円マークとは
円マーク「¥」は、領収書や銀行振込、見積書や請求書などの金額を表す算用数字の前にはほとんどと言っていいほど使われる記号です。日本円を表すマークだとは知っていても、本来の意味を知らない人も多いのではないでしょうか。
日本円を表すのに、なぜアルファベットの「Y」に二重線「=」を書くのでしょう。「円」は「えん」と発音して、ローマ字の書き方をすれば「EN」になるのに、なぜ「Y」を使うのでしょう。少し掘り下げてみると色々な疑問がわいてきます。そんな疑問をこれから一つずつ解き明かしていきましょう。
日常的に使うが意味を知らない人は多い
円マークは普段の生活で、日常的に使ったり目にする記号ですが、何の気なしに意味を知らずに使うことが多いマークです。
数字が表す単位には、他に、量(ℓ)重さ(g)長さ(cm)距離(km)気圧(hPa)など色々とあり、それぞれにマーク記号があります。この記号が付くことで初めて数字の単位が分かるわけです。
金額でも同じで、世界の通貨には、米ドル、ポンド、ユーロ、ウォンなどがあり、それぞれにマークがあります。数字の前に「¥」が付くことで、初めて日本円だと理解できるのです。つまりマーク記号は、その数字が何の単位を表しているかを識別する役割を持っています。
円マークの使い方の少し特殊な例を紹介します。円マークはYに二重線を書いた「¥」を書く使い方が一般的です。
ところが労働保険(労災保険・雇用保険)の保険料や一部の公共機関の納付書に記載する円マークは、横線が1本足りない一重線の「Ұ」が使われています。どうしてなのでしょう。
一重線の「Ұ」は円マークではなく、記載されている数字はここまで、ということを伝える記号だそうですが、少し苦しい言い訳に聞こえます。
実はこの理由は単純で、納付書を読み取る機械(OCR)システムが旧式なだけのようです。なるべく早く新式の機械(OCR)の導入をお願いしたいものです。
円マークの意味や由来
円マークにはどのような意味があるのでしょう。「¥」は様々な国際通貨の中で、日本円を識別するためのものであることは前述の解説で紹介しました。ではなぜ日本円の記号が、アルファベットの「Y」に二重線の「¥」なのでしょう。円マークをつける意味や、日本円のマークが「¥」になった由来を紹介します。
円マークの意味
円マーク「¥」を見た瞬間に、次に続く数字が金額を表しているとすぐに分かります。つまり円マークにはビジュアル的に、次の数字が日本円だと即座に認識をさせる効果と意味があります。
また領収書の数字の前に円マーク「¥」や「金○○円」と書かれていないと正式なものと認めてもらえません。特に税務申告の際の領収書では必須のマークです。つまり円マークには、数字を書き足されないようにして、その金額が正しいものであることを証明する意味を持っています。
円マークの由来
円マークが「¥」になった由来は、明治時代に欧米人が日本の通貨「円」を「Yen」と表記したことに始まると言われています。「Yen」の頭文字「Y」を使い、ドルの「$」の習慣にあわせて二重線を付けたという説が一般的です。
ではなぜドルのスペルは「dollar」なのに「D」を使わないのでしょう。意外なことにドルマーク「$」の由来はスペインの国章から来ている説と、メキシコの通貨ペソに由来する説と2通りあります。
スペインの国章は、真中に紋章(もんしょう)があり、両脇にリボンが巻き付いた柱が描かれています。この柱を縦線に、リボンを「S」に見立てたのがドルマークという説です。もう一つが、メキシコの通貨ペソの頭文字のPとSを組み合わせて出来たという説です。
16世紀〜17世紀にスペインはアメリカ大陸を植民地化して支配していました。アメリカ建国以前の19世紀にはメキシコが北アメリカ大陸の最大勢力でした。このような歴史的背景がドルマークの由来に影響しているのではないでしょうか。
一般的な通貨記号
国際的な通貨記号として円マーク「¥」は、意外に使用頻度は低いほうです。海外からクレジットカードで買い物をした時や、金融取引の明細書でよく目にするのは「JPY」の文字です。「JPY」は「Japanese Yen」の略称で「JPY1,000」と表記されていれば千円のことです。つまり海外では円マーク「¥」より「JPY」という書き方が一般的です。
