「光陰矢の如し」の意味とは?
これからご紹介する言葉は『光陰矢の如し』です。『光陰矢の如し』はことわざや故事で紹介される格言で、「こういんやのごとし(光陰矢の如し)」と読みます。「光陰(こういん)」は音読みで、漢字の意味も「光」と「陰」ではありません。漢字については後にご紹介します。
『光陰矢の如し』の意味は「月日がたつことは矢が放たれた時のようにあっという間で速く、放たれた矢は戻ってこないことから一日一日を大切に」の素敵な意味を持っています。時間の大切さを意味する素敵な言葉なのでぜひ覚えて使ってみてください。
こういった格言のような言葉にはなかなか日常的に使えない言葉もありますが、『光陰矢の如し』は日ごろから使うことができます。小説などの創作物にも出てくるので意味を理解していると物語もより一層楽しめます。
漢字と意味
『光陰矢の如し』の「光陰(こういん)」は漢字だけで読み取ると「光(ひかり)と陰(かげ)」ですが、ここでご紹介するのは日本の漢字の意味である「光と陰」ではありません。
後にご紹介しますが「光陰(こういん)」はもともと中国から来た言葉で、「光陰」の漢字の意味も中国語に従っています。中国語の単語には「光陰」という言葉があり、意味は「時間」です。
日本の漢字でも「光」は「日や太陽」を「陰」は「月」を意味します。なので太陽が昇り月が浮かぶ様子を一日に置き換えると『光陰矢の如し』の「光陰」は「時間や年月」を表します。
「光陰」を『時間』に置き換えると「時間がたつのは矢の如し」となるので、「時間がたつのは矢のように速い」の意味になります。「如し(ごとし)」は「如く(ごとく)」と同じ意味なので、「のようだ」や「のように」という意味になります。なので「矢の如し」は「矢のように」となります。
「光陰矢の如し」の類語
『光陰矢の如し』の類語はいくつかあり、有名な言葉だと「一刻千金(いっこくせんきん)」や「時は金なり(ときはかねなり)」「烏兎怱怱(うとそうそう)」「歳月人を待たず(さいげつひとをまたず)」といった類語があります。
『光陰矢の如し』の意味は「月日がたつのは放たれた矢のように速い」です。類語なので、これらの類語も同じような意味を持っています。
類語と意味
「一刻千金」は「一瞬一瞬の時間には価値がある。大切な時間ほど早く過ぎ去ってしまうこと」を例えています。「時は金なり」も似た意味をもっていて、「時間はお金と同じ価値を持っているため、無駄にしてはいけないこと」を表します。
「烏兎怱怱(うとそうそう)」の意味はこれらとは少し異なり、「月日がたつことが慌ただしく過ぎること」を表しています。烏兎(うと)は「歳月」を意味し、「怱怱(そうそう)」は「慌ただしい様子」を意味しています。
「歳月人を待たず」の意味は「時は人を待ってはくれない」です。類語の中でも『光陰矢の如し』の意味に一番近い言葉なので、後に「歳月人を待たず」と「光陰矢の如し」を重点に当てて違いと意味についてご紹介します。
「光陰矢の如し」の使い方・例文
『光陰矢の如し』は様々な場面での使い方があります。意味を正しく理解すると日常的に『光陰矢の如し』を使った会話ができるようになるので、ぜひこの機会に覚えてみてください。
時間があっという間に過ぎる場合や、時間を惜しむ場合に『光陰矢の如し』を使います。一つ注意点としては『光陰矢の如し』を「光陰矢の如く」と使う人がまれにいます。
『〇〇の如く』というように言葉があるので「光陰矢の如し」と言っても意味は通じます。ですが『光陰矢の如し』では正しい言葉ではないので使わないようにしてください。
思い出話や回想をするにはピッタリの意味を持つ言葉なのでぜひ覚えて見てください。次で『光陰矢の如し』の使い方と例文をいくつかご紹介します。
例文①
『光陰矢の如し』の使い方の例文の一つ目は、「光陰矢の如しに今年も過ぎ去った」「今日も変わらず光陰矢の如し」です。時間が早く過ぎ去り、あっという間に月日がたつことを表す使い方ができる例文です。
年月や時間を表現する言葉と一緒の使い方をすると、『光陰矢の如し』の意味や使い方が一段と分かりやすくなるので覚えやすいです。
