「うろ覚え」「うる覚え」どちらも聞くけれど
「有名人の名前をうろ覚えで思い出す」、「この話はちょっとうる覚えなんだけどさ」など、うろ覚えとうる覚えをあいまいなまま覚えている方も多いのではないでしょうか。
うろ覚えとうる覚えはたったひと文字違うだけで、使い方もほとんど同じように見えるため、ついつい「どっちが正しいのか」をはっきりさせないまま覚えているケースも少なくないようです。
言葉のもともとの意味を把握し、正しい使い方を覚えることは社会人としての責任でもありますので、この機会にぜひともうろ覚えとうる覚えの違いについて例文と合わせて把握しておきましょう。
「うろ覚え」と「うる覚え」はどちらが正しいのか
「うろ覚え」と「うる覚え」はどちらも日常でよく使われる言葉ですが、結局のところ、どちらが使い方として正しいのでしょうか。
知らず知らずのうちに間違った使い方を続けていて、恥ずかしい思いをしているかもしれません。正しい言葉遣いは社会人としての常識ですので、まずは正しい使い方と意味をおさえておきましょう。
「うろ覚え」が正しい
結論から言うと、「うろ覚え」のほうが正しい使い方です。意味は、「正しいかどうかはっきりしないまま覚えている」ということであり、中途半端な記憶、という意味にもなります。
「うる覚え」という使い方が生まれた背景としては、うろ覚えとひと文字違いであること、耳で聞いた印象が変わらないこと、間違って覚えていても違和感がほとんどないこと、などが挙げられます。
現在、日常生活で「うる覚え」を使っても注意されないかもしれませんが、ビジネスシーンなどでうる覚えを使うと誤用とされますので、正しい言い方と使い方を身につけておきましょう。
「うる覚え」に近い発音をする地域もある
一般的な日本語の使い方としては、「うろ覚え」のほうが正しいとされていますが、地域によってはうる覚えのほうが正しいとされているところもあるようです。
その意味では、「うる覚え」は方言のひとつであると考えられており、若干の地域性はありますが、「うろ覚えが正しい」と覚えておいて間違いはないでしょう。
「うろ覚え」(うる覚え)の意味や語源
「うろ覚え」のほうが日本語では正しいとわかったところで、次に気になるのが語源や由来ではないでしょうか。「うろ覚え(うる覚え)」のもともとの語源や使い方についておさえておくことで、言葉の教養が深まります。
不確かな記憶のこと
うろ覚え(うる覚え)の正しい意味は「あいまいな記憶、はっきりしない記憶」になります。うろ覚えは漢字で「虚覚え」や「洞覚え」などと書く場合も少なくありません。
虚や洞は、どちらも「底の見えない空間」という意味があり、その語源で考えると、うろ覚え(うる覚え)は「記憶にぽっかりと空洞が空いた状態」ということになるのかもしれません。
このような語源がありますが、うろ覚え(うる覚え)は日常では漢字で書かれることが少なく、ひらがなで書くほうが一般的となっています。
「胡乱な」が元
「うろ覚え(うる覚え)」の語源は中国にあるという説もあります。うろ覚え(うる覚え)は中国語の「胡乱」が変化した言葉であると言われており、現在でも語源として採用されています。
中国語の「胡乱」は「乱雑な、大雑把な」という意味があり、あいまいな記憶、といううろ覚え(うる覚え)の意味とも符合します。
ちなみに、日本語で「胡乱な」というと、「はっきりしない、ぼんやりしている」という意味になり、語源が同じでも国によって使い方が変化していくことがうかがえます。
うろ覚え(うる覚え)の類義語はある?
うろ覚えの例文や使い方と合わせておさえておきたいのが類義語です。類義語の使い方について例文とともにチェックしておくと、ビジネスシーンでもボキャブラリーがさらに広がります。うろ覚えの類語について見ていきましょう。
類義語①空覚え
空覚えはうろ覚えの類義語のひとつで、意味はほとんど同じです。この場合の空は空返事、空回り、などと同じく「中身がない」という意味になり、どちらかといえばネガティブなニュアンスになります。
一方、空覚えにはもうひとつ、「丸暗記している」という意味もあり、「空で言える」などのように、覚えた知識をいつでも正確に取り出せる、というニュアンスがあります。
類義語②生覚え
生覚えもうろ覚えの類義語のひとつで、「中途半端に覚えている」という意味になります。この場合の生は、生半可、生返事、生兵法、生あくび、生じっか、などのように半端というニュアンスをもっています。
日常でも、「生覚えはいけないよ」などのように、あまり良くないニュアンスで使われることが多い言葉ですので、注意しておきましょう。
うる覚えも正しい言葉になる?