円マークが一般的なのは日本だけ
前述のように円マーク「¥」が一般的なのは日本国内だけです。この辺をよく理解しておかないと、国際間の取引などでは間違いや誤解を生じるので円マークの使い方には注意しましょう。
国際的に「JPY」が使われるのには、次の理由が考えられます。古来中国の通貨は「園(Yen)」で、日本の円も中国の園に由来しています。現在の中国の通貨は「人民元」ですが通貨記号は日本と同じ「¥」を使っています。中国の元と日本の円を混同しないために国際的には「JPY」が使われることが多いのではないでしょうか。
円マークの正しい書き方
銀行の振込み用紙や領収書を自分で書く時には、金額に円マークを書きます。その時の正しい書き方や、注意点はあるのでしょうか。もし領収書を発行する際にミスをしてしまえば相手の方に迷惑をかけてしまいます。正しい円マークの書き方を知っておくことは、トラブルを防ぐことになるので大切です。ではどのような注意点があるのでしょう。
一般的な円マークの書き方
一般的な円マークの正しい書き方は、まずアルファベットの「Y」をなるべく左右対称に書いてから横の二重線を入れます。あまり几帳面にこだわらなくても「¥」が普通に判別できれば大丈夫です。
奇麗に円マークを書きたいと思うならば、書き順は上半分のVの部分は左側から書き始め、次に右側を結合点まで書き、結合点に達したならばそこから真直ぐ下に縦線を書きます。それから結合点と縦線の終る間に等間隔で横線を二本入れれば奇麗な円マークが完成します。
筆記体での円マークの書き方
1989年(平成元年)以降に生まれた人は、中学校の学習指導要綱が改正されたために、学校で英字の筆記体を教わっていないので書き方を知らない人が多くいます。アメリカでもパソコンの普及にともない筆記体を使わない人が増えています。
しかし手書きの領収書を急いで書く際には、筆記体のほうが素早く書けて便利です。筆記体の「Y」を書くと跳ね上げた線ですでに横線が一本入っている状態なので、後からバランス良く横線を1本加えるだけで筆記体の円マークを書くことが出来ます。
ただし公共機関の納付書や銀行の振込用紙など機械で読み取る場合は、筆記体の円マークは使えないので注意して下さい。
キーボードで円マークを入力したい時は
パソコンのキーボードで円マーク「¥」を入力するには、キーボード上の「¥」のキーを押せばそのまま表示されます。また日本語で「えん」をキーボード入力して変換することで表示されます。
しかしキーボードの半角で円マークを入力すると、パソコンの機種によっては文字化けしたり、バックスラッシュ「\」になってしまうことがあります。それは円マークが機種依存文字のひとつだからです。半角で円マークを確実にキーボードで入力したい時は、HTML特殊文字を使い、¥(全て半角入力)で入力すれば表示できます。
領収書に円マークを書く意味
領収書に円マークを書くのには、どのような意味があるのでしょう。前述のように領収書の金額数字が円マークを付けることにより日本円であることが分かります。
円マークが付いていなければ、領収書の数字が円なのかドルなのかユーロなのか判別できません。つまり円マーク「¥」には通貨の種類を特定する意味があります。
また円マークを付けるのには、金額の数字が偽造されていない正しいことを証明する意味があります。ですから手書きの領収書でも、キーボードで印字する場合でも円マークを正しく付けることが大切です。
正しい円マークの使い方や書き方をしないと相手に迷惑をかけてしまうことになります。また領収書の不正使用を防ぐ意味もあります。
金額の偽造を防ぐため
もし数字の前になにも付いていないと、数字の前に別の数字を書き入れることで金額を偽造することが出来てしまいます。キーボード入力の場合は後から同じ印字体で書き入れるのは難しいのですが、手書きの領収書では簡単に書込むことが出来てしまいます。
一桁数字が変ればば金額は大きく変わってしまうので、円マークの次に続く数字の書き方は、別の数字が書込めないように出来るだけつめて等間隔で書くことが大切です。また数字の最後にはここでおしまいという印をつけることも不正・偽造を防ぐことになります。
