呈するの意味とは?
「呈する」とは「ていする」と読み、差し出す、差し上げるという意味となります。またはある状態を表す、示すという意味もあります。差し出す、差し上げるという意味で使われるものには、「進呈する」というのがあります。
一冊の本を進呈するといえば、その本を差し上げるという意味となります。「苦言を呈する」という場合には言われた相手は良く思わない言葉ですが、その相手のためを思ってあえてアドバイスをするといった意味となります。
ある状態を表す時に使われる「呈する」とは、例えば「活況を呈する」のように活気があり、賑わっている状態を表します。このように「呈する」とは人に差し上げたり、状態を表す時に使われる言葉です。
呈するの類語
「呈する」という言葉は普段の話し言葉では使われないので、聞いたことがないという方もいるかもしれません。ご存知の方でも言葉の意味をはっきりと把握している方は少ないのではないでしょうか。
「呈する」の言葉を良く理解するにはほかの言葉に置き換えるのも一つの手です。普段使っている言葉で同じ意味を持つ言葉に置き換えてみると、その言葉の意味がはっきりとしてくるものです。
そこで、「呈する」の類語を考えてみましょう。「呈する」の類語には「提供する」「示す」「表す」「顕す」「現す」などがあります。
呈するの類語・提供するの意味
「提供する」には金品や技能を差し出すという意味があります。「呈する」にも差し出すという意味があるので、「提供する」は「呈する」とほぼ同じ意味となります。
ただし、「提供する」には、相手のために差し出すという意味が強くなります。対して「呈する」には「相手のために」というニュアンスは必ずしも含まれているとは限りません。
呈するの類語・示すの意味
「呈する」の類語には「示す」という言葉があります。「呈する」にはもともと「示す」という意味があるので、「示す」は同義語と言えるでしょう。しかし、「呈する」には「相手に差し出す」という意味があるのに対して、「示す」は「見せる」という意味合いが強くなります。
呈するの類語・あらわすの意味
「呈する」の言葉の意味に「あらわす」という意味が含まれています。「表す」には「感情や思っていることを相手に示す」、または「ある特定の意味を示す」という意味があります。また、同じ「あらわす」でも「顕す」の方は「広く世間に知らせる」という意味となります。
「現す」は「姿を現す」というように今まで見えていなかった物や姿、様子などが見えるようにするという意味となります。どちらの「あらわす」も「呈する」の類語となります。
呈するの使い方・例文
実際に「呈する」を使った例文で使い方をマスターしましょう。いろいろな角度から「呈する」の例文を作成しました。
「呈する」という言葉だけではわからない意味や使い方が例文を見ることではっきりするでしょう。ぜひあらゆるシチュエーションで「呈する」を活用してみましょう。
例文①
差し上げるという意味での「呈する」の使い方をみてみましょう。お世話になった方や目上の方に対する使い方です。例文としては「日頃お世話になっているお客様に我が社の製品を呈した」「記念式典の出席者に我が書を呈した」という使い方です。
例文②
「苦言を呈する」という使い方が「呈する」の中では最もポピュラーな使い方ではないでしょうか。「呈する」が広く一般に広まった使い方と言えるでしょう。苦言とは文字通り、相手にとって苦い言葉という意味です。
聞きたくない言葉、忠告をあえて本人に良かれと思って言う言葉となります。例文を示すと「あまり苦言を呈してばかりいると若い人に嫌われそうだ」「上司から苦言を呈されて初めて自分の過ちに気付いた」といった使い方をします。
例文③
「呈する」にはある状態を表す時にも使われることから、「活況を呈する」という使い方もあります。「このところ低迷していた株式市場も新政策を好感して活況を呈してきた」「新しくできた海外ブランドの店は活況を呈している」という使い方ができます。
例文④
「呈する」にはある様子をあらわす意味との言葉としても使われます。例文をあげれば「嵐は街の至る所に爪痕を残し、異様な様相を呈している」「若い女性が集まると花が咲いたような賑わいを呈する」となります。このように「呈する」には幅広い使い方や意味があります。
呈すると挺するの違い
