属人的、属人性、属人化の意味とは?
それぞれの前に付く「属人」という言葉ですが、まずはその意味をご紹介しましょう。「属人」というのは、その漢字の通り「人に属する」「人に依存する」という意味をもちます。
組織やビジネスシーンではよく聞く言葉ですが、家庭内で耳にすることは滅多にありません。しかし家庭でも状況によっては使うことが可能な言葉です。
さて、ではなぜ属人的、属人性、属人化などという言葉が組織やビジネスで使われるようになったのでしょうか。仕事において、人に依存するというのはどんなことを意味するのでしょう。まずはその意味を、それぞれ見ていきましょう。
属人的の意味
属人的という言葉は「人を基本として、物事を考える」という意味があります。あの人でなければこの仕事は出来ない。そんな業務形態の職場は少なくありません。しかし、個人に依存してしまうが故に、その人が業務に参加できなくなった場合、それ以上先に進めなくなるなんてことも。
洗濯物を洗って干すことができても畳み方や仕舞う場所が母親しかわからない場合など、組織内のみではなく、家庭でも使うことができます。その人のみができる業務や物事を指す時に使う言葉です。
属人性の意味
属人性は「身分や能力などの人に属する性質」という意味があります。つまり、組織内やビジネスシーンにおいて、その人にどの程度依存している仕事であるのかの度合いを示す時に使う言葉です。属人性が高いか、低いかという使い方をします。
属人化の意味
属人化というのは、「誰でもこなせる仕事を特定の人に一任してやってもらう」という意味があります。特定の誰かに聞かないと仕事の内容がわからないという状況が度々ある場合は、属人化が進んでいるといえるでしょう。
属人的、属人性、属人化の由来
属人が付く言葉としては、他にも属人法や属人主義といった言葉があります。耳にする機会はあまり多くないですが、昔から使われてきた言葉です。
この言葉が広まったのは、2000年代に入ってからです。「属」という字には「任せる」や「頼む」といった意味があり、特定の人物に業務を任せることが増えたことから、この言葉がビジネス用語として用いられるようになりました。
IT化が進むにつれ、作業が効率的にできることが可能となりました。わからないことでもある程度であれば、インターネットで検索するなどして一人で作業ができるようになったことにより、属人的になりつつある組織が増えています。
属人的、属人性、属人化の特徴
属人的、属人性、属人化という3つの単語ですが、多くは組織への批判の際に使われます。誰かに愚痴を零す際など「うちの会社はいつも属人的で」といった使い方で使用されるのです。人に属する、人に依存するということはビジネスシーンにおいてネガティブなイメージとして捉えられます。
効率化を図るのには最適
慣れた人に任せることで効率化が図れますが、その人が急に退職したり、長期で休暇が必要になった際に他の人では作業ができないという問題も。特定の業務ばかり自分に回ってくるという経験がある方は、属人性の高い組織に勤めている可能性があります。
属人的と属人化の対義語
組織内やビジネスシーンにおいて、特定の人に依存するという意味をもつ属人という言葉ですが、その対義語とはどんなものなのでしょうか。なんとなく想像はできるという方も多いのではないでしょうか。では、よりわかりやすく解説していきましょう。
属人的の対義語
汎用的または万能といった言葉が属人的の対義語に該当します。汎用という言葉には「一つのものを幅広くいろいろな方面に用いる」という意味があり、様々な場面で活躍が可能な人のことを指します。
また、万能とは「全てに優れていて、何でもできる」という意味があります。汎用に比べると組織においての優先順位としては万能の方が上に思えますが、「一つのものに執着しない」という点で同じ意味をもつ言葉になります。
属人化の対義語
標準化、またはマニュアル化という言葉が属人化の対義語として挙げられます。ビジネス用語として聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
マニュアルを作成することで業務を広く標準化することで、誰の目にも見える業務を行っていくということ。ビジネスシーンにおいてこの体制ができている組織は、特定の人に負担をかけることのない属人性の低い組織といえます。