上記の例文は「今年もあっさり過ぎた」「今日もあっという間に過ぎた」と表現することができます。「今日も変わらず光陰矢の如し」は忙しさを表すことができるのと同時に、「もう少し一日が長ければ」という余韻も残る例文です。
主婦やサラリーマンなど一日が忙しさで追われている人には、日常的に使える例文なので気軽に『光陰矢の如し』という言葉を使うことができます。
例文②
続いてご紹介する使い方の例文は「子どもの成長は光陰矢の如し」です。「この前入学したと思ってたら、光陰矢の如しに子供が小学校を卒業した」とすると、「あっという間に子どもが小学校を卒業した」という表現になります。
「あんなに小さかった子が光陰矢の如しにもう社会人」「あんなに小さかったのに今ではもう社会人」という親心を表す使い方ができます。「光陰矢の如し」といれるだけでしみじみとして言葉の重さが変わります。
同じような親心を表す使い方で「娘が子供を産んで気づけば祖母になった。まさに光陰矢の如し」だという例文もできます。『光陰矢の如し』は成長するものに使えるので、親戚が集まった時やめでたい時に使うと感慨深くなります。
例文③
『光陰矢の如し』の使い方の例文、三つ目は「楽しい時間は光陰矢の如し」です。楽しい時間や、楽しみにしていた日や出来事こそ早く過ぎ去るものです。そういった場面では『光陰矢の如し』が使えます。
年に一度のイベントや大好きなアーティストのライブなど、時間が早く過ぎ去ってしまうものに『光陰矢の如し』を使ってみると言葉を身近に感じることができ、覚えやすくなります。
「チケットが当選してから当日まで長かったのに、光陰矢の如しにライブが終わってしまう」とすると、あっという間に楽しい時間が終わってしまう何とも言えない気持ちを表現できます。
「みんなが祝ってくれる誕生日は毎年変わらず光陰矢の如し過ぎ去る」と年に一度のイベントごとにも使えます。あっという間に終わってしまう時間にこそ『光陰矢の如し』を使ってみてください。
例文④
最後にご紹介する『光陰矢の如し』の使い方の例文は、「よく光陰矢の如しと言うが、この年になってようやく言葉の意味を理解した」です。一分一秒の時間の大切さを実感し、戻らない時を後悔する様子を意味しています。
楽しい時間もそうですが、しんみりとしたこのような気持ちを表すにもピッタリの意味を持つ言葉です。なので『光陰矢の如し』という言葉を覚えるだけでなく、意味もしっかり理解すると、古くから存在していた理由と「光陰矢の如し」の意味の重みが身に染みるでしょう。
「光陰矢の如し」と「歳月人を待たず」の違い
最初で軽く触れましたが『光陰矢の如し』の類語には「歳月人を待たず(さいげつひとをまたず)」という言葉があります。この類語は「時間は人を待たずに過ぎて行く。過ぎた時間は二度と戻らないため、一秒一秒後悔ないように過ごす」ことを意味しています。
ご紹介した類語の「烏兎怱怱(うとそうそう)」や「一刻千金(いっこくせんきん)」「時は金なり」よりも「歳月人を待たず」の意味が『光陰矢の如し』に近いでしょう。
「過ぎゆく時間」と「戻らない時間」の両方を表す『光陰矢の如し』と『歳月人を待たず』は類語のため微かに意味は違いますが、どちらも大切な意味が込められています。
「歳月人を待たず」は「時は人を待たない」という意味
『光陰矢の如し』の意味は「時間や年月が放った矢のように速く過ぎて行く。放った矢は二度と戻ってこないので一日を大切に」です。『歳月人を待たず』は「時は人を待たずに時間が進む。人はあっという間に老いてしまうから、二度と戻らない時間を大切に」という意味があります。
同じような意味に見えても、使い方や表現は全く異なるので注意してください。「歳月人を待たず」は「期日」などの締め切りを意味するものではないので、その点だけでも注意して使ってみてください。
「光陰矢の如し」を使う際の注意点
『光陰矢の如し』を使う際に気を付けなければならない注意点があります。『光陰矢の如し』は「早さ」を表す意味を持っていますが、この速度は「時間や年月」などの意味を表現しているので注意が必要です。
