「末筆」の意味とは?
「末筆」という言葉の意味をご存知ですか?「手紙の最後に入れる言葉?」「意味がよくわからない」「今でも使える言葉なのか?」など、意味・使い方に戸惑うケースが多い言葉です。
まず「末筆」は、「まっぴつ」と読みます。上記のように「手紙」のみならず「メール」や「文」でも使用できる言葉で、現代でも「末筆ながら」というフレーズなどで、「お詫び」「お礼」のシーンで現役で使用することができる言葉でもあります。
「末筆」とは、「手紙文章の末尾に書き加える文句」です。「これで筆を置くこと」を意味しており、「末筆ながら」というフレーズを伴って、文章の終わりのサインとして機能しています。
意味が分かれば、「末筆」の言葉で、終わりのサインを読み取り、「ここで文章が最後」であることが理解する事ができます。
今回はそんな「末筆」「末筆ながら」について徹底紹介。「末筆ながら」の類義語、使い方、「略儀ながら」との違い、注意点、由来・歴史、英語表記について順に紹介していき、「末筆」「末筆ながら」を把握できるよう特集していきます。
「末筆ながら」の類義語
まずは「末筆ながら」の類義語から確認していきます。一体「末筆ながら」という言葉にはどんな類義語が存在しているのでしょうか?
「末筆ながら」はその意味「これで筆を置きますが」というフレーズから、手紙などの「書き言葉」の中で、私たちの生活に密接に関わりがある言葉です。
そんな意味がある「末筆ながら」の対義語・類義語を知ることは、「末筆ながら」の意味づけをより明確し、理解度を深めるきっかけになります。では以下より「末筆ながら」の対義語・類義語を紹介していきます。
「一度書き終えて再度書き加える」意味
では「末筆ながら」の類義語です。1つ目は「追伸」が当てはまります。類義語「追伸」は「文章の最後で書き終えて再度書き加えること」を意味し「p.s.(postscript)でもしられています。手紙や文章の本文の内容とは他に付け加えたい際に用いられます。
現在でも「手紙の最後に書き加える」ケースで頻繁に使われている語です。ただ、「末筆ながら」は「これで筆を置くこと」であり、「追伸」とは、その「末筆ながら」に続く言葉として認識できる言葉です。
「書物や論文などで最後に書き添える」意味
「末筆ながら」の類義語の2つ目は「後書き」が当てはまります。類義語「後書き」は「書物や論文などで最後に書き添える」こと意味します。
現在でも書物の最後に「あとがき」という独立した章を書物の最後に見かけたりします。その際、今回の執筆にまつわるあれこれを関係者への感謝の言葉を交えて書かれる場合があります。ただ、「末筆ながら」とは違い手紙などの書簡では「後書き」とは言わないので注意が必要です。
「末筆ながら」の使い方・例文
では「末筆ながら」は実生活でどのように使うことができるのでしょうか?私たちの暮らす生活は、ビジネスシーンもプライベートシーンもさまざまな出来事で、目の前が忙しく変化しています。
そんな周囲の状況の中で、「末筆ながら」は、相手が手を休めて目を通してもらうことで心と心が通う「メール」や「手紙」の中で真価を発揮します。
「末筆ながら」は単なるありきたりな「業務連絡」ではなく、「お詫び」「お礼」などに代表される「自分の本心を垣間見せる」趣旨で書かれた内容と親和性があるためです。
上記を踏まえて「末筆ながら」の例文を下記にケース別でご紹介しますので、その使い方をご参考いただければ幸いです。
例文①
「末筆ながら」の使い方の1つの例文として、手紙が上げられます。ビジネスシーンなどで、お詫びをしなければならない重要な局面の場合に「末筆ながら」が使われます。
「この度は弊社の不手際で貴社に多大なるご迷惑をおかけし、申し訳ございませんでした。(中略)末筆ながら〇〇の不手際を重ねてお詫びしますとともに、今後も変わらないお引き立ての程何卒よろしくお願い申し上げます」
このように、会社間取引で不手際で相手方に迷惑をかけて、手紙などで「お詫び」をする際「末筆ながら」という用語の使い方が想定できます。
「物出しよりも顔出し」と言われるように直接お詫びの訪問することが、一番の誠意を示すことではありますが、相手方が感情的になって取り合ってくれない場合、お詫びの手紙などが誠意を伝える効果的な手法です。
例文②
「末筆ながら」の使い方の1つの例文として、メールが上げられます。ビジネスシーンなどで、お礼をする局面の場合に「末筆ながら」が使われます。
