盆栽におすすめのもみじの種類
盆栽でもみじを楽しむ人が増えています。もみじは新緑から紅葉の季節まで、1年中楽しむことができる落葉樹です。もみじといえば、大木など盆栽とはかけ離れたイメージを持つ人も少なくありません。
しかし、もみじは種類によって、小さな鉢植えや盆栽で簡単に育てることができます。しかも、1度盆栽にしてしまうと、枯れることが少ないので年数の経過とともに、雰囲気が出てくるのが魅力です。そこで、盆栽におすすめのもみじの種類について解説します。
ヤマモミジ
盆栽でもみじを楽しむ際、よく選ばれているのが「ヤマモミジ」です。日本海側でよく見られる品種であり、非常に丈夫で成長が早いのがヤマモミジの魅力だといえるでしょう。ヤマモミジの葉は切れ込みが深く、5~7枚に分かれているのが特徴です。
紅葉だけでなく芽出しも美しいので、1年を通して楽しむことができます。ヤマモミジが盆栽で選ばれることが多いのも納得です。手間をかけずにもみじの盆栽を楽しみたい人にもおすすめできるのがヤマモミジだといえます。ここでは、ヤマモミジの種類について紹介します。
琴姫(コトヒメ)
小さな可愛らしい葉が印象的な「琴姫(コトヒメ)」は、女性にも人気あります。非常に細かい節目の葉が、枝に密集して育つのが特徴です。
芽出しの季節になると、黄緑からうっすらとした赤い色の芽が出て、夏に向けて濃い緑に変化します。その後、淡い緑へと染まっていく姿は、とても趣があります。夏に日焼けを起こしやすいので、日陰で育てるのがポイントです。
獅子頭(シシガシラ)
秋の紅葉を楽しみたい人に注目されているのが「獅子頭(シシガシラ)」です。葉がまるで獅子の巻き毛のような形であることから、獅子頭(シシガシラ)と名付けられました。生産性が非常に少なく、貴重な品種であり盆栽マニアの間でも人気です。
葉の付く枝の間隔が狭いのが特徴であり、正しい育て方を実践すると非常に雰囲気のある盆栽となります。個性的で美しい紅葉のもみじを楽しみたい人におすすめなのが「獅子頭(シシガシラ)」だといえるでしょう。
イロハモミジ
一般的にもみじといえば「イロハモミジ」をイメージする人が多いでしょう。それもそのはず、イロハモミジは江戸時代から継承されている品種です。まさに、日本人に最も親しまれてきたのが、イロハモミジだといえるでしょう。
イロハモミジの名称の由来は、深い切れ込みが入った小さな葉を「いろはにほへと」と数えたことと言い伝えられています。また、イロハモミジは4月~5月といった春に紅葉するのが特徴です。ここでは、イロハモミジの種類について紹介します。
紅千鳥
紅葉の美しさで選ぶなら「紅千鳥」です。色鮮やかなオレンジ色の芽出しは紅千鳥の特徴であり、夏に向かうにつれて鮮やかに緑色に変わっていきます。また、繊細な枝先は盆栽にピッタリだといえるでしょう。
紅千鳥は取り木も簡単なので、盆栽初心者の人にもおすすめです。なお、育て方を工夫すれば春だけでなく、秋紅葉も楽しめます。美しい紅葉のもみじの盆栽に挑戦したい人におすすめなのが紅千鳥だといえるでしょう。
出猩々(デショウジョウ)
春紅葉の代表格が「出猩々(デショウジョウ)」となります。春には真っ赤で美しい芽を出すのが特徴であり、出猩々(デショウジョウ)の名前の由来です。葉の色は赤だけでなく緑や黄色、オレンジなどがあり美しいグラデーションを見せてくれます。
出猩々(デショウジョウ)は、もみじの中でも非常に強い品種なので、初心者でも育て方が簡単なのが魅力です。はじめて、もみじの盆栽に挑戦するなら出猩々(デショウジョウ)を選ぶと良いでしょう。
もみじの盆栽の植え付けの準備
もみじの盆栽を美しく育てるには、植え付けの準備が大切です。もみじの盆栽の植え付けは「苗の選択」「植木鉢の用意」「土の用意」「植え付け」の順番に行われます。
美しいもみじの盆栽に育てるには、それぞれ重要な工程であり手を抜かずに丁寧に行うのがポイントです。ここでは、もみじの盆栽の正しい植え付けの準備について解説します。
苗を選ぶ
もみじの盆栽を楽しむには、苗を選択して用意することから始めます。盆栽用のもみじの苗はガーデニングショップや園芸店、盆栽園などで入手可能です。最近ではネット通販を行っている園芸店や盆栽園もあり、近所に店舗がなくとも簡単に入手できるでしょう。
盆栽にできるもみじには多くの種類があります。インスタグラムなどで盆栽の完成形を見ておくと、イメージしやすくなるでしょう。初心者の場合だと、樹高が20cm程度の苗から始めると、育て方も簡単なのでおすすめです。
