「恒常的」の意味とは?
「恒常的(こうじょうてき)」は、ビジネスシーンや経済で「恒常的に続く〜」や「我が社の恒常的課題は〜」「恒常的に売上げを伸ばす」のような使い方をよくします。
また天文学では、夜空に輝く星のうちつねに同じ位置にあり、相対的位置に変化のない星を「つねにある星」という意味で「恒星(こうせい)」と言います。
恒常的の「恒」と「常」という漢字は、どちらも訓読みで「つね」と読み「いつも」という意味です。同じ意味の言葉を2つ重ねることで「いつも」という意味をさらに強調しています。
つまり「恒常的」とは、「いつも変わらず一定していること」「定まっていて変わらないこと」という意味で、その状態が変化することなく、ずっと続くさまを表しています。
「恒常的」の対義語・類語
類語とは似たような意味を持ち、同じような使い方をする言葉のことで「類義語」「同義語」とも言います。「恒常的」は「いつも変わらず一定している」という意味なので、類語には「恒久的」「永続的」「定常的」「日常的」「慢性的」など似かよった意味の言葉があります。
対義語とは反対の意味を持つ言葉のことで「反対語」とも言います。「恒常的」の変わらないという意味と反対の意味で「一時的」「限定的」「暫定的」「単発的」などが対義語になります。
類語・対義語を検証する意味
言葉の意味を調べる場合に、なぜ類語や対義語を検証する必要があるのでしょう。「恒常的」の類語とは似かよった意味を持つ言葉ですが、漢字が違うように完全に同じ意味を持っているわけではありません。
類語を検証する意味は、「恒常的」と似ている類語を互いに並べて見比べることにより、微妙な意味の違いを知ることができ「恒常的」本来の意味をさらに深く理解できるからです。
ちょうどワインの試飲会で、見分けがつきにくいワインでも、飲み比べることで味の特徴や違いがはっきりとわかるのと同じ理屈です。
反対の意味を持つ対義語を検証するとは、なぜその対義語が「恒常的」と対をなす反対の位置にあるかを考えることになります。そのことにより「恒常的」の意味を明瞭に浮き彫りにすることができるからです。
真っ白な紙に黒のマジックで大きく字を書けば、字がはっきりと遠くからでも見えます。小さな音を聞きとろうと耳を傾けている時に、大きな声で話せばはっきりと分かります。逆に騒音の中で小声は聞き取れません。
つまり対義語とは、相反する白と黒、大と小、正と誤、マルとバツのように対立する言葉で、互いの意味や特徴を明確にする効果があるのです。
類語の意味
「恒常的」の類語はたくさんあります。その中の代表的な類語の意味や「恒常的」との違いなどを探ってみましょう。
「恒久的」とは「永遠に変わらない」という意味で、「恒常的」と非常に似ているので類語になっています。「地球温暖化の影響で、人類の恒久的な安全が危機に直面しています」のような使い方をします。
しかし、この例文の恒久的を恒常的に置き換えると、少し違和感が生まれます。「恒常的」は常に一定という意味で、「恒久的」は永遠に一定という意味なので、時間の観念が微妙に違うからです。
「慢性的」という類語は「その状態がずっと続く」という意味で、類語になっています。しかし「慢性的な病気」「慢性的な経済の沈滞」「慢性的な疲労」のようにネガティブな悪い意味で使われることが多い類語です。「恒常的」とは使い方に違いがあるようです。
この他にも「恒常的」の類語はたくさんあります。その意味を検証することは理解を深める役に必ずなります。興味のある方は是非色々と調べてみてください。
対義語の意味
「恒常的」の対義語も色々ありますが、「恒常的」は「つねに変わらず一定」という意味なので反対の意味を持つ「一時的」と「暫定的」の意味を検証してみましょう。
「一時的」は「とりあえず一時的に回避しましょう」とか「一時的な言い訳はすぐにバレます」のように、時間的に短時間または臨時という意味合いが強い言葉です。
「恒常的」がつねに一定というニュアンスと、全く真逆なので対義語になります。つまり「恒常的」には「一時的」と違い時間が止まらずに続いているというニュアンスがあります。
「暫定的(ざんていてき)」という対義語は、とりあえず仮に定めておくという意味があり、つねに一定ではないので対義語になります。
「この決定は暫定的なものなので最終ではありません」「暫定的な処置は急場をしのぐことなので、その後の対応が大切です」のような使い方をします。
「一時的」も「暫定的」も、時間的に短時間のとりあえず仮という意味の対義語です。つまり「恒常的」という言葉には時間の観念がつねに解釈に関わってくるということです。
「恒常的」の使い方・例文
恒常的の意味が解釈できても、実際に使えなければ何にもなりません。使い方をマスターするためには例文をたくさん調べることが最も重要な近道です。
また調べるだけでなく、自分で例文を作ってみることも使い方をマスターするには大切です。それでは「恒常的」を使った例文を紹介するので参考にしてください。
例文①
「A社は創業以来、恒常的に業績を伸ばし、今や日本を代表する企業に成長した」「戦後日本の経済成長は恒常的と思われていたが、バブルの崩壊後その神話は崩れてしまった」などの例文は「恒常的」を「一定の水準を保つ」という意味合いの使い方です。
また「彼はビジネスに関してはつねに前向きで、恒常的な信念の強さが現在の地位を築いている」「彼女の恒常的に献身的な姿勢が、多くの人から信頼される所以です」などの例文も「恒常的」を「一定で変わらない」という意味をポジティブに使った例です。
例文②
「この交差点付近の渋滞は、恒常的に繰り返されている。単に車両の数だけでなく右折車が多いのも原因になっています」や「毎年この季節に発生する大雨による洪水は、もはや恒常的になっています」の例文では、「恒常的」を「常に発生している」という意味で使っています。
また「彼が退社後に、居酒屋で一杯飲むのが恒常的な日課になっています」「彼女は休日は、ジョキングやスポーツで汗を掻くのが恒常的になっています」の例文では、趣味や習慣が「いつも変わらず」というニュアンスの使い方をしています。
例文③
