「梅」とはどんな花?
綺麗なピンク色の花びらを咲かせる梅は、地域によっても開花時期がずれますが桜よりも早い1月〜3月頃に開花を迎えます。そんな梅は種類が豊富で、樹によって様々な色や、花弁の形をしているのをご存知でしょうか。
実は、江戸時代に梅の種類や品種の育成や改良が行われた上に、各地の環境条件に適し成立していった地方品種が多く存在しているのです。そんなたくさんの種類がある梅の特徴や、種類についてご紹介していきましょう。
梅の特徴
梅はバラ科サクラ属で、和名は「ウメ」です。モモやスモモ・アンズなどと同じ核果類に属しています。梅とアンズは開花時期が近く、自然交配しやすいアンズの遺伝子を持っているものが多いと言われています。
梅の木は樹高5〜10mを超える落葉小高木で、濃いピンクや白などの可憐な花が咲きます。梅の実は、食用または薬用として日本各地で栽培されています。
別名は「春告草(はるつげくさ)」または「花の兄」とも呼ばれていて、冬が終わって、他の植物に先駆けて春の訪れを告げてくれて咲き誇る植物であることでも知られています。
梅の種類
梅の種類・品種は現在300種類以上あり、種類・品種によって開花時期の早晩、花粉の量、樹姿などに違いがあります。梅の分類としては、「花梅(はなうめ)」と、「実梅(みうめ)」の2種類あります。
実梅と花梅の違い
次は、梅の種類の「実梅(みうめ)」と「花梅(はなうめ)」の見分け方やコツについてご紹介していきましょう。ただ、この2種類の見分け方のコツとしては、基本的には曖昧なものとなっていて、はっきりと区別されているものではありません。
実梅の見分け方とコツ
「実梅(みうめ)」とは、実を食べることを目的にされており、質の良い実が沢山実るように品種改良してある梅の種類のことを言います。梅干しや梅酒などに加工されている梅は「実梅」となります。
実梅は実がなるだけではなく、もちろん美しい花も咲くので観賞用としても楽しめます。例えば「花香実」という梅の品種は淡紅色の美しい花を咲かせつつ、梅酒に適した実を収穫できるものもあります。
実梅のざっくりとした見分け方とコツとしては、開花時期が2月〜3月頃であることと、梅の花の色が薄いピンクもしくは白色であることです。
花梅の見分け方とコツ
「花梅(はなうめ)」とは、花を鑑賞するために品種改良された梅の種類です。花の形以外に、幹の形や香り、枝ぶり等の美しさも追求されています。
花梅の種類であっても、実をつけることもありますが、味がいまいちだったり種が大きすぎて実が少なかったりと、食用には向いていません。
他にも、花梅は開花時期が早すぎて、ミツバチなどの昆虫がいないため受粉のチャンスが少なく、実が付かないとも言われています。
花梅の見分け方とコツとしては、開花時期が12月下旬から3月であること、梅の花の色が紅・ピンク・白であることになります。
花梅の種類
次は、観賞用に品種改良された梅である「花梅(はなうめ)」の基本的な種類についてご紹介していきましょう。梅園に行くと、白い花や紅花、一重や八重など多種多様な梅が沢山ありますが、花梅にも枝や花の特徴から3つの種類に分類することができます。
野梅系
まずは、花梅の種類1つ目である「野梅系(やばいけい)」について、説明していきましょう。白やピンクの美しい花びらを咲かせる野梅系は、野生に近い梅の種類で、中国から渡来した梅の子孫と言われています。多くの梅の品種が属すると言われています。
花梅の原種
「野梅系(やばいけい)」とは、野梅から変化した原種の特性を備えている花梅の種類です。多くの品種がこの野梅系グループに属していて、様々な特徴を持つ品種があります。
この系統の特徴としては、枝が細く陽光面が日焼けしたような濃い色になり、一方の陽の当たらない面は緑色になっています。花や葉も小ぶりですが、香りが高く、鑑賞する際には美しさと香りが楽しめます。
