スイスドイツ語とは
世界には約7000もの言語が存在しており、ドイツスイス語もその中の1つです。ドイツスイス語という言葉だけを見ると、ドイツ語なのかスイス語なのか判断がつきにくいのではないでしょうか。
スイスドイツ語とは主にスイスで利用されている言語で、かんたんに言うと方言です。日本の青森弁や沖縄弁、関西弁と同じく、特定の地方で使われています。
スイス語、ドイツ語の標準語しかわからない場合、スイスドイツ語のあいさつや会話を聞き取りが困難です。ここではスイスドイツ語の仕組みを紹介していきます。
母国語として使われている言語
実はスイスにはスイス語という言語はなく、ドイツ語・イタリア語・フランス語・ロマンシュ語の4つが公用語として指定されいます。この4言語の中でもっとも話者が多いのがドイツ語、少ないのはロマンシュ語です。
ロマンシュ語とはグラウビュンデン州の一部でしか使われていない言語で、話者も5万人台と多くありません。ロマンシュ語は5つの方言にわかれているため。習得が難しいと言われています。
あいさつや一言フレーズだけでもまったく違っているので、スイスのグラウビュンデン地方に住むネイティブにしか理解することが出来ないでしょう。
スイスドイツ語をスイス語と呼ぶ人もいる
スイスドイツ語はドイツ語とは違うため、スイス独自の言葉だと呼ぶ人もいます。スイスにはさまざまな言語、方言があるため一概に「この言語がスイス語です」とは言うのが難しく、スイス語の定義もあいまいです。
ドイツ語やイタリア語といった他国の言葉ではなく、スイスの国民投票で公用語として決定されたロマンシュ語がスイス語に近いのかもしれません。しかしロマンシュ語の話者はあまり多くなく、実用的な公用語とはまだ言えないのが実情です。
こういった事情から、スイスドイツ語がスイス語だという主張もあります。スイスドイツ語は他言語国家ならではの言語かもしれません。
スイス語はドイツ語と違う
スイス語(スイスドイツ語)は、ドイツ語とはまったく違う言語で、ドイツ語話者にスイス語で話しても会話が成立しないことがあります。また地方によって言い方が変わるため、現地の人同士でしか言っていることがわからないことも多いです。
あいさつだけでもスイス語になるとガラリと変わるため、はじめてスイス語を聞いた人は驚くかもしれません。ここでは同じスイスなのになぜスイス語が通じないのか、その理由をくわしく解説していきます。
ドイツ国内の中でも多くの方言がある
スイス語だけではなく、ドイツ語も方言が多い言語です。標準ドイツ語と現在使われていないドイツ語を除くと、16の方言が存在しています。話者が少なく消滅する可能性がある方言もあり、高齢の話者しかいないことも多いです。
標準ドイツ語をマスターしていたとしても、文法や発音自体がまったく異なるため、方言話者の言っていることがまるでわからないということが珍しくありません。
そもそも方言を教える教材やテキストがほとんどないため、学習の機会が少なく、相手の会話や会話フレーズを理解することが難しいと言えます。
スイス語でのあいさつ言葉
スイスに行ったら英語や標準ドイツ語だけではなく、スイス語と呼ばれている言語で交流してみたいものです。どの地方に行くのかにもよりますが、人があまりいない地方の場合はスイス語が通用しないこともあります。
そのため基本的には英語や標準ドイツ語、スイスドイツ語で会話することになるでしょう。話せるのであればイタリア語やフランス語でも構いません。
ここでは一般的なスイスドイツ語のあいさつやフレーズを紹介していきますので、覚えて話してみてください。
こんにちは:グリュエッツィ
スイスドイツ語で「こんにちは」はGrüeziというフレーズを使います。カタカナで表記すると「グリュエッツィ」がもっとも近い言い方です。一言あいさつしたいとき、初対面の相手に声をかけるときに使ってみましょう。
Grüeziは難しい発音ではないため、他の単語よりも覚えやすいと言えます。スイスドイツ語を話す人に使ってみると喜ばれるかもしれません。スイスにある主なドイツ語圏はベルン、チューリッヒ、バーゼルなどです。
これらの地域に出向く予定がある人は、Grüezi以外の言葉も覚えておくと便利と言えるでしょう。方言がわかると相手とのコミュニケーションも取りやすくなります。
Grüeziの他には、Grüessech(グリュエッサ)も「こんにちは」として使えます。このGrüessechはスイスの西側で多く使われているあいさつなので、覚えておくと便利です。
スイスドイツ語をなかなか覚えられない場合は、もう1つのあいさつ「Hello」を使いましょう。綴りは英語のハローと同じですが、スイスで使うときは少し発音が違います。
