「率直に」の意味とは?
「率直(そっちょく)」という言葉は、耳することが多く馴染みのある言葉です。辞書を引くと「ありのままで隠すところがないこと/さま」「かざりけがなく正直なこと/さま」「感じたまま遠慮がない」などの意味があります。
「率直に意見を言う」や「率直に聞く」などの使い方をして、その意味は「ありのままに隠さずに意見を言う」また「ありのまま素直に聞く」となります。しかし「感じたまま遠慮がない」という意味から「ズバズバと遠慮がない」と否定的に使われることがあります。
つまり「率直に」とは「ありのままに」「正直に」「かざりけがなく」という良い意味の他に「遠慮がない」という否定的で悪い意味も含んでいる言葉です。
「率直に」の対義語・類語
「率直」という言葉には、同じような意味を持つ言葉や反対の意味や使い方をする言葉がたくさんあります。反対の意味を持つ言葉を対義語、同じような意味を持つ言葉を類語または同義語と呼びます。
対義語や類語を調べることで「率直」の本来の意味をさらに深く理解することができます。対義語は反対の意味ですから、反対の反対を考えることにより元の意味がより明確に見えてきます。ちょうど白い紙に黒い墨(すみ)で文字を書くとはっきりと字が際立って見えるのと同じです。
似たような意味の類語を調べるということは、ちょうどワインを飲み比べるとそれぞれの味の特徴や違いが分かるのと同じで、「率直」の意味がより明確に解釈できます。
率直の対義語
率直の「ありのまま・素直」の反対の意味を持つ対義語には「婉曲(えんきょく)」「遠回し」「回りくどい」などがあり、「正直」の意味の対義語には「狡猾(こうかつ)」「不誠実」があります。
「婉曲(えんきょく)」とは、良い解釈では「穏やかに遠回しに表現する」「遠回しにそれとなく表現する」という意味があります。また悪い解釈をすれば「遠回しで裏がある表現」「遠回しで素直でない表現」という意味になります。
「狡猾(こうかつ)」とは「ずる賢いこと」「悪賢く不誠実」という意味で、悪い解釈で使われる言葉です。「率直」の対義語は一部良い解釈もありますが、ほとんどが悪い意味で使われます。
率直の類語
率直と似た意味を持つ類語には「単刀直入」「有体(ありてい)」「素直(すなお)」「正直」「遠慮のない」「気兼ねない」「忌憚(きたん)ない」「ざっくばらん」「歯に衣を着せない」などがあります。
「単刀直入」や「有体(ありてい)」とは「ありのままストレートに」という意味です。「忌憚ない」の忌憚は「いみはばかる/遠慮する」という意味で、それに否定語の「ない」がついて「忌憚ない」は「遠慮することなく」となります。
よく会議などでは「ぜひ忌憚のない意見を出して(遠慮なく意見を言って)協議してください」などと使われます。
「歯に衣を着せない」という類語は良い意味では「ありのままストレート」ですが、悪い解釈では「辛辣(しんらつ)で手厳しい」「ズケズケとものを言う」という意味になります。
「率直」という言葉が良い意味と悪い意味の両方を含んでいるのと同様に「率直」の類語も使い方によって肯定的、否定的、どちらの意味にもなる言葉です。
「率直に」の使い方・例文
「率直」という言葉は、肯定的な良い意味の使い方が多いのですが、否定的な悪い意味の使い方も少なくありません。率直の「あるがままに隠すところなく」という意味はよく解釈すれば「正直に/素直に」ですが、悪く解釈すれば「遠慮なくズケズケ」になります。
実際の使い方も状況によって変わってきます。それでは良い意味と悪い意味とに分けて例文を用いて使い方を紹介します。
例文①
率直の「ありのままで隠すところがない」という良い意味の例文では「彼の仕事ぶりはいつも率直で誠実なので信頼できる」「今回のプロジェクトの成否は、率直に言って皆んなのチームワークにかかっている」のような使い方をします。
悪い意味の使い方では「彼の意見は正直言って率直すぎるので、相手によっては不快に感じてしまう」「無神経な率直な言動は、時によって人を傷つけてしまう」のように表現します。
例文②
「正直な」という意味の例文では「今回のトラブルの原因を究明するため、当事者の率直な意見と報告が聞きたい」「率直なところ、今月の売り上げの予想以上の成果に驚いている」のような使い方をします。
否定的な表現では「彼の説明には率直さが足りないので、不安を感じてしまう」「彼女の率直なところは認めるけれど、それが必ずしも仕事に向いているとは言い切れない」のように使います。
例文③
「素直」という意味では「これから私が話す内容は、誤解しないよう率直な気持ちで聞いてほしい」「失敗をした時には、率直な気持ちで反省をして次につなげることが大切です」
また「ミスは率直に自分で認め、他人や他のことに責任を転嫁しないこと」「正直な人は率直だからこそ、周りの人から信頼されるのです」のような使い方をします。