野梅系の中でさらに細かく分類すると、野梅性・難波性(なにわしょう)・紅筆性(べにふでしょう)・青軸性(あおじくしょう)の4種類に分けることができます。
代表的な品種:一重野梅
野梅系の中で一番メジャーな品種なのが野梅性の「一重野梅」です。最も原種に近い梅で、枝が細くトゲ状の小枝が多いです。新しく伸びてきた若枝は緑色で、日焼けすると赤みがでてきます。
葉や花は比較的小さく、白または淡紅色の花びらが多く香りが高いのが特徴です。野梅性の仲間には12月中旬から咲き始める「初雁(はつかり)」や、大輪の白い花を咲かせる「白鷹(はくたか)」があります。
他にも、冬至の頃に中輪の白い花が咲く「冬至(とうじ)」や、咲き始めは黄色で満開の頃には白い花になる「黄金梅(おうごんばい)」などがあります。
豊後系
次は、花梅の種類2つ目の「豊後系(ぶんごけい)」についてご説明していきましょう。梅とアンズが交配している品種で、アンズの特徴を備えています。花梅の中で一番可憐で、ピンク色の花びらのものが多いです。
梅とアンズ両方の特徴をもつ種類
「豊後系(ぶんごけい)」とは、梅とアンズの両方の特徴を持っている花梅の種類です。あんずと血縁関係にある性か、他の花梅の種類と比べると開花時期が遅い品種が多いです。
葉は大きく育ちがいいものが多く、若枝の時から全体的に赤茶色っぽい色で、太い枝の箇所は節がごつごつしているのが特徴的です。
花の色はアンズに近く淡いピンク色の種類が多いです。豊後系の中でさらに細かく分類すると、豊後性・杏性の2種類に分けることができます。
代表的な品種:桃園
豊後系の代表的な品種である「桃園(ももぞの)」は、豊後性に属する種類です。アンズとの雑種性が強い梅の品種で、枝は若枝の時から太めで、日焼けすると茶褐色になります。樹木の生育状態は他と比べると強いです。
葉は丸葉で大きめで表面に毛があり、花は大輪で淡い紅色のものが多いです。ただ、香りはあまり強くはありません。
豊後性の仲間には、他に花の弁が波打っている「楊貴妃(ようきひ)」や、中輪の花は白色で細く波打つ花弁がついている「巻立山(まきたつやま)」などがあります。
緋梅系
最後は、花梅の種類3つ目の「緋梅系(ひばいけい)」についてご説明していきましょう。野生の梅の特性を備えている野梅系(やばいけい)から変化したと言われている緋梅系は、木質部が赤くなっているのが特徴とされています。
木質部が赤くなる品種
「緋梅系(ひばいけい)」とは、野梅系から変化した品種なので木の性質は野梅系に比較的近いです。枝や幹の内部が赤いのが特徴的です。
内部の色が確認できない時の見分け方のポイントは、若枝が全体的に朝黒いかどうかになります。葉は小さく、花は紅色や緋色の種類がほとんどです。白い花でも、枝の内部が赤い種類はこの緋梅系に属します。
緋梅系の中でさらに細かく分類すると、紅梅性(こうばいしょう)・緋梅性(ひばいしょう)・唐梅性(とうばいしょう)の3種類に分けることができ、盆栽や庭木として使われることが多いです。
代表的な品種:緋梅
緋梅系の代表的な品種である「緋梅(ひばい)」は、緋梅性に属する種類です。花の色が濃い紅色や緋色をしている種類が多いです。若枝は日焼けすると黒褐色になり、ほとんどが樹勢が弱くなっています。
緋梅性の仲間には、中輪花で紅色の「鹿児島紅(かごしまべに)」や、中輪で端正な紅色の「蘇芳梅(すおうばい)」、白い花が咲く「鈴鹿の関(すずかのせき)」などがあります。
実梅の種類
次は、実を食べることを目的に、質の良い実が沢山実るように品種改良している「実梅(みうめ)の基本的な種類についてご紹介していきましょう。
実梅の有名な種類には、有名な「南高」や、玉梅・古城・豊後・白加賀・鶯宿・月世界・甲州最小などがあります。その中でも、代表的な実梅の種類の見分け方のコツなど確認していきましょう。
南高