鉢植えを用意する
もみじの盆栽に使用する鉢植えもガーデニングショップや園芸店、盆栽園で入手できます。また、雑貨店などで販売されているおしゃれな鉢植えも人気です。もみじの種類によって映える鉢植えも異なります。
また、自宅のインテリアなどに合わせて、好みの鉢植えを選ぶと良いでしょう。なお、鉢植えの大きさは、苗のポットより一回り大きなものがおすすめです。
盆栽用の鉢植えを入手したら、園芸用ラフィアを取り付けましょう。鉢底の大きさにカットした鉢底ネットに、鉢底穴から園芸用ラフィアを通します。もみじの苗を固定できるよう、園芸用ラフィアは2本通しておくのがポイントです。
土を準備する
もみじの盆栽で使用する土は、赤玉土小粒と鹿沼土小粒を7:3の割合で混ぜ合わせたものです。また、混ぜ合わせた用土は園芸用のザルで振り分け、粒の大きなものは植え付けの際に使用します。
もみじの盆栽に個性的な雰囲気を持たせるには、土のほかに苔を用意しましょう。苔も土と同様にガーデニングショップやネット通販で入手できます。苔には様々な種類がありますが、もみじの盆栽には「山苔」「砂苔」「はい苔」がおすすめです。
なお、苔は見栄えだけでなく、土の乾きや水が土に流れ出ることを防ぐ働きがあります。また、もみじが落葉した盆栽も苔があることで緑が映えて美しいこともメリットです。
植え付けをする
植え付けをするには、もみじの苗をポットから抜き取り、根に付いている古い土を落とします。なお、もみじの植え付けの前日は水やりを控えておくと、古い土が落としやすくなるでしょう。
鉢の底に取り付けたラフィアを十字の方向に広げ、ネットが見えなくなるまで用土を入れます。適当なところでもみじの苗を入れ、さらに用土を加えましょう。
このとき、用土の中に隙間ができないよう割りばしなどを差し込み、さらに用土を加えるのがポイントです。仕上げにラフィアを十時に結び、苗を鉢に固定します。
盆栽のもみじの育て方
もみじの盆栽の植え付けが終わったら、いよいよもみじを育てていきます。美しいもみじの盆栽を作るには、正しい育て方を実践することが不可欠です。反対に独学の育て方を実践するともみじが枯れてしまうこともありますので注意が必要となります。
なお、盆栽のもみじの正しい育て方は「置き場所」「水やり」「肥料やり」の項目別にマスターすると良いでしょう。ここでは、各項目別に盆栽のもみじの育て方を紹介します。
置き場所のポイント
もみじの盆栽は、日当たりと風通しの良い場所に置くのがポイントです。また、夏は葉焼けしやすいので、直射日光を避け半日陰の場所に置くと良いでしょう。秋はもみじの葉が紅葉に色付く季節ですが、夏と同様に半日陰の場所に置きます。
冬は枝を保護することを意識しなければなりません。日当たりがよく、軒下や風、霜が当たらない場所を選ぶと良いでしょう。基本的にどんな種類のもみじも同様ですが、琴姫のように葉焼けしやすい品種もあります。種類によって日当たりについては調整するのがポイントです。
水やりのポイント
もみじの盆栽は水分を非常に好みます。基本的に春秋は2日に一度、夏は毎日、冬は1週間に一度程度は鉢植えに水やりを行うのがポイントです。とりわけ夏は、乾きやすいので1日二度程度でも構いません。鉢植えが乾いた都度、水やりを行うことを習慣にしましょう。
なお、もみじが育つと葉が広がるため、水やりを行っても鉢土に水分が十分に行き届かないことがあります。しっかりと鉢土に水分が行き渡っているか確認することが、もみじの盆栽の育て方のポイントです。
肥料やりのポイント
もみじの盆栽には有機性の固形肥料、もしくは鉢土の表面にばらまく粒状肥料が適しています。肥料を与える時期は、鉢植えの植え替えを行い芽摘みを行う4月頃から11月頃が適当です。
ただし、梅雨と真夏の時期は回避しましょう。なお、正しい育て方では固形肥料は4~7月、9月~11月は固形肥料を使い分けるのがポイントです。固形肥料は紅葉が始まったら、取り除くことも忘れてはなりません。
盆栽のもみじのお手入れの方法・作り方
個性的で美しいもみじの盆栽は正しい作り方を実践すること加えて、日々のお手入れが大切になります。盆栽は単なる鉢植えではありません。観賞用に美しく枝葉を育て、作ることがポイントです。
もみじの盆栽のお手入れ・作り方は「植え替え」「剪定」「針金」「芽摘み・葉摘み」が基本です。ここでは、それぞれの項目に沿って、もみじの盆栽のお手入れの方法・作り方について紹介します。
