「抱負」の意味
「抱負(ほうふ)」という言葉は「新年にあたって抱負を述べる」または新入社員に上司が「人生の門出にあたっての抱負を語りなさい」などとよく使われます。
「抱負を述べる」とは、未来に向かって「これからの目標や希望を述べる」ことと解釈している人が多いのではないでしょうか。
「目標や希望」はポジティブな意味を持つ明るい表現です。それなのに「抱負」という言葉には「負」というネガティブな暗いイメージを持つ漢字が使われているのは何故でしょう。
「負」という漢字は「負ける」「負債(ふさい)」「背負う」「責任を負う」のように使われるので、どうしてもネガティブなイメージを持ってしまいます。
しかし実際には、「責任を負う」の「負う」には「責務をはたす」「重責をこなす」のように確固とした信念にもとづく意志で行動する、というポジティブな意味があります。
したがって、ポジティブな意味の「負」と「抱」という2文字を組み合わせた「抱負」という言葉はネガティブではなく、ポジティブな意味を持つ前向きな言葉なのです。
「抱負」の正しい意味を知っておけば、仕事の中でも必ず役に立ちます。また新年会や新入社員歓迎会などで、抱負を聞かれた時にも慌てずにしっかりと述べることができるようになります。是非これからの記事を参考にしてください。
意味①心の中に思っている計画
「抱負」は「心の中に思っている考えや計画」という意味があります。ではその意味がどこから引き出されるのか由来をひも解いてみましょう。
抱負の「抱」という漢字は「手」へんに「包(つつむ)」と書き、「だく」「いだく」「かかえる」という意味で、物理的には「物をかかえる」精神的には「心にいだく」という意味になります。
「負」という字には、マイナスイメージの熟語「負債」「負担」があるように「背負うもの」という意味があります。いっぽうプラスのイメージでは「自負」「誇負」のように「後ろだてなる」「頼りになるもの」という意味があります。
「後ろだてなる」ものには、物理的には「お金や権力」、精神的には心の支えになるもの、つまり「考えや目標」目標をかなえるための「計画」があります。
「抱負」は明るいポジティブな言葉なので「抱」と「負」の精神的でプラスイメージの部分を合わせると「心の中に抱いている考えや計画」という意味になります。
意味②心に抱く決意
「抱負」の意味にはもう1つ「心に抱く決意」があります。「決意」とは「自分の意志をはっきりと決める」という意味です。
つまり「抱負」とは「自分の志すものに向かう、心の中で決めたはっきりとした意志」という意味になります。
また「抱負を述べる」には「心の中に抱いている考えや計画を話す」と「心の中で決めた意志や決意を語る」という2通りの意味と場面があります。
このように「抱負」という言葉は「負」という字を使っていますが、本来の正しい意味は、心の中に抱く前向きでポジティブな意志や決意を周りに表明することです。
「抱負」の類語
類語とは同じような意味を持っていたり、同じような使い方をする言葉のことで「同義語」や「類義語」とも言います。
類語は「抱負」と似かよった意味を持っていますが、使い方やニュアンスには微妙な違いがあります。この微妙な違いを検証することで「抱負」という言葉の本来の意味や特徴をさらに深く知ることができます。
「抱負」の類語はいろいろありますが、その中の主なものをこれから紹介します。ぜひ意味を解釈する参考にしてください。
志す
「志す」とは「何らかの目標に向かって心の中で決意する」という意味です。たとえば「医者を志して今勉強に励んでいます」「トップアスリートを志すとは練習を重ねる決心をすること」のような使い方をします。
このように目指す目標がはっきりしている時に使う言葉で、「抱負」と同じように何かに向かって前向きに進むポジティブな意味で使うことが多く、目標を達成したいという強い意志が感じられる言葉です。
思い立つ
「思い立つ」という類語は「健康のためと思い立ってジョギングを始めた」「今の仕事のためには英語が必要と思い立って英会話スクールに通っています」の例文のように、何かをするために心が動くことを「思い立つ」と言います。
つまり「思い立つ」とは、「ジョギングをする」「英語を習う」などの行動を起こすためのキッカケになる心の感情のことで、「志す」ほど目標が高くない場合にも使われ、意志の強さや決意の固さは少し柔らかいようです。