まずは、実梅の代表的な品種である「南高(なんこう)」についてご紹介していきましょう。コンビニのおにぎりや、梅を使ったスナック菓子などでもよく「南高梅」というフレーズは聞いたことがある人も多いでしょう。
実梅の代表的な品種
「南高」とは、実梅の中で一番メジャーな品種で、誰もがよく知っている高級な梅干しブランドです。梅の生産地が日本一である和歌山県が原産となっています。
明治35年に高田貞楠氏が内中梅から発見した大粒の梅を「高田梅」と呼び、その5年後に高田梅の高と、母樹選定調査を積極的に行なった南部高等学校の南を合わせて、「南高」と名付けました。
見分け方のコツは大粒で肉厚
南高の果実は、大粒で肉厚なのが特徴です。1粒が平均25g~35gあり、梅の中でもかなり大きめとなっています。また、皮が薄くて柔らかいため、梅干しを作るのに適している品種となっています。
南高は白い花が咲き、開花時期は2月〜3月頃となっています。6月〜7月が収穫時期となり、熟すにつれて黄色や赤みがかった色になり重みで自然落下するのを待って収穫しています。
古城
次は、南高と同じ梅の生産が日本一の和歌山原産である実梅の「古城(ごじろ)」についてご紹介していきましょう。「ごじろ」という珍しい名前は、大正時代に古城を発見した人の屋号から命名されています。
青梅の種類に分類
古城は、美しい青梅の果実として有名です。別名「青いダイヤモンド」とも呼ばれています。南高と比べると少し小ぶりですが、大粒のものは平均15g~30gあります。皮がとてもしっかりしていて、実くずれしにくいのが特徴となっています。
梅酒によく使われている梅
梅酒といえば、古城と言うほどに梅酒に適している品種です。梅酒には適していますが、皮がしっかりしていて実くずれしにくいところから、梅干しにはあまり適していません。
3月〜4月頃が開花時期で、綺麗な白い花を咲かせます。収穫時期は、南高と比べると早めの5月下旬~6月初旬となっています。古城の栽培はとても難しく、年々生産量が減っているそうです。
白加賀
次は、南高・古城についで人気のある実梅の「白加賀(しろかが・しらかが)」についてご紹介していきましょう。白加賀という名前の通り、北陸地方が原産になっていますが、現在は関東地方での栽培が多くなっています。
果実が大粒
白加賀は、和歌山に次いで梅の生産が第2位の群馬が生産地として有名で、江戸時代から存在しているという歴史のある実梅の種類です。白加賀の果実は、1粒平均25g~30gとなかなかの大粒で、肉厚もあるジューシーさが人気です。
梅干し用として人気
大粒で皮が厚く、肉厚がある白加賀は、基本的には梅酒や梅シロップとして使われることが多いですが、梅干しとしても好んで漬ける人もいます。
開花時期は3月上旬~下旬で、白くて美しい梅の花が咲き誇ります。香り高いので、観賞用として楽しむのもおすすめです。収穫時期は6月頃になっています。
梅の花を咲かせるコツ
次は、梅の花を咲かせるコツについてご紹介していきましょう。自宅に梅の木がある家庭であれば、きれいな梅の花を鑑賞したいのであれば、梅の木のメンテナンスが必要になります。正しくメンテナンスして、毎年梅の花を美しく咲かしてみましょう。
種類に合った剪定
梅の花をきれいに咲かせるためには、梅の種類にあった「剪定」が必要になります。「剪定」とは、梅の花のメンテナンスをすることで、梅の木をきれいに保つために必要な作業です。
まずは自宅にある梅の花が咲く時期を確認して、10月から12月頃に剪定を行うのがいいでしょう。この時期は葉が落ちやすく、枝の細部が見やすいので剪定しやすいです。芽がでてくる7月〜8月の夏の時期は避けたほうがいいでしょう。
梅の種類は豊富で様々な用途で用いられる!
梅にはたくさんの種類があり、観賞用の花梅と食用の実梅、さらに細かい分類に別れていることが分かりました。梅干しを食べるにしても、梅の花を鑑賞しに行くにしても、梅の種類を理解しているとまた違った目線で楽しめますね!