二つ返事の意味とは?
「二つ返事」とは、要望や依頼を何のためらいもなく聞き入れる、という意味です。たとえばビジネスで、自分にとってメリットの大きい仕事が打診されたとき、「思わず二つ返事で引き受けた」などと使います。
つまり、二つ返事とは「断る理由がない」という意味で、状況によってはこちらから率先して引き受けたいような案件がむこうのほうから無条件で依頼される、という流れであり、願ったりかなったりとも言えます。
二つ返事のもうひとつの意味は「軽い調子で引き受ける」です。読んで字のごとく「はい、はい」と何も考えずに依頼を引き受けることで、相手によっては軽薄な印象を与えてしまう場合があります。
一つ返事は辞書に載ってる?
二つ返事としばしば混同しがちな表現に「一つ返事」があります。一つ返事も日本語として据わりがいいためそれ相応に浸透しつつありますが、結論としては一つ返事という日本語はありませんし、辞書にも載っていません。
一つ返事が生まれた背景
二つ返事から派生した一つ返事が日本語としてそもそも成立していないことは、意外と知られていないようです。一つ返事がここまで浸透した背景としては、響きがよく似ている、という点が挙げられます。
二つ返事よりも乗り気ではない様子を表す言葉として生まれた一つ返事は、語呂が良いことから独り歩きし、派生語であることすら意識されなくなった、と考えられます。
二つ返事の類義語・対義語
意外と意味の幅が広く、知っているようで実はよく知らない「二つ返事」。ビジネスや日常生活で知らないうちに誤用することのないよう、類義語や対義語を通して「二つ返事」の正確な意味を把握しておきましょう。それぞれの使い方もチェックなさってください。
類義語①快諾
二つ返事の類義語としてまず挙げられるのが「快諾」です。快諾とは「依頼や仕事を快く承諾する」という意味の言葉で、二つ返事とは意味も使い方もよく似ています。使い方としては快諾のほうが二つ返事よりもややかしこまった印象があり、主にビジネスで使われます。
より実践的な使い方としては、「今回の御依頼をぜひ快諾させていただきます」、「このプロジェクトは君にとっても悪い話ではないから、責任者就任を快諾してくれないか」などの例文があり、応用の幅が広い言葉と言えます。
ただ、快諾するかどうかは基本的に主観の問題であり、第三者から「快諾しろよ」などと強硬に迫るのは本末転倒ですので、このような使い方はどのような場面でもNGであると理解しておきましょう。
類義語②即応
即応とはまさに「即座に応じる」ということで、依頼を打診された時点で何も考えずに引き受ける、という意味があります。二つ返事には軽く引き受ける、というニュアンスがありますが、即応にはそのようなニュアンスはなく、迅速に対応する、という使い方のほうが近いと言えます。
即応を違う言葉で言い換えるとスピード対応、ということにもなります。二つ返事の場合、依頼を快く引き受けた時点で意味が成立しますが、即応には「引き受けた後も迅速に対応する」という意味が含まれるため、使い方には若干の注意が必要です。
類義語③無条件で
二つ返事とはつまり、「新しい依頼や頼み事を無条件で引き受ける」ということです。言い換えれば、他に条件をつける必要がないほど理想的な状況が整っている、ということであり、断る理由が見つからない場合に使われます。
したがって、「もう少し待遇を良くしてもらえたら二つ返事で引き受けましょう」などというのは意味のうえでも矛盾しており、使い方としても誤用であるため、正確な意味をきちんとおさえておく必要があります。
類義語④安請け合い
二つ返事をうかつにつづけていると、ネガティブな影響も出てきます。依頼内容をよく吟味せずに次々と受注を繰り返してばかりいると気づかないうちに仕事だけがふくれあがってしまい、ついにはキャパシティオーバーで潰れてしまいます。
レスポンスが早いのは社会人としてプラスですが、よく考えずに安請け合いをつづけているとやがて仕事の質も悪くなり、無駄な時間と体力を消耗してしまいますので、ネガティブな意味での二つ返事には充分に注意しましょう。
対義語①生返事
二つ返事は「勢い込んで、率先して依頼を引き受ける」ということですから、対義語としては生返事、空返事が挙げられます。生返事、空返事はいずれも「気乗りしない返事」ということで、依頼は一応引き受けるけれど適当にこなす、というニュアンスが含まれます。
生返事も空返事も、相手にとっては失礼な返事であり、特にビジネスシーンでは礼儀を欠いた応対になりますので、会社勤めの方は無意識のうちに生返事や空返事をしないように注意しましょう。
対義語②固辞
固辞とは、依頼などを断固として辞退する、という意味で、二つ返事とは正反対の意味になります。固辞の「固」には頑なに、という意味があり、「辞」には退く、拒否する、などの意味があります。
また、固辞と意味のよく似ている言葉に辞退があります。辞退のほうがやや一般的な意味で、固辞のような「断固として拒否する、断る」といったニュアンスはありません。対義語同士の違いについても深く把握することで誤用や誤解を防ぐことができます。
対義語③渋々
「依頼を渋々引き受けた」といえば、二つ返事とはほど遠く、仕方なく引き受ける、という意味になり、モチベーションがまったく上がらない様子を表しています。これでは引き受ける側はもちろんのこと、依頼する側にとっても望ましい状況とは言えません。
ただ、仕事とは不思議なもので、二つ返事で引き受けた依頼が必ずしも納得のいく結果に終わるとはかぎりませんし、渋々引き受けた依頼が失敗に終わるともかぎりません。
本当に大切なのはむしろ依頼を引き受けた後であり、まかされた依頼を自分の能力と裁量のなかでいかにして充実したものに仕上げられるか、ということがその人の真価とも言えるのです。
一つ返事の類義語・対義語はある?