立志
「立志(りっし)」とは「志を立てる」という意味で「志す」とほぼ同じですが、使い方は少し違います。「医者を志す」とは言いますが「医者を立志する」とは言いません。
たとえば「彼が成しとげた偉業の数々は、立志伝のなかに書かれている」の「立志伝」は、志や夢を叶えるための過程を伝える伝記という意味です。
つまり「立志」とは「志す」という直接的な感情というよりも「志に至るまでの心の過程」「目標や夢に向かう心の道のり」というニュアンスの言葉です。
大志
「Boys, be ambitious(少年よ大志を抱け)」という北海道大学の基盤を作ったクラーク博士の名言にあるように「大志」は「大きな志」という意味です。
「大志を抱く」には実現可能かどうかは分からないけれど、大きな志を持つことは大きな原動力を生みだすという意味合いを持っています。
「将来は総理大臣になるという大志を持つ」「世界一の富豪になってみせると大志を抱く」なども行動を起こす原動力になる「大志」のひとつです。
しかしこの場合の「大志」は「物欲的な大きな志」で「抱負」の心に抱く決意とは少し的が外れてしまうかも知れません。
また「大志」には「私欲を求めることなく誰に対しても心優しい気持ちを持つ」「人を許せる大らかな心を持つ」のように精神的に大きな心を持つという意味があります。
この精神的な「大志」は、まさに前述のクラーク博士が少年達に伝えたかったことで、本来の「抱負」の意味に近い類語と言えるのではないでしょうか。
意欲
「意欲」という類語は「積極的に物事をしようとする気持ち」という意味で、心に描く抱負や目標を実現するために必要な前向きの気持ちです。
たとえば「今回のプロジェクトは、仕事に意欲を持ってあたらなければ成功しない」「仕事を成功に導くのは、仕事に意欲を持つことだ」の例文のように、「意欲」という言葉には強い意志が感じられます。
しかし「意欲」という言葉には「欲」という字が当てられているように、意欲の使い方や方向を間違えると「儲けることに意欲を燃やす」「出世のために意欲を燃やす」などのように、本来の「抱負」とは少し違うニュアンスになってしまいます。
「抱負」の使い方
ここまでは抱負の意味や類語を解説してきました。ここでは抱負を語る場面や抱負という言葉の使い方、おすすめのポイントなどを紹介していきます。
抱負とは「新年の抱負」のように年頭でその年の目標や計画を発表する場面や、新入社員として入社した時に「社会人1年目の抱負」などのように、何らかの節目の場面で、自分の描いている希望や志、目標や計画を発表することです。
人生の中で節目は何度もあります。高校や大学に入学した時、卒業した時、会社にはじめて入社した時、会社の仕事ではじめてプロジェクトを任された時、結婚をした時、子供を持って親になった時、社会人として仕事ぶりを振り返った時。
個人差はあるとしても、このように人生の中で「抱負」を話す機会は沢山あります。その場面により抱負の内容や言葉の使い方が変ってくるのは当然ですが、基本的にはその節目ごとに抱負を持つことに人生の意義があるのです。
言い換えれば、人は節目ごとに抱負を考えることで、次の人生を踏み出す原動力を作り出しています。「抱負」とは節目ごとに振り返って、次の未来に向かう人生の歩み方を考える行動のことです。良い仕事をするためにも大切なことです。
1年の決意を発表する意味で使用
年の初めの新年会などで、今年1年の抱負を話すことはよく見られる光景です。では何故このような風習があるのでしょう。
抱負とは節目の折に、今後の決意や目標などを発表することです。今後の決意や目標を決めるには、それまでの自分を振り返えらなければ次の目標は決められません。
しかし人は何らかのキッカケがなければなかなか過去を振り返ることはしません。年の初めというのは去年1年のけじめがついて新たな気持ちになる時です。
過去を振り返って今年1年の目標や計画を考えるには新年は非常に良いキッカケになります。ですから多くの人は年頭に抱負を考えるのです。この慣習は人生において非常に意義があることです。
少なくとも1年に1度は過去を振り返って、反省をしたり次に人生をどう歩んでいくかを考える機会になるので、ぜひこの慣習はなくさないで続けることをおすすめします。