それから少し触れましたが、『光陰矢の如し』は「光陰矢の如く」と使いません。意味は伝わりますが、正しくは『光陰矢の如し』なので些細なことではありますが、かっこいい言葉の響きと漢字、素敵な意味を持っている言葉なので正しく使ってみてください。
「スピードを表すこと」では使えない
『光陰矢の如し』は「年月が過ぎるのは放たれた矢のように速い」と意味しますが、この速さは年月のスピードを意味しているものなので「放たれた矢のように年月が過ぎるのは早い」を表します。
そのため「馬が走る姿は光陰矢の如しだ」「飛行機は光陰矢の如し」という使い方は間違いです。「時間の流れ」を意味する言葉なので、注意して正しく『光陰矢の如し』を使ってみてください。
「光陰矢の如し」の由来・歴史
『光陰矢の如し』という言葉は古くから存在しています。響きもかっこよく、日常的にも使え、素敵な意味を持っているので覚えて損はありません。次に『光陰矢の如し』の由来と歴史についてご紹介します。
由来
まず初めに『光陰矢の如し』の漢字の由来についてご紹介します。最初でもご紹介しましたが、「光陰」は年月や月日、時間を表します。光は『太陽』を、陰は『月』を意味していて、日が昇り月が浮かぶことで一日が終わります。そのことを表現しているのが『光陰矢の如し』です。
その一日が放たれた矢のように速く過ぎゆくことから「矢の如し」と昔ながらの武器である「弓矢」で表現されています。
歴史
『光陰矢の如し』は古くから親しまれている言葉です。その歴史は古く、平安時代の古今和歌集の中に似たような言葉が記述されています。『光陰矢の如し』は鎌倉時代の曾我物語(そがものがたり)に記述されています。
もともと古代中国から『光陰矢の如し』という言葉が来たという諸説があります。古代中国の唐時代、「李益(りえき)」という詩人が『光陰矢の如し』という言葉を残していました。
そこから日本へと伝わり、今でも親しまれる格言、故事になっています。日本では鎌倉時代からあったと考えると、『光陰矢の如し』がどれだけ親しまれていたか分かります。
中国の表現と意味
『光陰矢の如し』は中国語で「光陰如箭」「光陰似箭」と表記します。「光陰」は同じく「時間」を表し、「如」は「のようだ」、「箭」は「矢」です。日本語の漢字で「光陰」は「光と陰」の意味なので、「光陰」の語源が中国だということが分かります。
漢字はもともと古代中国から来た文字ですが、『光陰矢の如し』以外にも格言のような言葉がたくさん中国から来ているので、それぞれの表記の仕方と意味を比べて覚えてみるのも面白いです。
「光陰矢の如し」の英語表記
次に『光陰矢の如し』の英語での表記についてご紹介します。『光陰矢の如し』と調べて、よく英語で見かけるのは「Time flies(時間がたつのは早い)」です。
意味は少し異なりますが、英語特有のまっすぐな言い方で『光陰矢の如し』を表します。『光陰矢の如し』の英語での類語には「Time has wings(時は翼をもつ)」などもあります。
『光陰矢の如し』を英語で表現すると「Time flies like an arrow(光陰矢の如し)」です。類語でご紹介した「歳月人を待たず」の英語での表記もあり、「Time and tide wait for no man(歳月人を待たず)」という英語があります。
『光陰矢の如し』を漢字から読み取り、そのまま英語に訳すと「Time」は入りません。しかし、意味を把握して読んだままの漢字ではなく、意味から英語に翻訳することで英語でも『光陰矢の如し』の素敵な言葉を表現できます。
「光陰矢の如し」は「大切な時間ほど早く時間が過ぎる」という意味
これまで格言として有名な『光陰矢の如し』についてご紹介してきました。古代中国より日本にやってきて、鎌倉時代より『光陰矢の如し』という言葉が現代にまで受け継がれています。「光陰」は漢字だけで読むと「光と陰」ですが、実は「時間」を表す言葉だったりします。
「あっという間に過ぎる時間」を現代では「矢のように」と表現することはなかったでしょう。昔ながらの知恵と文明が作り出した言葉が、こうして現代に受け継がれ素敵な意味を込められて長く親しまれています。
今も昔も一秒一秒の時間が大切なことに変わりはありません。光陰矢の如しの日々を言葉と共に大切に過ごしてください。