ビジネスや俳句作りの参考になる8月の季語を紹介!
この記事では、8月の時候の挨拶の手紙や俳句作りなどに必要な季語・挨拶用語を例文とともに紹介しています。プライベート・ビジネスで使えるようそれぞれに分けて解説していますので、必要に応じて参考にしてください。
また以下の項目では、8月の季語について詳しく解説しています。そもそもの季語の定義についてや8月の代表的な季語、季語となる花名などを挙げています。8月の中でも上旬、中旬、下旬によって季語が異なる場合があるため、季語がどのように変化するのかについても注目してみてください。
8月の季語
季語とは、連歌や俳諧・俳句において、ある季節と結びつけ、その季節を表すと定められている言葉のことをいいます。別称「季題」ともいい、連歌・俳諧が盛んだった時代は、「きのことば(季詞 季の詞)」もしくは「きことば(季詞、季言葉)」とも呼ばれていました。
季語は内容別に様々なジャンルに分けることができ、天文・地理・生活・行事・動物・植物(草花)などがあります。例えば、春の季語には「麗か、朧月、春の山、片栗の花」、秋の季語には「爽やか、流れ星、山粧ふ、鳳仙花」、冬の季語には「鐘氷る、霰、山眠る、柊の花」などが挙げられます。
8月の代表的な季語
夏の季語には「涼し、青嵐、夏の川、夏襟、鮎、茄子の花」など多種多様な言葉がありますが、同じ季節でも月ごとに使い分けて用いる季語がたくさんあります。夏真っ盛りの8月には、どのような季語があるのでしょうか。
8月上旬の季語には、「立秋、夏草、風鈴、山滴る、浴衣」、8月中旬の季語には、「夏雲、星明かり、盆踊、氷菓、とんぼ」、8月下旬の季語には、「花火殻、無花果、花煙草、ひぐらし、別れ鳥」などがあります。
8月の季語を用いて詠われた俳句を紹介すると、「涼しさの 腹にとほりて 秋近し」(正岡子規)や「日の当る 大岩しぼる 清水かな」(野村喜舟)などがあります。ちなみにこれらの俳句の季語は「秋近し」と「清水」です。
8月の季語になる花
8月の季語となる花には、秋桜(こすもす)、鶏頭(けいとう)、女郎花(おみなえし)、白粉花(おしろいばな)、百日紅(さるすべり)、鳳仙花(ほうせんか)などがあります。秋桜(こすもす)は、夏ごろから咲く花ですが、主に秋に咲いて花弁の形が桜に似ていることに由来しています。
鶏頭は、花が鶏の鶏冠(とさか)に見えることが花名の由来になっています。女郎花は、美女を圧倒する美しさという意味が込められています。百日紅の漢字は、約100日間花を咲かせることに由来しています。また花名は、幹がツルツルしていて猿も登れないことに由来します。
8月の季語になる花を詠んだ俳句として、「向日葵の 垂れしうなじは 祈るかに」(篠原鳳作)、「朝顔の 花咲かぬ間の 朝少し」(中村汀女)などが挙げられます。ちなみにこれらの俳句の中で使用されている花の季語は「向日葵」と「朝顔」です。
8月の別名・呼び名
この項目では「8月」の別名・呼び名について解説していきます。「8月」を表す言葉は以外に多いもので、日本は旧暦の季節の移り変わりに基づいて使われた季語が多いです。季語一つで手紙やはがきの内容にぐっと季節感が増します。
挨拶文などに季語を入れるときは、文章の書き出しに入れるのが一般的です。また、この項目の後半では、外国語での「8月」の呼び方について紹介します。記事内で紹介できるのはごく一部ですので、興味のある方はぜひご自身でも調べてみてください。
8月の和風月名
和風月明(わふうげつめい)とは、日本の旧暦の季節や行事に合わせて呼ばれる月名です。現在の暦でも使用されますが、現在の季節感とは1~2か月程度のずれがあります。8月の代表的な和風月名は、葉月(はづき)、桂月(けいげつ)、雁来月(がんらいげつ)などがあります。
葉月(はづき)は、葉の落ちる月「葉落月(はおちづき)」が転じて「葉月」になったといわれています。現代の感覚で8月は青々とした緑が生い茂る様子をイメージしがちですが、旧暦では7月から秋となるため、このような月名になっています。
桂月(けいげつ)は、月の中に桂 (かつら) の木があるという古代中国の伝説が由来です。雁来月(がんらいげつ)は、冬鳥として知られる雁(がん)が越冬の為に初めて渡ってくる月であることからこのような月名が付けられています。
他の呼び名
8月の呼び名には、以上で紹介した他にも様々なものがあります。例えば、寒旦(かんたん)、橘春(きっしゅん)草津月(くさつつき)、木染月(こぞめづき)、竹春(ちくしゅん)、月見月(つきみつき)、燕去月(つばめさりつき)、紅染月(べにそめづき)などがあります。
草津月(くさつつき)は「津」が「の」という意味で「草の月」を表しています。木染月(こぞめづき)は木々が色濃く染まることに由来します。竹春(ちくしゅん)は、旧暦の8月頃に竹の新葉が盛んになることからこのような月名が付けられています。
