潮時の意味とは?
「潮時(しおどき)」の意味とは、”潮の満ち引きが起こる時刻。”という意味と、”物事をするのに、一番よいおり。チャンス。”という意味の二種類があります。どうしても前者のイメージが強いため終わりと考える方が多いです。
しかし実際の意味としては、何かをするのに対して最も良い状態や機会という意味を持っており、一般的に考えられている物事の終わりという意味ではないところが誤用として考えられる点です。
潮の満ち引きが起きる時間そのものが、物事の節目を意味するかのような意味合いを持っていることから、そのような誤用につながったのだと考えられています。
潮時の対義語・類義語
言葉が持つ意味には、様々な角度から方向性や違いを考えることができます。そうした考え方の分類わけとして「対義語」そして「類義語・類語」があげられます。
これらの分類から「潮時(しおどき)」の持つ意味や他の言葉との関連性について考察することができます。ではそれぞれ対義語・類語とは一体どのようなものなのかについて説明します。
対義語
「対義語(たいぎご)」とは、”特定の言葉に対して、正反対の意味を有する言葉”もしくは”特定の言葉に対してほとんど正反対の意味を持つ言葉”のことを指します。必ずしも全くその通りという意味合いで使われる言葉ではないこともあります。
ここでは「潮時(しおどき)」の対義語に分類される言葉の、使い方や意味そして例文を交えた言葉そのものの捉え方について紹介し、まとめています。
潮時の対義語「往生際」意味・使い方・例文
「潮時(しおどき)」の対義語に分類される言葉「往生際(おうじょうぎわ)」です。意味は”死にぎわ”や、”ついに諦めなくてはならなくなった時”といった意味が定義されています。
「潮時(しおどき)」がチャンスやより良いタイミングを表す言葉ですので、その真逆としては、最も良くないタイミングを表す言葉として「往生際」が対義語として考えられています。
使い方の例文としては「事ここに至っては往生際をいかにするか」や、「あいつは本当に往生際が悪い」といった使い方になります。
潮時の対義語「退き時」意味・使い方・例文
「潮時(しおどき)」の対義語に分類される言葉「退き時(のきどき・ひきどき)」です。意味は、”物事を終わらせるのに適した時期”や、 ”行動を止めるタイミング”といった意味が定義されています。
「潮時(しおどき)」との対義語関係としては、チャンスであるか都合が良くないか、といった関係性になります。何らかの都合でこれ以上続けることができない、という状態に陥った時に後退を意味する言葉として用いられます。
例文としては「このままでは我が軍は戦線の崩壊が免れない、退き時だな」や「放っておけば退き時を見失う」というような使い方ができます。基本的な使い方は潮時と変わりません。
類義語・類語
「類義語(るいぎご)・類義(るいご)」とは、”対象となる言葉と限りなく似た意味を持った言葉”もしくは”対象となる言葉と全く同じ意味を持った言葉、別解釈”といった意味を持つ分類わけを類語といいます。
「潮時(しおどき)」と、全く同じ意味を持つ言葉もしくは似たような意味合いや、方向性を持つ言葉を類語としてまとめてそれぞれに使い方や意味、例文を交えながら、「潮時(しおどき)」との違いについても言及しています。
潮時の類語「時節」意味・使い方・例文・違い
「潮時(しおどき)」の類語で「時節(じせつ)」です。意味は″自然の移り変わりによって感じられる時分。季節。”および、”その時の世の中の情勢。時勢。”または”何かをするのによい時機。機会。”とあります。
機会としての意味では同じ扱いになりますが、「潮時(しおどき)」との違いはそれ以外にも自然の移り変わりを意味する部分や、世の中にも言及した広義の意味でのタイミングについての意味を持っていることです。
使い方としては、「ようやく暖かくなってきて、散歩にほどよい時節になってきた」や、「今は時節が悪い、世の中の流れをみよ」、「待ちに待った時節が来た」などといった使い方となります。
潮時の類語「好機」意味・使い方・例文・違い
「潮時(しおどき)」の類語で「好機(こうき)」です。意味は、″物事をするのにちょうどよい機会。チャンス。”またとないよいおり”などの意味が定義されています。まさに今この瞬間といった意味合いです。
