スベスベマンジュウガニの毒の危険性
前に記したように、スベスベマンジュウガニは餌が由来で毒素を取り入れるため、毒素を体の中に持ちます。そのため、スベスベマンジュウガニを食べることで、その猛毒の攻撃力が発揮され、危険性が一気に上がります。
しかし、スベスベマンジュウガニは体外に毒素を持たず、触れるだけでは危険性は低くなります。日本では現在幸いなことに、スベスベマンジュウガニを食べたことでの死亡例はまだ報告がありません。
しかし、同様な毒を持ち、危険とされているオウギガニやツブヒラアシオウギガニは死亡事例が報告されています。
オウギガニの死亡事例は、奄美大島で起こりました。5人家族で食事の際、味噌汁にオウギガニを入れ、食べた、2人が死亡したという内容です。
また、ツブヒラアシオウギガニも死亡事故が数件上がっているという。このような死亡事故が出ている蟹と同様の猛毒を持っている蟹なので、十分注意していきたいところです。
麻痺性貝毒成分やフグ毒を併せ持つ
スベスベマンジュウガニが持つ麻痺性貝毒成分としては、ゴンオトキシン、サキシトキシン、ネオサキシンの3種類が報告されています。また、フグ毒も併せ持っています。
フグ毒としては、テトロドトキシンなどを持っていると報告されています。どの毒成分も猛毒性を持ち、非常に危険度の高い毒になります。
生息地により成分の構成比や毒量が異なる
スベスベマンジュウガニは、生息地によって、持つ毒成分が異なると言われている。同じスベスベマンジュウガニなのに、分布地によって、異なる成分になるとはどのようなことなのでしょうか。
神奈川県の三浦半島で発見されたものは、フグ毒を多く含む毒の成分構成となっています。さらに南下していき、徳島県淺川湾で発見されたものは、両毒をほぼ同じくらいで合わせ持っています。
また更に南下していき、沖縄付近で発見されたものは、麻痺性貝毒を多く含む毒の成分構成になっています。神奈川県の方に行くにつれて、フグ毒が強く、沖縄の方に向かうにつれて、麻痺性貝毒を強く持っているのです。
このようなことが起こる理由は、スベスベマンジュウガニの持っている毒が、餌に由来するところにあります。スベスベマンジュウガニは体の中で毒を生成しているわけではなく、生息地にいる餌から毒を吸収しています。
スベスベマンジュウガニの分布地は広い範囲に及ぶ為、生息する環境やそこにいる生き物に大きな差ができます。これらのことから、スベスベマンジュウガニは食べる餌が異なることになります。
毒素の由来が餌であるスベスベマンジュウガニが、異なる餌を食べるということは、毒成分や量に差が出てくることになります。
そのため、同じスベスベマンジュウガニであっても、生息地によって毒素の成分に差が出ると考えられているのです。分布地が広いことで起こっている現象のようです。
人間の致死量を超える猛毒を持つ場合もある
分布地によって、異なる毒成分を持ったスベスベマンジュウガニは、中には無害のものもあると言われています。しかし、逆に毒性をかなり強く持つものもいると言われているのです。
毒の致死量を実験する際、マウスを使います。その時に使われる単位が「マウスユニット(MU)」と呼ばれるものです。1マウスユニットとは、体重20グラムのマウスがフグ毒を体内にいれ、30分で死亡する毒量を示します。
60キログラムの人がフグ毒を食べた時の致死量は3000~20000マウスユニットと言われており、スベスベマンジュウカニは、そのフグ毒を、1グラム内に1000マウスユニットを持つものが発見されたことがあります。
これは十分に人間の致死量を上回る量の毒になります。このように大量の毒を持っているスベスベマンジュウガニも中にはいるので、絶対に食べてはいけません。
スベスベマンジュウガニを食べるのは絶対ダメ!