例文④
「遠慮をしない」という意味では「今回のアンケートは、率直な意見や感想を聞きたいので匿名でお願いします」また、否定的な意味では「彼はその場の空気を読まずに、感情のまま率直に不躾(ぶしつけ)な発言をするので周りから嫌われる傾向があります」
このように「率直に」という言葉は、使う場面や使い方によって、肯定的な良い意味にも、否定的な悪い意味にもなる表現です。
率直と素直・正直との違い
率直と似たような意味があり、同じような使い方をする類語に「素直」と「正直」があります。辞書によっては同じ意味に解釈しているものもあり、使い方も同じように使われる場合があります。
しかし違う漢字が使われているのには、なんらかの違いがあるはずです。それではそれぞれの意味や使い方を調べることで意味の違いを見つけてみましょう。
素直とは「まっすぐで癖がない」という意味
素直とは「まっすぐで癖がない」「ストレート」「ひねくれていない」「従順」「ありのままで飾り気がない」という意味で「率直」と非常によく似ています。
それでは使い方を調べてみましょう。「素直な性格」「素直に答える」「素直でまっすぐな髪の毛」「素直な字を書く」「仕事が素直にはかどる」などのような使い方をします。
このように素直は人の性質や態度が「まっすぐで癖がない」「飾り気がなく従順」な様子を表す場合と、物事や物の形が「まっすぐで曲がっていない」という形状を表す場合があります。
ところが「率直」の場合は、人の性質や態度を表す意味では「率直に答える」など同じ使い方をしますが、物の形や形状を表す場合には「率直な髪の毛」などとは言いません。その点が素直とは違います。
正直とは「正しくてまっすぐ」という意味
正直とは「正しくて、嘘や偽りがないこと」「正しくてまっすぐなさま」という意味で、意味の上では「率直」とほとんど変わりません。
使い方では「彼女が話す言葉には嘘がなく正直なので信頼できる」「正直言って、彼の誠実さには驚いた」のように「正直」は褒め言葉や肯定的な場合にのみ使われる言葉です。
いっぽう「率直」の場合は「不躾(ぶしつけ)にズケズケと物を言う」のように否定的にも使われるところに違いがあります。
「率直に」の英語表記
「率直に」の英語表現は正直言って多彩です。副詞では「honestly(正直に)」「frankly(あからさまに)」「candidly(ざっくばらんに)」「outspokenly(遠慮なく)」「plainly(明らかに)」「openheartedly(淡白に)」「straightforwardly(真っ正直に)」など沢山の単語があります。
なぜ英語表記の場合は、これほど多くの単語が存在するかという理由は表現の仕方が根本的に違うからです。日本語は漢字という象形文字=ビジュアル的に意味を表現できる文字で「率直」と書くだけでイメージ的にある程度の意味が伝わります。
英語にはたった26文字のアルファベットしかありません。しかもそのABCは単なる記号でどれにも意味がありません。つまり意味を伝えるためには多彩な単語や言い回しが必要になるのです。
英語例文
それでは「率直に」の英単語を使った例文の一部を紹介します。「Honestly, that's all the money I have. (率直に言って、これしかお金を持っていない)」「I cannot honestly say that I'm sorry.(ごめんと素直に謝れない)」のように「honestly 」は正直に素直にという表現で使われます。
「Tell me everything frankly.(包み隠さず全てを言いなさい)」「to speak candidly or frankly(自分の考えを打ち明ける)」のように「frankly」は包み隠さずと言う意味で使われる単語です。
「I spoke to her candidly about my feelings.(私は彼女にざっくばらんに気持ちを話した)」のように「candidly」は、ざっくばらんにあからさまに、という場合に使われる英単語です。
この他にも沢山の英語表現があります。前に紹介したように英語表現の場合は、その時のシチュエーションにより使う単語が様々あります。ここで紹介しきれないのが残念ですが、興味があればぜひ検索してみてください。必ずビジネスシーンでも役に立つことでしょう。
「率直に」は「ありのままに」という意味
「率直に」とは「ありのままに」という意味で、良い意味で解釈すれば「正直で素直」になり、悪い意味で解釈すれば「無遠慮でズケズケ」のように両方に解釈できる言葉です。
ここまで紹介した対義語や類語、使い方や例文、英語表記などを参考にしてビジネスシーンなどで正しい使い方ができるように役立ててください。