「アルバイトでは、恒常的な収入が得られないので生活が安定しません。就活をした方が良いのでは?」や「先日はクレジットカードの審査で、恒常的収入はありますか?と聞かれて戸惑ってしまいました」の例文の使い方は、「恒常的」を「安定」という意味で使っています。
同じ「安定」という意味の例文で「機械の性能は、恒常的な耐久性がもっとも大切です。どんなに機能が最新で魅力的でも、恒常的耐久力がなければ使い物になりません」のような使い方をします。
例文④
「ビジネス界の人手不足は、今や恒常的な問題で少子化が生んだ現象とも言えます」「世界的規模で恒常的に起きている異常気象は、人類が招いた地球温暖化に起因していると言えます。恒常的対策を考える必要があります」の例文では「常に発生する」「常に考える課題」という意味で使われています。
このように、同じ「恒常的」という言葉でも、使うシチュエーションによって使い方や意味が変わってきます。この他にも様々な例文が考えられるので、色々調べてみてください。
「恒常的」と「定常的」の違い
「恒常的」と非常によく似ている類語に「定常的(ていじょうてき)」があります。「恒常的」と「定常的」にはどのような違いがあるのでしょう。
「恒」と「常」、「定」と「常」どちらも同じような意味の漢字を2つ重ねています。しかし違う漢字を使うのには、それなりに理由があるはずです。それでは違いを見つけるために「定常的」の意味を詳しく調べてみましょう。
「定常的」は「一定で変化がない」という意味
「定常的」を辞書で引くと「一定で変化がないこと」または「そのさま」と出てきて、意味では一見すると「恒常的」と違いがないように見えます。それでは「定常」を引くと「一定していて変わらないこと」と出てきて、これも違いが見当たりません。
使い方を見ると「このカメラはどんな場面でも、定常的な機能を発揮するので信頼性が高い」のように表現します。この例文の「定常的」を「恒常的」に置き換えると微妙な違和感があります。
つまり「定常的」は、カメラなどの機械の性能が「いつも一定で変わらない」という意味合いで多く使います。つまり物理的な意味合いが強いのが「定常的」です。
また「飲食業界では人手不足が定常的になっている」の例文の場合も、人手不足という物理的現象に重きを置いて使っています。
「恒常的」も同じように使いますが、人手不足という物理的現象よりも、その状況全体が時間的にも空間的にも変わらない状態を表現していて、意味が「定常的」より広いところが微妙な違いです。
また「この商品は長年定常的に利益を上げていて、我が社の発展に大きく寄与しています」の場合も「恒常的」と同じような使い方をしますが、定常的は利益という数字のデータが一定で変わらないと表現しています。
この例文に恒常的を使うと、恒常的利益が発展に大きく寄与するというニュアンスを持ってきます。つまり「定常的」は物理的や数字的なデータが一定という意味ですが、「恒常的」の場合は物理的な意味だけでなく、その数字をもたらした変わりのない能力や性能まで言及しているところが違います。
「恒常的」の英語表記
「恒常的」を英語で表記する際によく使われる単語には「changeless(変化のない)」「constant(一定の)」「unvarying(普遍の)」「invariant(不変の)」などがあります。
「changeless」は「change(変える・交代する)」を「less(少ない)」で否定して「変わることが少ない=変化がない」という意味で「恒常的」を表現しています。
「constant(コンスタント)」は日本語でもよく使う言葉で、「彼の成績はいつもコンスタントに上位にランクインしている」のように「絶えず一定」「変わることなく不断の」という意味です。
「unvarying」は形容詞で「変わらない」「一定で普遍」という意味で、どちらかというと法則や規則・性質が普遍というニュアンスを持った言葉です。
「invariant(インバリアント)」は、特性や量などの関係が変化しない場合に多く使われる単語です。それでは、それぞれの単語を使った例文を次に紹介します。
「恒常的」の英語例文
「changeless」を使った英語例文では「She showered her children with changeless love.(彼女は子供達にいつも変わらない愛情を注いだ)」のように表現します。また「changeless sea(変わらぬ海)」「changeless temperature(変化しない温度)」のようにも使います。
「constant」は「constant winds(常風)」「a constant friend(忠実な友)」「a constant temperature(一定の温度)」「constant pressure(一定の圧力)」「a constant pain(絶え間ない痛み)」「constant hard work(絶え間ない重労働)」のように様々な場面で使います。
「unvarying」は「He speak in a tone unvarying in pitch.(彼はピッチの変わらないトーンでいつも話します)」「unvarying in nature(本質的に普遍の)」「an unvarying or habitual method or procedure(変化のない習慣的方法または手順」のように、習慣や手法、法則などによく使われます。
「invariant」は科学やコンピューター用語でもよく使われる単語で、「To provide an improved continuously silane production method enabling an invariant conversion.(不変の転化率を可能にするために改善された、連続的なシランの製造方法を提供する)」のように専門的な表現に使われます。
「恒常的」は「一定で変わらない」という意味
「恒常的」とは、地球が太陽の周りをいつも同じスピードで回っているように、一定で変わらず変化がないという意味です。しかし「慢性的」のようにネガティブに変わらないのではなく、ポジティブな力も含んでいる言葉です。
「恒常的」の類語や対義語、使い方や例文、英語表記などを紹介してきました。これらを参考にして「恒常的」の正しい意味を解釈し、正しい使い方をしてください。