候の意味とは?
「候」の読み方は「そうろう」と「コウ」の2種類あり、どちらで読むかは文脈や形式よってとなります。季節の挨拶の時は「コウ」と読み、それ以外では基本的に「そうろう」と読むことが多いです。多くは古典や古文で使われていました。
「候」の意味は、うかがう、様子を見る、待つ、有るや居るの丁寧語です。「コウ」と読む場合には季節の挨拶と一緒に「候」という言葉が用いられます。手紙を出すときの挨拶としてその季節に合う季語と「候」を使って表現する知的な方法です。
また「候」を「そうろう」と読む場合の意味は、目上の方への丁寧語として「物が有る、人が居る」という事を「候」で表していました。現代ではほとんど使われていませんが、年配の方の手紙や時代小説などには使われています。
候の由来
「候」の由来として文字の成り立ちから、「亻」」にんべんは横から見た人を表し「候」の右側はたれた的(まと)と、その的にむかう矢の合意文字となっていて、的をねらいうかがうという意味をもっています。
「候」は弓矢で警護する武士を表しています。その後、爵位の名と転じることとなりました。「候」は人+音符候でつくられ、うかがいのぞくという意味があります。さらに身分の高い人の機嫌や動静をうかがうといった意味になっていきました。
つまり、横から見た人と的をうかがって矢を放つ図が合わさるという意味があって成り立つ漢字となります。文字の持つ由来や意味を知るとグッと身近に感じてきます。
候の特徴
「候」は言葉の語尾につけて、そうろうと読むことは今ではほぼありませんが、現代の「候」の使い方の特徴についてご紹介します。1つは季節を表す時候の挨拶としての使われ方で、美しい日本語として使われ続けています。ビジネスレターとしても使われています。
そういう「候」のもつ意味を現代に活かした表現は、昔からある表現と合わせて知っておくと文章を書くときに役に立ちます。最近は手紙を書くことが少なくなってきましたが、ぜひ「候」の特徴や意味を知り使ってみましょう。
手紙での候の使い方と意味
「候」の特徴は現代でも使われているものとして手紙を書くときに使われる、季節の挨拶文があります。拝啓と合わせて使われることが多く、拝啓の後に時節を入れる時の文となります。これらの特徴はすべてその季節の言葉と組み合わさり意味を持ちます。
今は拝啓も使うことは少なくなってきました。季節の「候」だけでも手紙を書くときにはセンスよく感じ、1月から12月までそれぞれいくつもあります。意味も上旬・中旬・下旬で違うので時節の「候」の言葉を選び使ってみましょう。使い方は例文の項目でご紹介します。
候をコウと読む使い方と意味
「候」はコウとも読み、コウと読む熟語は今でも多くあります。コウと読むときの「候」の意味は様子をうかがう、望み見る、兆し、季節や気候となります。熟語では天候、気候などがありいずれも気象の状況を表します。
症候、兆候のように物事の表面に表れるきざしで使われていたり、候補のように待つという意味もあります。単独で「候」コウを使う場合は季節にそった手紙の挨拶の表現で、また熟語として意味を持ち現代に根づいている特徴があります。
古典や古文の候
時代劇や歴史ものの映画、物語を見ていると「候」そうろうはたびたび言葉の語尾についてくるので知っている言葉です。ただ本当の意味や使い方はほとんど知られていません。古典の授業や古文の勉強などでは出てきますが、使うことはほぼありません。
「候」の意味も古典や古文で使われてきたものと、現代とでは変わりがなく表現されています。ここでは古典での使い方や意味を少し掘り下げて、さらに古文で使われた「候」の意味も考えてみましょう。
候の古典での使い方と意味
古典で出てくる「候」は古来「候ふ」さぶらふ、さふらふと書かれていました。はじめはさぶらふでしたが中世以降はさふらうとなりました。読み方はさぶろう、そうろうです。「候ふ」には謙譲語と丁寧語があり、尊敬語にはあたりません。
謙譲語では「いる」という意味の「あり」「居り」の謙譲をしています。意味はお仕え申し上げる、おそばに控えるとなります。丁寧語での動詞では謙譲語と同じように「あり」や「居り」を丁寧に、ございますやおりますの意味になります。補助動詞ではございますとなります。
候の古文での使い方と意味
古文での「候」の読み方はさうらで「候ふ」さうらふとなります。意味はお仕えする、おそばにいる、ある、ございますとなっています。平家物語では「事のたとへさうらふうぞかし」という一節があって、意味は事のたとえがございますよ、となります。
