「謳う」の意味とは?「歌う」や「唄う」との使い分け方や正しい使い方を解説

「謳う」の意味とは?「歌う」や「唄う」との使い分け方や正しい使い方を解説

謳うと聞いてどのような意味を思われますか?「歌う」ですか?「謡う」、それとも「詠う」でしょうか?はたまた「唄う」?いったいどの謳うがどのうたうなのか、私たちをとりまくおそるべき「うたう」の世界の深淵にせまってみました。意味や使い方もチェックしましょう!

記事の目次

  1. 1.謳うの意味とは?
  2. 2.謳うの由来
  3. 3.謳うの特徴
  4. 4.謳うの英語表記
  5. 5.謳うの使い方
  6. 6.謳うは盛んにほめそやすという意味

謳うの意味とは?

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謳うは(うたう)と読み、その意味は「盛んにほめそやす」や「吹聴する」「強調する」「たからかに宣言する」「主張する」といった意味をもった言葉です。

この言葉と同じように「うたう」と口にする漢字がいくつかありますが、今回はそれらの言葉と「謳う」という漢字の使い分けの方法や意味の違いについて、また具体的な使い分けの方法を例文を用いて解説します。

加えて、謳うという漢字を英語表記で表現した場合はどのように表現できるのか。さらに英語での例文から使い分けや使い方についても説明しています。

謳うの由来

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まず、「謳う」という言葉はどのようにして生まれたのでしょうか?その由来や語源などのルーツについて知っておきましょう。そもそも謳うという言葉は、上手に和歌を詠った人を褒めそやす様が由来といわれています。

口々に「すばらしい」だとか「情景が浮かぶようだ」などとはやし立てている姿を「言」う人々を「品」を囲って言葉として成り立たせたことが語源とされています。

真正直に褒めるという意味をもちながら、どこか後ろ暗い表現としての印象をもっているのはそうした背景があるからではないでしょうか。

謳うの特徴

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謳うの意味には上記のようにいくつかの意味が含まれています。そのため文法上での流れから意味を類推する必要がある言葉で、褒めているのか、吹聴しているのか、強調しているのか宣伝しているのかなどの意味を読み取る必要があります。

さらに、音としての「うたう」には同じような言葉が複数存在します。そのためどれがどんな意味を持っているのかについても知っておかなければ、文章として記述を求められた時に正しく書くことが難しくなります。

そんな「うたう」の意味や違いなどの特徴の差異について、それぞれの意味、使い分けの方法、使い方なども解説します。特徴を十分に把握して、謳うとの使い分けや聞き分けを出来るようにしていきましょう。

歌う(うたう)との意味の違いは?

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もっとも頻繁に目にするであろう言葉で、漢字としても最初に修学する漢字が「歌う」です。声楽という意味ではかなり幅広く使われていますが、数ある「うたう」のなかでも唯一「謳う」と意味が被らない言葉です。

声を出してメロディなどの調子をのせて奏でることを指すので、「謳う」のように宣言したり宣伝したりといった意味とはまったく違った言葉になります。

歌う(うたう)は声を奏でるという意味

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謳うとは違って、歌うという言葉にはさまざまな意味での「うたう」行為全般を指す言葉です。抑揚をつけてメロディーラインを奏でることも、和歌をよむことも、歴史ある歌をうたうこともすべて「歌う」で表現できます。

歌う(うたう)の使い方

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しかし、基本的な使い方としては、「私は好きな歌を歌う」というように、音楽的な意味での歌う行為全般を指した言葉として用いられることが基本的な使い方と言えます。使い分けのポイントは楽曲全般であれば問題なし、と言えます。

唄う(うたう)との意味の違いは?