植え替えのポイント
もみじの盆栽の作り方において、必要不可欠なお手入れが植え替えです。植え替えとは文字どおり、もみじの盆栽を大きな植木鉢に植え替えることをいいます。もみじが順調に成長するにしたがって、鉢植えのサイズは大きくしなければなりません。
葉の付いている状態で植え替えを行うと、もみじに大きなダメージを与えてしまうでしょう。そこで植え替えは、もみじの葉が落ちている寒い冬の時期に行います。準備するものは、現在のものより大きな鉢植えと新しい用土です。
古い鉢からもみじを丁寧に抜き取り、根に付いた土を丁寧に落とします。鉢の底に取り付けたラフィアにもみじを取り付け、新しい用土で隙間ができないよう植え付けれは完成です。
剪定のポイント
もみじは繊細な植物であるため、枝先を切ると脇芽が増えていきます。脇芽を放置しておくと樹形が悪くなるばかりか、枯死する原因にもなりかねません。そこで、定期的な剪定が必要となります。言い換えれば剪定をすることは、もみじの盆栽の作り方の一環だといえます。
剪定のポイントは、脇芽が生えてこないよう枝の根元から刈り込むことです。太い枝を剪定した場合は、癒合剤を塗って切り口を保護することも忘れてはなりません。
また、剪定は行う時期が大切です。剪定の目的は盆栽の形を整えることですから、鉢植えと同様に休眠期である秋〜冬にかけて行いましょう。
針金をかけるポイント
美しいもみじの盆栽の作り方において、針金をかけて形成することは不可欠です。針金をかける時期は決まっていません。剪定や芽摘み・葉狩り、落葉後など、枝筋が見えやすい時期が作業がしやすい時期が適当です。
ただし、寒い時期は枝折れとなりやすいので、落葉後であっても避けるべきでしょう。針金をかけるのは、真っすぐに伸びるもみじの枝を矯正することが目的です。針金をかけることで、直線的に伸びる若い枝を矯正し、枝先に行くほど細かく枝をほぐしていきます。
もみじの枝はすぐに太くなるので、1~2か月程度で外しましょう。また、針金で強く曲げすぎると枯れてしまうので、無理に曲げず樹木の個性を活かすことがポイントです。
芽摘み・葉狩りのポイント
もみじの盆栽の作り方において、芽摘み・葉狩りはとても大切な作業となり正しい育て方にも通じます。3月中旬頃から4月下旬になると、日々あたらしい芽が出てきますから、丹念に芽摘みを行い細かい枝作りを行いましょう。
ただし芽摘みは樹木に大きな負担を与えますから、養成木の段階では必要に応じて行います。とりわけ初期の段階では、幹や枝を太らせて針金をかけることで基本の造詣を作ることに心掛けましょう。
もみじの葉狩りは「片葉刈り」がポイントです。もみじは1つの枝に対して2枚の葉が出てくるので、この1枚を柄を残してカットします。カットする葉は「葉が大きい」「枝が長い」「重なっている」ものを選びましょう。
盆栽のもみじの季節ごとの手入れのポイント
盆栽のもみじは、季節ごとにお手入れの方法を変えることが正しい育て方にもなります。特に植え替えや剪定、芽摘み・葉狩りを適当な季節に行うことは、盆栽の育て方や紅葉の美しさに大きく影響します。
適時適切な時期に正しくお手入れをするには、1年間のスケジュールを理解しすることが大切です。そこで、盆栽のもみじの季節ごとの手入れのポイントを紹介します。
春のポイント
春のもみじの盆栽のお手入れは、芽摘みが中心となる季節です。もみじは3月頃になると瑞々しい新芽が伸び始めます。新芽は直線に伸びていきますが、枝が伸び過ぎると樹形が崩れることも、考えなくてはなりません。
そこで、芽摘みは2番目の芽を摘み取るのがポイントです。さらに、全体の樹形から伸ばしたい方向の枝は3番目の新芽を芽摘みするのが、美しい盆栽の作り方です。また、5月頃には苔を剥がして、固形肥料を加えていくと良いでしょう。
もみじの盆栽は2~3年に1度の割合で植え替えが必要です。3月上旬から中旬は植え替えにも最適な時期となります。根詰まりを確認して、必要に応じて植え替えを行うと良いでしょう。
夏のポイント
夏のもみじは葉焼けに注意することが、美しい盆栽の作り方に通じます。とりわけ、近年の猛暑は盆栽にとっても大敵です。西陽の当たる場所にもみじの盆栽を置くことは極力避けましょう。やむを得ず、直射日光の強い場所に盆栽を置く場合は、ヨシズや寒冷紗を使用して日陰を作ると良いでしょう。