前にご紹介したように、スベスベマンジュウガニには人を死に至らすほどの毒を持ったものも存在します。無害のものもいる可能性はあるのですが、調べてみないとわからないものです。
むやみに安全が確認されていない蟹を食べるのは危険です。安全確認のできていない蟹は絶対に食べるのを止めましょう。
食べることにより毒の症状が出る
スベスベマンジュウガニは、食べることにより、毒の症状が出ます。これは、スベスベマンジュウガニが体内に毒素を持つからです。主に体表部、脚や鋏の筋肉部分に毒が大量に含まれています。
これらから、食べることによって、人間の体内に毒が入ってくることで様々な毒の症状が襲ってきます。
スベスベマンジュウガニが持つ毒の症状
では、具体的にスベスベマンジュウガニが持つ猛毒とそれを摂取した時そのような症状が出るのかご紹介します。誤って食べてしまった際、早期対処が重要になってきます。以下の症状が出たら、すぐに対処が必要です。
サキシトキシン
神経麻痺を引き起こします。口腔内部や周辺に痺れが出て来て、徐々に手足に広がります。痺れや違和感から始まり、四肢の力が入らなくなり、麻痺した状態になっていきます。
これらの症状は、食後30分~1時間のうちに起こります。食後2時間後には呼吸困難に陥ります。感覚などの麻痺に強く症状が出ますが、意識や、血圧低下などの症状は少ないです。
このような症状が出た場合、すぐに対処が必要です。ここでポイントになるのは呼吸管理です。すぐに対処すれば、症状完治後は後遺症もなく日常生活に戻ることができるでしょう。
テトロドトキシン
フグ毒であるテトロドトキシンは4つの段階で進行して行きます。第1段階としては指先や唇や舌の先などに軽い痺れが見られます。また、めまいや頭痛、腹痛などの症状が出ることもあります。
第2段階に進むと、体の力が入りにくくなる運動麻痺が起こります。また、嘔吐や口のしびれが強くなり、言語障害も出てきます。この段階で呼吸困難や血圧低下も見られる可能性もあります。
第3段階に進むと、全身の力が入らず、麻痺状態になります。呼吸困難や血圧低下が重度化していきます。
第4段階まで行くと、意識がなくなり、呼吸が止まります。第1段階の症状は、食べてから、約20分から数時間で現れます。意識がはっきりしたまま急に段階を進んで行き、24時間いないに死亡する場合が多いです。
日本でもこのテトロドトキシンによって過去に何度も発生しており、死亡となる事例も何度も上がっています。摂取後、急速に進行するため、早急な処置が必要となります。
フグ毒テトロドトキシンの処置方法は、現在解毒方法がまだ見つかっておりません。テトロドトキシンでの死因は呼吸ができなくなることによるものであるため、早急に人工呼吸などの処置をすることで、救命率が上がることが分かっている。
もし変わった蟹を釣ってしまったら即リリース!
ここまで、蟹の猛毒の恐ろしさについてお伝えしてきましたが、これは人間側の話です。蟹側から見ると、毒を蓄えているのは、自分の身を守る為です。自分の身に危険が及ばないよう、防衛本能のようなもので、生き物であるならば、自分の身を守るよう進化していても不思議ではありません。
スベスベマンジュウガニは、食べない限り、麻痺性貝毒成分やフグ毒などの毒素に侵されることはないので、見かけても、遠くから見ている程度でそのままにしましょう。また、触ってしまった場合も、持ち帰らず、海に返してあげましょう。
また、スベスベマンジュウガニには、「スベスベマンジュウガニは静かに笑う」「恋のスベスベマンジュウガニ」などの歌もあるようです。お子さんの周知のためにも、一度聞いてみて絵はいかがでしょうか。
スベスベマンジュウガニには近寄らずそっとしておこう!
以上、今までご紹介したように、現在まではスベスベマンジュウガニの毒事例はありませんでした、しかし、スベスベマンジュウガニの中には人を殺してしまう致死量フグ毒などの猛毒を体内に秘めているものがいることは 事実です。
また、スベスベマンジュウガニの分布地は身近に存在している為、目にすることもあるかもしれません。スベスベマンジュウガニは名前の由来はスベスベの甲羅と饅頭みたいな楕円の形でした。
特徴を頭の片隅に入れてき、見分けられるようにしておきましょう。もし見かけたとしても、捕まえたり、口に入れることはせず、そっとしてあげてください。
そして、猛毒を持っているのは、スベスベマンジュウガニだけではありません。蟹をおいしくいただくためにも、安全をしっかり確認してから食べるように心がけましょう。