「今しばらく」の意味とは?
漢字とひらがなを組み合わせた、ビジネスシーンでも良く使われている「今しばらく」とは一体、どのくらいの時間を指すのでしょうか?「今しばらく」と言われると、「今」の数分なのか、「しばらく」の数日なのか理解に苦しむのが現状です。
こういった現象は、おそらく日本語特有のものではないでしょうか?何故ならば人間が用いる意思伝達手段である言語は、世界各国で違います。世界各国で言語は違っているものの、世界共通の公用語はご承知の通り英語です。英語は26種類のアルファベットが大文字・小文字に分かれています。
しかしながら、日本語は【漢字】【ひらがな】【カタカナ】と3種類もあります。加えて【漢字】には通称重箱読みの、【音読み】と【訓読み】があります。こうした言語の成り立ちから、日本語は世界でも他の言語との系統関係が不明で孤立した言語とも考えられています。
日本語は世界でもトップレベルの難しい言語です。例として日本語の【日】の読み方は、【たち】【にち】【び】【じつ】とまあ、前後の文章によって4通りもの読み方があります。その答えは【3月1日は日曜日で祝日でした】です。
この例題は日本人でしか読めない、外国人泣かせの極めつけの一文です。こうした文章がすらすら読める日本人ですら、「今しばらく」の意味を正確に説明できる人は何人いるでしょうか?
ニュアンス言語でもある日本語では、「今しばらく」の意味も人によって、あいまいになりがちです。そこで今回はあいまいな日本語である「今しばらく」の本質を追求しますので、コミュニケーション能力を高めるためにも、最後までお読みください。
「今しばらく」の対義語・類語
それでは「今しばらく」の対義語と類語から解説します。まずは「今しばらく」と意味の似通った、対義語と類語についてご承知頂いた方が、より「今しばらく」について納得していただけるかと思われますので、まずは対義語と類語から解説します。
何故ならば「今しばらく」の「暫く」は歌舞伎18番のひとつです。1697年(元禄10年)中村座の歌舞伎俳優が、悪人に向かって「暫く」と声をかけて現れ、悪人たちをこらしめるに至ったということから始まって今に至っています。
そうです、「今しばらく」の意味が難解なのは、「しばらく」が歌舞伎から来ているの言語であるのと、「今」が普通に使われている言語とのミックスだからです。臭いでも、いろいろな臭いが混ざると、得も言われぬ臭いとなるのと一緒で、その結果こうした解説をすることに至っています。
「今しばらく」の対義語
正直「今しばらく」の正確な対義語は不明です。何故ならば、「今しばらく」は、前項でご説明した通り、現代用語である「今」と歌舞伎用語である「暫く」がミックスになって出来た言語ですので、正確な対義語としては該当がありません。
「今しばらく」の対義語として近いものがあるとすれば、「今しがた」が該当します。「今しがた」は、【たったいま】【今ちょうど】となります。「今しがた」の「し」は強調する助詞で、「今しがた」も昔の言語から来ています。
「今しがたまでおめえの来るのを待っていたはな」と昔の浮世風呂(文化6年「1809年」から文化10年「1813年」にかけて刊行された、式亭三馬が書いた滑稽本)に出ていますので、こちらがかなり「今しばらく」に近い対義語となります。
「今しばらく」の類語
「今しばらく」の類語としては、【しばし】や【当分の間】【少しのあいだ】【暫時】となります。【しばし・暫し】の類語の意味は、すこしの間・ちょっとの間にです。【当分の間】の類語の意味はは、しばらくの間・さしあたりです。
【少しのあいだ】の類語の意味は、わずか・いささか・ちょっとになります。【暫時】の類語の意味は「今しばらく」とほぼ同じ意味となります。
これだけ複雑な類語の意味を持つ日本語を、前後の文章から理解できる日本人は、さすがにノーベル賞受賞者をたくさん出した国だけあって、世界でもトップレベルの水準を持つ先進国ですので、対義語や類語の多い日本語を持つことを誇りに思いましょう。
「今しばらく」の使い方・例文