「全然」が明治時代までは肯定を意味する言葉だったように、日本語の意味や使い方は時代とともに変化していきます。また、「とても」も本来は否定をともなう副詞として使われていました。
うる覚えも、今の常識では正しい使い方とは言えませんが、日本人の大多数が当たり前に使うようになればうろ覚えとともに正しい日本語として認められる日がくるかもしれません。
「うろ覚え」(うる覚え)を使った例文
うろ覚え(うる覚え)の正しい意味や使い方、語源がわかったところで、ここからはうろ覚え(うる覚え)の例文についてより実践的にチェックしておきましょう。特に、ビジネスで正しい使い方ができるように心がけてください。
使い方
「はっきりしない記憶」という意味を持つうろ覚え(うる覚え)は、日本語では謙遜表現としての使い方が一般的になっています。
ビジネスシーンでも、上司や取引先に重要な情報を伝える際、「うろ覚えなんですけど」と前置きするとやわらかい言い方に聞こえますし、謙虚さが相手にも伝わります。
もちろん、その場合も「うる覚え」ではなく、「うろ覚え」が正しい使い方ですので、大切な場面で混同しないように例文を普段からしっかりとチェックしておきましょう。
会話での例文
ビジネスでは謙遜表現のひとつとして使われることの多いうろ覚え。例文をいくつかストックしておくと、正しい意味と使い方がより覚えやすくなります。
「うろ覚えかもしれませんが、中国支社の移転は来年の春以降だったかと思われます」などの例文のように、うろ覚えを前置きのように使うことで一種の謙遜表現となります。
上の例文のように、本題の前にさりげなくつける短い言葉のことを「クッションワード」と言い、相手に好感を持たれる例文としてもよく紹介されています。
ただ、うろ覚えをつねに使っていると上司などから「正しい情報をもっていないのか」と思われてしまいますので、例文を丸暗記するのはやめておきましょう。
「うろ覚え」の実例をチェック
うる覚えと混同することも多いうろ覚え。ビジネスでも使う機会の多い言葉であり、社会人としてぜひとも覚えておきたい言葉です。
ビジネスでも日常生活でもよく使われる「うろ覚え」のより詳しい使い方について実例とともに御紹介していきますので、社会人の方もチェックなさってください。
実例①
「うろ覚えで大変恐縮です。次回のミーティングは来週から再来週に変更になっているかと思いますが、あらためて御確認いただけますでしょうか」。
うろ覚えをビジネスで使う場合の典型的な例文です。このように、仮にはっきりと記憶にあることであってもあえてうろ覚えと前置きをすることで、日本語としてやわらかい印象になります。
「恐縮ではございますが」、「お手数ではございますが」などもビジネスでよく使われる基本的なクッションワードですので、合わせておさえておきましょう。
実例②
「最初のうちはうろ覚えでもいいから試行錯誤を繰り返しなさい。チャレンジがなければ、進歩も上達もないのだから」。
ビジネスにかぎらず、どんな分野でも失敗はつきものです。うろ覚えでもいいから積極的にチャレンジし、自分なりの方法を見つけていくことが仕事の基本であると、この例文は教えてくれています。
実例③
「うろ覚えの記憶のままスマホを頼りに取引先まで行ったが、慣れない土地だったので案の定迷ってしまった。やはり、事前準備は大切だ」
今の時代、スマホのマップ機能があるから安心、と思っていても、うろ覚えのまま歩きまわったのではやはり迷ってしまいます。文明の利器よりも、まずは自分の勘を信用しましょう。
実例④
「うろ覚えの記憶だからといって軽く見てはいけないよ。あいまいな記憶や印象ほど真実につながっている可能性が高いのだから」。
刑事ドラマでよく出てくる例文です。うろ覚えの記憶や情報に振りまわされるのではなく、ひとつひとつの事柄をきちんと整理できる能力は社会人全般にも求められます。
「うろ覚え」は正しい使い方で使おう
「うろ覚え」と「うる覚え」はどちらも日本語として使われていますが、うろ覚えのほうが正しい日本語です。ただ、地域によってはうる覚えと発音する場合もあり、方言の一種ではないかと言われています。
うろ覚えの意味は、「はっきりしない記憶」になり、ビジネスシーンでは前置きとして使うことで謙遜の意味をもたせることができます。