「この度はお忙しい中弊社にお越しくださりありがとうございました。(中略)末筆ながら〇〇様のますますのご健勝とご多幸をお祈り申し上げます」
このように、「お礼」のメールは、BtoCの取引で来店(来社)した相手に直接コネクトする手段として有効です。相手個人へ直接働きかけることで、個人的なお礼の意味合いを醸し出すことが可能で、最後に「末筆ながら」を入れて相手を慮る内容で文を終えると読後感は好印象です。
お礼は、「電子メール」意外にも「手紙」も有効な手段です。ただ「手紙でのお礼」は重いと感じる場合があるので、お礼の意思表示は相手との関係性を見据えた状況判断をする必要があります。
お礼をしたいからといって「出し過ぎ」「長文過ぎ」などに注意し、相手方が「末筆ながら」まで読んでもらえる展開を考える必要があります。
例文③
「末筆ながら」の使い方の1つの例文として、プライベートシーンなどで、お礼をする局面の場合に「末筆ながら」が使われます。
「この度は私どものために お忙しいところ 足を運んでいただきありがとうございました(中略)末筆ながら今後も末長いお付き合いのほどよろしくお願い申し上げます」
このように、式などのプライベートでも「お礼」のシーンの中で、手紙やメールで「末筆ながら」という言葉が活躍します。
プライベートシーンなどでは、お礼だけではなく、「お詫び」する局面の場合にも「末筆ながら」を文中に使うことができます。
「この度は私の不注意で大怪我を負わせてしまい大変申し訳ございませんでした。(中略)末筆ながら〇〇様の1日でも早い回復をお祈りしております」
このように、事故などのプライベートな事情でも「お詫び」のシーンの中で、手紙やメールで「末筆ながら」という言葉が活躍します。
例文④
「末筆ながら」の使い方の1つの例文として、小説や評論などの書籍が上げられます。本を読んでいる際に「末筆ながら」という表現に出会す場合が想定できます。
「末筆ながら、角川書店書籍第一編集部大和正隆氏、佐野真理氏には大変お世話になった。 心から謝意を表する次第である(上野正彦「死体は知っている」より)」
このように、書籍などの「あとがき」などの文末に「末筆ながら」を目にすることで読者は当該書籍が読み終わることを意識します。
「末筆ながら」と「略儀ながら」の違い
次に「末筆ながら」と「略儀ながら」との違いについて紹介していきます。この「略儀ながら」は「末筆ながら」に使う場所からしても、非常に似た意味の有名な言葉です。
今後の誤用を防ぐ観点からも、両者にどんな違いがあるのかを、以下「末筆ながら」と「略儀ながら」それぞれの意味をそれぞれ比較していきながら違いを説明していきます。
「略儀ながら」は「直接お会いしないで」の意味
「略儀ながら」は「直接お会いしないで」を意味する言葉です。「略儀」とは「正式な手続きを経ないこと」を意味してます。「略儀ながら書中にて」などで使う事ができ、「直接お会いする事を正式な手続き」であることを意味しています。
対して「末筆ながら」は先述したように「筆を置きますが」を意味しています。両者を比べてみると「略儀ながら」に比べて、「末筆ながら」は「お会いすることを正式な手続き」とは見做していないことが理解できます。
上記の意味から「お詫び」などの文末に「略儀ながら」と締めることは失礼にあたる表現になります。「お詫びを略式で済ませることを自ら認めてしまっている」と怒りを買う原因になるので注意を払う必要があります。
「末筆ながら」を使う際の注意点
「末筆ながら」を使う上で気をつけなければならない点はどこにあるのでしょうか?以下に「末筆ながら」を使う際の注意点をご紹介していきます。実用につながる大切な部分なので、実際に「末筆ながら」を使う際、参考になれば幸いです。
文頭では使えない
「末筆ながら」を使う上で注意すべきポイントは「文頭」で使う事ができないことが大きなポイントです。「末筆」という意味を「文章が拙い」という意味に誤解して使う場合に多い間違いです。
「末筆」は上記のように自分をへりくだって表現している言葉ではありません。「使い方」で紹介したように敬語の類ではなく「筆を置く」という言葉から文末での締めの言葉です。
「末筆ながら」を使用する際は、上記本来の意味を把握した上で「文末」で使うようにし、「文頭では使えない」ことにご留意ください。
「末筆ながら」の由来・歴史
「末筆ながら」の意味、類義語、他の語との違い、使い方がわかったところで、「末筆ながら」の由来はどこにあるのでしょうか?