前述のように、一つ返事という言葉は正式な日本語ではなく、辞書にも載っていません。したがって、一つ返事の類義語や対義語はなく、無理やり探したとしてもそれは間違った表現にしかなりません。
言葉は生き物であり、日本語も時代の流れとともに変化をつづけていくものですが、間違った表現をそれと知らずに使いつづけるのはたんなる誤用ですので、つねに本来の日本語の形を意識することを心がけましょう。
二つ返事の例文・使い方
一つ返事と混同しやすい二つ返事。二つ返事の意味、使い方をより深く理解するために、二つ返事の具体的な例文をセリフ形式でいくつか挙げていきます。一つ返事との違いについてもしっかりとおさえておきましょう。
例文①
「その地方CMはアイドルの路線から大きくはずれており、ギャラも著しく安かったが、美少女アイドルAは二つ返事で引き受けた」。二つ返事のオーソドックスな例文になります。実際のアイドル業界も同じような現状なのでしょうか。
例文②
「君が最大限便宜をはかってくれるというから今回の原稿を二つ返事で引き受けたというのに、これでは話が違うじゃないか」。二つ返事は本来、依頼を何の見返りを期待せずに引き受けることです。打算的に物事を引き受けるのは二つ返事ではありません。
例文③
「君にとってはいささか不本意な仕事かもしれないが、ここはひとつ私の顔を立てて、二つ返事で引き受けてくれないか」。もともとの意味の二つ返事は「自ら進んで引き受ける」という意味であり、誰かに強制されるものではありません。
ただし実際には、この例文のように、上司などの力のある人から頼み込まれて、多少流される形で二つ返事で依頼を引き受けてしまう、というケースもビジネスではあるのかもしれません。
例文④
「そんなに安々と二つ返事で仕事を引き受けてばかりいると、いつかきっとキャパシティオーバーで自分が苦しくなるよ」。新卒の頃は特に、会社に早くなじもうとして寄せられる仕事をついつい二つ返事で引き受けてしまいがちです。
ただ、忙しさの中でも時には立ち止まり、二つ返事ではなくきちんとひとつひとつの仕事を吟味したうえで引き受けることもまた自分自身を成長させることにつながります。
二つ返事と一つ返事の違い
二つ返事と一つ返事は漢字がひとつ違うだけなので、同じ意味であるかのように思われがちですが、それは大きな誤解ですので注意が必要です。そもそも、一つ返事という言葉は存在しません。
一つ返事は二つ返事の派生語ですが、本来の日本語には一つ返事という表現はなく、言葉として用いると明らかな誤用と見なされてしまいます。したがって、一つ返事を二つ返事の類義語あるいは対義語として使用するべきではありません。
しかしながら、一つ返事を二つ返事のくだけた表現として用いる風潮も最近では広がっており、二つ返事の新しい表現のバリエーションとして一つ返事が定着しつつあるようです。
ただ、一つ返事はやはり日本語としては誤用であり、正しい表現として見なされませんので、フォーマルな場でうっかり一つ返事を使わないように気をつけましょう。
二つ返事の英語表記
二つ返事を英語に直訳すると、「accept immediately」になります。acceptは承諾する、immediatelyが直ちに、という意味ですので、ふたつを合わせて「直ちに承諾する」という意味になります。
ほかの英語表現としては「say on the spot」がありますが、こちらのほうはよりカジュアルなニュアンスがあり、英語圏では口語表現として使われる場合が多いようです。
いずれもビジネスシーンでよく使われる英語表現ですので、取引先との商談や海外出張などにそなえ、英語表現についてもできるかぎり多くストックしておきましょう。ちなみに、英語にも一つ返事という表現はありません。
一つ返事の英語表現はある?
一つ返事は二つ返事の誤用から派生した表現であり、正式な日本語ではありません。日本語としてもそもそも成立していないのですから当然英語表現もなく、英訳もできない、ということになります。
ただ、強いて意味を深掘りするとすれば「いったん自分の中で留め置き、立ち止まって考えてみる」という意味が浮かび上がってきます。このことから、一つ返事がもしも将来的に日本語として認められる日がきたとしたら、「think slowly」などと訳されるのではないでしょうか。
二つ返事は「無条件で快く引き受ける」という意味
二つ返事は「快く引き受ける、承諾する」という意味の言葉で、依頼や頼み事をその場で条件をつけずに快諾する、という意味になります。また、一つ返事という言葉は本来日本語にはなく、日常で使うと誤用と見なされますので注意しましょう。
ただ、二つ返事にはネガティブな意味もあり、うかつに使っていると安請け合いと見られかねません。皆さんも、仕事などで一つ返事を繰り返して自分で自分の首を絞めることのないようにお気をつけください。