「潮時(しおどき)」との意味の違いとしては、より拙速な差し迫っている点において違いがあると言えます。「潮時(しおどき)」にはやや前もって間もなく訪れる様子を表すのに対して、今まさに絶好の機会といった表現といえます。
使い方としては、「滅多にない好機を見逃してしまい、深く後悔した」。「一瞬の好機を手にするために、ただひたすらに待ち続けた」というような使い方となります。「千載一遇の好機」といった組み合わせにも使われます。
潮時の類語「機宜」意味・使い方・例文・違い
「潮時(しおどき)」の類語で「機宜(きぎ)」です。意味は、″時機にふさわしいこと。”または”それをするのによい機会。”と定義されています。名詞扱いのため、動詞的な使い方は出来ません。
機宜と「潮時(しおどき)」との意味の違いとしては、潮時は潮の満ち引きに語源をおいているためにやや複雑な表現であるのに対し、機宜は純粋に「絶好のタイミング」としての意味しか持っていないことです。
使い方は、「まさに機宜を得たすばらしい企画だと、私は感動すら覚えた」、「何事にも機宜を測らなければ上手く行くものも行かなくなるものだ」というような使い方となります。特別な使い方はとくにありません。
潮時の類語「丁度」意味・使い方・例文・違い
「潮時(しおどき)」の類語で「丁度(ちょうど)」です。意味は、”それが着目するものについて過不足ないさま。”もしくは”それより多く(大きく、遅く)も少なく(小さく、早く)もないこと。きっちり。ぴったり。”という意味を持ちます。
また、”まるで。あたかも。”のような違った用途で用いられる場合もあり、「潮時(しおどき)」が時間的な都合に言及しているのに対して、「丁度(ちょうど)」は大きさや重さなどの多角的な分量や、江靖にたいして用いられる言葉である点が違いといえるでしょう。
例文としては、「たしかに、丁度いま私たちもたどりついたところだ」のように時間軸に対して用いたり、「まてまて、それは丁度の重さとはいえないだろう?すこし軽いんじゃないか?」のように、重さに対して使用することもできます。
さらに、「たなびく風がわたしの頬を掠める。それは丁度、あの時彼がそっと触れたあの瞬間のような心地よさを感じさせた」のように、「まるで」「さながら」といった比喩表現として用いられる場合もあります。
潮時の使い方・例文
ここからは、「潮時(しおどき)」の具体的な使い方を、例文を使うことでより詳しく解説をしています。「潮時(しおどき)」がもつ二つの意味を明確に使い分けていく例文や、使い方のポイントなどを踏まえてまとめています。
誤用となる使い方についても例文とともに記載しています。あやまった使い方にならないように注意しましょう。なお、一般的に知られていない慣用句などはありません。
例文①
「進退窮まった、今まさにこの時、私たちの行く手をを阻んでいた一つの壁が取り払われることになる。リーダーが一言”今が潮時だ”と高らかに宣言したことにより、私たちの道筋は確かに決定付けられたのである」
「潮時(しおどき)」を使った例文です。意味としては、立ち行かなくなった状況を打開する出来事が起きて、その状況を見たリーダーによって「今がチャンスだ」と言う意味で光明が開けたといった表現の例文です。
例文②
「夕焼けに染まる浜辺で、ザーザーと寄せては返すなみうちぎわの水音に、私の心はどこか遠くの海のまた向こうの未だ見ぬ見知らぬ土地へとその心の翼を羽ばたかせていたのです。時刻はすでに潮時を迎えていました。」
「潮時(しおどき)」での潮の満ち引きが変わる時刻を差した意味での例文となります。潮時を迎える時間は季節にもよりますが、概ね日が落ちる時間が潮時と言われる時間帯となります。
例文③
「遥か崖の向こうに見える砂煙が、モウモウと沸き起こる戦火の火種を如実に表現していた。不意に、ごうっと強い風が吹き、私の前髪を強く叩く。私は目に砂が入るのを防ぐべくその手を前にかざした。潮時だ」
迫り来る軍勢、沸き立つ砂煙、今まさに始まろうとする戦いの火蓋を見て、今こそその戦いを利用して武功を立てるためのチャンス到来であるという意味で「潮時(しおどき)」が使われている例文です。