「抱負」のおすすめの例文
抱負を使った例文を読むことは、抱負の意味や使い方を知る非常に有効な方法です。また自分で例文を書いてみるのも使い方を知るのに大いに役に立つおすすめです。
新年会や忘年会、新入社員歓迎会などで「抱負を述べてください」と言われても緊張したり慌てないで済みます。
これからおすすめの例文を紹介しますので、自分で考えたものと照らし合わせながら参考にしてください。
先手必勝で仕事には臨む
具体的に抱負を述べる時におすすめの言葉は四字熟語です。特に文章にして書く時には意味や決意のほどが伝わりやすく有効な使い方です。
たとえば抱負を伝える四字熟語には「先手必勝」「有言実行(ゆうげんじっこう)」「二人三脚」「創意工夫」「切磋琢磨(せっさたくま)」「七転八起(ななころびやおき)」などがあります。
四字熟語を使った例文では「今回のプレゼンの抱負はライバルに勝つために先手必勝の心意気で臨みます」「今年の抱負は有言実行を目標に仕事をします」のような使い方をすることで決意の固さが伝わります。
コミュニケーションを大切にして仕事をやり遂げたい時、おすすめの熟語を使った例文では「今回のプロジェクトの抱負は、チーム全体で切磋琢磨して二人三脚の精神で仕事を成し遂げることです」のように表現します。
失敗しても諦めないという気持ちを表明したい場合のおすすめは「七転八起」で、例文では「これまでの失敗の経験を生かして抱負を述べるならば、つねに七転八起の気持ちで仕事に打ち込むつもりです」のような使い方をします。
これらの例文では、あえて「抱負」という言葉を文章の中に入れましたが、抱負という言葉を使わなくても四字熟語を上手く使えば充分抱負を伝える例文になります。四字熟語は意志を表現する場合におすすめの言葉です。
時間を大切にする
四字熟語を使わないで抱負を表現する言葉の使い方は、仕事や携わっていることに直接関連する言葉を使って表現するのがおすすめです。
たとえば「納期」「時間」「意識」「大切」など、ありふれた言葉ですが直接業務に関わる言葉だと、相手に意志が伝わりやすいので、この表現方法もおすすめです。
例文でいえば「昨年は納期の遅れでクライアントに迷惑を随分かけたので、本年の抱負としては仕事の効率化を図り時間を大切にしたいと思います」のように表明します。
または「本年の抱負は、時間の大切さをつねに意識して、効率的に仕事を運ぶよう心がける所存です」のように決意を表します。
このように取引先や相手に迷惑をかけた事柄を反省して、その事柄に関連した「納期」や「時間」などの言葉を「抱負」のなかで使うことで、分かりやすく意志や決意を表現することが出来るので、これもおすすめの方法です。
「抱負」と目標の違い
似たような意味を持つ類語にも微妙に違いがあることは「類語」のところで紹介しました。「抱負」とは「心の中に思っている目標や決意」という意味があることも紹介しました。
「抱負」の意味の中にある「目標」という言葉も同じような意味を持った類語ですが、「抱負」と「目標」には意味に違いがあるのでしょうか。あるとすればどのような点なのでしょう。
目標との違いは意志の強さ
では例文で比べてみましょう。「今年の目標は英会話をマスターすること」この例文の「目標」のところに「抱負」を入れ換えてみても全く違和感がなく違いが見つかりません。
では例文を変えてみます。「新しいテレビを買うのに20万円貯めるのを目標にしています」を「新しいテレビを買うのに20万円貯めるのを抱負にしています」にすると何か意味に違和感があります。
意味が全く同じならば言葉を入れ換えても違和感はないはずです。「目標」の場合には「20万円を貯める」という具体的な目的で、そこに精神的な固い決意や意志は感じられません。
「抱負」は、心の中に意志や決意がある場合に使う言葉なので違和感が出てしまうのです。それでは前の例文「英会話をマスターする」では違和感がでないのは何故?と思う方もいるでしょう。
それは表面的な言葉は同じでも、目標の場合の「英会話をマスターする」はマスターすることが目的で、抱負の場合は「英会話をマスターする」という意志や決意を表現しています。
つまり「抱負」と「目標」の違いは、目標とするものに精神的な意志や決意があるかどうかの違いです。意志の強さに決定的な違いがあります。