「呈する」と同じ読み方をする言葉に「挺する」と言う言葉がありますが、「呈する」と意味の違いはあるのでしょうか。実は「挺する」とは、「身を挺して救う」というように、自分の体や場合によっては生命さえも差し出して、人を助けるという意味を持ちます。
「呈する」が言葉や贈り物などを差し出すという意味であるので、大きな違いがあります。「挺する」の元々の意味は「ずば抜けている」や「進み出る」という意味があります。
自ら進み出て、自分の身を投げ出して救い出すというのが「挺する」の意味なのです。「呈する」と同じように考える人も多いようですが、その言葉の意味には大きな違いがあります。
物を差し上げるという意味の「呈する」と身を投げ出していわば命を差し出すという意味の「挺する」という言葉は同じ読み方でも全く違いのあるものです。
挺するは身を挺するという意味
「挺する」は「身を挺する」という使い方をします。「みをていする」と読み、その意味は自分の身を投げ出すという意味で、自分を犠牲にする覚悟で物事を行うことです。
「挺身」からきた言葉で、「身を挺して海から溺れる子供を救った」というように使います。「挺する」とは進んで差し出す、我が身を顧みず人を救い出すという意味となります。
呈するを使う際の注意点
「呈する」は差し出す、たてまつるという意味も含まれていることから、それ自体は目上の人に対して使っても何も失礼ではありあません。例えば「贈呈」「謹呈」などの意味で使う場合もあります。
また、様相を呈するという時には、あるものの状態を指すことから話す相手が目上でも特に差し支えありません。しかし、「苦言を呈する」という時はどうでしょうか。目上の人に対していうべき言葉でしょうか。
苦言を呈するとは忠告とも言い、相手のことを思い、あえて悪しきところを正す意味で行います。普通は目上から目下のものへ、上司から部下へと行うものですが、上司に苦言を呈するためには注意が必要です。
目上に「苦言を呈する」は使えない
そもそも「呈する」は、相手に尊敬の意を表す敬語ではありません。あくまでも相手の方に差し上げるという事実を述べているのに過ぎません。ですが、基本的には「呈する」を目上の人に使っても特に失礼ということはありません。
しかし、「苦言を呈する」となると目上の人に使う時にはより丁寧な言葉を必要があります。いかに目上の人に落ち度があった場合でも直接「苦言を呈します」といえば角が立ちます。
「苦言を呈させていただきます」でも同じことです。同じ職場の上司ならなおさら後のことを考えて、「〇〇について進言いたします」としたらいかがでしょうか。意見としてなら上司も聞く耳を立ててくれるのではないでしょうか。
苦言を呈するの意味とは
「苦言を呈する」の「苦」を分解すると、くさかんむりに「古」と書きます。その意味はくさかんむりは並び生えた草を表しますが、「古」は固い兜を表すとされています。
食べても固くて苦い草という意味から転じて「苦しい」という意味となり、さらに「悪い」「無理がある」「難しい」と発展していったようです。また、「言」には人が発した言葉という意味もありますが、「本人の言を信じる」という意味もあります。
そこで、「苦言」とは悪い言葉とも捉えられますが、「言われる人にとっては気分が悪いが、その人のためにあえていうべき言葉」または「その人には耳障りな言葉でも改心してもらうために言って態度を直してもらう言葉」という意味になります。
ですが、それは単なる悪口ではなく、その人を伸ばしてあげようとする愛情が含まれていなければなりません。
呈するの英語表記
「呈する」の「贈る」という意味の部分を英語で表記すると「present」または「offer」となります。また、「示す」という意味の「呈する」を英語で表せば「show」の単語がそれにあたります。
「進呈する」は「to give something」と書き表します。「恐るべき様相を呈する」は「present a formidable appearance」と書き表します。
呈するは差し上げるという意味
「呈する」とは差し出す、差し上げるという意味となります。「進呈」「贈呈」などのように物を差し上げるという意味の言葉です。
また、ある状態を表すことという意味も含まれています。あまり話し言葉では使われず、どちらかというと文章で使われることが多い言葉ですが、覚えておくと便利です。また、「挺する」との違いもしっかりと覚えておきましょう。