スイスでHelloを使うときは、英語のようにハローと伸ばすのではなく、ハロと短めに言いましょう。誰にでも通じるあいさつなので活用してみてください。
ありがとう:ダンケ
ありがとうをスイスドイツ語で言いたいときは「ダンケ(danke)」と言いましょう。こちらもGrüeziと同じく、発音自体はかんたんです。特別な発音記号はないため、覚えてすぐに使えるでしょう。
このdankeはどんなシーンでも使えます。たとえばレストランで店員にお礼を言いたいとき、道を教えてくれた人に一言ありがとうと伝えたいときに使ってみましょう。
知り合ったばかりの人や友達同士でも使えます。もしメールやチャットができるスイスドイツ語圏の人がいるのであれば、積極的に使ってみてください。
感謝します:イッヒダンケイーネン
Dankeをもっと丁寧に言いたい、目上の人やビジネス相手にお礼を伝えたいときは「Ich danke Ihnen(イッヒ ダンケイーネン)」を使いましょう。
カジュアルに使えるDankeと違い、相手に丁寧な印象を与えることが出来ます。発音は若干難しいので、カタカナ読みのイッヒ ダンケイーネンでは相手に通じないかもしれません。
発音サイトや翻訳サイトなどででよく発音を確認することをおすすめします。発音が難しくて使えない場合は無理をせず、Dankeを使った方がいいでしょう。
さようなら:アゥヴィデルエゲ
スイスドイツ語で「さようなら」を言いたいときは、「Uf Wiederluege(アゥヴィデルエゲ)」と言います。英語で言うと「See you」の意味で、別れのあいさつです。
発音が難しく、カタカナ発音では意味が通じないことが多いでしょう。また地方によっては言い方のバリエーションがいくつもあるため、ドイツ語のAuf Wiedersehenか英語のGood byeやSee youの方が伝わりやすいと言えます。
スイスは他言語国家なので慣れないスイスドイツ語を使うよりも、標準ドイツ語のあいさつやフレーズの方が相手に通じやすいでしょう。
スイス語の日常会話のフレーズ
スイスドイツ語話者と話すためには、いくつかフレーズを覚えておくと便利です。かんたんな世間話や雑談ができると、相手との距離がグッと近くなるでしょう。
スイスドイツ語は容易に習得できる言語とは言えませんが、短い文法を覚えるだけでも応用がきくようになります。名詞や動詞を入れ替えれるだけで、何パターンもの会話が可能になります。
ここではスイスドイツ語のかんたんな日常会話フレーズやあいさつフレーズを紹介していきますので、スイスドイツ語に興味がある人は覚えてみてください。
今日は良い天気ですね
会話のきっかけと言えば天気の話ではないでしょうか。スイスドイツ語で「今日はいい天気ですね」を「Heute ist schönes Wetter」と表現します。
発音をカタカナで表記するとHeute(ホイツ) ist (イス)schönes(シューネス) Wetter(ヴェッター)です。現地の人と仲良くなるには、シンプルな会話から始めてみましょう。
スイスドイツ語は高齢者の人がよく話す言語なので、上達させたい場合は高齢者の人と積極的に話してみてください。スイス語がわかる人として仲が深まるかもしれません。
週末はどうでしたか?
相手に質問をしてみることで、会話が弾むことがあります。相手の日常を知りたいときは「Wie war das Wochenende?」と質問してみてください。Wie war das Wochenende?とは「週末はどうでしたか?」を意味します。
発音はWie(ヴィ)war(ワール) das (ダス)Wochenende?(ヴォハッンエンデ?)です。カタカナ表記だとかんたんそうに見えますが、実際の発音は独特なので使うのが難しいかもしれません。
スイスドイツ語は聞き取ることも難しい言語なので、スイスのドイツ語圏に出向く場合は事前の予習が大切です。発音を確認できるサイトを有効活用しましょう。
週末食事に来ませんか?
友人や知人を自宅に招いて食事をした場合は、「Kommen Sie zu mir zum Essen?(コーメン ズィー ツー ミア ズム エッスン)」と相手に聞いてみましょう。こちらはていねいな言い方なので、知り合って間もない人やもっと仲を深めたい人に使えます。
もっとカジュアルな間柄なら「Kommst du zu mir zum Essen?(コムスト ドゥ ツー ミア ズム エッスン)」を使いましょう。2人以上を食事に誘いたいときは、duをihr(イール)に変えれば通じます。
食事を意味するEssenを、他の単語に言い換えれば違う文章を作ることができるので、いろいろな言い方にチャレンジしてみましょう。
元気ですか?