それでは次に、「今しばらく」の意味を含んだビジネスシーンでの使い方を、例文を用いて解説します。「今しばらく」とは、古式ゆかしき日本語ですので、ビジネスシーンでの使い方を例文を参考にマスターすると、相手とのコミュニケーションにも役立ちますので、おすすめです。
あいまいな日本語は、ことばひとつ間違えただけで、相手の機嫌をそこねるどころか、怒りをかってしまいます。大切なビジネスシーンにおいて、相手を怒らせてしまうことは絶対のタブーです。
このことから「今しばらく」の使い方には気を付けましょう。それでは次に後述している「今しばらく」の例文を参考にして下さい。
例文①
それでは「今しばらく」の使い方を、ビジネスシーンにおいての例題でご紹介します。【大変お待たせして、誠に申し訳ございません。順番になりましたら、および致しますので、「今しばらく」お待ちください。】
ビジネスシーンにおいて、相手を待たせるということは失礼なことにも通じます。このことから、大切な取引先の方をお待たせする時には、それほど長時間待たなくても良いと思わせる「今しばらく」の使い方を例文を参考にマスターしましょう。
例文②
続いて、「今しばらく」の使い方を、ビジネスシーンにおいての例題でご紹介します。【恐れ入りますが、ただいま担当者を呼び出してまいりますので、「今しばらく」お待ちください。】
となります。ビジネスシーンにおいて、大切な相手に対して失礼がないように言葉を選ぶのは大切です。特に取引先や訪問者に対して、待たせるときは、「今しばらく」の使い方をマスターすることによって、トラブル回避にもつながりますので、この例文を参考にしましょう。
例文③
引き続き、「今しばらく」の使い方を、ビジネスシーンにおいての例題で、ご紹介します。【社内伝達が潤滑でないことをお詫び申し上げます。それではすぐにご準備いたしますので、「今しばらく」お待ちください。】
と、ビジネスシーンにおいての「今しばらく」の使い方は、あくまでも相手を敬うかたちで用いる事がベストですので、この例文を参考にして下さい。
例文④
例題の最後になりますが、「今しばらく」の使い方をビジネスシーンにおいて、上手に用いましょう。最後の例題は、【大変失礼いたしました。それでは上のものを呼び出しますので、「今しばらく」お待ちください。】となります。
今すぐには対処できないことをふまえて、かつ相手をそれほど待たせないという「礼儀」を持つ言葉である「今しばらく」の使い方を、例文を参考にして覚えましょう。
「今しばらく」と「もう少々」の違い
ビジネスシーンにおいてよく使われる「今しばらく」と「もう少々」とは、どのような違いがあるのでしょうか?何かトラブルがあった際など、「今しばらく」と「もう少々」は、相手を怒らせないようにするときに、よく使われる言葉です。どのような違いがあるのか、言葉の持つ本質にせまります。
日本語は、話し言葉や書き言葉において、前後の文章によって、言葉を選びます。つまりは、そのときのシチュエーションで、言葉を使い分けしています。言葉を使い分けすることによって、相手の怒りを静めたり、相手の矛先をゆるめたりしますので、言葉を選ぶことは重要です。
「もう少々」は「あともう少し」という意味
「もう少々」は、【「今しばらく」お待ちください】で、相手を待たせていたとき、相手がしびれをきらして、【まだですか?】と催促があった場合、追加の言葉として【大変申し訳ございません。「もう少々お待ちください」】という使い方をします。
このことから、「もう少々」は、すでに時間がたったのに、また時間を追加するという意味で使います。この意味をマスターすれば、相手に対して失礼が無い、クッション言葉になります。
「今しばらく」を使う際の注意点
お待たせしている相手に失礼がない、クッション言葉である「今しばらく」ですが、会話の前後の内容によっては、「今しばらく」が使えない時があります。そこがあいまいな日本語での使い分けのむつかしいとことです。
しかしながら、「今しばらく」を使う時に注意するべきことを、理解しておけば、考慮できますので、「今しばらく」を使う時の注意点を次に後述します。
「1分1秒を争うとき」では使えない
