方言「ばり」の意味
「ばり」という方言を聞いたことがありますか?「ばり」という方言は、「ばり可愛い」などという使い方をします。女の子が「ばり疲れた」などと方言で言っていると、ちょっと可愛らしく感じてしまうのではないでしょうか?
地方から上京すると、言葉も方言から標準語に直す人が多いです。しかし、方言をどこかに残した言葉遣いをしている人を見ていると、微笑ましく思えるのではないでしょうか?
「ばり」という方言には何か由来があるのでしょうか?由来を知っておくと、「ばり」の理解が深まります。とても可愛い方言の「ばり」の意味や由来を見ていきましょう。
地域により様々な意味がある
方言の「ばり」はどういった意味なのでしょうか?この問いには「これが正解です」と言える回答がありません。なぜなら方言の「ばり」の意味は、地域によって違うからです。
同じ国に住んでいるのに、なぜ皆、標準語を話さないのでしょうか?地域差がなければ、言葉が通じないということはなくなります。人が住む場所をどんどん変えていったことで方言は生まれました。
野を超え、山を越え、お互いが交流できないほどの場所を住環境として開拓を進めた結果、それぞれの地方で言葉が生まれたという経緯があります。
有名な意味は「とても」「すごい」
方言の「ばり」には様々な意味があることはわかりました。それでも、一般的に「ばり」という方言の意味は何かという場合、一番メジャーな意味として、標準語の「すごい」や「とても」といったものがあります。「ばりかわいい」とか「ばり楽しい」といった使い方をします。
方言「ばり」の由来
方言の「ばり」の一般的な意味がわかったところで、「ばり」の由来について見ていきましょう。方言の「ばり」の発祥地は博多だと言われています。博多をから全国の様々な地域に広がり、全国で使われるようになったと言われています。
由来は英語の「very」
次に方言の「ばり」の由来を見ていきましょう。方言の「ばり」は何から由来しているのでしょうか?方言の「ばり」は比較的、新しい言葉です。1990年頃、若者を中心として使われ始めました。由来の一番有力な説は、英語の「very」がなまったものと言われています。
「ベリー」という言葉が由来で、それが徐々になまり、「ばり」になったという説です。こうした由来から、方言の「ばり」は若者言葉であり、年配者はあまり使いません。
方言「ばり」の地域別の意味と使い方【西日本】
ここまで、方言の「ばり」の意味や由来について見てきました。博多を中心に広まった方言の「ばり」ですが、今では各地域で使われています。各地域で方言の「ばり」は、どういった使われ方をしているのでしょうか?まずは西日本の地域の方言「ばり」を見ていきましょう。
福岡の方言「ばり」
まずは発祥の地である福岡の方言「ばり」の使い方を見ていきましょう。福岡では「ばり」は「とても」や「すごい」という意味で使われています。「ばり暑いわ」と言うと、「すごい暑いよ」という意味になります。博多ラーメンの麺の固さを「ばりかた」とも表現します。
長崎の方言「ばり」
次に長崎の方言「ばり」の使い方について見ていきましょう。福岡と同じ九州地方の長崎でも、意味は「とても」や「すごい」になります。「ばりお腹減った」とは「すごいお腹が減った」という意味になります。
「ばりやぜかっさー」は「とてもうっとおしいですね」といった意味になります。長崎には別の方言で「いじ」「ぶり」「ぼっくい」という言葉があります。これらも「とても」や「すごい」の意味になります。「ばり」より「いじ」のほうがよく使われているようです。
広島の方言「ばり」
広島の方言「ばり」の使い方を見ていきましょう。広島弁で「あいつばりはぶてとるわ」という言い回しがあります。これはどういった意味なのでしょうか?