燕去月(つばめさりつき)は春に渡ってきた燕(つばめ)が旧暦の8月頃に南方へ帰ることに由来します。紅染月(べにそめづき)は、木々が紅葉する月という意味で付けられた月名です。いずれも旧暦をもとにしているため、若干季節のズレがあることが分かります。
外国語の呼び名
上記の項目では、日本の8月の別の呼び名・季語について解説しました。では、外国語で8月はどのように言うのでしょうか。英語で8月は “August”ですが、ローマ帝国の初代皇帝アウグストゥス(オクタウィアヌス)が由来となっているといわれています。
英語以外で8月はどのように表現するかというと、フランス語では “août”(ウー)、ドイツ語では “august”(アウグスト)、ロシア語では “август”(アーヴクスト)、イタリア語では “agost”(アゴスト)、スペイン語では “agost”(アゴスト)、ポルトガル語では “agost”アゴストなどがあります。
ヨーロッパ語圏で「8月」の呼び名が類似しているのは、語源が共通のラテン語であることが考えられます。現在ラテン語は学術用語以外では使われることがほとんどない言葉ですが、ヨーロッパを中心とした言語の語源に大きな影響を及ぼした言葉です。
8月のお祭り・記念日
こちらの項目では、8月のお祭りや記念日について紹介します。8月の上旬、中旬、下旬の順にお祭りや記念日の開催地や内容についても触れていきます。
お祭りや記念日も立派な季語です。これらの季語はどちらかというと、ビジネスよりはプライベートの方が用いやすい季語となります。家族や親戚、友人の住む地域に合わせて用いる季語を使い分けて手紙を送ってみましょう。
お祭り
8月上旬に行なわれるお祭りには、ねぶた祭(8月2~7日)や竿灯(かんとう、8月6日)などがあります。ねぶた祭は青森県で、竿灯(かんとう)は秋田県で行われる七夕行事です。8月中旬のお祭りには、阿波踊り(あわおどり、8月12~15日)や大文字焼き(8月16日)などがあります。
波踊り(あわおどり)は徳島県で行われる盆踊りで、大文字焼きは京都府で行われる送り火の行事です。8月下旬に行なわれるお祭りには、笛吹市夏祭り(ふえふきしなつまつり・8月21日)や吉田火祭(よしだひまつり・8月26~27日)などがあります。
笛吹市夏祭り(ふえふきしなつまつり)は、山梨県の最大級の花火大会で、吉田火祭(よしだひまつり)は富士浅間神社で行われる富士山の火を鎮めるための祭りです。この他にも多種多様な祭りが日本各地では開催されています。
記念日
8月上旬の記念日には、水の日(8月1日)やビーチサンダルの日(8月3日)などがあります。水の日は、1年を通して水を使う量が一番多い月であることから節水を推奨するために制定されました。
ビーチサンダルの日は8月の「8」をビーチの “B” に、3日をサンダルの「3」に見立てて8月3日に制定されました。8月中旬の記念日には、怪談の日(8月13日)や俳句の日(8月19日)などがあります。
怪談の日は、タレントの稲川淳二氏が、自身の怪談トークイベントの20周年連続公演を記念し、第1回公演の開催日を「怪談の日」として制定したことが由来です。俳句の日は「は(8)い(1)く(9)」の語呂合せで、正岡子規研究家によって提唱されたものです。
8月下旬の記念日には、寅さんの日(8月27日)などがあります。寅さんの日は、1969年のこの日に、松竹映画「男はつらいよ」の第1作が公開されたことが由来しています。
8月の時候の挨拶用語と手紙の文例
上記の項目では8月の代表的な季語や季語となる花、お祭り・記念日など、季節を表現するのにふさわしい季語について解説しました。この項目より具体的にこれらの季語を用いて手紙やビジネス文書を書くための参考例を紹介していきます。
時候・季節の挨拶には、主に「~の候」といった書き出しか、もしくは「立秋とは名ばかりの酷暑でありますが~」といった書き出しの2パターンがあり、それぞれに適した結びの言葉があります。時候の挨拶用語である「~の候」の「候」は「そうろう」ではなく「こう」と読みます。
時候の挨拶用語
この項目では時候の挨拶用語について紹介していきます。基本的に時候の挨拶用語は季語+「~の候」の形が多く使われます。他に季語+「~のみぎり」という形もありますが、これは女性に用いられるのが一般的です。そのため、ビジネスには季語+「~の候」の方が相応しいでしょう。
8月の時候の挨拶用語には次のような用語があります。晩夏(ばんか)の候、酷暑(こくしょ)の候、納涼(のうりょう)の候、炎暑(えんしょ)の候、立秋(りっしゅう)の候、秋暑(しゅうしょ)の候、早涼(そうりょう)の候、季夏(きか)の候、処暑(しょしょ)の候、向秋(こうしゅう)