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謳うという言葉が「喧伝する」や「高らかに褒め湛える」というような意味を持つのに対して、唄うという言葉の意味は「歌う」よりの言葉になっています。つまり、歌唱としての唄うという違いがあるので、使い分けとしては歌として扱います。

唄う(うたう)は小唄や長唄を歌うという意味

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唄うという言葉の意味はたしかに歌唱に類する言葉なのですが、厳密にはすこし意味が奥まった点で使い分けることができます。それは、小唄や長唄といった日本の伝統唱歌を唄うことに対して用いられる言葉という点です。

唄という漢字そのものが、元来は御仏の行いにたいしての称える賛歌のような意味を表しているので、唱歌としての意味をそのまま引き継ぐようにして今の意味をもった言葉として使い分けられるようになりました。

唄う(うたう)の使い方

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「民謡を唄う」「演歌を唄う」「小唄を唄う」のように、使います。あくまでも慣習的に邦楽に対して使い分けられている言葉で、「ロックを唄う」のような使い方はされません。詩的な表現としてそのような用いられ方をする場合はあります。

ただし、常用漢字ではないので、公文書などの公的な文章には使用すること自体を避けるべき漢字として扱われています。私的な言葉として表現方法の一つに使い分けたりする使い方であれば問題はありません。

謡う(うたう)との意味の違いは?

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謡という漢字もまた「うたう」という読みをする漢字で、音読みでは「よう」と読まれます。謳うとの違いは、謡うもまた声をあげてメロディーラインをリズムにあわせて発声するという意味なので、歌うと同じような意味となります。

謡う(うたう)は音に調子をもたせて発声するという意味

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ただし、謡うの場合はアカッペラでの歌唱の様子を指し示す言葉という意味があります。また、元来は能(のう)のような謡曲を歌唱することを意味した言葉として生まれ、神への供物として扱われていました。

そのため謡という漢字には「供物とともにうたを捧げる」という意味が込められています。神事における奉納の謡曲として使い分けがされる必要があるという注意点があります。また祝いの席などの表現にも使い分けがされる言葉です。

謡う(うたう)の使い方

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「神事において奉納の舞曲を謡う」また、「その土地に伝わる伝統的な歌を謡う」のようにして使います。いずれにしても伴奏なしの状態でうたうこととなりますので、使い分けのポイントは伴奏の有無が肝心と言えます。

詠う(うたう)との意味の違いは?

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続いての「詠う」は、これまでのうたうとはまた違った意味をもっています。ここまでは声をあげて発声することを基本的な意味として据えていましたが、詠うにはどちらかというと「作る」ことに比重を置いているという違いがあります。

使い分けそのものとして歌唱や宣伝などのような使い方をしない言葉で、しかもメロディーやリズムはさほど意識された言葉ではないという特徴があります。

詠う(うたう)は詩歌を作るという意味

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詠うには、元来和歌や俳句、詩歌などを作成することを意味した言葉です。詠(エイ)には、言葉をながく続かせるという意味をもった漢字です。つまり思い描いた心情を言葉にして朗々と述べるさまを表した漢字なのです。

基本的には歌うと語源を同じくする言葉ではありますが、詩を書いたり詩的な言葉を紡ぐことを指した言葉との使い分けをするためにうまれた言葉です。

詠う(うたう)の使い方

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「愛するあの人のことを思いながら詠う」、「圧倒的なスケールで冒険のロマンを詠う」「美しくも悲しい物語を詠う吟遊詩人」のような使い方が一般的です。詩歌に対して使うことが多いのは当然として、物語にも用いられていることがポイントです。

言葉を使った創作物全般のなかでも、感情的に訴えかけてくるような著作物をあらわす時にも「詠う」として表現することがあるので、そのあたりにも使い方として注意したい所です。

しかし、この漢字も常用漢字ではないので、公文書などのような公的な場所で用いる言葉としてはふさわしくないので、そのような場面では「歌う」として表現するかもしくは全く違った表現手法で明文化しています。

謳うの英語表記

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「謳う」という言葉を英語で表記した場合はどのような表現になるのでしょうか。謳うにはいくつかの違った側面の意味をもっているので、英語表現においても状況によっては違う英語で訳して使用します。

まず「宣言する」や「強調する」というような表現としての英語表現であれば「take a firm stand」や「express」のように表記できますし、「主張する」場合は「insist」として英訳できます。

また「ほめそやす」や「褒め称える」という意味を英語表記した場合は「sing the praises」もしくは「renowned」のように表現できます。

英語表記での使い方①

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「At the time she had thought he was trying to express his love.(あのとき、彼女は彼が愛を謳おうとしていると思っていました)」「I take a firm stand, new political concepts.(私は高らかに新しい政治概念を謳い上げた)」