意味としては「あの人はとても拗ねています」というものです。方言「ばり」には「とても」や「すごい」の意味が多いですが、広島弁の場合「とても」が「とんでもなく」にレベルアップしています。
さらに広島弁での「ばり」は段階があります。段階が低いと「ぶち」となり、もっと強い言葉が「ぶり」であり、最上級が「ばり」になります。「ばり」は相当に強調された言葉です。
愛媛の方言「ばり」
愛媛の方言「ばり」の使い方について見ていきましょう。愛媛の方言は「伊予弁」と呼ばれます。大きく分けて「南予」「中予」「北予」に分かれます。「南予」は九州の影響を受け、「中予」は四国地方、「北予」は近畿地方の影響を受けて変化してきました。
この「伊予弁」では「ばり」は特殊な使い方をします。愛媛では「誰ばり言われんよ」という使い方があります。意味は「誰にも言ってはいけませんよ」というものです。愛媛では「ばり」は代名詞につくことが多いです。愛媛では年配の人も「ばり」をよく使います。
兵庫の方言「ばり」
兵庫の方言「ばり」の使い方について見ていきましょう。意味は「とても」や「めっちゃ」というものです。「ばりいい天気やな」とは「とてもいい天気ですね」という意味になります。
若者言葉なので年配の人はあまり使用しません。関西圏の人は「すごい」の意味で「めっちゃ」を使いますが、兵庫の人は「ばり」をよく使います。兵庫でも南側の地域でよく使われています。
大阪の方言「ばり」
大阪の方言「ばり」の使い方について見ていきましょう。大阪での「ばり」の意味は「とても」や「めっちゃ」です。何かを強調したい時に「ばり」を使います。「ばり美味しい」は意味は「とても美味しいです」になります。
30代以下の人を中心に使う若者言葉です。大阪弁は切れ味が鋭いので、他の地方の人には少々きつい印象を受けてしまう場合があります。しかし「ばり」を使うと表現が柔らかくなり、親近感がわきます。
方言「ばり」の地域別の意味と使い方【東日本】
ここまで、方言「ばり」の発祥の地である博多から北上し、関西圏までの「ばり」の使い方を見てきました。ほとんどの地域で「とても」や「すごい」という意味でした。さらに北上していきましょう。東日本では方言「ばり」はどういう使い方をしているのでしょうか?
愛知の方言「ばり」
愛知の方言「ばり」の使い方について見ていきましょう。愛知で「ばり」は「ひっかく」という意味になります。「ばりかいたらいかんだら」は「ひっかいたら駄目です」の意味になります。九州や関西では「とても」や「すごい」の意味ですが、愛知では違った意味になります。
宮城の方言「ばり」
宮城の方言「ばり」の使い方について見ていきましょう。宮城で使われる仙台弁にも、「ばり」という言い方があります。「ばり」の意味は「ばかり」や「だけ」の意味になります。
「~ばかり」が語源で、省略されて「ばり」になったと言われています。「おだってばりいてごしゃがれるど」という方言の意味は「ふざけてばかりいると怒られますよ」というものです。
青森の方言「ばり」
青森の方言「ばり」の使い方について見ていきましょう。青森では方言の「ばり」は「~だけ」や「~ばかり」といった意味で使われています。「こればりもらう」と言った場合、「これだけもらいます」の意味になります。
また「お菓子ばり食べてねで飯も食べろ」と言った場合、「お菓子ばかり食べてないでご飯も食べなさい」という意味です。由来は「ばかり」が省略されて「ばり」になったという説があります。
「ばり」と同じ「すごい」を意味する各地の方言
「ばり」は多くの地方で「とても」や「すごい」の意味の方言になります。しかし、「ばり」が「とても」や「すごい」の意味ではない地域もあります。
また「ばり」という方言がない地域もあります。そういった地域では、「とても」や「すごい」を意味する方言はどんなものなのでしょうか?
東日本
「ばり」という方言が「とても」や「すごい」の意味になったもともとの地域は南の博多でした。九州地方から遠くにある東日本では、「ばり」という方言が広がらず、別の方言で「とても」や「すごい」の意味の言葉があります。どういった方言があるのでしょうか?