例文④
「もうだめかもしれない。そう思った私はそっとノートパソコンを閉じた。これ以上ここに止まるのは悪いことしか産まない、だからこれ以上ここにはいられないのだ。もう潮時であると感じ、私はゆっくりと席を立った」
「潮時(しおどき)」の使い方としては誤用の典型を表した例文です。このように”今まさに止めなければならないタイミングである”という使い方は誤用です。こういった使い方をしてしまわないように注意しましょう。
潮時と引き際の違い
「潮時(しおどき)」と対比される言葉に「引き際(ひきぎわ)」という言葉があります。「潮時(しおどき)」という言葉が”なにかをはじめるにあたって最適なタイミング”を表す言葉なのに大して、「引き際(ひきぎわ)」は全く別の意味をもちます。
同じような意味で考えると誤用なので注意したいのですが、こうした対義語関係にある言葉を誤用して同じ意味であるかのように使う場面がみられます。間違った覚え方をしないように注意しましょう。
引き際は離れる間際という意味
「潮時(しおどき)」の対義語関係にある、「引き際」の意味には、”地位や仕事から離れる、またそのまぎわ”や、”なにかをやめるタイミング”という意味が定地されています。
今を逃せばもう後戻りできない所に立っている、引くにはもはや限界(際)だ、という語源から「引き際」という言葉として定着したと見られています。
例文としては、「これ以上はもう無理だ、引き際を逃すわけにはいかない」であったり、「恐るべきタイミングで引いたな。まさに引き際を知るというやつだ」といった使い方となります。
潮時を使う際の注意点
誤用で使わないことは前述しましたが、「潮時(しおどき)」には他にも注意しておきたい使い方があります。基本的にポジティブな意味での表現方法となりますので、ネガティブな場面においては使わない方が良い表現だと言えます。
動詞では使えない
「潮時(しおどき)」は名詞なので、動作として使用するのもまた誤用となります。例文での表現にもないように、「潮時する」というような使い方は間違いです。あくまでも名刺ですので、タイミングを推し量る言葉として活用しましょう。
潮時の語源
「潮時(しおどき)」の語源についてですが、潮時の本来の意味は、”潮が満ち引きする時刻”を表す言葉でした。この意味は現在も変わっていません。ですが、現在の新しい意味の語源となったのはどういったことからなのでしょうか。
その語源について、どういった段階を経て今の潮時と言う意味で使われるようになったのかについて、語源だけでなく由来や歴史についても言及し、より詳しい背景や語源について学んでおきましょう。
由来
「潮時(しおどき)」が意味する”潮が満ち引する時刻”の中でも、潮が最も満ちている満潮の時間帯にこそ漁に出る時間帯として適していることから、「潮時(しおどき)」が物事を始めるのに最も良いタイミング、という意味で使われるようになりました。
歴史
「潮時(しおどき)」という言葉の語源は、元々漁師の間で使われている言葉でした。潮の満ち引きの時間帯をしっかりと把握していなければ、生計が立てられなかった漁師にとって「潮時(しおどき)」はまさに命綱だったといえるでしょう。
いつどの時間帯であれば潮が引き、いつどの時間帯であれば潮が満ちるのか。経験則で導き出される漁をするためのタイミングはやがて「潮時(しおどき)」として、専門用語のように扱われて行きました。
そうした漁師達の言葉を語源とした潮時は、やがて一般の人たちに広がって行きました。あくまでも、語源は専門的な言葉だったのです。
潮時はチャンスという意味
とても思い違いをされやすい言葉である「潮時(しおどき)」ですが、間違って覚えられている”引き際”のような使い方ではないということがご理解いただけたのではないでしょうか?
「潮時(しおどき)」は決してネガティブなイメージの言葉ではなく、極めてポジティブな使い方をする言葉なので、誤用してしまわないように正しい意味で使いましょう。
漁師たちが使っていた専門用語を語源とする「潮時(しおどき)」。紆余曲折を経て誤用されつつもこれからのチャンス到来を表現し続けてくれることでしょう。