「承前」の意味とは?
「承前」という言葉の意味をご存知ですか?「SNSで見た事がある」「はじめてお目にかかる」など、「承前」に対する反応は様々です。
「承前」は、「しょうぜん」と読みます。確かに上記のようにツイッターなどで頻繁に目にする言葉で、「何?」と疑問に感じてしまう方も散見されます。
「承前」とは、「前の文を引継ぐ」という意味です。このような意味なので、字数制限などのショートメールやツイッターなどの世界で使われることが多いのです。
今回はそんな「承前」について徹底紹介。「承前」の対義語と類語、使い方、「承前啓後」と「温故知新」の違い、注意点、由来・歴史、英語表記、について順に紹介していき、「承前」をマスターできるよう特集していきます。
「承前」の対義語・類義語
まずは「承前」の対義語・類語から。一体「承前」という言葉にはどんな対義語・類語が存在しているのでしょうか?
「承前」はその意味から、活字の世界、いわば「書き言葉」として知られている言葉です。会話などの話し言葉ではほとんど使うことはありません。
そんな特徴がある「承前」の対義語・類語を知ることは、「承前」の意味づけをより明確にするきっかけとなります。以下から「承前」の対義語・類語を紹介していきます。
「あとで述べる」意味
まずは「承前」の対義語から紹介していきます。対義語は「後述」です。「後述」は「あとで述べること」を意味する言葉です。
対義語「後述」は前段で、「具体的な内容は後述しますが」などのように使われます。つまり、文の前段で後段の内容に触れる必要がある場合、現段階では具体的には触れず、さわりだけ触れる際に「後述する」という表現になるわけです。
「先に述べたつづき」意味
次は「承前」の類語ですが「先述からのつづき」が当てはまります。類語「先述からのつづき」は「先に述べたつづき」という意味です。
類語「先述からのつづき」という表現は、「先述」と「つづき」を「から」でつなげた表現です。「承前」はこの文節をたった2字で表現することができるため、とても利便性があります。
「承前」の使い方・例文
では先述したように活字やSNSなどの世界でよく見かける「承前」は実生活でどのように使うことができるのでしょうか?実際の「承前」の例文を下記にケース別でご紹介しますので、その使い方をご参考いただければ幸いです。
例文①
「承前」の使い方の1つの例文として、SNSなどがあげられます。字数制限などがあるツイッターなどで「承前」が使われています。
「今日は手術の日。朝から緊張しております。(中略)といろいろありました」ここで字数制限。再度ツイッターで「(承前)この日は自分にとって大切な日であるため、これからも元気を発信していけるように〜」などの使い方で「承前」が用いられます。
例文②
「承前」の使い方の1つの例文として、ブログなどのような、いわば「インターネットの日記形式」などで「承前」が使われています。
「(承前)相手を思いやる行為②」などのタイトルなどの使い方で「承前」が用いられます。「②」は「承前」を補完する働きをしており「つづきもの」の内容なんだなとぱっと見で解釈することができます。
例文③
「承前」の使い方の1つの例文として、学問のレクチャーがあげられます。前の文を受ける品詞の説明などで「承前」が使われています。
「承前代名詞とは三人称代名詞とも呼ばれています」このように英語などの「学問」の世界で、「承前」が用いられます。
例文④
「承前」の使い方の1つの例文として、ビジネスシーンなどがあげられます。得意先などに送るメールが長くな理すぎる場合に「承前」が使われます。
「〜という商品になります」ここで長くなる為、一旦メールを送信し、再度メールで「(承前)続きまして、弊社の業務内容についてご説明いたします。」
このように、メール内容が長文になるため、相手方の文章の抵抗感をなくしたり、読みやすくすることを目的として、1つのメール内容を分けて送信する際「承前」が用いられます。
「承前啓後」と「温故知新」の違い
次に四字熟語「承前啓後」と「温故知新」との違いについて紹介していきます。両者の四字熟語はとても似ている意味をもっておりどちらを使えば良いか迷う場合もあります。
では上記の両者にどんな違いがあるのかを、以下「承前啓後」「温故知新」それぞれの意味をそれぞれ比較していきながらその違いを説明していきます。
「温故知新」は「昔のことを参考にして新しい知識を得る」の意味