領収書はどうしても手書きで書かなければならない場合を除いては、偽造を防ぐ意味ではキーボード印字のほうが安全です。しかし見た目やバランスが良いからといって、円マークの後に空白を入れたりするのは危険なので注意しましょう。
領収書などに書く正しい円マークを使った金額の書き方
領収書などに書く円マークは正しい使い方をしないと、受取った相手の経理や税務処理で正式に認めてもらえずに迷惑をかけてしまうことがあります。正しい円マークの書き方や使い方をきちんと知っておくことは、相手に迷惑をかけないためにも、不正利用を防ぐためにも非常に大切です。正しい円マークの書き方や使い方、注意点などを紹介します。
領収書などの円マークの使い方の注意点
見積書、請求書、領収書などの金額に使用される円マークは、正しい金額を表すために非常に重要な意味を持っています。
特に領収書は支払った金額を表す重要な書類で、税務関係では正しく書かれていない場合は領収書として認めてもらえません。
領収書等の書類では「¥○○○○※」などのように円マークを使う場合の他に「金○○○○円也」という表示も正式に認められています。しかし「¥○○○○円」と円マークと円を二重に使ったり「○○○○¥」と円マークを数字の後に書く使い方は間違いです。
「○○○○¥」では数字の前にいくらでも数字を書き加えられるので正式金額として認められないので注意して下さい。また数字は3桁ごとにカンマを入れることで改ざん防止になるので、手書きでもキーボード入力でもカンマを入れるようにしましょう。
「※」の使い方
領収書などの金額数字の前に円マーク「¥」を付け、数字の最後に「※」を付けるのが正しい書き方です。これは金額の前後に数字をつけ加えられないようにするためで、領収書などの偽造を防止する働きがあります。また¥マークの後や各数字の間隔、後ろの※印の間にはスペースや空白をあまり作らずに、別の数字が書込めないようにする注意が必要です。
「−」の使い方
金額の最後に付ける「※」はパソコンのキーボードでは簡単に表示できますが、手書きの場合には少し難しいので横棒の「ー」を書いても使い方として正式に認められています。また手書きの算用数字の「1」は「4」に書き換えることが可能なので、旧漢字の漢数字「壱、弐、参、四、伍、拾、百、阡、萬」を使うことも許されています。
「円也」の使い方
漢数字を金額に使う場合は、金額の頭には円マーク「¥」のかわりに「金」を付け、最後は「円」または「円也」を書きます。例えば「¥18,500※」は「金壱萬八阡伍百円也」のように書きます。
チェックライターやキーボード印字では改ざんが難しいのですが、改ざんされては最も困る小切手や手形を手書きで発行する場合に、漢数字の「金○○円也」が多く使われます。小切手や手形の改ざんは、発行した会社の倒産にも繫がりかねません。そのために偽造や改ざんが最も不可能な漢数字の「金○○円也」が使われます。
「¥○○.○○※」金額のあとのピリオドはOK?
例えば1万5千円を支払って、もらった領収書の金額が「¥15,000.00※」となっていて「えっ桁が多いんじゃない!」と思ってよく見ると¥15,000の後はカンマではなくピリオドだったという経験を持つ人がいるのではないでしょうか。
金額の最後にピリオドがあっても領収書としては問題なく正式に認められます。現在の日本の通貨の最小単位は「1円」ですが、明治時代から昭和の中頃までは「1円」以下の単位があり、1円=100銭、1銭=10厘で明治時代の1円は現在の1万円以上の価値がありました。
それが度重なる戦争とインフレの結果、現在の貨幣価値になっています。「.00※」のピリオドはその名残で、円以下の銭がゼロであるという意味です。つまり戦争などで敗戦してインフレが起こると通貨価値はいっぺんに1万分の1以下になってしまうのです。
円マークとは金額をあらわす算用数字の前につけられる記号
ここまで円マークの意味や色々な書類で金額を表すために必要なマークであることを解説してきました。今まであまり気にせずに使っていた円マークには、書類によってはかなり重要な意味があることが理解できたのではないでしょうか。この記事を参考にして正しい円マークの使い方や書き方を、実社会の中で役立てていただければ幸いです。