「抱負」の英語表現
「抱負」を英語ではどのように表現するのでしょう。英語で「抱負」を表現する言葉は、日本語でも類語が多いのと同様に、英語にもたくさんあります。
たとえば単語では「resolution(抱負、決意)」「ambition(大志)」「pretension(主張)」「hope(希望)」「plan(計画)」「goal(ゴール)」「aspiration(熱望)」などがありますが、それぞれで微妙に意味や使う場面が違います。
少しあらたまった場面では「resolution(抱負、決意)」「ambition(大志)」「pretension(主張)」などが使われ、軽い表現には「hope(希望)」や「plan(計画)」「goal(ゴール)」があります。
また「ambition」は前に紹介したクラーク博士の名言の中に出てくるように、情熱のこもった表現で「aspiration」は強い希望を表す言葉です。逆に「plan」や「goal」は冷静に話す時の使い方です。
このように英語で「抱負」を表現する場合は、その場面や話す相手によって使う単語や言い回しが変ってきます。それでは例文を使って抱負の英語表現を紹介します。
新年の抱負を意味する表現
新年のあらたまった席で抱負を表現する場合の英語でおすすめの例文を、まず単語「resolution(抱負、決意)」を使った場合で紹介しましょう。
「新年の抱負はなんですか?」と聞く場合は「What's your new year's resolution?」「Do you have a new year’s resolution?」のように表現します。
質問に答えて抱負を英語表現する場合は「My resolution is to 〜」を使い「to 〜」のところに抱いている目標や希望をいれます。
たとえばフランス語を上手くなりたいなら「to improve my French」のような動詞「improve(上達する)」を使います。この他にも英語の動詞には「study(学ぶ)」「learn(学習する)」「make(作る、行う)」などがあります。
また「resolution」の替わりに「ambition(志し)」や「pretension(主張)」などを使っても良いでしょう。
相手が友達や仲間などの場合には「plan」や「hope」を使えば、堅苦しくないフランクな感じの英語になります。このように色々と単語を入れ換えて試してみることをおすすめします。
強い意思のある願望を意味する英語
抱負の英語表現で、絶対にやるという強い意志や強い願望を表現する場合は「be goinng to 〜」という助動詞を使い、漠然とした希望の場合は「will」を使います。
「be goinng to 〜」は心の中ですでに決めていることについて使う言葉で、「抱負」の中で使えば、すでに心に決めている強い意志や願望を表します。
「My resolution is that I'm goinng to master English(私の抱負は徹底的に英語をマスターすることです)」「My ambiyion is that I'm goinng to get a national qualification of programmer.(私はプログラマーの国家試験を取ることを志しています)」
また「will」を使った場合は「My resolution is that I will be on a diet.(私の抱負はダイエットをすることです)」のように、強い意志というより少し柔らかな願望の英語表現になります。
このように英語では、おなじ抱負でも強い決意を表現する場合や、少し柔らかい「希望(hope)」や「計画(plan)」に近い表現など、助動詞の使い方や言い回しで様々な「抱負」の表し方があることが理解できたのではないでしょうか。
「抱負」は心に抱く決意を意味する言葉
「抱負」新年などの節目の時によく話す言葉で、心に抱く目標や計画、決意などを表明することです。ここまで「抱負」の意味や類語、使い方や例文、英語表現の仕方などを紹介してきました。
また仕事や人生の節目で、抱負を考えることの意義や大切さも解説してきました。これらのことを参考にして、ビジネスシーンの仕事の中に活かし、豊かな人生に役立てれば幸いです。