「温故知新」は「ふるきをたずね、あたらしきをしる」ということわざでも有名な言葉で、「昔のことを調べて新たな知識を得ること」を意味する言葉です。対して「承前啓後」は「古いものを受け継いで未来を切り開くこと」を意味しています。
上記を比べてみると「温故知新」に比べて、「承前啓後」は「昔の知識を受け継いでいる」ことから、伝統や文化を受け継ぐといった言葉のニュアンスが強い言葉です。
「温故知新」は「今は知らないが、古い知識からヒントを得る」という意味も有しており、「受け継がれている」ニュアンスは「承前啓後」に比べ弱いので注意が必要です。
「承前」を使う際の注意点
実際に「承前」を使う上で気をつけなければならない点はどこにあるのでしょうか?それは「承前」の意味そのものに直結しています。
上記の「承前」の意味を踏まえて、以下に「承前」を使う際の注意点をご紹介していきます。実際に使う上で「使い方」と合わせてご参考いただければ幸いです。
初めての文では使えない
「承前」は「前の文を受け継ぐ」という意味から、前も文もないのに、文頭に「承前」から始めることができない事が注意点です。
「承前」から文を始めてしまうと、文の読み手からは「前の続き」と認識し、前の文を場合によっては要求することもあり、混乱を来します。「承前」はあくまで、「前文ありき」で使用する言葉であることをご留意ください。
「承前」の由来・歴史
「承前」の意味、類義語、他の語との違い、使い方がわかったところで、「承前」の由来はどこにあるのでしょうか?
今回は「承前」の由来となる「漢字の成り立ち」と「承前」が日本で使われていた使用時期を辿っていき、「承前」の由来と歴史を遡っていきます。
由来
まずは「承前」をそれぞれ「承」「前」に分けて、それぞれの語源を紐解いていき、「承前」の意味の由来を探っていきます。
はじめに「承」。訓読みで「(うけたまわ)る」と読む事ができます。象形文字で、座っている人を両手で担ぎ上げている形を象っており、そこから「上位の者を助ける」という意味が生まれました。
上記の意味から転じて現在では、「うける」「うけつぐ」「うけたまわる」「ひきつぐ」といった意味として知られています。
次は「前」。訓読みで「(まえ)」と読む事ができます。会意兼形声文字で、「刀」と「歬(読み方:セン。すすむの意味)」から成り立っています。「歬」は「剪」の原字です。
上記の成り立ちから「刀で切りそろえる」という意味が生まれました。そこから「すすむ」「まえ」といった意味として現在知られています。つまり「承前」は「まえをうけて」と「まえをひきついで」という意味に解釈することができます。
歴史
「承前」の使用時期の由来を辿るその文献にはで万集堂から刊行された「女学雑誌」という作品に見られます。「女学雑誌」は1885年(明治18年)7月から1904年(明治37年)2月まで、女性の地位向上を目的に定期刊行された雑誌です。
その中の小説や評論などの多くは、「前号からの続き」の場合はその「表題」の下に(承前)と括弧書きで明記されていました。いまから、130年以上も前には「承前」が使われていたことの証左になります。
「承前」の英語表記
「承前」は日本語だけでなく、英語圏でも表現する事ができます。「continued from」という表現です。この表現は英語圏でもSNSで広く使用することができます。
「使い方」で紹介したような例文でも、前の文を受けて「continued from」とすれば「前文の続き」であると読み手は受け取ります。
「承前」に因んだあれこれ
「承前」は「前の文を引き継ぐ」というその意味合いで、「つづき」をイメージする語です。そのためさまざまなシーンで使われています。
承前」は舞台でもその舞台名で使われている言葉です。2014年に開演されたタレント・俳優の神樹照幸が主演した「鬼切姫外伝ー承前ー」が上げられます。
また、違いでも取り扱った「承前啓後」は、部活動の横断幕で大きく「承前啓後」の四字熟語で掲示されたりします。先輩から後輩へ受け継ぐことを重じている学生生活を端的に表す言葉です。
「承前」は「前の文を引き継ぐ」という意味
「承前」の意味、類語、使い方、との違い、注意点、由来・歴史、漢字表記、英語表記を順を追って見てきました。「承前」は「前の文を引き継ぐ」という意味で、活字を媒介として世界ではその文字数からも重宝される言葉です。
実用性のある言葉なので「承前」の使い方をぜひご参考いただき、本記事がより充実したコミュニケーションを図る一助になれれば幸いです。