わる以上、言いづらい事実を伝えるという避けられない状態になることもあります。
「神妙な面持ち」に近い表現
「神妙な面持ち」に近い表現として、この記事では「意味深な」と「遠慮がちな」、「物静かな」、「控えめな顔で」、「謙虚な態度で」、「偉ぶらずに」の6つのつの表現をピックアップしました。ここからは、「神妙な面持ち」に近い表現について紹介します。
①意味深な
1つ目に紹介する「神妙な面持ち」に近い表現は「意味深な」です。「意味深(いみしん)」とは、意味深長(いみしんちょう)の略語です。「表面上の意味とはまた別に、背景に奥深い事情が隠れているように見えること」また、「そのさま」を意味します。
例えば「上司が意味深な発言をした」という使い方ができます。発言をした表面上の意味とはまた別に、背景に奥深い意味が隠れていることが伺えるときに使います。
一般的に会話で使う場合は「意味深」で問題ありませんが、文書では「意味深長」と正しく書くことをおすすめします。
「神妙な面持ち」という言葉には、「普通の状況とは異なる、特別な何かを抱えているような表情」という意味があり、同じようなニュアンスで「意味深な」と使うことができます。「意味深な」という表現は、「神妙な面持ち」よりミステリアスなイメージが強い使い方表現となります。
②遠慮がちな
2つ目に紹介する「神妙な面持ち」に近い表現は「遠慮がちな」です。「遠慮がち」とは、「物事に対する消極的な態度や姿勢」や「自分の考えなどを強く主張しないさま」などの意味があります。
弱気や人見知り、優柔不断などの性格の人や、控えめで謙虚な姿勢の人などに「遠慮がちな人」という使い方をします。
「神妙な面持ち」という言葉には、「しおらしい表情やおとなしいさま」という意味があり、同じようなニュアンスで「遠慮がちな」と使うことができます。「遠慮がちな」という表現は、「神妙な面持ち」より本人の意思が弱いニュアンスが含まれる使い方になります。
③物静かな
3つ目に紹介する「神妙な面持ち」に近い表現は「物静かな」です。「物静かな」とは、「自分の主義主張をあまり表に出さないようにするさま」や「無口で、考えていることを表に出さないこと」などの意味があります。
「神妙な面持ち」という言葉には、「しおらしい表情やおとなしいさま」という意味があるため、同じようなニュアンスで「物静かな」と使うこともできます。
ただし、出しゃばらず目立たない、消極的な人や、口数が少ない人や感情を表に出さない人などに「物静かな人」という使い方をすると勘違いしている人が多いですが、実際は「人への接し方や言動や態度が落ち着いていて穏やか」な人に対して「物静かな人」という使い方をしていることが多いです。
④控えめな顔で
4つ目に紹介する「神妙な面持ち」に近い表現は「控えめな顔で」です。「控えめ」には、「華麗がない」「過剰を避ける」「精神または振る舞いにおいて慎ましい」などの意味があります。質素で慎ましやか、地味などの類語があります。
「神妙な面持ち」という言葉には、「しおらしい表情やおとなしいさま」という意味があるため、同じようなニュアンスで「控えめな顔で」と使うこともできます。
⑤謙虚な態度で
5つ目に紹介する「神妙な面持ち」に近い表現は「謙虚な態度で」です。「謙虚」とは、「慎ましやか」「控えめ」「自分自身の能力や地位などに思いあがってわがままな態度をとることなくへりくだり、相手に対して素直に意見を受け入れ接すること、またそのさま」などの意味があります。
「謙虚な態度」は、その人の顔の表情だけでなく行動や振る舞いなどその人すべてを表現する言葉となります。
「神妙な面持ち」という言葉には、「しおらしい表情やおとなしいさま」という意味があるため、同じようなニュアンスで「謙虚な態度で」と使うことができます。
「入社したてなのだから、謙虚な態度でいるように」「彼は常に謙虚な態度で接するため人望も厚い」などの使い方があります。
⑥偉ぶらずに
6つ目に紹介する「神妙な面持ち」に近い表現は「偉ぶらずに」です。「偉ぶらずに」とは、「おとなしく素直な表情」という意味があり、神妙な表情や控えめな顔、謙虚な態度という言葉に言い換えることが出います。
「神妙な面持ち」という言葉には、「しおらしい表情やおとなしいさま」という意味があるため、同じようなニュアンスで「偉ぶらずに」と使うことができます。
「面持ち」と「表情」の違い
「面持ち」と「表情」は同じような意味で使うことができますが、「神妙な」をつけるときは神妙な表情とは言わず「神妙な面持ち」と使います。「面持ち」は一般的には日常会話では使わず、「表情」と使うことの方が多いです。
また、「面持ち」はマイナスなイメージとして使われることが多いですが、「表情」はプラスのイメージでも使われます。「神妙な」と付ける場合はマイナスなイメージのため、「面持ち」という表現が適しているといえます。
「神妙な面持ち」は「しおらしい表情やおとなしいさま」という意味
「神妙な面持ち」とは、「普通の状況とは異なる、特別な何かを抱えているような表情」と「しおらしい表情やおとなしいさま」という意味があります。普段の会話ではあまり使うことがない表現ですが、正しく使えるよう理解しておきましょう。