ビジネスシーンにおいては、様々なシチュエーションがあります。何かトラブルがあって、「1分1秒を争うようなとき」は実際におこります。
得意先が下請けに荷物を回収に来て、今しもすぐに荷物を積んで出発しないと、取引先が閉まってしまう、そんなときに限って、下請け業者がミスをして追加の荷物を持ってくるときに、「今しばらくお待ちください」とは間違っても言えません。
おそらく得意先は激怒するでしょう。言葉というものは、とにかくそのシチュエーションにふさわしい言葉を選ばなないと、人間関係に支障がきますので、「今しばらく」は、「1分1秒を争うとき」には使えません。
「今しばらく」の由来・歴史
「今しばらく」という言葉は、普通に使っていますが、いったいいつ頃から使い始めたことばでしょうか?また、「今」と「しばらく」というまったく逆の意味を持つ言葉を合わせた言葉は、どこから由来されてきたのでしょうか?このことをふまえて次に後述していますので、参考にして下さい。
由来
それでは「今しばらく」の由来から解説します。「今しばらく」の「今」は、過去でも未来でもなく、【現在】の「今」を表します。「今しばらく」の「しばらく」とは、前項の「今しばらくの対義語・類語」で解説した、歌舞伎十八番のひとつから由来されています。
このことから「しばらく」は、少しの間、しばし、当分の間の意味となります。このふたつの由来を合わせることによって、「今しばらく」は【今現在から、しばらくの間】を短くした言葉になります。
歴史
「今しばらく」の歴史は、現代からさかのぼること323年、元禄時代から始まりました。元禄時代は徳川綱吉を将軍とした江戸幕府の時代です。そのころ有名な松尾芭蕉が奥の細道への旅に出ていた時代です。
正確には「しばらく」という言葉が使われていた時代ということになりますが、とはいえ、この現代に323年前の人は誰一人生きていませんが、言葉は人伝えで現代まで残ってっています。非常に歴史のある言葉です。
「今しばらく」の英語表記
歴史ある言葉である「今しばらく」は英語表記できるのでしょうか?そもそも、そんな相反する意味を持つ英語など存在するのでしょうか?でも言葉は人間がつくったものですので、それが日本語であろうと、英語であろうと、意味は近いものが見つかります。
このことから「今しばらく」の英語表記は、【For a while now】となります。ネイティブスピーカーでも、命令形の英語で話すと、【もっとていねいに話して】と怒りますので、英語でも日本語でも、相手に失礼に無いようにするには、「今しばらく」を英語で表現出来ても、言葉は慎重に選びましょう。
外資系企業が参入している日本では、英語でのビジネスシーンも増えてきました。このことから、日本語で便利な「今しばらく」の英語表記を覚えましょう。
「今しばらく」の漢字
それではいよいよ、最後の章になりました。最後の章は、「今しばらく」の漢字表記です。「今しばらく」を一般的には、漢字では表しません。何故ならば「しばらく」の漢字が難しいからです。
「しばらく」の漢字は「暫く」ですが、この現代ではおそらく誰も使わないでしょうが、「暫く」が生まれた元禄時代には、漢字は今よりもたくさん使われていました。そのころには、カタカナ語はありませんでしたので、昔の人は漢字をたくさん使って、たくさん読めた人がいたという証拠になります。
「今しばらく」は「あまりお待たせしませんので」という意味
「今しばらく」の意味と正しい使い方の解説は、以上になりますが、如何でしたでしょうか。日本語の難しさと面白さを、ご理解頂けましたでしょうか。英語圏では言葉だけでは足らないので、身振り手振りや、表情などで相手とのコミュニケーションを図ります。
しかしながら、日本語は、その必要がないとは言いませんが、言葉だけでも十分に相手に対する配慮ができる言葉です。そのせいか外国人からは、日本人は表情が乏しいと言われているのが一般的ですが、日本に住んでいて、日本人が相手でしたら、日本語を上手に話せたら良いのです。
このことから、コミュニケーション能力を身につける一環として、「今しばらく」に限らず、日本語を正しく理解し、また使い方も覚えましょう。