次の項目では上記のような時候の挨拶用語や季語を使った手紙の書き出しについて例文を交えて説明していきます。
季語を使った手紙の書き出し文例
8月の季語や時候の挨拶用語を使用した手紙には、最初に季節を表す時候の挨拶文を冒頭に持ってきます。そこに相手の体調や安否を気遣う言葉を添えます。手紙の書出しの例文は、以下の通りです。
「厳しい残暑が続いていますが、お変わりありませんか。」「残暑の季節になりましたが、いかがお過ごしですか。」「晩夏の候、お元気でお過ごしですか。」「朝夕はいくぶん涼しくなりましたが、ご家族の皆様はお元気でいらっしゃいますか。」「秋暑の候、お変わりなくお過ごしでしょうか。」
季語を使った手紙の結びの挨拶文例
上記に対して、季語や時候の挨拶用語を使用した手紙の結びには、季節を表す言葉の後に相手の体調を気遣う言葉で締めくくります。手紙の結びの例文は以下の通りです。
「暑さの折から、くれぐれもご自愛ください。」「寝苦しい夜が続いていますが、くれぐれもお体をお大事になさってください。」「炎暑しのぎがたい日が続いております。お体を大切にお過ごしください。」「厳しい暑さにもめげず、楽しい夏をお過ごしください。」
ビジネスで使える8月の時候の挨拶の文例
こちらの項目では、ビジネスシーンに適した季語を用いた時候の挨拶の文例を紹介します。まず書出しに時候の挨拶を一文入れ、すぐに本題に入ります。時候の挨拶文には主に季語+「~の候」の形で文を入れます。
用件を述べた後は、「よろしくお願い致します。」「取り急ぎご連絡まで」「まずは取り急ぎご通知申し上げます」などの一文で締めくくります。以下の項目ではビジネスシーンにおける8月の時候の挨拶の文例を記載していますが、季語によっては使用するに適した時期がある場合があります。
そのため、文例は季語に合わせて8月の上旬、中旬、下旬に分けて紹介していきます。ただし、使用して良い時期が厳密に決まっているわけではないため、あくまで目安として参考にしてください。
8月上旬の挨拶
まず初めに8月上旬の季語を用いた挨拶文を紹介します。例文は以下の通りです。書出しから結びまで、プライベートの手紙とどのような違いがあるのか注目してみてください。
書き出しには「盛暑の候、皆様におかれましてはますますご健勝のこととお喜び申し上げます。」といった表現を用います。この後に「いつもご支援を賜りまして心より感謝申し上げます。」のような日頃の感謝の気持ちを伝える一文を添えます。そして、用件についての文章が続きます。
最後に「猛暑が続きますが、どうかお体を大切にお過ごしください。まずはとり急ぎご通知まで。」のような結びの言葉で締めます。
8月中旬の挨拶
次に8月中旬の季語を用いた挨拶文を紹介します。この時期に鍵となる季語が「立秋」です。「立秋」とは8月7日から8月22日ごろまでのことを言い、立秋が過ぎた翌日からの暑さを「残暑」と言います。
書き出しには「立秋の候、ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。」といった表現を用います。この後に「いつもお世話になりまして、誠に深く御礼申し上げます。」のような日頃の感謝の気持ちを伝える一文を添えます。そして、用件についての文章が続きます。
最後に「立秋とは名ばかりで厳しい暑さが続いておりますが、どうぞご自愛くださいませ。とり急ぎご連絡まで。」のような結びの言葉で締めます。
8月下旬の挨拶
最後に8月中旬の季語を用いた挨拶文を紹介します。この時期に鍵となる季語が「処暑」です。「処暑」とは8月23日から9月8日ごろまでのことを言い、このころから暑さもようやく峠を越します。
書き出しには「処暑の候、時下ますますご隆盛のこととお慶び申し上げます。」といった表現を用います。この後に「日ごろはお力添えを賜り、誠にありがとうございます。」のような日頃の感謝の気持ちを伝える一文を添えます。そして、用件についての文章が続きます。
最後に「残暑厳しき折からくれぐれも体調を崩されませんようご自愛ください。まずは略儀ながら書中にてご挨拶申し上げます。」のような結びの言葉で締めます。
8月の季語を手紙や俳句に使おう!
この記事では、8月の時候の挨拶の手紙や俳句作りなどに必要な季語・挨拶用語を例文とともに紹介しました。プライベート・ビジネスで使えるようそれぞれに分けて解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
季語を用いるのは決して俳句だけに限りません。手紙や、はがきなどにさりげなく季語を用いれば季節感がぐっと伝わりやすくなります。この機会にぜひ季語を用いた手紙を書いてみてはいかがでしょうか。