「末筆ながら」は例文などでご紹介したように、ビジネスシーン・プライベートシーンの「書き言葉」として広く使われるケースが想定される言葉です。昔は現在の電子メールという伝達手段がなく手紙が「書き言葉」の主流の伝達手段だったため、日本では古くから使用されてきた可能性があります。
上記を踏まえて「末筆ながら」の漢字の成り立ちである「由来」と「末筆ながら」が日本で使われていた使用時期である「歴史」を辿っていきます。
由来
まずは「末筆」をそれぞれ「末」「筆」に分けて、それぞれの漢字の成り立ちを紐解いていき、「末筆」の意味の由来を探っていきます。
まずは「末」。訓読みで「(すえ)」と読む事ができます。指示文字で「木」の上部に一線を引くことで、「こずえ」を示唆しています。「こずえ」は「木の枝の先端」という意味から、「すえ」という意味が生まれました。
次は「筆」。訓読みで「(すえ)」と読む事ができます。会意兼形声文字で「竹」と音符「聿(読み方:ヰツからヒツへ)」からなり、竹製の「ふで」の意味をあらわしています。
上記の由来から「ふでのおわり」を意味するようになり、「末筆」という言葉で現在知られるようになりました。
歴史
「末筆ながら」の使用時期の歴史は過去の文献でも確認することができます。小説家の太宰治が「肇書房」に1944年(昭和19年)に発表した短編小説集「佳日」という作品です。下記の一説を紹介します。
「末筆ながら、おからだを大事にして、阿片などには見向きもせぬように、とまたしても要いらざる忠告を一言つけ加えた。 私のその時の手紙が、大隅君の気にいらなかったのかも知れない」今から70年以上前には「末筆ながら」が使われているのがわかります。
「末筆ながら」の英語表記
「末筆ながら」を直接該当する英語表現はありません。しかし英語圏でも「末筆ながら」に該当する締めの表現は存在しています。
具体的には「I wish〜」という表現です。この表現を直訳すれば「私は〜を希望します」となりますが、「〜」に相手にとってポジティブな内容を入れる事で相手を慮る締めの表現になります。つまり「wish」は相手に願いや希望を送る言葉です。
例えば「I wish you many more successes.」これを訳すと「成功を祈っているよ」と表現することができます。手紙文の末尾などで使われる場合は、日本語風にアレンジすれば「末筆ながら成功を祈っています」と表現することができます。
「末筆ながら」に因んだあれこれ
「末筆ながら」は「使い方」でも紹介したようにお詫びやお礼の「手紙」などでよく使われる言葉ですが、「末筆ながら」が使われる「手紙」の種類には例文の他にどんなものがあるのでしょうか?
「末筆ながら」が使われている手紙の種類には「暑中見舞い」「寒中見舞い」などの挨拶状が上げられます。挨拶状専門会社なども存在しており、既にテンプレートも存在しています。
また、「末筆ながら」は「退職」や「転勤」などのビジネスシーンでの挨拶状にも使われるフレーズです。こちらも雛形が存在していますが、個人的な内容などは、自らアレンジを加え、オリジナリティを出す事で、受け取り方に「思い」を使える事ができます。
「末筆」は「これで筆を置く」意味
「末筆」の意味、類語、使い方、忖度との違い、注意点、由来・歴史、漢字表記、英語表記を順を追って見てきました。「末筆」は「これで筆を置くこと」ことを意味している言葉です。
手紙やメールは毎日の忙しない業務の中で、時には読み手の心を動かすこともあります。そんなシーンに使える「末筆ながら」という言葉は「お詫び」「お礼」のみならず、本心からの文章の内容ととても親和性がある言葉です。日常生活にぜひご活用ください。