校了の意味とは
校了(こうりょう)とは、印刷物の原稿の校正が終了した状態を意味します。「校正」と「終了」2つの言葉の最初と最後をつなげて「校了」になったと言われています。
「校了」は通常の日常会話では、あまり使われない言葉ですが、印刷や出版関係の業界では頻繁に使われる言葉です。印刷や出版に関わる仕事をしている人や、原稿を書く作家(漫画家も含め)や編集者にとって、「校了」の意味や使い方は必須のワードになります。
校正が終了していつでも印刷できる状態
校正(こうせい)とは、原稿の誤字脱字を見つけて修正したり、写真やイラストなどの色合い、画像の大きさ、画像と文章の配置バランス、など原稿の全ての構成をチェックする作業のことで、校了は校正が全て終了した原稿の状態を意味しています。
つまり校了とは、いますぐにでも原稿を印刷行程にまわすことが出来る状態のことです。校正作業は、一部の漫画の原稿などを除いてパソコンで作業を行い、校了した原稿はデータで印刷にまわすのが通例です。
エクセルやワード、Illustrater(イラストレーター)やPhotoshop(フォトショップ)などのソフトで原稿を作成、編集、校正したものを「psd形式」「eps形式」など印刷に適したデータに変換して校了となります。
漫画の原稿などの場合は、印刷用の原稿用紙(トンボが付いている)の仕上がり線の中に直接描くか、またはパソコンで描いた絵をプリントアウトして原稿用紙に貼付けて入稿します。これをアナログ原稿といいます。
アナログ原稿でもデジタル原稿でもデータを印刷にまわした後に、あの部分を少し修正したいというのは原則NGです。そのようなことにならないように、校了するまえの校正は慎重にすることが大切です。
校了の使い方
「校了」という言葉は、出版社内部の場合と印刷会社とのやり取りでは少し使い方や意味が違います。校了とは校正が終ったので修正の必要はありませんという意味ですが、人間がやる作業に完璧ははありません。
校正も同じで一人の目よりも、そこに他の人のチェックが入ればより完璧に近づきます。校了した原稿は基本的に修正はNGと前に解説しましたが、出版社内部で使われる「校了」は少し意味や使い方が違います。
出版社内部で使われる場合
出版社内部でライターが編集者に原稿を渡す場合の「校了」には「自分の担当分は終りました」という合図の意味で使われることが多いようです。
ライターが編集者に原稿を渡して「これで校了して下さい」といった場合は「原稿は書き上げましたので、編集さんの確認をお願いします」という意味になります。
編集者の判断で「専門用語が多すぎて、一般読者には分かり難いので分かりやすい文章に書き直して下さい」と差し戻されることもあり得ます。また「編集方針に内容が合わない」ということで没にされることもあります。
出版社が週刊誌や新聞社の場合には、1分1秒を争う作業になります。また出版社が扱う内容が単行本や小説などの場合は、校了に至るまでの校正作業は、ライター、作家と編集者の間で入念に繰り返し行うことになります。
印刷会社とのやり取りで使われる場合
出版社が印刷会社とのやり取りで使う「校了」は、本来の「印刷しても差し支えない状態の原稿です」という意味で、印刷会社に校了した原稿を渡すことを入稿といいます。
ここからは出版社と印刷会社との信頼関係にかかわることですが、印刷会社には入稿された原稿を、印刷物としてしっかり仕上げる責任があります。
そこで入稿された原稿をもとに、最初の校正作業をするための仮の印刷(通称ゲラ刷り)をして、誤字脱字など原稿どおりにできているか、出版社(または入稿者)に確認の校正を求めます。これを初校といいます。
この時に修正があれば赤を入れて戻します。この修正が反映されているかどうかを確認するために、印刷会社は校正刷りの印刷をして再校を入稿者にお願いします。
印刷会社にとっての「校了」とは、この再校により「もうこれで修正箇所がなく終わりにしてOK=校正終了」が確認できた時点のことです。そして最後に校了にあたって念のために校正刷りをすることを「念校」といいます。初校→再校→念校まで丁寧に行うことで、出版社と印刷会社の信頼関係が築かれています。
校了と校正の違い
校了と校正は似たような言葉なので、うっかり勘違いをする方がいるかも知れません。もう一度おさらいの意味をかねて、その違いを解説します。