属人的、属人性、属人化の使い方
ビジネス用語として使われる属人的、属人性、属人化についてご紹介してきました。では、実際にどんな場面で使われている言葉なのか、例文を用いて使い方をご紹介していきましょう。正しい意味を理解した方であれば、様々なシーンで使うことができます。
例文①
まずは属人的という言葉の使い方をご紹介します。「これは以前まで○○さんがやっていて、○○さんにしかわからない属人的な業務だ」という使い方ができます。
他の人が頼まれた業務を突然自分に任された時、それまでの業務内容がわからず困ってしまうことも少なくありません。そんな時に属人的という言葉を用いた文章が使えます。
例文②
続いても属人的という言葉の使い方についてご紹介しましょう。「自分の勘や経験だけに頼る属人的な業務は見直すべきだ」という使い方ができます。
一人が抜きん出て業務ができてしまうと、その人に頼りがちになってしまうのはよくあること。しかし任せられた方はたまったものではありません。
例文③
次は属人性という言葉の使い方をご紹介します。「この会社は属人性が高いので、効率を改善しながら低くしていこう」という使い方ができます。
申し訳ないと思いながらも、特定の人のみが業務を行うという組織は少なくありません。全体的な効率を上げることで、個人の負担が少ないと業務いうのが理想的でしょう。
例文④
最後にご紹介するのが、属人化という言葉の使い方です。「属人化が目立ち始めたので、マニュアル化で業務改善をしていこう」という使い方をしましょう。
属人化はそれが浸透してしまう前に対策をとることで、属人性が高くなるのを防ぐことができます。多くの人が同じように業務に携わることができれば、全体の効率も上がることは間違いありません。
属人化によるメリット、デメリット
属人的な組織では、属人性が高いことで業務の効率化が進んでいます。ネガティブなビジネス用語として使われる属人的、属人性、属人化ですが、組織内において悪いことばかりではありません。それでは、総合的なメリットやデメリットについて具体的にご紹介していきましょう。
メリット
属人性が高かったり、属人化が進んでいるという点において、組織内で個人の能力や技術が評価されているという見方ができます。また、自分しかできない仕事なので、独自のペース配分を行うことができるのが強みです。
デメリット
業務内容が属人的になっていくことで、体調不良などの際に代わりに業務を進められる人がいないため、仕事が休みづらくなってしまいます。また、急な転勤や出張で業務を離れなければいけなくなった場合、引き継ぎをする際、最初から全ての説明を行わなければなりません。
属人的、属人性、属人化の注意点
属人化が進むことで、個人で業務を行うことが増えます。その一つとして、属人的な業務を行っている人が急な休みや退職となった際に、業務が進まなくなるとご紹介しました。
属人性が高くなっていくにつれて、それ以外にも注意点がいくつ出てきます。では、実際にどんなことに注意していくべきかを確認していきましょう。
一定した品質管理が難しい
まず、業務が属人的に行われるということで、成果物の品質管理がしにくくなるという点。慣れている人であれば高い品質のものを作り続けることは可能ですが、業務の内容が共有されていないことによって他の人が取り組もうとしても、品質までは保証されづらいという点があります。
ミスの隠蔽が行われる可能性がある
他の人の目に触れることなく業務を行うことによって、ミスを隠してしまう可能性があります。本来ミスが発生した場合は、ミスの申告を速やかに行い、解決策を共有する必要があります。それが行われないことで、損害が大きくなってしまう可能性も少なくありません。
属人的というのは「特定の人を基本とし、物事を考える」という意味
属人的、属人性、属人化という言葉について意味や使い方をご紹介してきました。マニュアル化や廃止を望む声も多いのですが、そんなに悪いことじゃないという声も多く見られます。
社会に出ると聞く機会が増える、ビジネス用語として使われることの多い属人的、属人性、属人化という言葉。正しい意味を知って、使っていきましょう。