また、水やりの際ももみじに直接日光が当たらないよう工夫することも美しい盆栽の作り方の一環です。なお、鉢植えに春に置いた肥料が残っている場合は取り除き、必要に応じて剪定を行いましょう。
秋のポイント
もみじの盆栽は種類にもよりますが、何といっても秋の紅葉が魅力です。秋の盆栽の作り方としては、落葉した後に固形肥料をおくことがポイントです。固形肥料は苔を剥がして置きますが、春よりは少なくします。また、伸び過ぎた枝を剪定したり針金をかけるのも秋ならではのお手入れです。
盆栽の作り方の基本は全体を不等辺三角形に形成することになります。紅葉が終わり葉が全て落ちたら、伸びすぎた枝を剪定しましょう。いろいろな角度から観察して、針金をかけて枝の方向を調整することが大切です。
冬のポイント
冬のもみじの盆栽は、水やりと凍らせないことがポイントです。紅葉が終わり葉が落ちても、もみじは枯れているわけではありません。したがって、冬でも水やり必要です。
ただし、頻度は少なくなり、用土の乾き具合をみながら2日に1回程度を目安とします。また、できる限り陽の当たる場所に置くようにしましょう。特に寒い地域では、油断していると鉢が凍ることもあります。夜間は軒下や室内に置き場所を変えることがおすすめです。
盆栽のもみじの注意点
もみじの盆栽を美しく個性的な形に想像するには、正しい育て方や作り方を実践するだけでは十分ではいえません。もみじは植物ですから病気や害虫、根詰まりといった阻害要因を丁寧に取り除くことが必要です。
そのためには、もみじの盆栽を育てるにあたっての注意点を把握しておく必要があります。ここでは「病気」「外注」「根詰まり」の項目に沿って、もみじの盆栽の注意点をまとめました。
病気に気をつける
もみじがかかりやすい病気として多いのが「うどんこ病・さび病」です。うどんこ病・さび病にかかる原因は、風通しの悪さと日当たりの悪さになります。簡単な対策としては、もみじ盆栽の置き場を風通しの良い陽のあたる場所に変えることです。
また、もみじは放っておくと、すぐに葉が生い茂ってしまいます。葉が生い茂ってくると、内側に風が通らなくなり、うどんこ病・さび病にかかりやすくなるのは必然です、したがって、春の芽摘みや葉狩り、剪定は必ず行いましょう、また、病気にかかった葉は早い段階で取り除きましょう。
害虫に気をつける
もみじは山林に生い茂る「樹木」であり、比較的害虫に強いことで知られています。しかし、お手入れやしっかりと対策をしなければ、害虫の被害に遭うことも少なくありません。もみじの盆栽に発生しやすい害虫としてあげられるのが「ハダニ」です。
「ハダニ」は夏のはじめと終わり、蒸し暑い季節に発生します。対策としては5月頃から1週間に1度程度、専用の薬品を散布することが有効です。また、蒸し暑い日には夕方、葉に水をかけて涼しい位置に移動させるのもよいでしょう。
根詰まりに気をつける
根詰まりは、もみじの盆栽の育成を妨げる要因の一つだといえるでしょう。根詰まりとは鉢植えで育てている植物の根が育ちすぎて、植木鉢を圧迫している状態のことです。
もみじは樹木部の成長に伴って、根の部分も大きく伸びていきます。根が成長し続ければ、植木鉢を圧迫することは時間の問題です。根詰まりを放っておくと植木鉢が割れてしまうこともありますので、早めに植え替えを行いましょう。
根詰まりを早期に発見するには、時折もみじの盆栽をひっくり返して、鉢底穴から根が見えていないか確認します。太い根が鉢底穴から飛び出しているなら、直ちに植え替えを行いましょう。
もみじを盆栽にすると一年中楽しむことができる!
もみじの盆栽は育て方、作り方ともに簡単ですから、初心者の人もチャレンジしやすいといえるでしょう。もみじは山林に生い茂る、自然の樹木であることから、害虫や病気にも強いのが特徴です。もみじの育て方のポイントは、直射日光に当て過ぎずこまめに水やりを行うことです。
また、もみじはすぐに葉が生い茂るので、芽出しの時期は芽摘み・葉狩りや剪定を丁寧に行うことで、秋には美しい紅葉を鑑賞できるでしょう。盆栽の作り方では針金のかけ方がポイントです。好みの枝振りにするには。新しい枝を選んで無理をせず自然にカーブするよう針金をかけましょう。
もみじは春には瑞々しい新芽が顔を出し、新緑の季節を通じて秋には紅葉が彩ることから、1年中楽しめるのが魅力です。正しい育て方と作り方をマスターして、1年を通じてもみじの盆栽を楽しみましょう。