「校了(こうりょう)」とは、印刷物などの原稿が「校正が終って、いつでも印刷行程にまわすことが出来る状態」のことで、これは出版社(入稿者)側の「校了」の意味です。
印刷会社にとっての「校了」とは、入稿された原稿が、間違いのない版下に仕上がった状態をいいます。一方「校正(こうせい)」にはどのような意味があり、どのような作業、校了との違いはなんなのでしょう。
校正の意味
校正とは、印刷物の原稿に誤字脱字や「てにをは」の間違いはないか、写真やイラストの色彩やレイアウト、全体的な構成バランスなどをチェックして修正することです。
つまり「校正」は修正する作業そのものを意味する言葉で、「校了」は校正によって完了された原稿の状態を意味しています。
また出版社内のライターの「校了」の使い方には、編集者に「執筆が終ったので校正お願いします」という合図の意味があります。
つまりライターにとっての「校正」は、自分の書いた原稿に誤字脱字などがないかのチェックをすることで、編集者にとっての「校正」は、ライターの書いた記事が編集方針に合っているか、紙面に対して画像と原稿の文字数が適当かどうかなどを判断することで、校正や校了の意味がそれぞれで違います。
印刷物の誤字脱字の修正をすること
校正とは印刷物の誤字脱字の修正をすることですが、原稿が何を意図として書かれたものか、主旨が何なのかは執筆者本人でなければ分かりません。
入稿された原稿が出版社側で校了されたものでも、印刷会社にとっては内容の主旨までは確実に把握できません。そのために印刷の版下校了までの制作行程において、誤字脱字や「てにをは」の間違いが起きる可能性があります。
「てにをは」は、ひとつの違いで文章の意味が大きく変わることがあるのです。そのリスクを防ぐために、印刷会社は執筆者や出版社側に、初校、再校、念校などの校正を依頼します。印刷会社の校正にはそのような意味があり、念校が完了して初めて印刷会社の校了になります。
校了の英語表現
はっきり言って英語には、日本語の「校了」に相当する単語がありません。そこで英語で「校了」の意味を表現するには、文脈や言い回しで表します。
日本語には漢字と言う文字があり、漢字にはビジュアル的に見ただけで何となく意味が伝わる特徴があります。「校了」という漢字は「校正」と「終了」を組み合わせたもので、「校了」は「校正が終了した状態」と見ただけで何となく意味が伝わります。
ところが英語はアルファベットの組合せだけなので、ビジュアル的に意味を表せません。文脈や言い回しで「校了」の意味を伝えるしか方法がないのです。では英語表現では「校了」をどのように表すのでしょう。
問題ない・大丈夫という意味
「校了」を英語で表現するには「OK」や「ready for〜」を使います。「OK」は日本でもよく使う言葉で「問題ない」「大丈夫」という意味で、色々なケースで使われます。
「校了」を表す使い方は「OK the ploofs(校正に問題無し)」「The proofs of the novel were returned with an OK.(その小説の校正刷りに問題ないとの返答です)」のようにOKを使うことで校了を意味します。
「proofs」は、証拠、試験、検査、という意味で広義で「校正」という意味にもなります。つまり「校正にOKが出た」「proofs(試し刷り)にOKの答えが返ってきた」という言い回しで「校了」を表現しています。
「ready for〜」は「〜の準備ができている」という意味で、使い方は「It is ready for the press.(印刷の準備ができている)」「The book is ready for publication.(その本は出版の準備ができています)」のように「〜の準備ができている」という言い回しで「校了」を表現します。
校了とはいつでも印刷できる状態という意味
ここまで「校了」の意味や「校正」との違い、「校了」という言葉の使い方も出版社内と印刷会社とのやり取りでは多少違うことも説明してきました。
出版や印刷とは無関係な仕事をしている人も多いと思いますが、校正や校了のことを知っておくことは、全く意味のないことではありません。どのような会社でも印刷物は必ず必要です。そんな時にこの知識が役に立てば幸いです。