「Of course he can't will Alfonso like he did his property, but he does have the right to express his wishes.(もちろん、アルフォンソのようには出来ない。しかし、彼にはその希望を謳う権利がある)」

宣言する、もしくは主張するという意味での英語訳としての表現です。「take a firm stand」は直訳すると「断固とした態度を取る」という意味なので、使いどころを間違えるとすこし違った意味になってしまうので注意しましょう。

英語表記での使い方②

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「He thus became renowned as a wise prince.(彼はこうして賢い王子として世に謳われた)」「People sing the praises of him as a hero among heroes.(人々は彼を”英雄の中の英雄”として謳った)」

「Fuad was renowned for his boldness and promptness of decision, as well as for his ready wit and his many bons mots.(ファッドはボンモットにおいて、用意周到にして大胆不敵、驚くべき機転に富んだ俊英と謳われた)」

「褒め称える」もしくは「ほめそやす」という意味で「謳う」という意味での英語表現による例文です。ほかにも「hailed(賛美する)」という表現でも表すことができます。

謳うの使い方

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謳うという言葉をどのような使い方ができるのかについて例文を交えながら実際の使い方や使い分けの方法を学んでいきます。他の「うたう」も織り交ぜながらどのような使い分けが行われるのかも注目してください。

また、どのような意味で謳うが使われているのかについても確認しながらご覧頂くと、より理解が深まることでしょう。様々なシチュエーションでどのように使われていくのかについて知っていきましょう。

例文①

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「彼はそうして殊の外大きな声で勝利宣言を高らかに謳い上げた。やがてその歩みはさながら一つのサーガのように詠われ、多くの吟遊詩人たちの手によって、一人の英雄の物語として歌い継がれていくのであった。」

「謳う」「詠う」「歌う」の三種類の「うたう」を使い分けた例文です。それぞれの漢字ごとの使い方に注目してください。強敵との戦いを制したすえに高らかな勝利宣言をするという意味で「謳う」を使用しています。

また、そうした伝説や伝記といった創作物の一つとして、また大きな物語の一つとして吟遊詩人の手によって作られたストーリーが「詠われ」ているという意味が続き、最後にそれらを「歌唱」する意味で「歌われ」ています。

例文②

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「あの商品はとにかくやればやるほど上手に唄えるようになると、彼ら企業側は謳っている。むしろそれを謳い文句にして、テレビのコマーシャルや、あまつさえYouTubeにも広告をだしているそうだぞ?」

こちらの例文では「唄う」と「謳う」で構成された例文です。今回の「謳う」については「宣伝文句」としての「謳う」と、「吹聴する」もしくは「喧伝する」という意味での「謳う」が使い分けられています。

例文③

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「考えられない事だが、奴らは驚くべきことにさも今回の事件に自分たちはかかわりがないかのように謳っている。それを聞いた演者の一人はあまりのショックに”もう私には謡えない”なんて言ってきている者もいる」

なんらかのトラブルが発生したために、企業側とエンターテイナー側とに軋轢が生じてしまっている様子を表した例文です。この例文における「謳う」では「吹聴」や「欺瞞」のような印象で使われています。

例文④

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「彼は、はっきりと何度も繰り返すように同じことを謳い続けている。それを聞いた古い学者連中は、”またあの愚か者がさえずっている”などとして一向に相手にしようとはしていなかった」

新しい学説を唱えた一人の若い学者の主張を、誰一人として聞き入れることがなかったということを表した例文です。この場合の「謳う」は強い主張という意味合いで使われています。

謳うは盛んにほめそやすという意味

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複数の意味があるたくさんの「うたう」のなかでも、少し特殊な立ち位置にある「謳う」には、大まかに分けて「主張」「吹聴」「賛美」といった意味があることが理解いただけたでしょうか?

使い分けがすこし難しい言葉でもありますが、うまく使えば言葉の幅も広がりますので、しっかりと理解を深めて正しい日本語を習得しましょう。

五所川原銭男
ライター

五所川原銭男

ガジェット系を好む。雑食。暴食。時折暴走する。知る人ぞ知る某国産プロジェクトの中の人。

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