北海道「なまら」
北海道では「とても」や「すごい」の意味の方言は何なのでしょうか?北海道では「なまら」や「わや」という方言が「とても」や「すごい」の意味になります。「今夜はなまら最高だ」という方言の意味は「今夜はすごく最高だ」となります。道産子らしい素敵な方言です。
岩手「らずもね」
岩手では「とても」や「すごい」の意味の方言は何なのでしょうか?岩手では「らずもね」が「とても」や「すごい」の意味になります。「らずもね」はどういった使い方をすればいいのでしょうか?「とても寒い」という意味の岩手の方言は、「らずもね寒い」となります。
秋田「しったげ」
秋田では「とても」や「すごい」の意味の方言は何なのでしょうか?秋田の方言で「しったげ」が「とても」や「すごい」の意味になります。
「しったげさび」という時は「とても寒い」という意味になります。「しったげ」の語源は「死ぬほど」や「死ぬだけ」から来ているので、「しんたげ」と言う年配者もいます。
山形「すこだま」
山形では「とても」や「すごい」の意味の方言は何なのでしょうか?山形では「すこだま」という方言が「とても」や「すごい」の意味になります。
「だはげ、こだいすこだまかんねえは」という方言の意味は「だから、こんなにたくさん食べられないって」という意味になります。九州の方言の「しこたま」が東北弁風になまったものだとされています。
東京「べらぼう」
東京では「とても」や「すごい」の意味の方言は何なのでしょうか?東京の言葉は標準語とは少し違います。江戸っ子がよく使う「べらぼう」が「とても」や「すごい」の意味になります。
「そんなべらぼうな要求はのめない」の意味は「そんなとんでもない要求はのめない」となります。また「べらぼう」は人をののしる時に使う言葉でもあります。「何をぬかすか、このべらぼうが」といった使い方をします。
岐阜「でぇれぇ」
岐阜では「とても」や「すごい」の意味の方言は何なのでしょうか?岐阜の方言は「でぇれぇ」が「とても」や「すごい」の意味になります。
「でぇれぇうまい」は「とても美味しい」といった意味になります。「でぇれぇ」は「どえらい」が訛った言葉で「とんでもない」のニュアンスになります。
西日本
ここまで東日本の方言で、「ばり」のように「とても」や「すごい」の意味で使われるものを見てきました。次に、西日本の方言で、「ばり」の他に「とても」や「すごい」の意味の言葉にどんなものがあるのかを見ていきましょう。
地方によって違う「とても」や「すごい」の意味の方言を知ることは興味深いことです。その土地の人になりき行って使ってみるのも面白いかもしれません。
三重「むっちゃ」
三重では「とても」や「すごい」の意味の方言は何なのでしょうか?三重の方言は「むっちゃ」が「とても」や「すごい」の意味になります。「めっちゃかわいいやん」という方言は「すごいかわいいじゃないか」という意味になります。語尾の「やん」が可愛らしいと評判です。
鳥取「がいな」
鳥取では「とても」や「すごい」の意味の方言は何なのでしょうか?鳥取の方言で「がいな」が「とても」や「すごい」の意味になります。
「がいな目してほんとかわいげな子だな」は「大きな目をしてほんとうにかわいい子だね」といった意味になります。「かただい」や「おっけな」も、この例文では使うことができます。
島根「まげに」
島根では「とても」や「すごい」の意味の方言は何なのでしょうか?島根の方言は出雲弁で、「まげに」が「とても」や「すごい」の意味になります。「まげにまいずねぇ」の意味は「とても美味しいねぇ」の意味になります。「まい」は「美味しい」の意味の出雲弁です。
岡山「ぼっけぇ」
岡山では「とても」や「すごい」の意味の方言は何なのでしょうか?岡山では「ぼっけぇ」が「とても」や「すごい」の意味になります。
小説の「ぼっけぇ、きょうてぇ」のタイトルで有名になった方言です。意味は「とても恐ろしい」というものです。「ぼっけぇ美しい」は「とても美しい」という意味になります。
高知「こじゃんと」
高知では「とても」や「すごい」の意味の方言は何なのでしょうか?高知弁では「こじゃんと」が「とても」や「すごい」の意味になります。「こじゃんと」で愛の告白をしてみましょう。
「こじゃんと好きやき、付き合って欲しいがよ」で「とても好きなので付き合って欲しいんです」の意味になります。「しゃんとした」という言葉に、「こ(小)」という言葉がついてできた言葉だと言われています。
沖縄「でーじ」
沖縄では「とても」や「すごい」の意味の方言は何なのでしょうか?沖縄の方言で「でーじ」「でぇじ」が「とても」や「すごい」の意味になります。面白い例文を見てみましょう。「でーじまぎーまやーひんぎたー」というものです。
どういう意味かと言うと、「とても大きな猫が逃げた」となります。「でーじちゅらかーぎー」は「超美人」の意味になります。
方言「ばり」を使ってみよう!
日本は狭い国だとよく言われます。そんな狭い世界の中でも、いろいろな方言があり、いろいろな言い方があります。「ばり」という言葉は広く使われている、良い言葉です。
自分の地方の方言でなくてもたまに使ってみるのもいいでしょう。電話で「ばり寂しい」と彼氏に言ったら、彼氏はあなたを可愛く思って、すぐに駆け付けてくれるでしょう。