「Wie geht es Ihnen?(元気ですか?)」は相手に元気かどうかを聞きたいときに使えるフレーズです。しばらく会っていない人やひさしぶりに連絡する場合などに使いましょう。
このフレーズの発音は、Wie(ヴィー) geht(ゲーツ) es(エス) Ihnen?(イーヘン)で、丁寧な言い方です。目上の人やまだあまり親しくない人には、こちらの言い方を使ったほうがいいと言えます。
反対に親しい人や気を遣わないでいい相手には、「Wie geht es dir?(ヴィ ゲーツ エス ディール?)」と言ってもいいでしょう。意味は「元気?」です。
頭が痛いです
頭痛を伝えたいときは「Ich habe Kopfschmerzen(イッヒ ハーバ カァップシュベルツェン)」と言えば、相手に伝わります。Kopfschmerzenの発音はスイスドイツ語初心者には難しいので、よく練習しておいたほうがいいでしょう。
他の部位が痛いことを伝えるにはIch habeの後の単語を、痛い部分を指す単語に入れ替えれば文章が作れます。「Ich habe ○○」と言えば、相手に「○○が痛い」と伝えられるので、どこかが痛くなったときはこのフレーズを使ってみてください。
ちなみに腰はRückenschmerzen、お腹の痛みはBauchschmerzen、歯痛はZhanschmerzen、胃痛はMagenschmerzenという単語です。
スイス語の外出時に使えるフレーズ
スイスに旅行をする人、もしくはスイスで暮らす予定がある人は、これから紹介するフレーズを覚えておくと外出時に便利です。ホテルやレストラン、公共の乗り物を使うときに話せばコミュニケーションがとりやすくなるでしょう。
現金で支払います
海外旅行ではクレジットカードで支払うことが多いのですが、現金を使う機会もあります。レジ係りの人に、現金で支払いたい旨を伝えたいときは「Ich zahle bar」と言えば、現金支払いに対応してくれるでしょう。
発音は「イッヒ ツァーレ バール」です。比較的発音しやすいフレーズなので、相手が聞き取れないということはないでしょう。現金払いをしたいときは、このフレーズを使ってみてください。
◯人分の席はありますか?
スイスのレストランで人数分の席を確保したいときは「Haben Sie noch Platz für 〇 Personen?」と聞いてみましょう。「○人分の席はありますか?」という意味です。
発音は「ハーベン ズィー ノッフ フラッツ フュール ○ ペルゾーネン?」です。1人分ならeins (アインス)、2人分ならzwei (ツヴァイ)、3人分ならdrei (ドライ)、4人分ならvier (フィア)を○の部分に入れれば伝わります。
3人分の席があるかを聞きたいときは「Haben Sie noch Platz für drei Personen?(3人分の席はありますか?)」と言ってください。
おいしかったです
食事をした後、おいしいと言いたいときは「Es war gut(エス ワール グートゥ)」で伝えることができます。おいしいレストランに連れて行ってもらったり、お店の人に料理の感想を言いたくなったりしたときは、このフレーズを使います。
料理がとてもおいしいと伝えたいときはEs war sehr gutで「とてもおいしかったです」という意味になります。食べた料理が気に入ったときは、こちらのフレーズを使うほうがいいでしょう。
◯◯をお願いします
レストランで何かをお願いしたいときに使うフレーズは「Ich hätte gerne 〇〇(イッヒ ハッテ ゲルネ 〇〇)」です。○○の部分に持ってきてほしい物の単語を入れましょう。
メニューを見たいときは「Ich hätte gerne menü」と言えば、店員にメニューを持ってきてもらえます。お水が欲しいときはさきほどのフレーズに「Wasser(ヴァッサー)」を入れれば、「お水をお願いします」という意味になります。
この電車(バス)は◯◯へ行きますか?
電車かバスが目的地に着くかを聞きたいときは「Fährt dieser Zug (Bus)nach 〇〇?」と言えば伝わります。発音は「フェールト ディーザウ ツーグ(ボゥス)ナァー 〇〇?」です。
電車はZug(ツーグ)、バスはBus(ボゥス)なので、使う乗り物によって単語を入れ替えて使いましょう。はじめてスイスを旅行するときは、こまめに現在地や目的地を確認した方が安全です。
スイス語は聞きなれず難しい言語
スイスドイツ語は英語や中国語、フランス語などと比べるとメジャーな言語とは言えません。しかも方言なのでクセも強く、ドイツ語話者には通じないということもあります。
またスイスドイツ語とひとくちに言っても、ベルンの方言だったり、チューリッヒの方言だったり、ザンクトガレン方言だったりと、種類が豊富です。スイスドイツ語のすべてをマスターすることはおそらく難しいでしょう。
しかし新しい言語を覚えるとコミュニケーションの幅が広がるので、いくつか単語や文章を覚えておくといいかもしれません。現地の人と仲良くなるためには、相手国の言語に少しずつでも馴染むことが重要です。