また「候ふ」さむらふともあって、能楽歌謡の鳥追船(とりおいぶね)には「めのとの科(とが)もさむらはず、後見の人の過失もございませんという意味になっています。
枕草子には「さぶらはむはいかに、いかに」とあり、さぶらはむの読み方になっています。意味は(おそばに)うかがったら、どうか、どうかになります。現代ではもちろんこういった言葉は使われていませんが意味を知るとその面白さがあります。
候の使い方
「候」の使い方は意味を知って使うとわかりやすく使うことができます。使い方の例文でご紹介しますが、それぞれ「候」の意味があり使われています。日本語は漢字、ひらがな、カタカナがあり特に漢字は、その文字の持つ意味がありますので知っていると表現力が上がります。
例文に合わせて「候」の使い方を覚えて使ってみると、意外に簡単で身近に使える「候」かもしれません。「候」の正しい意味と使い方を覚えて、ビジネスや親しい方へのお礼の手紙など役立てていきましょう。
例文①
「候」の例文①は季節を表した使い方で、読み方はコウとなります。「春暖の候」しゅんだんのこうは4月全般を表す季語で、春の暖かさを感じる季節という意味になります。手紙などには「拝啓、春暖の候、貴社はますますご盛栄と存じます」と使うと良いでしょう。
5月全般に使うのは「新緑の候」しんりょくのこうで意味は、若葉がみずみずしい時候となります。地方によっては新緑の進み方が違いますので、それぞれの土地柄にあった言葉を選ぶと良いでしょう。新緑の候、皆様お変わりなくお過ごしでいらっしゃいますか?などとなります。
4月全般に「桜花の候」、4月中旬から下旬は「惜春の候」、5月下旬から6月上旬は「初夏の候」、6月上旬から中旬は「入梅の候」など日本にはこのような美しいく素晴らしい「候」を使った表現があります。
例文②
「候」の例文②は「候」を語尾につけて丁寧な言い方にする場合で「そうろう」と読みます。現代の言葉で参りますをこの「候」を使ってみると、そちらへ参りますが「そちらへ参り候」となるわけです。今ではほぼ使うことはなくなっています。
現代でも遊び心のある人は「お願い奉り候」お願いたてまつりそうろうと、人にお願いをする時に使われたりしています。意味はお願い申し上げますとなりますが、親しい間柄での茶目っ気のあるお願いの仕方の様です。
誰もが知っているフレーズではサザエさんの、「サザエでございま~す」を「候」を使った場合は「サザエにて候」となりますので「候」も少し覚えやすく感じます。ございますと「候」の意味がわかりやすい「候」です。
例文➂
「候」の例文③は「ある」「居る」の謙譲(けんじょう)語で目上の方へ向ける時に使われる文章です。物がある、人が居るを「候」で表しています。話し手に敬意を表すと同時に自分や自分側のものや人を謙遜(けんそん)する意味もあります。
現代語では使われなくなっていますので、徒然草からの例文で「いろおし=人名、ここにそうろふ」いろおしはここにおりますという意味になります。
さらに例文として「あなた様へのお届け物に候」「○○様にお伝えいたしたく候」などとなりますが、今の言葉の意味ではあります、ございますと置き換えられます。「候」は庶民の間で使われ親しんだというより、身分の高い人や武士の間での言葉遣いでした。
例文④
「候」の例文➃は動作を丁寧に表す時に使われる、さぶらう、さぶらふ、さぶらはむという読み方で「もの申し候はむ、おどろかせ給わん」から、意味は「もしもし、お起きになってください」にとなっています「もの申し候、起きてたまわれ」現代に近くなった例文です。
「候」の読み方によって意味も少しづつ違いますが、相手を敬った使い方、丁寧語で「取り急ぎお知らせ仕り候」取り急ぎお知らせいたします。お知らせいたしますの動作を丁寧に使っているものです。仕り候の意味は候文につく謙譲語です。
候はあるという意味
「候」ついて意味や使い方、古典や古文などではどういう経緯で使われてきたかなどをご紹介してきました。「候」は今では直接「そうろう」という言葉では使われなくなりました。今使われている時節を表す表現は、知って使うと新鮮かもしれません。
「候」の1番使われる意味は「ある」ということを丁寧にいう言葉で、ありますやございますとして覚えておくのが良いでしょう。言葉の後にそうろうやコウがつく場合でも最近使われているのは「ある」の意味がほとんどです。
堅苦しい、意味が分からないよりも、知って使いやすくわかりやすい意味の「候」がもっと日常で使われて、時節を表す挨拶文の手紙をもらうと相手もきっと喜んでくれることでしょう。